トピックス・イン上海

両岸三通問題  3/2005 


 台湾の発表によると,2004年の中国本土と台湾との貿易額は616.4億米ドルに達し、前年比33.1%アップした。これは台湾の総貿易額の18%を占めている。こうしたことからも、中国と台湾は貿易友好国であることが判るし、台湾からの莫大な投資が今の中国の活性化を支えている一因であるのは間違いない。しかしながら,過去の台湾独立問題がずっと尾を引いており、両岸三通問題は今なお解決しておらず、そればかりか反国家分裂法を採択するなど、中国は強い姿勢を崩していない。

  
左3人組が上海人で、右2人組が台湾人だというが、見分けはつきにくい

三通とは

 両岸三通(三通)とは中国と台湾間の直接の往来を目指すもので、通郵(通信)・通航(航空)・通商(ビジネス)開放のことである。1979年にこの三通問題が提起されてから現在まですでに27年が経過しているが、まだ三通のうち通航だけは実現していない。

 台湾国民は両岸の三通がまだ実現していないことに対し極めて強い不満を持っている。1999年以降、海峡両岸の民間交流と経済貿易活動が頻繁に行われ、中国側の発表では2004年中国本土と台湾間の両岸貿易額は前年比34.2%増となる783億米ドルを記録し、初めて700億米ドルの大台を突破した。また、台湾系企業による契約ベースでの本土への投資額は前年比8.7%増となる93.6億米ドルに達している。さらに,帰省や観光で大陸を訪れる台湾人の人数は毎年延べ300万人を上回っている。直接通航できないために要する旅客輸送と貨物輸送の負担は、年間に新台幣1000億元以上に達するとされ、無駄になる中継時間も計り知れないものがある。三通が開放されないため,多くの台湾企業がコスト高に苦しんでいるとされる。

中台領土問題が障害に

 問題の根底には台湾は中国の一部だと主張する中国側の強い意向がある。両岸三通政策に関して台湾側が中国側に対し開放を促しているものの、中国側は「これは選挙向けだけの言動だ」として取り上げず、両岸協議の再開は台湾当局が「一つの中国」原則を受け入れさえすれば、いつでも可能であるとする従来の立場を繰り返していた。また、中国側の台湾総統選挙への干渉で、結果的に好ましくない候補者が当選したことに関連し、中国は台湾の言動に対して徹底的に冷ややかなな対応を取り続けた。その一方で、圧力を米ワシントン経由で間接的に台北へ伝達するというやり方を選んだ。2003年7月と2004年2月の2度にわたり国務院台湾弁公室(国台弁)の高官が訪米し、中国の台湾総統選挙、公民投票における立場と懸念を表明し、暗に台湾へ圧力をかけるよう要求したと報じられた事件はその典型的な例である。国台弁は「両岸三通政策白書」を公布し、三通の実現がもたらす中台双方の利益を強調し、両岸協議を妨害しているのは台湾当局であると批判した。

中台直行便が就航

 このような中、2005年の春節(旧正月)に初めて中国大陸と台湾の直行チャーター便が就航した。これは大陸で働く台湾ビジネスマンとその家族の旧正月の里帰り専用という名目の直行便である。やや遠回りながら、中華人民共和国の建国以来、56年間ぶりにノンストップで相互に乗り入れた意義は大きいといえる。春節を挟んだ約20日間で、中台両岸の航空会社12社・48便が運んだ旅客は10,767人。内訳は大陸組が5,133人、台湾組が5,634人とほぼ半分ずつだった。今回の直行チャーター便の成功を受け、人民日報は「両岸三通まであと幾年」と大見出しを掲げ、恒常的な直行便運航に期待を膨らませた。新華社も早急な直行本格化を願う台湾乗客の声を伝えるなど、にわかに三通熱が高まっている。三通問題のうち、台湾海峡を越える直行便の実現が最後の課題であることは前述のとおりである。中国政府は「今回のチャーター便の実現は時限的な商業行為に過ぎず、これが両岸直接通航に結びつくことはなく、また政治面の交渉回復を意味するものではない」とコメントしているものの、定期便実現への期待が膨らんできていることは確かである。

中台間を運行するチャーター便

反国家分裂法

 第10期全国人民代表大会(全人代)常務委員会第13回会議は2004年12月29日、「反国家分裂法」(草案)の審議を全人代第3回会議に付託することを全会一致で可決した。また全国人民代表大会(全人代)常務委員会の呉邦国委員長は2月29日、第10期全人代常務委員会第13回会議閉幕式で演説を行い、「反国家分裂法は国家の政治活動における重要な出来事だ。反国家分裂法の立法作業をやり遂げることは現在の全人代と常務委員会にとって重要任務だ」と話した。「反国家分裂法の草案は、各方面の意見を幅広く聴取して検討、作成された。草案は憲法を根拠に、「平和統一、1国2制度」など中央政府による台湾関連活動の政策方針の徹底、「台湾独立」を掲げる分裂勢力による国家分裂活動への反対と抑制、祖国平和統一の促進をしっかりと中心に据え、最大の誠意と最大の努力を尽くして平和統一を実現させるという、われわれの一貫した主張を体現している。同時に、国家主権と領土保全を守り、「台湾独立」を掲げる分裂勢力がいかなる名目やいかなる形で台湾を中国から分割させることも決して許さないという、全中国人の共通の意志と断固とした決心を示している。」としている。

胡主席の全権掌握は現地紙第1面で伝えられた
5/14付けShanghai Dailyより

 北京で開会した中国の第10期全国人民代表大会(全人代=国会)第3回会議は3月13日、胡錦濤国家主席を国家軍事委員会主席に選出した。これにより、江氏が保持していた党、国家の主要ポストは、すべて胡氏に引き継がれたことになる。胡氏はこれで名実ともに「党・国家・軍」全てのトップに就任した。その中で全人代は3月14日、台湾独立阻止と平和統一を目的にした「反国家分裂法案」をほぼ全会一致で採択して閉幕した。温家宝首相は閉会後の会見で、「これは台湾独立勢力にのみ反対するものであり、平和的統一の法である。また台湾人民に対するものでなく、戦争法でもない」と強調した。

 また米国が懸念を示している点については、この法は両岸関係の安定した発展の維持に寄与する平和統一の法律であり、さらには中米関係の安定した発展にも寄与するものだとしている。

台湾では反国家分裂法に抗議デモ

 中国が台湾独立阻止に向けて採択をめざす「反国家分裂法」案に抗議する大規模デモが3月6日、台湾南部の高雄市で繰り広げられた。主催者によると5万人以上が参加した。前総統の李登輝氏も駆けつけ、参加者を前に、「『反国家分裂法』制定は台湾への武力攻撃のための言い訳に過ぎない」と中国側の姿勢を厳しく批判したという。同日の中央通信によると、台連は「反国家分裂法」に台湾が法的に対抗する「反併呑法」案を立法院(国会)に提出する方針を決めた。同法案は台湾本島や金門、馬祖島など、台湾が実効支配する「領土」を定め、中国に隷属していない台湾の現状を台湾人民の同意なしに、平和的な方法以外で変更できない、と規定する。対中抗議を“法律戦”に持ちこむ構えである。一方、与党の民主進歩党(民進党)も同日、台北市で「反併呑」を訴える集会を開き、台連のデモに呼応した。しかし、陳総統は「対中配慮」(関係筋)を理由に集会に参加しなかった。 また、野党の中国国民党や親民党の関係者も、この日の対中抗議活動への公式な参加を見送るなど、台湾政界内部には微妙な温度差が広がっている。

「チャイナの特需が終わる日」の書籍から

 大前研一氏著の「チャイナの特需が終わる日」によると、台湾問題を次のように指摘し、両国の関係は依然変わらない様相を呈し続けるだろうと記述している。

 『中国国家にとって台湾問題は身体にできる発疹みたいなもので,身体のコンディションが悪くなると表面に現れる。つまり国内不満を逸らせる標的として台湾問題が随時浮上している。台湾問題は、国内不満のガス抜きとしての効果がある。現在、中国にとって最大の投資国は台湾であり、100万人以上の台湾人が中国で働いている。中台相互にとって切っても切れないパートナー同士の関係になっているのである。中国はそれを判った上で台湾を問題にしているのである。中国としては台湾と事を起すつもりはないし、一方台湾も中国を市場として重視しながらも中国の帰属領土になるつもりはない。そうした意味では中台関係が大きな進展を見せる可能性は少なく、また中台関係が悪化して戦争が勃発する可能性も少ない。』

台北観光夜市-上海

 2004年5月に台北観光夜市が上海市古北地区にオープンした。古北地区は台湾人が多く暮らす地区として知られている。この夜市は、台湾企業の呼びかけのもと、台湾の小吃店が同じブロックに集結し、台湾の夜市を上海に再現したもので、新しい観光スポットとなり活況を呈していた。長さ200m程のアーケード内の両脇に台湾の伝統的な屋台メニューの店が70軒ほど並んでいた。この屋台村を管理している台湾系企業の上海夜市餐飲顧問有限会社では、2005年末までに上海市内に3箇所、2008年までには中国全国に20箇所の屋台村を作ることを目標にしていたのだが、次第に客が離れていき、今では入り口付近の数店が細々と営業しているだけで、台北観光夜市の灯はまさに消えようとしている。上海における屋台はプアーなイメージがあり、現在の高級嗜好の風潮にそぐわなかったようだ。ただ、上海市民にとって「台湾は敵」という意識でボイコットしたのではないことは確かだ。

  
賑わった台北観光夜市だが…

今は閑古鳥が鳴いている

クリントンが台湾訪問

 米国のビル・クリントン前大統領が、自著「マイライフ」の売り込みのため2月27日、台湾を訪問し、陳水扁総統との夕食会に臨んだ。アメリカから中国への大統領訪問はあり得るが、台湾に現職の米政府職員が公式訪問することは、現在の米中関係からみてほとんど不可能となっている。

 クリントン氏の訪台は、大統領経験者としては初めてで、中国政府はこの事態を重く見ており、今後また波紋を起す気配を見せている。

マイライフは世界的ベストセラーだ

 クリントン前大統領は、大統領在任中の1996年、中国が台湾沖でミサイルの発射演習を行った際に2隻の空母を派遣して事態の収拾にあたったことから台湾での支持は厚い。今回の訪台は著書のPRとしているが、陳水扁総統との夕食会での会談の詳しい内容については、安全保障面でアメリカと台湾の関係強化を警戒する中国の立場もあり明らかにされていない。

国共対立を止揚する「大中華圏」構想

 中国は、すぐに台湾を併合できるとは考えていないだろうというのが大方の見方である。台湾に武力進攻したら、中国が築きつつある国際的な信用が失われてしまう。中国側はこれまで、社会主義の中国大陸と資本主義の台湾という二つの制度を持った一つの中国(一国両制)を作ることを、台湾問題の原則としてきた。しかし,そこでいう「一つの中国」とは中華人民共和国を意味していたため、台湾側の同意を得られなかった。

 最近では,「一つの中国」とは中華人民共和国ではなく「大中華圏」というようなもっと大きな概念を指す、という方針に転換しつつあるようだ。また台湾側が主張してきた「一国二府」という言い方もある。これは、一つの中国に、北京と台北という二つの政府があってもよい、という考え方だ。

 これらはつまり、実質的には現状維持ということである。現在では既に、たくさんの台湾企業が福建省など大陸側に進出しており、経済的にも現状維持が好ましい状態になっている。

 最近では、フランス革命以来人類の頭を支配していた「国家」へのこだわりが薄れ、欧州統合など、国家の範囲を超えた思考が世界中に広がりつつある。中国も、中華人民共和国という一つの国家にこだわるより、「中国人」「中華経済圏」といった、大きな枠組みで考えた方が、未来を先取りしているといえるかもしれない。

参考:中国巨龍、NNA、中国情報局、時事速報、人民網、Nikkei NetShanghai Daily


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