森林病害虫等防除事業について
 森林病害虫の防除は,松くい虫をはじめとする森林病害虫を早期にかつ徹底的に駆除し,その蔓延を防止し,森林の保全を目的として実施するものです。
 本県の松くい虫の被害は,昭和53年に74万立方メートルを越える未曾有の被害を記録した当時と比較すると,平成15年度で5,836立方メートルと1%以下に過ぎませんが,気象要因などによって再び被害が増加することが懸念されています。
 このため,森林病害虫等防除法に基づき,海岸部の保安林等を中心として,空中散布や地上散布等の予防散布の実施に,伐倒駆除等の被害木の除去を効果的に組み合わせて,被害の状況や地域の実体に応じて,効率的な被害対策を実施しています。
防除実績(平成11年度〜15年度)
年度 H11 H12 H13 H14 H15
空中散布(ha) 810 749 746 561 544
地上散布(ha) 499 451 444 437 415
伐倒駆除(立方メートル) 935 1,925 1,940 1,732 2,287
被害量の推移
年度 S53 S54 S57 H元 H5
被害量(立方メートル) 741,990 712,460 123,300 12,251 4,162
年度 H11 H12 H13 H14 H15
被害量(立方メートル) 4,577 7,895 7,213 5,433 5,836
松くい虫被害予防のためのヘリコプターによる薬剤空中散布

松枯れのメカニズムについて  「なぜ,松は枯れるのか?」

<昭和45年:松枯れの主犯人マツノザイセンチュウの発見>
 マツノザイセンチュウが発見されたのは,昭和45年のことであり,それ以前においては,松に加害するゾウムシ類やカミキリムシ類の甲虫類を「松くい虫」と総称して,これらの甲虫類が樹皮や材部に孔をあけて食害するのが,松枯れの原因とされていました。
 昭和43年,当時の農林省特別研究として松くい虫の研究がスタートし,被害木の病原微生物の分離培養から線虫が発見されました。この線虫を健全な松の木に接種すると,1〜2週間で樹脂が止まり,やがて針樹がしおれて変色し,約2ヶ月後には枯れてしまう結果となりました。この線虫が,マツノザイセンチュウと命名され,松枯れの原因とされたのです。
 本県では,昭和46年に水戸市の小吹町地内で初めて確認されました。


<マツノザイセンチュウの運び屋はマツノマダラカミキリ>
 松の材に進入する穿孔虫を調査した結果,松くい虫の被害で枯死した材から羽化脱出したマツノマダラカミキリの成虫が,マツノザイセンチュウをもっていることが判明しました。
 マツノマダラカミキリは,1匹あたりで平均15,000頭のマツノザイセンチュウをもっているとされ,媒介虫の役目を果たしています。


<松枯れのメカニズム:マツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリの共生>
1 枯死木からの脱出(6月〜7月中旬)
体内にマツノザイセンチュウを詰めたマツノマダラカミキリは,枯死木から脱出する。
2 後食(6月〜8月)
マツノマダラカミキリは,健全なマツの木の細い枝から枝へ飛び回り,枝の皮を食べる。この摂食行動を「後食」と呼び,このとき食痕からマツノザイセンチュウがマツの体内に進入する。
3 産卵(7月〜8月中旬)
生殖器官が発達したマツノマダラカミキリは,交尾をして7〜8月に産卵する。
産卵場所は,マツノザイセンチュウの進入によって衰弱した松の木が格好の対象となる。
4 マツ枯れの始まり(6月〜9月)
マツノザイセンチュウが松の材内に入ると,樹脂細胞が破壊され,樹脂分泌機能の障害から1〜2週間でマツヤニが出なくなり,ついで水分の蒸散も止まって,普通1ヶ月半から2ヶ月もすると,松葉がしおれて枯れ始める。
5 幼虫の摂食とマツノザイセンチュウの繁殖(8月〜10月)
ふ化したマツノマダラカミキリの幼虫は,内樹皮を摂食して成長する。
マツノザイセンチュウは,材のなかで交尾と産卵を繰り返して増殖する。
8月半ばを過ぎると針葉はしおれて,赤褐色に変わり,10月には木全体が枯れてしまう。
6 蛹室での越冬(11月〜5月)
マツノマダラカミキリの幼虫は,体内に蛹室を作って越冬する。
マツノザイセンチュウは,冬は増殖しないが,2月を過ぎると幼虫のいる蛹室の周囲の材に集まる。
7 蛹化(5月〜6月)
マツノマダラカミキリの幼虫は蛹になる。
8 羽化(6月〜7月)
マツノマダラカミキリの蛹は,羽化して成虫になる。その時マツノザイセンチュウは,成虫の体に移り,体内に入る。そして,ふたたびマツノザイセンチュウを体内に詰めたマツノマダラカミキリは,枯れた松から脱出する。
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