わたしたちの県議会 茨城県議会

平成19年第3回定例会で可決された意見書

《意見書》


中小企業の事業承継円滑化のための税制措置等を求める意見書

 我が国の企業数の9割以上を占める中小企業は、地域の雇用を維持・創出するとともに、技術・ノウハウの伝承と創造、競争力の確保・強化、地域共同体の文化・伝統の保持などにおいて、多様かつ重要な経済的・社会的役割を担っている。

 こうした中、中小企業経営者の高齢化の進展に伴う事業承継が大きな問題となっている。地域の中小企業が、事業を承継する段階で発生する事業用資産に対する重い相続税の課税や、民法の遺留分などの問題により、やむなく事業存続をあきらめることになれば、地域の活力が削がれ地域経済の衰退を招くとともに、わが国の成長発展に大きな影響を与えることが危倶される。

こうしたことから、国におかれては、中小企業における事業承継の円滑化を図るために、下記の事項を早急に実現することを強く要望する。

  1. 非上場株式等の事業用資産に係る相続税は5年程度の一定期間の事業継続等を前提に非課税とすべきであり、事業を承継する者の相続税負担の減免を図る包括的な事業承継税制を確立すること。
  2. 取引相場のない株式については、円滑な事業承継を可能とする評価方法の見直しを行うこと。
  3. 民法の遺留分制度などについて、事業承継の際に、相続人当事者の合意を前提としつつ、経営権や事業用資産を後継者に集中できるよう制度の改善を図ること。
  4. その他、事業承継時における金融面での支援、廃業と開業のマッチング支援等を行うための事業承継関連予算の大幅な拡充など事業承継円滑化のための総合的な対策を講じること。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

割賦販売怯の改正を求める意見書

 クレジット契約は、代金後払いで商品が購入できる利便性により消費者に広く普及している一方で、強引・悪質な販売方法と結びつくと高額かつ深刻な被害を引き起こす危険な道具にもなるものである。

 現在、クレジット会社の与信審査の甘さから、年金暮らしの高齢者に対し、支払能力を超えるリフオーム工事、呉服等の次々販売が繰り返されたり、年齢・性別を問わず、クレジット契約を悪用したマルチ商怯・内職商法その他の詐欺的商法の被害が絶えないところである。

 経済産業省の産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会は、このように深刻なクレジット被害を防止するため、平成19年2月から、クレジット被害の防止と取引適正化に向けて割賦販売法の改正に関する審議を進めており、本年秋には最終報告をとりまとめる予定である。今回の改正においては、消費者に対し、安心・安全なクレジット契約が提供されるために、クレジット被害の防止と取引適正化を実現する法制度が必要である。

 よって、国におかれては、法改正に当たって次の事項を実現するよう強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

  1. クレジット会社が、顧客の支払能力を超えるクレジット契約を提供しないように、具体的な与信基準を伴う実効性ある規制を行うこと。
  2. クレジット会社には、悪質販売行為等にクレジット契約を提供しないように、加盟店を調査する義務だけでなく、販売契約が無効・取消・解除であるときは、既払金の返還義務を含むクレジット会社の共同責任を規定すること。
  3. 1〜2回払いのクレジット契約を適用対象に含め、指定商品制を廃止することにより、原則としてすべてのクレジット契約を適用対象とすること。
  4. 個品方式のクレジット事業者について、登録制を設け、契約書面交付義務及びクーリング・オフ制度を規定すること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


医療における控除対象外消費税を解消することを求める意見書

 消費税は本来、「最終消費者が負担し、それを事業者が預かって納める」ものであるが、社会保険診療報酬に対する消費税は非課税とされているため、医療機関の仕入れに係る消費税額(医薬品・医療材料・医療機器等の消費税額、病院用建物等の取得や業務委託に係る消費税額など)のうち、社会保険診療報酬に対応する部分は仕入税額控除が適用されず医療機関の負担となっている。このような控除されない消費税を「控除対象外消費税」という。

 控除対象外消費税に対しては、平成元年の消費税導入時と平成9年の消費税率引き上げ時に、診療報酬に「補填」の上乗せが行なわれ、現在の上乗せ合計1.53%をもって医療機関をめぐる消費税の問題は解決済みとされてきた。

 しかし、その後の診療報酬改定で、項目が包括化されたりマイナス改定されるなどして上乗せが暖昧になっており、補填されていないと考えるべきものが多数ある。

 医療機器、病院用建物等の取得の際に負担する控除対象外消費税は多額となり、これが医業経営の安定、病院施設・設備の近代化の隘路となっている。さらにこの負担によって地域の医療機関が破綻する懸念も高まってきており、地域医療の崩壊が危倶されている。

 よって、国においては、今後、消費税を含む税体系の見直しが行われる場合には、社会保険診療報酬等の消費税非課税措置についても、吹のとおり格段の措置を講ずるよう強く要請する。

  1. 社会保険診療報酬等に対する消費税の非課税制度をゼロ税率ないし軽減税率による課税制度に改めること。
  2. 社会保険診療報酬等に対する消費税の非課税制度をゼロ税率ないし軽減税率による課税制度に改めるまでの緊急措置として、医療機器、病院用建物等の消費税課税仕入対象資産について、税額控除または特別償却を認める措置を創設すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


株式会社コムスンの不正行為対策に関する意見書

 今般のコムスンの不正行為は、介護サービスを受けている方々やそのご家族に対し大きな不安をもたらしたほか、介護サービス事業者や介護保険制度に対する県民の信頼を大きく揺るがすこととなった。

 今回の事件では、処分を受ける直前に廃止届を提出するという「処分逃れ」など現行の介護保険法では想定していない事業所の行為が特に問題となった。また、架空の介護職員を記載して事業所の指定申請が行われたが、その背景には、介護職員の十分な確保が困難な状況にあることも影響していると考えられる。

 今後、県民が安心して介護サービスを利用するためには、こうした事態が再発しないよう、利用者の立場に立った具体的な対策の充実が不可欠である。

 そこで、国においては、下記事項について、早急に実施するよう強く要望する。

  1. コムスン事業所の利用者について、介護サービスの継続性が確保されるよう、コムスンに対し新たな事業者ヘの円滑な移行について引き続き指導すること。
  2. 今回明らかとなった、指定取消処分を回避するための「廃止届の提出」や、資本的に系列関係にある法人であっても、別法人であれば連座制が適用されない仕組みなどについて見直し、不適切な事業者の排除に向けた法整備を行うこと。
  3. 介護保険制度を担う介護職員の確保が厳しい現状を踏まえ、介護職員の労働実態を把握のうえ、低賃金、労働環境の改善など処遇の改善方策を講ずること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


小規模農家にも配慮した構造改革の推進に関する意見書

 国は、WTO農業交渉による国際規律の強化に対応するとともに、土地利用型農業の構造改革を加速化するため、平成19年度から助成の対象を認定農業者等の担い手に限定した品目横断的経営安定対策を導入した。

 本県でも構造改革が遅れている土地利用型農業における担い手の確保・育成は極めて重要な課題であると認識しているが、これまで麦・大豆の生産者すべてに助成されていたものを、新対策では経営規模などの条件を加えた担い手に絞ったことで、「小規模農家の切り捨て」と多くの農家に思われたことや、担い手である農家にとっても助成額はほぼ従来どおりであるにもかかわらず、手続きが複雑かつ煩雑であって、有利な制度と映っていないこと、さらには大幅な米価下落が続く中で、このままでは農家経営や農村社会が崩壊するおそれがあることなどから、これまでの農政は多くの農家の理解を得られていないことは明白である。

 ついては、やる気のある中小農家への支援や、景気回復が未だ実感できない地方経済や農村社会が元気になる施策の充実など、地方の実情に合った構造改革の推進について、特段の御配慮をお願いする。

 また、すべての農家に新対策をわかりやすく説明して小規模農家の不安や誤解を取り除くとともに、担い手に対する助成内容の充実や加入申請手続きの簡素化、助成金の早期支払いについても強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


教育予算の拡充を求める意見書

 子どもたちに豊かな教育を保障することは、社会の基盤作りにとってきわめて重要なことである。

 現在、多くの都道府県で、児童生徒の実態に応じ、きめ細かな対応ができるようにするために、少人数教育が実施され、保護者や子どもたちから大変有益であるとされている。

 しかし、厳しい地方財政の状況や地方交付税削減の影響などから、自治体独自の少人数教育を推進することや学校施設整備などには限界がある。

 教育は未来への先行投資であり、子どもたちがどこに生まれ育ったとしても、ひとしく良質な教育が受けられるようにする必要がある。よって、政府においては、教育予算を国全体として、しっかりと確保・充実させるため、次の事項を実現されるよう、強く要望する。

  1. きめ細かい教育の実現のために、第8次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画を策定すること。
  2. 義務教育費国庫負担制度を堅持すること。
  3. 学校施設整備費、就学援助・奨学金など教育予算の充実のため、地方交付税を含む国の予算を拡充すること。
  4. 教職員の人材確保のため、教職員給与の財源を確保・充実すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。



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