環境にやさしいエネルギー体系の構築

企画調整課  企画員 綿引 一裕

1 はじめに

 我が国はエネルギーの輸入依存度が高い極めて脆弱な構造を有しており、エネルギー問題は常に安定供給に主眼がおかれ対策が講じられてきましたが、地球温暖化等の地球環境問題の顕在化により、環境に対する負荷の軽減という視点が加わり、近年、エネルギー問題は新たな局面を迎えています。
 そこで、環境の側面から見たエネルギー問題を考察し、環境にやさしいエネルギー体系を構築するためには、地方として何をしなければならないかについて調査研究を行いました。


2 エネルギー需給の現状と今後の動向

(1) 我が国の動向
 我が国の一次エネルギー総供給の推移は、表1のとおりです。供給構成における特徴は、1973年度当時77.4%を占めていた石油が、石油依存度の低減化政策により、1994年度には57.4%までシェアを下げ、その分天然ガスと原子力がシェアを拡大している点にあります。なお、太陽光発電や風力発電等の環境に対する負荷の少ない新エネルギーのシェアは、1973年度0.9%でしたが、1994年度においても1.1%と伸び悩んでいる状況にあります。

 ※一次エネルギー:石油、石炭、天然ガス、水力、原子力、太陽熱など加工されない状態で供給されるものをいいます。


表1 我が国の一次エネルギー供給構造の推移           (単位:原油換算)

年   度1973年度1986年度1992年度1993年度1994年度
一次エネルギー総供給4.14億kl4.35億kl5.41億kl5.48億kl5.77億kl
構成比%石油77.4%56.6%58.2%56.6%57.4%
石炭15.5 18.2 16.1 16.1 16.4
天然ガス1.5 9.8 10.6 10.7 10.8
原子力0.6 9.4 10.0 11.1 11.3
水力4.1 4.6 3.8 4.3 2.9
地熱0.0 0.1 0.1 0.1 0.1
新エネ等0.9 1.2 1.2 1.2 1.1
(資料)総合エネルギー統計

 今後の一次エネルギー総供給の見通しは表2のとおりであり、原子力と天然ガスのシェア拡大により、石油の更なる低減を図ろうとしています。なお、新エネルギーについては、2010年度において3.0%の供給が目標とされています。


表2 一次エネルギー供給の見通し

 1992年度実績2000年度2010年度
実 数構成比%実 数構成比%実 数構成比%
石油3.15億kl58.23.08億kl52.93.03億kl47.7
石炭11,630万t16.113,000万t16.413,400万t15.4
天然ガス4,070万t10.65,300万t12.95,800万t12.8
原子力2,230億kwh10.03,100億kwh12.34,800億kwh16.9
水力790億kwh3.8860億kwh3.41,050億kwh3.7
地熱55万kl0.1100万kl0.2380万kl0.6
新エネルギー等670万kl1.21,210万kl2.01,910万kl3.0
合  計5.41億kl100.05.82億kl100.06.35億kl100.0


(2) 茨城の動向
 本県の1994年における最終エネルギー消費は、13,219石油換算千トンとなっており、我が国全体の3.8%のシェアを占めています。(表3)本県の全国における人口シェアは2.3%(94年)、総生産額シェアは2.1%(93年度)であり、それに比べエネルギー消費のウェイトが相対的に高いのは、鹿島地域における鉄鋼、化学等エネルギー多消費産業の活動によるものです。

 ※最終エネルギー消費:直接消費される一次エネルギーと一次エネルギーの転換により得られる電気、都市ガス、石油製品等の二次エネルギーを合わせたものをいいます。転換ロスのため、一次エネルギー総供給より最終エネルギー消費のほうが小さくなります。


表3 1994年の茨城県における部門別エネルギー消費実績全国対比
                     〈( )は構成比%〉〈単位:1010kcal、石油換算千トン〉
 茨城県全国全国比(%)
産業部門9,331(70.6)174,062(50.0)5.4
 農林水産業195(1.5)11,600 (3.3)1.7
 製造業9,137(69.1)162,462(46.7)5.6
民生部門1,450(11.0)89,777(25.8)1.6
 家庭用904(6.8)48,078(22.4)1.9
 業務用546(4.1)41,699(12.0)1.3
運輸部門2,437(18.4)84,003(24.1)2.9
合  計13,219(100.0)347,842(100.0)3.8
(注)全国の製造業には鉱業、建設業及び非エネルギー(除く化学工業原料)を含む


 本県における今後のエネルギー需要の見通しは表4のとおりであり、2010年には1994年の1.4倍の18,884石油換算千トンになることが予測されています。


表4 茨城県のエネルギー需要見通し
〈部門別〉                                     (1010Kcal、石油換算千トン)
 エネルギー需要量年平均伸び率(%)
1994年2000年2010年2000/19942010/2000
産業部門9,332
10,777 
(9,580)
13,216 
(10,990)
2.4
(0.4)
2.1
(1.4)
農林水産業195227 292 2.62.6
製造業9,137
10,550 
(9,353)
12,924 
(10,698)
2.4
(0.4)
2.1
(1.4)
民生部門1,4501,641 1,939 2.11.7
家庭用9041,068 1,316 2.82.1
業務用546573 623 0.80.8
運輸部門2,4372,794 3,729 2.32.9
合計13,219
15,212 
(14,015)
18,884 
(16,658)
2.4
(1.0)
2.2
(1.7)
  ( )は低成長ケース


3 エネルギー問題が環境に与える影響

 エネルギーは、その生産、転換、最終消費の各段階で環境に負荷をかけており、エネルギーに起因する主な環境問題としては、大気汚染、地球温暖化、酸性化、排熱(ヒートアイランド現象)等を挙げることができます。

■大気汚染
 石油や石炭などの化石燃料の燃焼に伴い生成される汚染物質が排出され、健康問題等を引き起こす環境問題に大気汚染があります。代表的な汚染物質には、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、光化学オキシダント、浮遊粒子状物質等があります。
 硫黄酸化物については、1965年頃は現在の10倍近い濃度が観測され、公害の主要原因物質とされていましたが、燃料中からの脱硫、排煙脱硫装置による除去等により、近年は良好な状況が続いています。
 窒素酸化物については、工場等の固定発生源より自動車の排気ガスが大きく影響しており、大都市地域を中心に厳しい状況で推移しています。

■地球温暖化
 化石燃料の燃焼により生成された二酸化炭素は、太陽光は通過させますが地表からの赤外線を吸収する温室効果を有するため、二酸化炭素の増加に伴い地球は温暖化し、海面の上昇や異常気象の発生、生態系への悪影響などが懸念されています。地球の二酸化炭素濃度は、産業革命以前は270ppm程度でしたが、現在は350ppmを超えていることが判っています。
 1992年の我が国の二酸化炭素排出総量は、二酸化炭素換算で10.8億トンであり、米国、旧ソ連、中国に次いで世界第4位に位置しています。我が国は石油危機を契機に、産業部門を中心にエネルギー効率の改善を図り、世界でもトップクラスの省エネ国となっていますが、二酸化炭素の排出を抑制するためには、エネルギー効率の更なる向上が求められております。


4 環境から見たエネルギー問題における地方の役割

 従来のエネルギー問題は、エネルギー需要の増加にいかに対応するかという安定供給に主眼がおかれ、供給面を中心に国による政策展開が行われてきましたが、地球環境問題が議論されている今日においては、エネルギーの大量消費型社会そのものを変革していくことが求められています。すなわち、エネルギー消費に伴う環境負荷を常に考え、エネルギー需要の増加を必然とするのではなく、需要そのものをコントロールしていくことや、環境に対する負荷を軽減するために、省エネルギーの推進や新エネルギーの導入を図るといった需要面の政策展開が必要となっています。
 地域特性を強く持つ需要面のコントロールを行いつつ、地域の様々な実情に左右される新エネルギーの導入を促進するためには、県民や事業者といった個々のエネルギー需要主体の状況把握を踏まえ、きめ細やかな対応を行うとともに、多くの地域活動主体との協力、連携の仕組みづくりが不可欠です。これらを国が一律的に行うことは困難であり、そこで地方の役割が求められることになります。

(1) ディマンド サイド マネジメント(DSM)
 従来、都市の整備や工業団地の造成等いわゆる開発行為が行われる場合は、最初に開発の規模が設定され、その開発を達成するために必要とされるエネルギー需要の増加は、供給量の拡大により確保するというプロセスにより事業が進められてきました。しかし、環境との両立を目指すためには、考え方の方向転換が必要であり、地域開発のプロセスにDSMを導入することが重要です。
 DSMとは、開発によりエネルギー需要が発生する場合、その需要に対応して供給の拡大を図るのではなく、できる限りエネルギー消費の増大を招かないように需要の発生自体をコントロールすることをいいます。
 たとえば、実施手段としては次のようなことが考えられます。

(2) エネルギー効率の向上
 二酸化炭素排出による地球温暖化を防止するためには、エネルギー効率の向上を図ることが必要です。発電をしながら同時に冷暖房を行うコージェネレーションが近年注目されていますが、その理由はエネルギー効率の高さにあります。電力供給の中心となっている火力発電所の効率は40%程度ですが、コージェネレーションは、電気需要と熱需要の適切な組み合わせが可能な場合には、総合エネルギー効率は70〜80%に達します。
 コージェネレーションは従来から紙パルプ産業などの熱多消費産業で大規模なものが導入されてきましたが、1980年代後半からは業務ビル、病院、ホテル等の施設でも小規模システムが導入されるようになりました。
 また、エネルギー効率の向上を図る手段としては、地域熱供給があります。地域熱供給は、地域の住宅やビルに蒸気、温水、冷水を熱供給プラントから集中的に供給し冷暖房を行うシステムですが、近年はごみ清掃工場や変電所の廃熱、河川水や下水の熱など今までは利用されずに大気中に捨てられてきたエネルギーを活用するシステムが登場しています。
 コージェネレーションや地域熱供給は全てのケースに導入できるわけではありませんが、環境にやさしいエネルギー体系を構築するためには、用途にあった供給のマッチングを地方がコントロールし、エネルギー効率の向上を図ることが必要です。

(3) 新エネルギー(小規模分散型技術)の導入
 太陽光発電や風力発電、ごみ発電など新エネルギーあるいは小規模分散型技術といわれるものは、第1次石油ショックの翌年に策定された「サンシャイン計画」を皮切りに技術開発が重ねられ、現在ではかなりのものが実用化されています。当初は、できる限り純国産のエネルギーを確保し、エネルギーの輸入依存度をいくらかでも低減しようという視点で進められていましたが、地球環境問題がクローズアップされている現在においては、これらの技術が環境に対して負荷が少なく、あるいは、エネルギー効率が高いという環境特性の良さに注目が集まっています。
 新エネルギーは規模が小さく導入コストも高いため、広いエリアをカバーするものとはなっていませんが、環境特性の観点から幅広く導入を促進することが必要です。
 このような状況において、地方に求められることは、地域に賦存する利用されていないエネルギー源をできるだけ多く掘り起こして活用し、広域型エネルギーシステムを小規模分散型技術で補完することにより、化石燃料の使用を削減することにあります。

風力発電システム実証試験設備(日立市)

(4) 県民への情報提供
 環境にやさしいエネルギー体系を構築するために、DSMを導入したり、新エネルギーの導入を促進するためには、事業者を含めた県民と地方公共団体が同じテーブルに着き、パートナーシップを持って取り組むことが大切です。
 事業者を含めた県民の理解と協力を得るためには、地方公共団体がこれらの情報を十分に提供できる体制を整備することが必要であり、環境にやさしいエネルギー体系を構築するための様々な情報をわかりやすく提供し、県民と情報を共有化することが、地域におけるコンセンサス形成の第1歩といえます。
 以上の4つの役割をまとめたものが図1です。高いエネルギー効率を有した環境配慮型の地域を形成するためには、産業・民生・運輸の各部門と地方公共団体が連携し、それぞれの主体がパートナーシップを持って各分野から少しずつ環境にやさしいエネルギー体系を構築し、それを積み重ねていくことが重要です。





戻る