トピックス・イン上海
上海の美容整形事情 2/2005 その1

モデル並みの美しい容姿は中国女性の憧れだ
■ 美容整形の基礎知識
人為的に医師の施しにより美しい容貌に変身させる「整形手術」。最近日本でも「整形美人」という言葉が使われたりするが,ここ中国でも,中国語でこれにあたる「人造美女」という言葉が流通し始まっている。
ここで,美容整形について語る前に、混同されがちな「形成外科」,「美容整形」,「美容外科」,「整形外科」,「整骨院」それぞれの定義について整理しておきたい。
1. 形成外科 … 事故や先天的な原因で体のある場所が歪んだり、変形してしまったときに,手術によって治すというものである。

単なるイメージだが…
2. 美容整形 … 形成外科のひとつであり、形成外科で使われる手術の技術を応用して、ある部分を手術によってより一層美しく見せようとするものである。従って,美容整形は形成外科医により行なわれる。
3. 美容外科 … 形成外科の延長線上で生まれたものである。形成外科は、あくまでも先天性疾患や事故などで失った機能を修復、復元するための医療だが、どうせ修復、復元するならできるだけきれいに、という考え方に端を発し、より美しさを追求して作りかえるのが美容外科である。この美容外科の技術をもって、身体が正常な機能を持っているにもかかわらず手術によって更に美しい外見に変えるのが美容整形である。
4. 整形外科 … 整形外科はよく形成外科と混同されるが,人体の運動器官の病気や外傷を取り扱う医学である。つまり整形外科は、背骨・手・足など全身の運動器官を造りあげている、骨・関節・筋肉・靭帯・腱・脊髄・神経の病気、外傷による損傷、手足などの先天性疾患を治療し研究する学問をいう。そして整形外科の治療は、単に病気やケガを治すだけでなく、運動機能を元に回復させることを目的とする。不幸にして運動機能の回復が十分に得られなかったとしても、残った機能を最大限に活用して、元の状態に出来るだけ近く機能的に回復させるのが整形外科の大きな役割である。又、運動機能の障害だけでなく、痛みを主とする疾患(俗に神経痛・リウマチなどといわれる病気)の治療を行なうのも整形外科の仕事である。
5. 整骨院 … 整骨院は接骨院ともいい、柔道整復師が行なう施術所のことである。一方整形外科は医師が行なう診療科である。つまり整骨院と整形外科は、全く異なるものである。

人造美女と、人造美男のCM
■ 美容整形の概要
形成外科、美容外科については前に述べたが、あくまでも失った機能の修復の医療なので、一般的にいわれる整形美人を作り出す医療ではない。だから,国立病院などにある美容外科は形成外科の一部なので、美容整形を行う美容外科とは意味合いもポリシーも違っている。美容整形は専門の病院でしか行なわれないし、病気の治療でないため保険は効かない。

渋谷風にきめた上海ギャルだが…
美容整形で高い効果を得られるもののひとつとして、手術で見た目が美しくなったことに伴い、患者自身が自信を持ち、容貌のコンプレックスから開放されるという精神面での治癒がある。本来の医療の目的とは外れているかも知れないが、内面の悩みの解決は美容整形の重要な役割といえよう。
美容整形はマスコミに取り上げられ身近なものになってきており、手術を受けるということの意味やその他の影響を理解しないまま安易に手術を受ける傾向が年々強くなってきているといわれる。
美容整形の技術と費用は病院によって差があり、安いからといっても未熟な医師とは限らず、逆に高いからといって良い医師とも限らないとされる。日本ではインターネットの普及により医師の腕がすぐネット上に反映されることもあり,美容整形医師の評判はほぼガラス張りだ。しかし,中国ではまだ美容整形が始まったばかりで、こうした制度が構築されておらず、さらに医療関連の法整備も不十分である。
■ 上海では美容整形医院が活況

タクシー助手席ヘッドレスト後部には美容整形のCMが載っている。
個人に直接訴えかけるのでタクシー車内はCM効果が高い
2004年は上海に美容整形医院が相次いで開業した。中でも美容整形で有名な韓国の3病院と地元の瑞金医院が合弁設立した上海瑞麗整形美容医院が瑞金医院盧湾分院内に開業、美容整形では最先端とのイメージが強い「韓国式」を強調し、上海の富裕層の女性をターゲットに展開している。韓国側の3病院は、BK整形外科医院、美麗皮膚医院、YE歯科医院。新合弁医院は、中国では2番目、上海では初めての衛生部、商務部が認可した中韓合弁医院で、韓国側が70%、瑞金が30%をそれぞれ出資した。顧客に多くのスターを抱えるというBK整形外科医院には、毎月上海から1〜2人の顧客が訪れているという。

上海市内には美容整形CMが溢れている
■ 整形美人コンテストも開催
中国でミスコンは花盛りだが、北京において2004年11月に国内では 初めてとなる整形美人コンテスト「人造美女選美大会」が開催され話題になった。
ほかの美人コンテストと違う点は,出場の条件に整形手術を行ったという整形証明と、整形前・後の関連資料提出を求められたことである。この催しには3人の日本人を含む計6人の外国人もエントリーしたという。中国では2004年、美人コンテストに出場したものの、整形していたことが発覚し取り消しを巡る騒ぎがあったばかりで、
今回の企画はこの話題を逆手に取ったものである。

整形美人コンテスト優勝者
こうしたイベント等を通じて美容整形が身近に感じられることにより、安易に手術を求める若い女性が拡大する危険も伴う。コンテストに応募した整形美人の全てが「成功例」だという影の事実は忘れ去られてしまいがちだ。
■ 美容外科医にインタビュー
茨城県上海事務所では、上海で盛美容外科を開業している盛虹明院長にインタビューし、中国の美容整形ブームの実態について率直に語ってもらった。
盛虹明医師は1989年に日本に留学、北里大学医学部、横浜市立大学医学部を経て聖マリアンナ医科大学にて医学博士を取得し、1997年から横浜市立大学医学部形成外科に勤務しており、現在でも客員研究員として籍を置いている。
2004年には中国に戻り、上海市浦東新区の中電大酒店内に盛美容外科を開業した。以下、盛虹明院長の意見を述べる。

盛美容外科の盛虹明院長
上海の現状…昨今の美容整形ブームで,まるで服やバッグを買うかのように顔を変える女性達が増えている。案の定「安かろう、悪かろう」でトラブルが後を絶たない。街中至るところにクリニックができ、老若問わず女性の患者で賑わっている。想像を超えた安さと手軽さで敷居が低く,クリニックは施術を待つ患者でごった返している。日本人と比べて中国人の方が後ろめたさのような感情がないぶん気軽に手術を受けているようだ。しかし誰もが成功するとは限らないのが実情であり、トラブルのほか医療事故、副作用も多い。しかし余り表沙汰にならないのは、本人が秘密で行なう手術なので最後は泣き寝入りするしかないからだ。
カウンセリング…ほとんどの美容整形医院は営利主義に走り、一度来た患者を逃がさないため十分なカウンセリングもせず手術を行なう。医師が分単位で立て続けに手術をすれば,疲れて顧客カルテの検討も冷静な判断も疎かになるのは当然だ。さらに目の次ぎは鼻、口と欲張った手術を引き受けてしまう。まさに薄利多売のビジネスだ。美容整形の分野で一番必要な「十分なカウンセリング」というものが失われている。患者に「全て出来る」ではなく、「これは出来るが、これは出来ない」と、納得してもらう事が本来のカウンセリングである。そしてカウンセリングにより患者の性格、職場環境、コンプレックスなどを探り、最も適した施術を行なうべきだ。手術するだけが能じゃない。例えば、医師が「今のままで十分に美しい」として手術を行なわず、それで本人が精神的に自信を回復すればベストの結果なのだ。
今後の展望…上海の美容整形ブームは2001年頃から始まり、今がピークの時期だ。ただ後2-3年以内には患者からのクレームが限界に達して市民の意識が変化する。政府も次第に放っておけなくなって、この業界の整理に乗り出すだろう。また,これに関連した法令も確立される。結果として、本当のクリニックだけが残り、その他は自然淘汰されることになろう。
盛美容外科について…こう言ってはPRにならないが、はっきり言って私のクリニックの料金は高額だ。それだけにカウンセリングに時間をかけ、手術は最高の設備で最高の技術をもって1日1件しか行なわない。美容整形医師はアートデザインナーみたいなものであり、患者というキャンバスにいかに美しい画像を描けるかということだ。何をどうするのがベストかを熟考し、一部の手術で全体イメージをアップさせることができるのが私のクリニックの特長だ。ツンとした鼻、パッチリ二重瞼とみんな同じ顔にするのではなく、人格を表す顔を造る手術を施している。
盛医師は形成外科のエキスパートであり、最近、5歳のとき硫酸をかけられたという20歳になる女性の体を蘇らせるべく手術を実施した。これは上海電視台(上海テレビ)のニュースでも取り上げられたほどの話題となっている。
盛美容外科の連絡先は電話021-5878-8082、E-mailはsheng_hm2@yahoo.co.jpで日本語対応している。
また,ホームページはhttp://www.shenghm.comである。
■ 人生のドラマが始まる
日本では2002年に米倉涼子主演のTVドラマ「整形美人」がヒットしたことがある。不細工な器量に生まれたひとりの女性が整形によって完全無欠の美人へと生まれ変わり、憧れのモデルとして、華やかに光り輝く人生を歩き始めるというものである。しかし心までは変えることができず、また秘密を持ち続ける不安もある。キレイになりたいというすべての女性の願望を描いたサスペンス・ラブストーリーである。

美しい容貌が今後の人生に繋がるというが
手術が大成功して美女に変身したことがこのドラマの大前提だが、もし手術に失敗した場合はドラマも始まらず悲惨な人生だけが待っていることになる。一度美容整形に失敗すると、これをカバーするために再手術やバランス取る為の他の器官の手術をすることになり、次第にゾンビ的風貌になってしまう。前出の盛医師の話によると、手術失敗後の再手術は医者側のビジネスや勉強のためにはメリット高いが、医学的に見て元に戻る可能性がほとんどなく、盛医師自身は手術を断っているし、これがモラルだという。
一方、上海市内でAHS逸仙会病院など6ケ所の病院を経営している河村靖郎医師によると、「美容整形は病気を治すという本来の目的の医学とは全く次元の異なる医学だ」と指摘している。また「形成外科医が美容整形を目指すのはビジネスとしての要素が強く、国際的にビジネスが活況を呈している上海に美容整形が集まるのは当然の結果」だという。「しかし水面下では病院と患者との間でクレーム問題が多発しているのが現状であり、日系の美容整形医院が上海に進出していないのは、こうした摩擦が避けられないからだ」と述べている。河村医師は在上海日本人に対し、美容整形以外の医療全般を幅広く提供しており、また2004年6月にオープンしたAHS健診クリニックは、上海に居ながら日本と同じレベルの健康診断が迅速に受けられるというもので、日本人社会からの信頼も厚い。
AHS逸仙会のホームページはhttp://www.shanghai.or.jp/ahs/、またEmailはahshp@uninet.com.cnにて日本語対応している。

美容整形について語る河村靖郎医師
美しいと、そうでないとの違いはその時代の社会環境において美のスタンダードがどこにあるかで変わる。皆が美を追求したらスタンダードは上昇し続け、美容整形は止まることを知らず、整形技術は進化し続けるかもしれない。その犠牲となっているのが今の上海の美容整形ブームに踊らされている患者だと言っても過言ではないだろう。
参考: 中国情報局新聞、Super City、NNA、My City、盛美容外科・盛虹明院長、AHS逸仙会病院・河村靖郎医師