上海経済データ
過去10年間の経済改革の要旨 11/2004 その1
この10年間は過去の中国の経済発展の中で最も速く国家経済発展政策が功を奏し、中国経済を拡大させてきた。 現在の中国経済は、主な経済指標でみる限り好調に見えるが、実際には過剰投資によりバブルの様相を呈しているのが現状である。 そして、沿岸部と内陸部、都市と農村の経済的格差は顕著なものとなり、社会不安が起こりかねない状況となっている。 これに不安感を募らせた中国政府は、2004年4月、経済の沈静化を図るマクロコントロール政策を推進し、同時に、農業へのてこ入れを強め、西部や東北部といった生産性の低い地域に対する投資を強めるなど、アンバランスの是正を図ろうとしている。
過去の経済改革を知ることにより、このマクロコントロール政策の意義を理解することができよう。 ここに過去10年間の経済改革の要旨を年順に記述する。

工場のフル操業は今なお続く-上海
(1)1994年:分税制
1994年、税政改革を経て、18の税種を中央税、地方税、中央地方共有税に分け、中央税は国家税務総局が、地方税は地方の税務当局がそれぞれ徴税するシステムが導入された。この改革により、中央政府の財政収入が政府財政収入全体に占める比率は、1993年の22%から1995年には52.2%、2002年は54.93%、2003年には57.47%に増加した。
(2)1994年:為替レートの一本化
中国は1993年末、為替レート決定メカニズムの改革を決定し、1994年1月1日にそれまで採用されていた二重レートを管理フロート制に一本化し、1米ドル=8.7元となった。当時から2003年12月までの10年間で、人民元の対米ドル為替レートは約5%上昇した。
(3)1995年:現代的な企業制度
江沢民氏は上海で1995年5月22日、長春で6月26日に開かれた座談会で演説し、確固たる自信を持ち、任務を明確にした上で、国有企業改革を積極的に推進するよう求めた。江沢民氏は、現代的な企業制度の基本的特徴である「明確な財産権、明確な権力と責任、政府と企業の分離、科学的な管理」という4点は、相互に関係し合う一つのまとまった概念であり、全面的かつ正確に理解し、徹底させなければならないと表明した。
(4)1998年:積極的な財政政策
中国政府は1998年、アジア金融危機に対応し、経済の衰退を防止するために、積極的な財政政策を行い投資政策によって市場経済の運営に介入した。政策の目的は、「貯蓄から政府投資へ」の形で「沈殿資金(不動産など未回収の投資資金)」を吸収し、全体的な経済活動の規模を維持し、「貯蓄から自主的な投資へ」のメカニズムの回復を図った。しかし、実際の効果は「貯蓄から政府投資を経て経済成長へ」という直接的なてこ入れの形で現れた。
(5)1998年:穏健な通貨政策
中国政府は1998年、アジア金融危機への対応と国内のデフレ克服、積極的な財政政策と歩調を合わせるため、穏健な通貨政策を実施した。これにより、中国経済は障害を乗り越え、急成長を維持した。
(6)1999年:債権の株式化
国家経済貿易委員会(商務部の前身の一つ)は1999年8月、債権の株式化に関する具体的な方案・条件・対象範囲を決定し、実行に移し始めた。国務院はこれと同時に、不良債権処理などを担当する資産管理会社として、中国工商銀行が華融資産管理公司を、中国農業銀行が長城資産管理公司を、中国銀行が東方資産管理公司、中国建設銀行が信達資産管理公司をそれぞれ設立することを認可した。
(7)2000年:農村部における徴収費用の税金化
朱鎔基総理(当時)は2000年3月、政府活動報告の中で、「農村部における徴税と費用徴収の改革の積極的推進は、農村人口の負担を根本的に軽減する」と指摘した。ならびに同年、安徽省で改革を試行し、その経験を総括したのち各地に拡大させることを決定した。安徽省の農村人口による同年の費用・税金の納入額は16億9千万元減(前年比31%減)となった。農村部における費用徴収の規範化が進み、「三乱」(地方行政が勝手な名目で課す費用・罰金・労役など)をほぼ抑制した。
(8)2000年:都市化
中国共産党中央委員会と国務院は2000年6月13日、「小型都市の健全な発展に関する若干の意見」を発表した。同年10月の中国共産党第15期中央委員会第5回全体会議では、第10期五カ年計画(2001−2005年)に関する提案を採択した。提案では、都市化の水準の向上と、農村人口の都市への移動は、経済発展に広大な市場と持久力を与え、都市部と農村部の経済構造を改善し、国民経済のプラス循環と社会のバランスある発展を促進する重要な措置になるとを指摘した。
(9)2000年:西部大開発の実施
国務院は2000年10月26日、33号文書を公布し、西部大開発の政策措置実施に関する通知を発表した。西部開発政策の適用範囲は、重慶市、四川省、貴州省、西蔵自治区、陝西省、甘粛省、寧夏回族自治区、青海省、新疆ウイグル自治区、内蒙古自治区、広西チワン族自治区。
(10)2001年:行政許認可制度改革
国務院は2001年10月24日、行政許認可制度改革に関するTV会議を北京で開催し、行政許認可制度改革の加速についての措置・計画を打ち出した。改革の主な目標は、社会主義市場経済体制に適応する行政許認可制度の構築と、改革による制度革新。
(11)2002年:適格域外機関投資家(QFII)
中国証券監督管理委員会と中国人民銀行(中央銀行)は2002年11月7日、「適格域外機関投資家(QFII)による国内証券投資の管理に関する暫時弁法」を共同発布した。2002年12月1日に施行された。
(12)2003年:東北旧工業基地の振興
国務院の温家宝総理が主催する国務院常務会議が2003年9月10日に開かれた。会議では、東北旧工業基地振興戦略の実施について討論が行われ、東北旧工業基地振興の指導的思想や原則、主要任務、政策措置が打ち出された。また、東北旧工業基地における調整・改造の加速を支持することは、中国共産党第16期全国代表大会で打ち出された重要政策であるとの認識が示された。
(13)2004年:グリーンGDP
国内総生産(GDP)は、単なる経済発展だけを示すもので、発展が資源・環境に与える影響は考慮されていない。このため、経済規模や経済成長の過大評価につながりやすく、経済の真の姿をねじ曲げがちになる。グリーンGDPとは、環境や生態系に対する影響を数値化し、GDPに反映させた調整値。2004年には北京市、吉林省、陝西省、広東省、上海市など6つの省・直轄市をテスト都市として、グリーンGDP算出システムの普及を図る。
まとめ
中国経済の発展の中では、無計画な投資拡大や成長率だけを追い求めるアンバランスな姿勢が、何度も問題化してきた。根本的な原因は、体制の不備、法制度の不備、成長モデルの粗放性にある。こうした問題を解決するには、経済調整だけでは不十分であり、改革から着手し、体制的、システム的な欠陥を補い、長期的な効果を生むメカニズムを構築する必要がある。
2004年4月から始まったマクロコントロール政策とは社会主義的市場経済の重要な構成部分で、経済運営における浮き沈みを減らし、経済の安定的かつバランスの取れた成長を目指すためのものである。つまりマクロコントロール政策を単純に「引き締め」と理解してはならない。

中国のGDP伸び率の推移(対前年同期比)
出所:http://searchina.ne.jp/business/002.html
なお、国家情報中心経済予測部が最近発表したレポートによれば、来年の2005年、中国のGDPの実質成長が8.5%前後となり、今年通年と比べて0.8ポイントほど落ち込むことになると予測、過熱からの脱出が順調に進んでいると指摘した。一方、世界銀行が11月9日に発表した最新の予測では、今後GDP成長率の伸びは鈍りはじめ、2004年は9.25%、2005年は8%前後になるとしている。 参考: 人民網、中国情報局、捷尼克貿易(上海)