権限移譲の光と影について
〜農地法に基づく許可事務の場合〜
茨城県鹿行農林事務所企画調整課 専門監 塙 由夫
 茨城県知事の権限に属する事務の処理の特例に関する条例が,平成12年4月1日から施行されました。条例施行から10年を経過し、事務の権限移譲が一定程度進んできた現段階で,その成果を確認しておくことは,若干の意義があると思われます。

 本稿で取り上げるのは,条例第2条の表14の8に掲げられているもので,筆者が担当している農地法に基づく許可事務の権限移譲に限ってであり,これをすべての権限移譲事務に普遍化させるには限界があることはお断りしておかなければなりません。しかし,その傾向を伺い知ることはできるのではないでしょうか。

 なお,農地法の許可事務で権限移譲がなされているのは次のとおりです。(H22.3現在)
○農地の権利移転、権利の設定(農地法第3条)に対する許可事務
  :全市町村へ
○農地の転用(農地法第4条),転用を伴う農地の権利移転,権利設定(農地法第5条)に対する許可事務
  :水戸市ほか16市町村へ
1 権限移譲の成果について
ア 権限移譲市が事務に主体的に取り組み,事務処理能力を高めていること
 権限移譲前の市町村農業委員会は,知事への意見を決定する機関でありながら,実態は経由機関としての意識が強かったように思います。移譲後は,許可権者として住民への説明責任があることから,申請への対応を自ら考え慎重に判断するようになりました。
 この結果として,市町村の法令解釈の運用等の能力が高まってきています。農林事務所への問い合わせ事項の内容が高度化してきたのはその証左でもあります。

イ 農林事務所の事務処理の軽減が図られたこと
 権限移譲の進展に伴い,農林事務所が処理する許可件数,市町村農業委員会からの電話等での問い合わせ件数は,格段に減少してきています。
2 権限移譲のマイナス面について
ア 法令の運用等で統一性が欠如してきていること
 農地法第3条,4条,5条とも法令により許可基準が定められています。許可権者にとって許可基準は同一でも,申請案件への適用にあたっては解釈や裁量で差違が生じることが考えられます。権限移譲前は,解釈を行う県庁と事務を執行・運用する出先機関との間で調整を行うことで済みましたが,移譲後は許可権者が多くなったことで,調整が困難となってきています。

イ 県の事務処理能力が低下してきていること
 全市町村に権限移譲した農地法第3条に係る許可事務において顕著ですが,県は申請に対する許可事務を長期間行っていないため,許可基準の解釈,運用においてその能力を低下させているおそれがあります。農地法第3条許可事務は地方自治法第2条第9項に定められた法定受託事務であり,本来国が果たすべき役割に係るものですが,都道府県が処理するものとされているため,県は許可に関して市町村に助言をしなければならない立場にあることから,能力が低下しているとしたら,見過ごすことはできません。
3 課題への対応について
 権限移譲のマイナス面を修正するにはどうすべきでしょうか。
 ここでは,敢えて一つに絞り,権限移譲を受ける市町村ではなく,権限移譲を行う県側の組織体制を見直すことをあげたいと思います。現在は,県庁と出先機関との2層構造になっており,解釈と運用が別になっていますが,これを一つに統合します。この統合効果により,事務処理能力が向上し,解釈運用の統一性を図ることができます。ひいては,市町村への効果的な助言に繋がるものと期待されるのです。
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