スギヒラタケは,美味しい野生きのことして広く親しまれてきましたが,平成16年,このきのこが関係すると思われる急性脳症事例が発生し,患者は日本海側を中心とした9県で59人にのぼり,うち19人が亡くなりました。原因については各専門機関が調査中で結論は出ていませんが,これまでに得られた情報から,どんな点に注意したらよいのかを解説します(2006年1月)。
Q1.スギヒラタケは,どんなきのこですか?
A1.特徴:全体白色(古くなると黄色味を帯びる)の薄っぺらなきのこでスギの古い切り株などに重なりあって生えます。柄はほとんどありません。多くは根本付近に白い短毛があります。カサは丸形〜耳形〜扇形で,直径1〜数cmです。沖縄を除く全国に分布します。
現在でも食べられると信じている人は多いので,直売所で買ったり人からもらったきのこなどで「もしかして」と思ったら,図鑑でよく確認するか,県の相談機関などで調べてもらいましょう。
Q2.スーパーなどで売っているヒラタケやウスヒラタケは,大丈夫ですか?
A2.名前が似ているだけで,スギヒラタケとは縁もゆかりもない別の種類です(スギヒラタケはキシメジ科,ヒラタケとウスヒラタケはヒラタケ科のきのこです)。
ヒラタケとウスヒラタケは栽培用に選抜された品種を用いて,他の栽培きのこと同様に定められた方法で栽培されているので,全く問題ありません。スギヒラタケは栽培されていないので,町なかのスーパーなど野生きのこを扱わない店で売られることはありません。
Q3.被害は日本海側に集中しています。茨城県のものは食べられますか?
A3.各地で採取されたスギヒラタケのエキスをネズミに注射した実験では,太平洋側のものにも死亡例が確認されています。
現時点では,「○○産なら安全」と言うことはできませんので,茨城県産であっても食べないでください。
Q4.腎臓に病気がなければ,食べても大丈夫ですか?
A4.健康なネズミに食べさせる実験でも,死亡例が確認されています。腎臓病との因果関係もはっきりしているわけではありません。
現時点では,健康な人も食べないでください。
Q5.スギヒラタケはスギから生えるので,スギから生えたヒラタケに似ているきのこを食べないようにすれば,間違えることはありませんか?
A5.スギヒラタケは,スギだけでなく,ヒノキ,アカマツ,クロマツ,ヒメコマツ,エゾマツ,トドマツ,アオモリトドマツ,ブナなどに生えることがあります。ヒラタケがスギから生えることもあります。
生えた木の種類だけできのこの種類を判断することは危険です。
Q6.新聞やテレビで,「別の種類のきのこと一緒に生えているものが毒」と報じていました。他のきのこが生えていない木から採取したものは食べられますか?
A6.可能性の一つとして調査中のものであり,まだ確認された事例が少ないので,断言できる段階ではありません。現在,様々な可能性について研究が行われていますが,原因は特定されていません。
他のきのこが生えていない木から採取したものも食べないでください。
Q7.森林にヘリコプターによる農薬散布が行われていますが,その影響では?
A7.広域の森林へ農薬散布が行われるのは,一般にマツ材線虫病を予防するためのマツ林に限られます。ネズミにエキスを注射する実験で毒性を示したスギヒラタケは,16もの府県から見つかっています。スギヒラタケは主にスギから生えますが,全国規模でスギ林に農薬を散布することは考えられません。たとえマツ材線虫病の予防薬がスギヒラタケにかかったとしても,その薬剤の性質から,致命的な事故につながることは考えられません。毒性が確認されたスギヒラタケとその発生地のスギ倒木や土壌を調べた研究例でも,農薬は検出されていません。
このため,農薬汚染の可能性は極めて低いと考えられます。
Q8.自分が食べてみて何ともなければ,他人に売ったりあげたりしてもいいですか?
A8.スギヒラタケに限らず,きのこの中毒症状の程度は,その人の体質や健康状態,食べた量や調理方法などによって大きく異なります。どんなきのこでも,まず名前を明らかにして,これまでに中毒例のない食用の種類であることを確認しなければ,安全とは言えません。食用とされていたきのこが,中毒事例が明らかになることで毒きのこに変更されることもあるので,常に新しい図鑑などから情報を得ることも大切です。
「自分が中毒しないから」は,何の保証にもなりません。自分の腹具合を根拠に他人に売ったりあげたりするのは,大変危険で無責任な行為です。
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