ここから本文です。

更新日:2020年1月7日

平成29年度年報

畜産センター本所

肉用牛研究所

養豚研究所

畜産センター本所 飼養技術研究室

デヒドロエピアンドロステロンを用いた牛体内胚採取成績向上に関する試験研究

期間・区分

平成28~32年度,国補

背景・目的

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は性ホルモンの前駆物質であり,ヒトでは婦人科領域を含め様々な効果が認められている。

そこで,黒毛和種繁殖雌牛におけるDHEA及びその硫酸抱合体であるDHEA-Sと体内胚採取成績の関連性を分析するとともに,DHEAの投与により体内胚採取成績を向上させる方法を検討することで,より効率的な体内胚採取方法を確立する。

方法

発情日の翌日から次の発情日まで,及び過剰排卵処置時の処置開始時から体内胚採取日まで黒毛和種繁殖雌牛各3頭の計6頭の採血を行った。血清を液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計(LC-MS/MS)により血中DHEA,DHEA-Sを測定し,繁殖周期中,過剰排卵処理中のDHEA(-S)の濃度動態を観測した。

成果・評価

DHEA,DHEA-Sともに,周期の中で個体に共通した動態を示す様子がないことから,採血時期を選択しなくて良いことがわかった。また,個体ごとに,高値を示すものは高値で推移し,低値を示すものは低値で推移していることから,個体差が存在しており,繁殖成績に影響を与えることが推定された。さらに,DHEA-SはDHEAより高い値で推移しており,DHEA-Sのほうが指標にしやすいと考えられる。

黒毛和種性選別精液を用いた体内胚採取における受精率向上方法の検討

期間・区分

平成28~31年度,県単

背景・目的

市場価値の高い黒毛和種雄子牛を選択的に生産できる一方で,牛体内胚採取において正常胚率が低い性選別精液を,深部注入器を用いた人工授精技術を活用することにより,効率的に黒毛和種雄子牛を生産する技術の確立を図る。

方法

供試牛に常法にて過剰排卵処置を行い,通常または性選別精液を用いて人工授精を行い,7日後に子宮かん流液にて採胚し,胚の受精率について比較検討した。また,性選別精液を用いた人工授精を行う際に,深部注入器を用いて授精を行い,7日後に子宮かん流液にて採胚し,胚の受精率について比較検討した。

成果・評価

通常精液を通常の人工授精器で授精し採卵する区(対照区)で5頭,雄性選別精液を通常の人工授精器で授精し採卵する区(試験区1)で5頭,雄性選別精液を深部注入器で授精し採卵する区(試験区2)を7頭,計延べ17頭で採卵を実施し,受精率の比較検討を行った。その結果,試験区1で受精率75.0%であったのに対し,深部注入器を使って授精した試験区2では受精率60.3%で受精率が下がった。また,性選別精液を使用して採取した受精卵をセンター飼養ホルスタイン種4頭,黒毛和種1頭に移植したところ,1頭で受胎し(受胎率20%),平成30年2月26日に子牛が生まれた。性別は雄であった。

牛の受精卵移植技術普及定着に関する研究

期間・区分

平成2年度~,県単

背景・目的

黒毛和種の受精卵移植技術の普及定着を図るためには,農家への安定した受精卵の供給と凍結保存受精卵の高い受胎率が必要である。そのために,受精卵の効率的な生産および凍結・融解技術の確立を図る。

方法

当センター飼養の供卵牛及び農家飼養牛(共に黒毛和種)を供試牛として,常法で過剰排卵処理を行い採卵した。凍結方法は,耐凍剤を用いた緩慢冷却法で行った。

成果・評価

センター飼養供卵牛延べ107頭で採卵した結果では,回収卵数824個のうち正常卵数は385個で,平均正常卵数は3.6個,正常卵率は46.7%であった。

農家飼養黒毛和種雌牛延べ38頭では,回収卵数318個のうち正常卵数は210個で,平均正常卵数は5.5個,正常卵率は66.0%であった。農家飼養ホルスタイン種雌牛延べ16頭では,回収卵数41個のうち正常卵数は13個で,平均正常卵数は0.8個,正常卵率は31.7%であった。

県内農家等への受精卵譲渡個数は131個であった。

乳用牛へのファイトケミカル給与による繁殖成績及び乳生産性向上技術の開発に関する試験研究

期間・区分

平成29~33年度,国補

背景・目的

ファイトケミカルの一種であるスルフォラファンは,ブロッコリーの新芽等に多く含まれ,細胞内でのグルタチオン生成を促す作用を持ち,ヒトでの試験では抗酸化能や肝機能を改善させることが報告されている。これを乳用牛に投与することにより,グルタチオンの体内合成を促し,分娩前後における酸化ストレスを低減させることによる繁殖成績向上技術を開発する。

方法

当センターで飼養する乳用牛4頭を供試し,ブロッコリースプラウト(新芽)粉末6g/頭/日を3ヶ月間経口給与した。また,茨城県稲敷市内の圃場からブロッコリー残さを収集し,乳用牛4頭に対し2~6kg/頭/日を2週間給与した。それぞれ給与開始前と給与期間中に血液サンプルを採取し,スルフォラファン及びグルタチオン濃度を測定した。

成果・評価

ブロッコリーの実には0.002%,スプラウトには0.006%,粉末には7%のスルフォラファン前駆体が含まれており,乳用牛の血中スルフォラファン濃度は,給与後一時的(1~2時間)に上昇した後,漸減していくと考えられる。また,細断したブロッコリー残さの嗜好性は良好であった。

高能力乳用牛の効率的な飼養管理技術の開発

期間・区分

平成27年度~,県単

背景・目的

産乳と繁殖性が両立した高能力牛の総合的な飼養管理技術を確立するために,国産自給飼料の利用法,暑熱・酸化ストレスを低減させる周産期の飼養法を確立する。

方法

平成29年度に改定された日本飼養標準を基に飼料設計を見直し,飼料用籾米,トウモロコシサイレージ等自給飼料を活用したTMRが乳質,体調等に及ぼす影響を調査した。また,BCSを考慮した乾物摂取量の調整や,生化学検査を活用した疾病の早期発見・治療を行った。

成果・評価

年間の平均体細胞数は278千/mlであり,前年の328千/mlを下回った。また,6月から10月までの暑熱期の生乳棄却率は13%であり,前年同時期の16%を下回った。

年間の受胎率は36%であり,前年の26%を上回った。また6月から10月の受胎率は24%であり,前年同時期の8%を上回った。

今年度は,暑熱期においても,乳房炎罹患牛の減少,受胎率の改善といった成果がみられている。

飼料用籾米を中心とした国産飼料資源の利活用試験

期間・区分

平成27~30年度,県単

背景・目的

飼料用籾米を中心に,生豆腐粕等の地域飼料資源について,栄養特性を考慮しつつ,安価な飼料化及びその保存技術の確立を図るとともに,家畜への給与方法を確立する。

方法

飼料用米(籾,玄米)と豆腐粕サイレージを混合し,ソフトグレインサイレージ(SGS)を調製した。SGSを乳用育成牛に給与する配合飼料に30%添加し,発育(増体率)・糞性状・濃厚飼料採食量・粗飼料採食量を調査した。

成果・評価

発育(増体率)・糞性状・濃厚飼料摂取量ともに有意差はみられなかった。

また,平成28年度に有意差が認められた粗飼料摂取量は,本年度の試験では有意差は認められなかった。

飼料作物品種選定試験・高能力飼料作物品種選定調査

期間・区分

昭和58年度~,県単

平成23年度~,受託

背景・目的

イタリアンライグラス及び飼料用トウモロコシについて,本県の気候・風土に適合した優良品種を選定し,県奨励品種決定の基礎資料とすることにより,本県の自給粗飼料の生産性向上を図る。

方法

【イタリアンライグラス】

両試験合わせて極早生~早生の10品種について生産力検定を行った。前年度の10月14日に播種し,施肥等は県耕種基準を準用した。

【飼料用トウモロコシ】

両試験合わせてRM(相対熟度)110~125の19品種について,生産力検定を行った。4月下旬に播種した。施肥等は,県耕種基準を準用し,収量調査は黄熟期に行った。

成果・評価

【イタリアンライグラス】

極早生品種の出穂始は,「さちあおば」及び「ハナミワセ」が早い傾向にあった。1番草,2番草の乾物収量の合計は,極早生では「ワセフドウ」及び「あかつき」が多収傾向にあった。早生品種では収量に差は見られなかった。

【飼料用トウモロコシ】

早生品種では,乾物総収量で「P0640」及び「P1063」が,乾物雌穂重で「P1063」が多収傾向にあった。中生品種では,「SH4812」の草丈が高く,「P2105」の乾物総収量および乾物雌穂重で多収傾向にあった。

 

 畜産センター本所 生産技術研究室

家畜ふん堆肥の燃料化による環境負荷低減技術の研究

期間・区分

平成28~31年度,県単

背景・目的

畜産経営の専業化,経営規模の拡大が進んだことにより,家畜排せつ物を地域内のみで利活用することが困難なケースが多く,広域的な流通が必要となったほか,燃料利用など農業以外での新たな利活用方法の検討が求められている。

家畜ふん堆肥を燃料化する上での課題として,水分の低減技術と燃焼灰の利用方法があげられる。そこで本研究では,畜産センター内に設置した無煙小型燃焼機を使用し,燃焼による家畜ふん堆肥の減量化と熱エネルギー回収利用,及び燃焼灰の肥料効果について検討し,環境負荷低減技術の確立を図る。

方法

1.低コスト水分低減化技術の検討(平成28,29年度)

夏・冬期における切り返し等による水分低減化方法とボイラー排熱利用による水分低減化方法を比較し,時期毎の堆肥乾燥効率を検証する。

2.燃焼熱利用システムの構築(平成29~31年度)

小型燃焼機―温水機を用い,燃焼による堆肥の減容化及び燃焼熱を利用した温水循環システムの構築を行う。

3.燃焼灰利用方法の検討(平成30,31年度)

ポット試験により,燃焼灰の肥料効果及び土壌改良効果について検討する。

成果・評価

高さ14cmの板重を用いた2週間の堆積試験において,春季,冬季では,ビニールハウスの利用により,堆肥舎よりも早く水分を低下させることができた。しかし湿度の高い夏季では,夜間の結露などにより同様の結果は得られなかった。

豚舎排水の窒素除去並びにリン回収・利用に関する試験研究

期間・区分

平成27~31年度,国補

背景・目的

本県の霞ケ浦流域では,水質汚濁防止法の排水基準と併せて霞ケ浦水質保全条例により窒素とリンの排水基準が定められており,現在の浄化処理施設での浄化能力では放流することが困難である。

一方,下水道の終末処理場や工場での廃液処理に近年,アナモックス反応による窒素除去法が使われ始めている。また,汚水中のリンをMAP反応により回収する方法が下水道の終末処理場で実用化されているが,これらの技術は,畜産現場での実用化は未だ進んでいない。

本研究では,アナモックス反応とMAP反応を利用した,窒素及びリンの低コスト高除去・回収技術を検討し,両技術を組み合わせた浄化システムの検証を行う。

方法

1.アナモックス反応

2L容器を使用し,実験室規模のアナモックス反応試験を行った。曝気2日間,停止1~2日間を繰り返し,停止後に上澄み液をサンプリングした。分析項目はpH,DO(溶存酸素),無機態窒素等とした。

2.MAP反応

実験室規模でリンの低減効果を検証した。畜産センター養豚研究所の排水処理施設のうち3箇所(原水槽,固液分離液,曝気槽)から汚水を採材し,20Lのポリ容器に16L入れ,曝気し,処理前後の各種成分分析(pH,Mg,P,Ca,無機態窒素)を実施した。

成果・評価

1.アナモックス反応

運転開始1サイクル目では高い窒素除去能(75%)を確認することができたが,運転開始3週目以降は脱窒反応が認められず,アナモックスの活性が落ちてしまった。今後,アナモックスの活性を維持することが課題である。

2.MAP反応

リンの低減率は,固液分離液が最も高く,pHも期間を通じてMAP反応に適した8.0以上を維持することができた。今後は,養豚研究所内に設置したMAP反応槽への採水箇所を,固液分離液とした実証試験を実施し,現場レベルでの検証を進める。

発酵飼料を用いた低タンパク質飼料による豚ふん悪臭低減技術の開発

期間・区分

平成27~29年度,受託

背景・目的

養豚経営における家畜ふん尿処理過程から発生する臭気を低減するには,給与飼料を工夫して悪臭の原因となる物質の少ないふん尿を排せつさせる技術開発が必要である。低タンパク質飼料として,地域の未利用資源を利用した発酵飼料混合低タンパク質飼料及び低タンパク質飼料を豚に給与し,飼料原料の違いによる排せつ物の堆肥化過程における臭気発生状況を解析,飼料組成と臭気発生の関係を明らかにして臭気発生の少ない低タンパク質飼料を開発する。

方法

1.堆肥化方法

低タンパク質飼料給与豚(試験区)及び一般配合飼料給与豚(対照区)の排せつ糞を水分調整してそれぞれチャンバーに堆積した。切り返しは週1回,発酵温度が低下してからは2週間に1回実施した。堆肥化は堆肥の発酵温度が下がるまでとし,約2か月間実施した。

2.測定方法

堆肥は切り返し後,臭気は切り返し前及び翌日に採取した。堆肥は一般成分,BOD等を測定した。臭気成分である硫黄化合物及び低級脂肪酸はガスクロマトグラフィ,アンモニアはマルチガスモニターで連続的に測定した。

成果・評価

対照区に比べ試験区では低級脂肪酸の発生は増える傾向にあったが,アンモニア,硫黄化合物の発生は減る傾向が見られた。また,堆積物中の窒素含量は低タンパク区で低減が認められたため,アンモニアの発生が低減したことが示唆された。

活性汚泥モデルと新規窒素除去反応アナモックスの利用による畜産廃水処理技術の高度化

期間・区分

平成28~30年度,受託

背景・目的

現在,畜産廃水処理施設として活性汚泥処理が広く普及しているが,当該処理だけでは窒素除去が不十分である。活性汚泥処理にアナモックス反応を活用することにより低コストでの窒素除去が可能になる。

このような状況の中,農研機構が行う汚泥処理モデル解析の結果に基づき,パイロットプラントを運転し,その窒素除去効果を検証する。

方法

間欠曝気と連続曝気との窒素除去能を比較した。

間欠曝気区は1時間毎に曝気と停止を繰り返し,連続曝気区は連続的に曝気を実施し,原水の流入を連続的に行った。pH,EC(電気伝導度),TN(全窒素),無機態窒素,BOD(生物化学的酸素要求量),DO等を調査した。

成果・評価

窒素除去能については,全期間を通して連続曝気区より間欠曝気区が優れていた。

また両区ともBODは100mg/L前後まで低下しているが間欠曝気の方が有機物分解能が高い傾向があった。

地鶏のおいしさに関連する遺伝子の解明~奥久慈しゃものおいしさ評価および次世代鶏生産技術に関する研究~

期間・区分

平成28~32年度,国補

背景・目的

奥久慈しゃもの原種鶏は,当センターのみで約30年閉鎖群で維持されているため,鶏群の近交度上昇に伴う近交退化と呼ばれる不良形質の発現が懸念されている。そこで,今後の対策の一つとして,鶏種別系統の外部導入により同近交退化発現を解消し,かつ本来の奥久慈しゃものおいしさを保持した次世代鶏の作出が可能か研究する必要がある。

方法

1.奥久慈しゃも(J・TL)のおいしさ評価

アラキドン酸関連遺伝子を保有した奥久慈しゃも(優良群)と保有していない奥久慈しゃも(不良群)について,食肉成分(水分,脂質,タンパク質,物性),イノシン酸,遊離アミノ酸及び脂肪酸組成の測定及び分析型官能評価により比較した。

2.遺伝子選抜による次世代鶏作出技術の確立

兵庫牧場から導入した831系統軍鶏(外部軍鶏)の雄と現在維持している軍鶏(J系軍鶏)の雌をアラキドン酸関連遺伝子情報を活用し交配させ,次世代鶏の第一世代(G1)を作製した。

成果・評価

1.奥久慈しゃも(J・TL)のおいしさ評価

遊離アミノ酸は優良群で高く,イノシン酸は不良群で高い値を示した。官能評価では実需者が,大きさ,肉色,歯ごたえを重視していることがわかった。

2.遺伝子選抜による次世代鶏作出技術の確立

外部軍鶏299羽,J系統軍鶏751羽について遺伝子の解析を行ったところ,アラキドン酸関連遺伝子を保有していたのはそれぞれ113羽,201羽であった。このうち,外部軍鶏の雄53羽,J系軍鶏の雌141羽を用いてG1を作製した。

 

 肉用牛研究所 改良研究室

牛改良事業

期間・区分

昭和27年度~,県単

背景・目的

優良種雄牛を適正に飼養管理し,高品質な凍結精液の生産と譲渡を行う。

方法

種雄牛及び候補種雄牛を繋養し,精液を採取して凍結した。このうち,検査に合格したものを保存し,希望に応じ県内に譲渡した。

成果・評価

候補種雄牛を含め34,715本を生産し,10,607本を譲渡した。譲渡した精液は,北国関7が6,972本,茂光洋が3,415本,福茂光が80本,北平5が140本であった。

肉用牛広域後代検定推進事業(直接検定)

期間・区分

平成11年度~,県単

背景・目的

肉用牛の改良を図るため,遺伝的能力評価の高い繁殖雌牛へ基幹種雄牛を指定交配し,生産された雄子牛について能力を調査し候補種雄牛に選定する。

方法

公益社団法人全国和牛登録協会で定める産肉能力検定直接法に基づいた。

成果・評価

「百合桜5」および「安茂関」の2頭を検定実施するとともに,「福茂関」「高畑251110」を検定予定牛として導入した。1日平均増体量は,「百合桜5」が1.52kg/日,「安茂関」が1.05kg/日であり,茨城県肉用牛育種改良推進協議会専門部会で審査した結果,2頭とも検定合格とした。

肉用牛広域後代検定推進事業(後代検定)

期間・区分

平成4年度~,県単

背景・目的

直接検定により選抜された候補種雄牛の現場後代検定を実施し,優秀な種雄牛を選抜する。

方法

公益社団法人全国和牛登録協会で定める産肉能力検定(現場後代検定法)に基づいた。

1.検定場所

畜産センター肉用牛研究所,全国農業協同組合連合会茨城県本部肉用牛哺育育成センター,民間農場

2.供試牛頭数

概ね18頭/1種雄牛

3.出荷月齢

去勢:29か月齢未満

雌:32か月齢未満

成果・評価

候補種雄牛「福平9」「茂光洋」の産子について検定を終了した。枝肉重量及び脂肪交雑(BMS)の推定育種価は「福平9」が+60.238kg,+1.107,「茂光洋」が+51.935kg,+2.926であった。茨城県肉用牛育種改良推進協議会において能力評価基準値を満たした「茂光洋」を選抜した。

 

 肉用牛研究所 飼養技術研究室

ウエットエイジング並びに加熱による科学的変化が牛肉のおいしさ向上に及ぼす影響に関する試験研究事業

期間・区分

平成28~32年度,国補

背景・目的

エイジングは食肉をよりおいしくする保管技術であり,エイジング中の牛肉ではタンパク質の分解による遊離アミノ酸の生成,核酸の分解によるイノシン酸の生成,脂肪の酸化など様々な科学的変化が起こり,牛肉のおいしさに影響を与えることが知られている。また,和牛肉には輸入牛肉にない和牛特有の香りである「和牛香」の存在が知られている。これまでの牛肉の香気成分に関する研究によると,和牛香はラクトン類およびアルコール類,アルデヒド類が寄与しているとされている。しかし,これらの遊離アミノ酸や脂肪酸,香気成分などは牛肉の種類や熟成条件,加熱条件により異なった生成パターンを示すものと考えられる。そこで,本研究では牛肉のウエットエイジングによる科学的変化の検討と実際に食す条件に近い加熱による科学的変化を,おいしさを構成する呈味や香り,テクスチャーを網羅的に検討する。

方法

1.供試牛肉

黒毛和種(A4)およびホルスタイン種の胸最長筋(5×5×0.4cm)

2.試験内容

1)理化学分析

生および170℃加熱の黒毛和種およびホルスタイン種牛肉について,一般成分(水分,粗タンパク質,粗脂肪)および脂肪酸,遊離アミノ酸,核酸関連物質,還元糖の分析を行った。

水分:常圧乾燥法

粗タンパク質:ケルダール法

粗脂肪:ソックスレー法

脂肪酸:高速液体クロマトグラフィー

遊離アミノ酸:高速液体クロマトグラフィー

核酸関連物質:高速液体クロマトグラフィー

還元糖:高速液体クロマトグラフィー

2)香気成分分析

170℃加熱した黒毛和種牛肉について,香気成分分析を行った。

香気成分:ガスクロマトグラフィー質量分析計

成果・評価

1)理化学分析

黒毛和種およびホルスタイン種牛肉の加熱による成分の科学的変化を確認した。黒毛和種牛肉は呈味成分である甘味系遊離アミノ酸が増加した。また,ホルスタイン種牛肉はうまみ成分であるイノシン酸が減少した。

2)香気成分分析

和牛香の構成成分とされるラクトン類1種を検出した。

夏季における暖地型牧草利用による放牧実証試験

期間・区分

平成28~31年度,県単

背景・目的

県内の放牧地では寒地型牧草が多く利用されており,夏枯れよって夏期から秋の生産量が減少し,草量不足が生じている。今後,気候温暖化がさらに進むと夏枯れがさらに著しくなるものと思われるが,夏季の収量が高い暖地型牧草を寒地型牧草と組み合わせることにより,放牧地の生産量の平準化が図られ,1年を通して計画的な放牧が可能になると期待される。

暖地型牧草であるソルガム類は生産量が多く,また再生草が伸長するので夏から秋にかけて集約的な放牧利用が可能と考えられるが,近県における放牧利用の事例はない。また,シバ型の暖地型牧草であるバヒアグラスは,定着すると安定的な植生を維持できるので粗放的放牧に適しており,種子代も安価であるが,初期生育が悪いので草地造成や越冬性に難がある。

そこで,夏季の集約的放牧としてソルガム類の畑地及び転作田の乾田等における利用と,粗放的放牧法としてバヒアグラスによる放牧地等での利用を検討する。

方法

1.ソルガム類

品種:スーダングラス2品種(ヘイスーダン,パイパー)

播種日,播種法および播種量:6月1日,散播,5kg/10a

施肥:標肥(N-P-K各20kg/10a),少肥(N-P-K各10kg/10a)

試験配置:3反復

刈取期:早刈(生育期草高約160cmで刈取),出穂期刈(出穂期に刈取)

刈取高さ:地面から20cm

調査月日:早刈(1番草7月13日,2番草8月13日),出穂期刈(1番草7月31日,2番草8月26日)

2.バヒアグラス

播種日および播種法:6月1日,散播

播種量:1kg/10a,3kg/10a,6kg/10a

試験配置:3反復

管理方法:約2週間毎(年6回)の刈り払いで雑草に覆われないように管理

調査月日:発芽良否(6月30日),草高(8月26日,10月3日),被度(10月3日)

播種後1年目は収量が低いので,乾物収量の調査はなし。

成果・評価

1.ソルガム類

乾物収量は,早刈では標肥区,少肥区ともにヘイスーダンがパイパーより高く,出穂期刈では品種による差は見られなかった。また,両品種とも標肥は少肥より乾物収量が高かった。草高は,少肥,標肥ともにヘイスーダンがパイパーより高かった。また,ヘイスーダンでは標肥と少肥で同程度であったが,パイパーは標肥が少肥よりやや高い傾向にあった。

TDN含量は全ての区で1番草,2番草とも60%以上で肉用成雌牛の必要養分含量以上であった。CP含量は早刈区で1,2番草とも肉用成雌牛の必要養分含量以上であったが,出穂期刈区の1番草ではやや不足する傾向であった。

青酸含量は全ての区が35mg/kg以下で問題なかった(安全値500mg/kg以下)。

硝酸態窒素含量は,出穂期刈区では安全値(0.2%以下)以内であったが,早刈区ではほとんどの区で安全値を超えた。

2.バヒアグラス

播種後1年目は,播種量6kg/10a区が発芽,草高,被度とも最も高く,次いで,3kg/10a,1kg/10a区であり,播種量が多いほど草高が高く,被度も高い結果が得られた。

飼料用籾米を中心とした国産飼料資源の利活用試験(黒毛和種育成牛における給与試験)

期間・区分

平成27~30年度,県単

背景・目的

飼料高騰化対策ならびに自給率向上対策として輸入原料に依存しない国産飼料を確保することが求められており,水田農業の分野では,通常の稲作栽培体系で生産が可能な飼料用米の活用が注目されている。黒毛和種における飼料用米の利用では,新たに飼料用籾米(ソフトグレインサイレージ等)の農家段階での利用が期待されているが,特に育成牛における給与技術は確立していない。

また,食料製造副産物等で食用に供されなかった生豆腐粕等が廃棄されており,地域未利用資源の有効活用面からも,飼料米と組み合わせて利活用することが求められている。そこで,飼料用籾米と生豆腐粕をサイレージ化したもの(籾米・豆腐粕サイレージ)について肉用育成牛への給与方法を確立するため,配合飼料の30%をサイレージで代替して給与試験を行った。

方法

1.供試牛

黒毛和種育成牛7頭(対照区3頭,試験区4頭)

2.試験期間

4ヶ月~8ヶ月齢(子牛市場出荷時まで)

3.供試飼料

1)対照区

配合飼料,大豆粕,オーツ乾草,炭酸カルシウム

2)試験区

配合飼料,籾米・豆腐粕サイレージ(※),大豆粕,オーツ乾草,炭酸カルシウム

(※)飼料用籾米80%+豆腐粕サイレージ20%で調整し,籾米・豆腐粕サイレージとした(原物)。配合飼料の30%を籾米・豆腐粕サイレージで代替した(原物)。

4.調査方法

1日増体重(DG)=1.2kg/日,可消化養分総量(TDN)=100~110(安全率10%),Ca:P=2:1~1.5:1(日本飼養標準による)を目安として給与し,残飼料を計測することで採食量を求めた。

成果・評価

平均DGは対照区1.01kg/日,試験区1.02kg/日であり,両区の発育に差はなかった。また,飼料効率は対照区0.17,試験区0.15であり,両区に差はなかった。

 

 養豚研究所 育種研究室

デュロック種の系統造成豚を活用した肉質向上試験

期間・区分

平成26~30年度,県単

背景・目的

筋肉内脂肪含量の向上を改良指標の1つとして造成中のデュロック種系統豚の活用を図るため,この系統豚を用いて三元交雑肉豚を生産したとき肉質(筋肉内脂肪含量等)へ及ぼす影響について検討する。

また,筋肉内脂肪含量を増加させる飼養管理法(給与飼料等)の検討を行い,高品質豚肉生産技術の確立を目指す。

方法

平成29年度は,所内飼養中のランドレース種系統豚及び大ヨークシャー種により作成したLW母豚に,デュロック種系統豚「ローズD-1」を交配して生産したLWD豚の筋肉内脂肪含有量等を給与飼料の影響を含めて調査した。

肉質調査は生体重115kg前後でと畜し,脂肪含有量を測定した。

成果・評価

同腹豚を用いて,腹内の変動を調査した結果,筋肉内脂肪含量は1.33%~3.93%と1腹内でもバラツキが見られ,性別では平均で雌1.68%,去勢2.55%と雌に比べて去勢で高い傾向にあった。

飼料の栄養水準による影響について,発酵飼料を添加してCP含量を下げた飼料(低CP区:CP12前後)と慣行飼料(対照区:CP14.4)を用いて比較した結果,筋肉内脂肪含量は平均で低CP区2.87%(1.34%~4.53%),対照区2.68%(2.01%~4.74%)と,低CP区で高い傾向が見られたが,有意な差は認められなかった。

給与飼料の影響については,顕著な差は認められなかったことから,飼料成分や給与方法等について引き続き検討を行う。

ローズ改良普及試験

期間・区分

昭和45年度~,県単

背景・目的

大ヨークシャー種系統豚「ローズW-2」は,本県の銘柄豚肉である「ローズポーク」の基礎豚等として,平成15年度から農家に供給してきたが,受胎率,分娩頭数などの繁殖成績が低下してきたため,平成25年度に系統豚の認定を取り消した。

しかし,生産農家からは大ヨークシャー種の払い下げの要望が多く,この優良な系統豚の資質を高品質豚肉生産の基礎として長期間利用するため,外部から優良な種豚や精液を導入し,開放型育種手法の開発及び確立を図りながら,農家ニーズに対応した高能力純粋種豚を作出・供給し,広域的な改良効果を生み出していく。

また,農研機構からの委託研究「家畜の生涯生産性向上のための育種手法の開発」のうち,「豚の生涯生産性における総合評価手法の開発」の課題を行う。

方法

常時種雄豚6頭,種雌豚18頭を飼養した。交配は可能な限り血縁の遠い種雄豚を用いるとともに,適宜外部から優良な種豚(精液)を導入し繁殖集団を構成する。集団の遺伝的構成,繁殖・育成成績,産肉成績などを調査する。

委託研究については,豚の生涯生産性における総合評価手法の開発としてデュロック種の種雄豚を用いて定期的に精液を採取し,温湿度と精液性状のデータを取る。また,デュロック種系統豚について産子数,産子体重,離乳頭数,離乳時体重等の繁殖形質と体長,体高,管囲等の体尺形質,肢蹄等の形質について測定する。

成果・評価

交配計画に基づき,29組の交配を行った。

17腹の分娩があり,子豚156頭(雄90頭,雌86頭)を生産した。

種豚候補として,雌3頭を選抜した。

育成豚を養豚農家に27頭(雄15頭,雌12頭),人工授精用精液を204本売却した。

農研機構からの委託研究については,平成29年3月~平成30年2月のデータを提出した。

ランドレース種系統造成試験

期間・区分

平成29~36年度,県単

背景・目的

一般的な肉豚の生産現場では,三元交雑豚を肉豚として肥育するため,雄系,雌系の品種について総合的な育種改良が必要である。そこで,本県産銘柄豚をはじめとする優良な三元交雑豚を安定的に生産するため,系統豚「ローズL-3」の後継豚となる優秀なランドレース種作成に向けた系統造成を行う。

方法

改良目標を設定するための調査を行う。調査は養豚農家,畜産関係者及び有識者との検討会,養豚農家への訪問,アンケートを実施する。

系統造成概要

1年一世代で選抜・交配を繰り返して第五世代で造成を完了する。

集団の規模:一世代ごとに雄10頭,雌40頭を選抜し,系統造成を行う。

交配:10~11月に交配し,2~3月にかけて集中分娩させる。

一次選抜:体重30kg時に1腹から雄1頭・雌2頭を選抜する。

二次選抜:体重105キログラム時に雄10頭・雌40頭を選抜し次世代の生産に使用する。

BLUP法アニマルモデルを用いた総合育種価を元に選抜するが,肢蹄・体型等は独立淘汰法を用いる。

成果・評価

改良項目を,生存産子数,三週齢一腹総体重,一日平均増体重の三項目に設定した。

基礎豚作成のため株式会社ファームテックより精液を導入しローズL-3の母豚5頭に人工授精を行った。

1月に4腹が分娩し,36頭が生産された。

基礎豚として雌18頭を選抜した。

体細胞クローン技術の高度化及び遺伝子組換えブタの維持・保存に関する研究開発

期間・区分

平成19年度~,県単

背景・目的

医療用モデル豚として開発された遺伝子組換えブタ(TGブタ)について,遺伝子のホモ化を行うとともに,小規模集団での系統維持法の開発及び将来に向けたTGブタの増殖技術の確立を目指す。

方法

低密度リポタンパク質受容体(LDLR)遺伝子をノックアウトし,高脂血症・動脈硬化症を発症するTGブタ(LDLRブタ)について,ホモ化された遺伝子型を保持する個体を維持するとともに,体型が小型の個体の選抜を行う。

また,大学等医療実験施設からの要望により適宜豚を提供する。

成果・評価

5腹の分娩があり,子豚22頭(雄11頭,雌11頭)を生産した。

種豚候補として,5頭(雄2頭,雌3頭)を選抜した。

医学研究所へ雄3頭を提供した。

 

 養豚研究所 飼養技術研究室

養豚における飼料用米と豆腐粕の混合サイレージの給与技術確立試験

期間・区分

平成27~30年度,県単

背景・目的

国産飼料用米の活用が飼料自給率の向上,飼料高騰化対策から注目されており,今後飼料用米の利用拡大が予想されている。

また,食料製造副産物等で食用に供されなかった生豆腐粕等が廃棄されており,地域未利用資源の有効活用面からも,飼料用米と組み合わせて利活用することが有効と考えられる。

そこで,飼料用米と地域未利用資源である生豆腐粕について,栄養特性を考慮しつつ安価な飼料化とその保存技術の確立を図るとともに,肥育豚,繁殖豚への給与技術を確立する。

方法

給与飼料は慣行飼料及び,飼料用米(75%)と生豆腐粕(25%)を混合し乳酸菌添加により調整したサイレージとした。

1.三元交雑種(WLD)を対象に,離乳期(5週齢)から出荷までの期間,サイレージを20%混合した試験区及び対照区(各区10頭)を設定し,発育,肉質(水分量,保水性,加熱損失,肉色,脂肪融点)を調査した。

2.繁殖雌豚(WL)を対象に,前回分娩後の離乳時から分娩までの期間,サイレージを慣行の繁殖母豚用飼料に20%混合した試験区及び対照区(各2頭)を設定し,繁殖成績(分娩頭数,離乳頭数,次回発情回帰までの日数)および分娩子豚の離乳(5週齢)までの発育を調査した。

成果・評価

1.三元交雑種(WLD種)の離乳期(5週齢)から出荷までの期間に,サイレージを20%代替給与したところ,70kg~110kg期間の1日平均増体重が試験区0.95kg/日,対照区0.99kg/日となり,発育,肉質ともに有意な差はみられなかった。

2.繁殖雌豚の前回分娩後の離乳時から分娩後離乳まで20%のサイレージを給与しても,繁殖成績,分娩子豚の育成に有意な差はみられなかった。

系統豚維持試験(ローズD-1)

期間・区分

平成29年度~,県単

背景・目的

デュロック種の系統造成を平成24年度から開始し,平成28年度に造成を完了した。一般社団法人日本養豚協会から「ローズD-1」として系統認定された。

本試験では,この系統豚を,本県を代表する銘柄豚肉「ローズポーク」を始めとした高品質な豚肉の生産に安定して利用できるよう能力を保持しながら群を維持し,農家に育成豚を供給する。

方法

交配は血縁係数の低い個体で交配した。

集団の遺伝的構成,繁殖・育成成績,産肉成績を調査した。

育成豚は,県内の養豚農家に供給した。

維持群の構成は,種雄豚14頭,種雌豚36頭とした。

成果・評価

平均血縁係数20.27%,平均近交係数は5.93%であった。

分娩腹数60頭で,哺乳開始頭数は7.6頭,離乳頭数は6.6頭,育成率は86.4%であった。

発育成績並びに産肉成績は,1日平均増体量(DG)雄1,037g,雌920g,ロース断面積(EM)は,雄34.4㎠,雌34.5㎠,筋肉内脂肪含有量(IMF)は,雄6.04%,雌4.25%であった。

平成29年11月から26戸の農家に対し,49頭の雄,4頭の雌を供給した。また,人工授精用精液を278本供給した。

系統豚維持試験(ローズL-3)

期間・区分

昭和62年度~,県単

背景・目的

ランドレース種系統豚「ローズL-3」(2011年度認定)を,本県の銘柄豚肉「ローズポーク」や高品質豚肉の基礎豚として長期間安定して利用することを目的に,認定時の能力を保持しながら近交係数・血縁係数の上昇を最小限に抑える維持と供給を行う。

方法

「ローズL-3」を維持施設内で分娩させ,繁殖・育成成績,産肉成績および育成豚の主要形質の成績,集団の遺伝的構成などを調査し,系統豚「ローズL-3」を維持した。更に育成豚を養豚農家に供給した。

成果・評価

維持頭数:雄8頭,雌40頭。

繁殖・育成成績:のべ57腹分娩。一腹平均ほ乳開始頭数は9.02頭,3週齢の育成率は92.22%。

産肉成績:30kgから105kgまでの一日平均増体重は雄で925.6±121.7g,雌で809.1±95.2g。背脂肪厚は雄で2.2±0.5cm,雌で2.0±0.2cm。ロース断面積は雄で32.5±5.4㎠,雌で29.2±4.1㎠。

集団の遺伝構成:平均血縁係数は25.8%,平均近交係数は9.97%,遺伝的寄与率変動係数は1.73だった。

供給頭数:育成豚を養豚農家20戸に133頭(雄1頭,雌132頭),また,人工授精用精液を70本供給した。

遺伝子解析を活用したブタの形質発現に関する研究

期間・区分

平成29年度~,県単

背景・目的

高品質な肉豚の生産には,肥育素豚(遺伝能力),給与飼料(飼料設計)及び衛生管理(飼養技術)が重要となる。従来,給与飼料のブタへの効果は,発育,肉質及び健康状態(血液性状)等の測定値を中心に評価してきた。

近年,遺伝子解析技術の発展に伴い,実験動物分野を中心に飼料中の成分(脂肪酸等)によって特定の遺伝子の発現状況が異なり,代謝等に影響を及ぼすことが明らかとなってきた。

そこで,ブタにおいて有益な遺伝子の発現への影響が期待される物質の給与が,ブタの発育,肉質及び健康等の形質に対して遺伝子レベルでどのような影響を与えているのか相互関係について明らかにする。

方法

供試豚:ランドレース種去勢豚20頭(試験区10頭・対照区10頭)

給与飼料:試験区は慣行飼料にアシドロ発酵魚粉を6%添加

給与期間:肥育期(体重30kg~105kg)

調査項目:遺伝子発現動態(ロース,肝臓等),発育成績(1日平均増体量等),肉質成績(水分含量,保水力,クッキングロス,脂肪融点等),枝肉格付け等

成果・評価

試験区において肥育後期(70kg~105kg)の1日増体量が有意に増加した。

試験区においてクッキングロスが有意に増加し,外層脂肪融点が有意に低下した。

枝肉格付けについて両区間に差は認められなかった。

試験区において,ロース部位のミオスタチン遺伝子,UCP3遺伝子,PPARγ,遺伝子及びSREBF-1遺伝子の発現が有意に減少した。

慣行飼料にアシドロ発酵魚粉を6%添加して肥育期のブタ(体重30kg~105kg)に給与することで,肥育後期の1日増体量が増加し,また筋肥大や脂肪酸合成,エネルギー代謝に関わる遺伝子(ミオスタチン,UCP3,PPARγ及びSREBF-1)の発現に影響を及ぼすことが示された。

 

このページに関するお問い合わせ

農林水産部畜産センター企画情報室

〒315-0132 茨城県石岡市根小屋1234

電話番号:0299-43-3333

FAX番号:0299-43-6392

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

質問:このページの情報は役に立ちましたか?

質問:このページは見つけやすかったですか?