平成30年第2回定例会で可決された意見書・決議・請願

《意見書・決議》


「原子力研究開発」に関する意見書

 わが茨城県東海村に「原子の火」が灯って以来,東海村及び大洗町を中心として,原子力研究開発の歴史は深く刻まれ,本県はその発展への期待に責務を果たし大きな貢献を重ねてきたところである。
 この間,1997年の動燃東海事業所火災爆発事故や,1999年のJCO事故,2017年の日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターにおける被曝事故等も経験したが,真摯な取り組みにより,それらの困難も無事乗り切り,今日に至っている。
 一方で,国内の原子力関係施設を見たとき,その老朽化は一段と進み,建設から50年を経過するものも全体の7割近くにのぼり,その9割はわが茨城県に存在する現状にある。
 また,近年の原子力研究開発に係る国家予算額は十分確保されず,施設の環境整備等も不十分の現状を見るとき,国策と理解して原子力を受け入れた本県の先人たちに複雑な思いを馳せる次第である。
 本県に本社を持つ日本原子力研究開発機構を中心として,イノベーション立県をめざし原子力分野においても懸命な努力を続けるわが県であるが,先の福島第一原子力発電所事故以来,原子力エネルギー政策に対して県民の多くが不透明感や不信感を抱いていることも事実である。
 本県がこれからも国策としての原子力行政に理解を深め支えていくためにも,今こそ国全体での基本方針の確認はもとより,取組姿勢の明確化,加えて各種の原子力環境整備はもとより,関係人材の育成,地域の振興のための必要予算の確保に努められたい。
 具体には,別記の事項に対し,特段の配意を求めるものである。

別記

  1. 国の原子力政策について
    1.  エネルギー安全保障,地球温暖化,国際情勢等を踏まえ,我が国における核燃料サイクルの位置づけや必要性の明確化を図ること。
    2.  高速炉開発方針の具体化に当たっては,核燃料サイクル政策における意義や本県に立地する「常陽」の位置づけを明確化すること。
    3.  東海再処理施設に貯蔵されている高レベル放射性廃液の固化・安定化処理を速やかに行うとともに,ガラス固化体の最終処分及び低レベル放射性廃棄物の埋設処分にむけた取組みを確実に進めること。
    4.  今後の原子力政策の立案に当たっては,立地地域との対話や情報共有を積極的に行うとともに,政策の現場である立地地域の意見を施策に反映させること。あわせて,地域振興策の検討も行うこと。
  2. 国の原子力に対する安全規制について
    1.  原子力利用においては,科学的根拠に基づく公平・公正な規制を行うとともに,国民の信頼を得るための取組みも積極的に行う必要がある。原子力規制委員会は,規制基準適合性審査に当たり,科学的根拠に立脚した公正な審査を行うとともに,原子力施設の安全性の確認を遅滞なく行うこと。
    2.  原子力規制委員会は,独立性にこだわり「孤立」することがないよう,一方的な情報発信だけでなく,立地自治体等の関係者や事業者,関係省庁や専門家など,原子力利用における関係者との対話を重視し,組織としての透明性の確保と信頼性の向上に努めること。
    3.  安全や規制についての考え方を正確かつ広く普及していくため,立地自治体や地域住民はもとより,広く国民・県民に対して,丁寧な説明・発信を行うこと。
  3. 原子力研究施設の整備と人材育成について
    1.  着実な原子力研究開発の推進や廃止措置を含む新たな原子力技術の開発等の為には,計画的かつ着実な原子力人材の育成・確保が肝要であることから,原子力政策の将来性を明確にするとともに,原子力人材育成・確保に係る取組を強化すること。
    2.  原子力の安全性向上に向けた研究や原子力発電所の運転管理並びに今後の廃炉等に必要な原子力人材の確保・育成を図るため,試験研究炉の早期運転再開に向けた取組みを強化するとともに,安全研究や材料照射研究を担う新たな照射炉の建設に向けた検討を加速すること。また,新たな照射炉は本県に設置すること。
    3.  原子力や量子工学等に関する幅広い研究や人材育成の拠点となり得る大学等の教育施設を本県に設置すること。
    4.  施設の廃止措置について,日本原子力研究開発機構では施設中長期計画に基づき施設の集約化・重点化等を実施することとしており,大規模な施設の廃止措置も計画されている。特に再処理施設は約70年,約1兆円の長期・大規模プロジェクトであり,安全最優先に継続的・安定的に廃止措置を推進するためには,予算・人材の確保が必須であることから,国が責任を持って継続的かつ確実に確保すること。
    5.  再処理施設をはじめとする大規模施設の廃止措置は,遠隔解体,放射線計測など多岐にわたる高度な技術や,プロジェクト管理から現場の汚染管理まで様々な能力を有した多様な人材が必要となる。
       安全かつ着実な廃止措置の推進には,事業者,メーカー,現場技術を有する地元企業がそれぞれの強みを生かしながら相互協力し,長期間に亘る技術と人材の安定的な育成・確保を図ることが重要である。このため,事業者,メーカー,技術力を有する地元企業が,専門的な技術を蓄積するとともに中長期的な計画に基づき人材の育成・確保ができるスキームを構築すること。
    6.  本県の医師不足は深刻な状況であり「医師不足緊急対策行動宣言」を行い,県を挙げて様々な取り組みを行っている。また,現在,がんで約34万人が亡くなっている現状から,がん対策は喫緊の課題である。原子炉や放射線を活用した次世代のがん治療を確立させるとともに,本県の医師不足対策として,放射線を活用した次世代がん治療や核医学(テクネチウムの国産化)の拠点となる放射線医療等に関する中核施設を原子力研究開発の拠点である本県に設置すること。あわせて,本県には多種多様な核種を用いる研究開発施設が多数立地していることから,上記施設を緊急被ばく医療の拠点としても活用できるよう整備すること。
  4. 立地地域対策について
    1.  本県は長年にわたり,原子力研究開発の拠点として多種多様な施設を受け入れるとともに共存してきたが,福島第一原子力発電所事故以降の長期停止や「再処理施設」「試験研究炉」等の廃止措置への移行により,地元経済・雇用に大きな影響が生じている。
       我が国の原子力研究開発の中核拠点として,長年にわたり一貫して原子力の研究開発に協力してきた本県立地地域に対して,実情に応じた経済振興や雇用確保のための具体的施策を講ずるなど,持続的な発展が可能となる取組みを行うことを強く求める。
    2.  エネルギー政策における核燃料サイクルの意義や環境問題,放射線等について,国民・県民に分かりやすく丁寧に説明するとともに,学校教育や地域における学習の機会の充実を図るなど,原子力利用について正しく理解するための取組みを強化すること。

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「協同労働の協同組合法(仮称)」の速やかな制定を求める意見書

 少子高齢化をはじめとする近年の社会・経済構造の急激な変化は,様々な課題を我が国社会に投げかけており,多様な働き方とそれを支える新たな社会システムの構築が求められている。
 特に,地域の様々な課題に対しては,行政だけではなく,地域住民自らが解決することを目指し,NPOやボランティア団体等の様々な非営利団体が欠かせない存在となっている。
 こうした組織の一つとして,組合に参加する人すべてが協同で出資し,協同で経営し,協同で働く「協同労働の協同組合」が介護・福祉サービスや子育て支援,環境保全等の事業を展開している。
 しかし,我が国では現在この「協同労働の協同組合」に法的根拠がないため,協同組合として契約等ができず,NPO法人等として活動せざるを得ない現状にある。
 欧米各国では,既に労働者協同組合(ワーカーズコープ,ワーカーズコレクティブ)として法制度が整備されており,我が国においても就労の創出や地域の活性化,多様な人材の活躍を図るためにも,早急な法制化が求められているところである。
 よって,国においては,今日の社会の実情を踏まえ,「協同労働の協同組合法(仮称)」を制定するよう,強く要望する。

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ヘルプマークのさらなる普及推進を求める意見書

 義足や人工関節を使用している方,内部障害や難病の方,または妊娠初期の方など外見からは容易に判断が難しいハンディのある方が,周囲に援助や配慮が必要であることを知らせるヘルプマークおよびそのマークを配したヘルプカードについては,平成24年に作成・配布を開始した東京都をはじめ,導入を検討・開始している自治体が増えている。特に昨年7月に,ヘルプマークが日本工業規格(JIS)として制定され,国としての統一的な規格となってからは,その流れが全国へと広がっている。
 このヘルプマークおよびヘルプカードについては,援助や配慮を必要とする方が所持・携帯していることはもちろんのこと,周囲でそのマークを見た人が理解していないと意味を持たないため,今後は,その意味を広く国民全体に周知し,思いやりのある行動をさらに進めていくことが重要となる。
 しかし,国民全体における認知度はいまだ低い状況にある。また公共交通機関へのヘルプマークの導入など課題も浮き彫りになってきているところである。
 よって,国においては,心のバリアフリーであるヘルプマーク及びヘルプカードのさらなる普及推進を図るため,下記の事項について取り組むことを強く求める。

  1. 「心のバリアフリー推進事業」など,自治体が行うヘルプマークおよびヘルプカードの普及や理解促進の取組みに対しての財政的な支援を今後も充実させること。
  2. 関係省庁のホームページや公共広告の活用など,国民へのさらなる情報提供や普及,理解促進を図ること。
  3. 鉄道事業者など自治体を越境している公共交通機関では,ヘルプマーク導入の連携が難しい状況にあるため,今後はスムーズな導入が図れるよう国としての指針を示すこと。

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