茨城県こころの医療センター

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児童・思春期病棟について

児童・思春期の精神科専門病棟「つくし病棟」の紹介

児童思春期精神医学とは

 子ども達があらわすさまざまな精神症状,身体症状や問題行動の意味を慎重に検討し,診断,治療そして予防を行いながら子どもの精神的健康の達成を目的とするものです。
そのためには,子どもの年齢と発達レベル,気質及び生物学的背景,親子関係,家族力動,友人関係,幼稚園や学校などにおける生活等を総合的に評価する必要があります。

つくし病棟とは

 児童・思春期の子ども達を対象とし,精神科的入院治療を行う専門病棟です。
児童・思春期専門病棟は,全国的にも数少なく,茨城県では唯一の専門病棟です。

玄関
玄関

中庭
中庭


つくし病棟の基本理念

子どもの成長や発達,親との協力関係,学校及び地域関連機関との連携など,児童・思春期精神医療の特殊性を常に考慮しながら機能できる病棟にしていこうと考えています。

  1. 入院している子ども達の成長と発達を常に考慮する。
  2. 自分の子どもが入院したらと,患者様や家族の立場に立って考える。
  3. 個々の患者様に応じた手作りの医療を提供する。

病棟の設備及び病棟スタッフ

  1. 病棟の設備
    プライバシーを重視して,全室個室となっております。個室30室,保護室4室,ファミリールーム1室,計35床の病棟です。
    また,グループで勉強したい子どもが使える学習室を設置しました。
    集団療法などが落ち着いて出来るようなスペースを確保し,プレイルームは子ども達が安心して居られる空間を重視しました。
    面会室は,家族が複数で来られても十分にくつろげるような広さと,応接セットを用意しました。

    病棟内
    病棟内

    食堂
    食堂

    プレイルーム
    プレイルーム

    面会室
    面会室

  2. 病棟スタッフ
    病棟スタッフは医師,看護師の他に病棟専属の臨床心理技術者及び精神保健福祉士(PSW)がおります。
    各職種がそれぞれの立場からケースを検討し,総合的な治療に取り組むというチーム医療を実践しています。

入院対象

  1. 入院時年齢
    児童・思春期精神科専門病棟の入院年齢は各施設によって異なりますが,つくし病棟では,入院時年齢が原則として小学校高学年から18歳以下の子ども達を対象としています。
  2. 診断カテゴリー
    主に神経症性障害,摂食障害,躁うつ病(感情障害),統合失調症,発達障害の子ども達が入院しています。最近は,統合失調症の入院は比較的少なく,発達障害の入院が増えており,また,摂食障害の場合,高度な体重低下を伴う子供たちも入院してきています。各障害の簡単な説明と入院の適応については後で少し詳しく説明します。

入院治療,治療プログラム

 薬物療法,精神療法,集団療法,家族療法,認知行動療法などの治療を必要に応じて組み合わせて行っています。
 特徴として,強制参加ではありませんが集団療法を重視しています。
 臨床心理士による発達障害児の行動・情緒コントロールの改善,対人関係スキルの獲得などに焦点を当てた発達障害のための集団精神療法,コラージュ,作業療法士による手工芸,看護師によるスポーツや文化,生活技能訓練(Social Skills Training SST)などさまざまな集団療法を行っています。
 SSTでは時に「入院していて,病棟の中の人付き合いで困っていること」などがテーマとして取り上げられることもあります。入院してくる子ども達の多くは対人関係が苦手です。このような入院環境で,さまざまなことを経験し,その中から彼らにとって必要なことが経験を通して学べたらと思っております。実際に多くの子ども達が集団療法を通じて,徐々に人と交わる力や現実を受け止める力などを身に付けています。

学校教育について

当院には友部東養護学校の訪問教室があります。友部東養護学校は県立中央病院の隣にあり,病気治療のため入院・通院をしている児童・生徒が学ぶ学校です。小中学生は入院中でも院内の訪問教室で教育を受けられます。長期間の不登校や障害のために勉強が遅れている子どもには,その子に合わせた教育を行っています。

児童・思春期デイケア棟
児童・思春期デイケア棟

訪問教室
訪問教室

各障害についての説明と入院適応

神経症性障害

 多くのケースでは家族関係や友達の問題,勉強や受験などのさまざまな問題でつまずき,不登校などの不適応状態や,不安(イライラ感)が現れます。同時にさまざまな精神症状や問題行動も現れるようになります。大抵は外来で治療可能ですが,問題がこじれて深刻になると入院治療が必要となることがあります。
これらの神経症性障害の子ども達の診断としては,解離性障害,強迫性障害,いわゆる対人恐怖,抑うつ気分を伴う適応障害,心的外傷後ストレス障害などになります。
以下に入院治療が必要または好ましいと思われる代表的なパターンを示します。

  1. 不登校,閉じこもりなりなどから,生活リズムが乱れ家庭では改善しないケース。
  2. 不登校,閉じこもりから抜け出せず,本人も家族も悩んでいるケース。
  3. さまざまな問題から家庭に居場所がないと,本人が思いこんでいたり,家族に余裕がなく適切な対応がとれず,家庭内の関係が悪循環に陥っているケース。
  4. 長期間の閉じこもりから母子密着状態となり,一方的に母親に依存したり,無理な要求を始める。要求が通らないとイライラとして家庭内暴力などが現れるようになり,家族だけの解決が困難となって,家族も疲れ切っているようなケース。
  5. 自己像が低く,自己嫌悪から自傷行為や自殺未遂を繰り返しているケース。

 これら1~5は幾つか重複している場合がほとんどです。
現状ではつくし病棟に入院してくる子ども達のほとんどは4,5レベルになってからで,まれに3レベルで入院する子どももいます。早期発見,早期予防の立 場からは1,2,3レベルで早めに入院した方が好ましい場合も多いと思われます。4,5レベルになると,ほとんどのケースで「問題行動に振り回され,家族もゆとりがなくなり適切な対応がとれなくなる。その一方で本人もそういう自分が更に嫌いになり自己像も一段と低くなる。そして更に深刻な問題行動を繰り返すようになる」という悪循環に陥っています。こうなると治療は長期化してしまいます。
早期に入院治療を行うことで,このような悪循環に陥ることなく比較的短期間で改善することが期待できます。

安易な入院がマイナスになるケース
安易な入院は時にマイナスとなります。例えば背景に統合失調症やうつ病,強迫神経症,対人恐怖などの精神科的障害がなく,家庭内暴力が主な問題となっているケースなどです。子ども自身にも問題はありますが,多くの場合家族の対応にも問題を認めます。親としての子どもに対する接し方について考えず,ただ子どもだけの問題として入院させても解決にはなりません。退院後に余計に問題がこじれてしまう場合が多いのです。
家庭内暴力の治療は,家族カウンセリング,本人の精神療法,薬物療法などの組み合わせによる外来治療が中心です。

摂食障害

 やせ願望,肥満恐怖,ボディーイメージの障害からガリガリに痩せていても,さらに痩せたいというケースは珍しくありません。このようなケースのうち身体的治療のためにも,入院治療が必要なのに,一般の小児科病棟や内科病棟では逃げ出してしまったり,点滴を自己抜去してしまったりして治療困難なケースも認められます。主にこのようなケースが入院しています。

気分障害(抑うつ状態,うつ病など)

 子どものうつ病は従来考えられていたよりもはるかに多いことが,最近分かってきました。また病状が改善しても復学が出来なかったり,その後の人格形成に影響したり,従来考えられていたよりも予後も楽観できないことも分かってきました。
不登校,引きこもり,身体症状を主訴に来院するケースが多く,また親も本人も関心が不登校などの問題にあり,いじめや教師の対応などに原因を求め,客観的な病歴を得にくい場合も多く認められます。
自覚症状としても大人の場合とちがって,抑うつ気分は表現され難く,不安,焦燥感を強く訴えるケースが多く,イライラとして物に当たったりすることも珍しくありません。必ずしも見るからに元気がなくしゅんとしているとは限りません。
また,友達関係,勉強,教師や親との関係などの身近な悩みを訴える場合が多く,この年代の発達課題と一致するため,本人の性格の問題として見逃されることも多いのです。実際に診察していても,うつ病なのか本人の性格や学校環境などの環境的問題によるものなのか,なかなか判断できない場合もあります。
入院治療の適応としては,自殺願望が強く外来で診ていくことが困難なケースや,環境的要因が強く外来治療では病状がなかなか改善せず,環境から一旦切り離す必要があるケースなどです。

統合失調症

 精神科医療への偏見は以前よりは少なくなり,早期に受診してくるケースが多くなりました。15歳以下の受診も珍しくありません。
外来治療で症状が改善しないケースや,その後の成長や発達を考慮し,入院の方が好ましいと判断されるようなケースです。例えば症状としては他人に迷惑をかけている訳でもなく,外来治療でも対応できるが,長らく閉じこもり,人と交わる力や社会で生活する力が育たないようなケースです。
17,18歳で成人型として発症し,幻覚,妄想などの症状や興奮が著しい場合は,急性期の成人病棟の入院となります。

私たちが目指しているもの

 精神科に入院してくる子ども達がゼロになればよいと願っています。
しかし,精神科に必ず入院してくる子ども達がいることも避けられない現実です。
しかも,統合失調症などいわゆる精神病圏の子ども達より,神経症圏の子ども達の入院の方が多いということが,これまでの私たちの経験です。
私たちは,低年齢で発症した統合失調症や躁うつ病などの精神病圏の子ども達の入院治療だけでなく,神経症圏の子ども達や摂食障害などの精神科的問題を抱えた子ども達の入院治療が適切に行える病棟を目指しています。

 先に説明した神経症圏の子ども達は,実際に治療に関わっていると,一昔前だったら自然に学校や地域社会で支えられ,やがて自分なりの生き方が見つけられ,問題がこじれることなく,入院どころか医療の現場にさえ登場しなかったような子ども達が多いようにさえ思います。家族機能,学校や地域社会の変化などが影響していることは言うまでもありません。
しかし,現代社会の変化や病理性のみを追求するのは臨床的ではありません。
私たちの出来ることは,入院治療が必要となったこのような子ども達に対して,統合失調症をモデルとしたこれまでのような精神科入院治療の枠にとらわれることなく,少しでもその子にとって良い医療を提供できるよう日々努力することだと考えています。
また入院している子どもの退院後の生活を考えると,地域関連機関(学校や適応指導教室などの教育機関,児童相談所や保健所,地域生活支援センターやデイケアなど)との連携を密に行い,退院後のサポート体制を考慮に入れながら治療を行う必要があります。

 私たちは,子ども達の治療は医療だけで丸抱えすべきではないと考えています。子ども達がより健やかに成長する場はなんといっても地域社会です。さまざまな問題が見え隠れしながらも,地域社会に帰って,地域の関連機関と連携を図り,地域で支えてもらいながら,親も子どもも成長していくことが理想だと考えています。
私たちはその橋渡しが出来る病棟でありたいと願っています。

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