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更新日:2020年6月10日

コラム of gyoganchou

他所からきた魚たち -新顔に注意-

今の霞ケ浦・北浦には,チャネルキャットフィッシュをはじめオオクチバスやブルーギル,ハクレン,ペヘレイ,オオタナゴ,タイリクバラタナゴなど,外国からやってきた魚が生息しています(魚顔帳の各項を参照)。また,ビワヒガイやタモロコ,ワタカ,ハス,ゲンゴロウブナ,カネヒラなどのように,日本の魚ではあるものの他県からやってきた魚もいます。そのような魚は,“自然に”分布していた魚(在来魚と呼びます)に対して外来魚と呼ばれています。それなら金魚も外来魚ではないか,と思われる人もいるとは思いますが,ここでは,明治時代以降にやってきた魚を外来魚として扱うことにします。

さて,2008年に発表された研究報告によれば,一度採捕されただけという魚も含めると,霞ケ浦・北浦で確認された外来魚は計41種にのぼっています。また,県内全域に目を向ければ,内水面水産試験場が把握しているだけでもコクチバスやカラドジョウ,カワマス,タウナギ,ヨーロッパナマズ,熱帯魚のドラドやポリプテルスが河川で採捕されています。
外来魚が茨城県に生息するようになった理由は人為的なものです。とくに,船舶や航空機,自動車などのおかげで物質輸送能力が格段に高まった明治時代以降に持ち込まれる魚が増えました。例えば,霞ケ浦に生息しているビワヒガイやゲンゴロウブナ,チャネルキャットフィッシュ,ペヘレイなどは,1918年から1990年の間に養殖や漁業など水産業の振興を目的として茨城県に連れてこられた魚です(霞ケ浦のチャネルキャットフィッシュは利根川から侵入したのが最初とも言われています)。ハクレンやタイリクバラタナゴ,ワタカ,ハスなどは,1943年から1960年代に水産資源の増殖を目的としたソウギョ種苗やアユ種苗の放流の際に混じって入ってきたと考えられています。また,オオクチバスやカネヒラなどは1970年代に釣り愛好家などが釣り場造成のために放流したものが増えたと言われています(諸説あります)。そしてドラドやピラニア,ガー,ロリカリア(通称プレコ)やレッドテールキャットといった熱帯性ナマズ類などは1990年代以降に観賞魚として飼育されていたものが投棄されたと考えられるケースです。
近年,外来魚が自然生態系や漁業などに対してさまざまな問題(例えば,捕食,雑種化,疾病)をもたらしていることは,多くの人が知るようになりました。ですが,そういったことへの理解は1990年以前には研究者などごく一部の間でしか進んでいなかったのが実情だったと思います。
国では,2004年に「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)を定めました。これにより今では,オオクチバスやコクチバス,ブルーギル,チャネルキャットフィッシュ,カダヤシの5種が特定外来生物に指定され,飼養や運搬,保管,輸入,野外に放つことなどが原則禁止になりました。この他にも取り扱いに注意しなければならない要注意外来生物も選定されています(詳細は,環境省の外来生物法に関するホームページを参照していただきたいと思います)。
確かに私たちの生活において外来魚は,放流用や養殖用,遊漁用,観賞用などさまざまな場面で大いに利用されています。ですが,外来魚がもたらす問題への理解が進んでいる今日,自然界への飼育魚の投棄を行わないのは当然として,利用するうえでも細心の注意をはらうことが望まれています。

 

 

チャネルキャットフィッシュ(トリミング).png

写真. チャネルキャットフィッシュの若魚.2000年以降,霞ケ浦などでかなり増えている. ドラド02.png

 

 

 

 

写真:鬼怒川で採捕された南米原産のドラド(Salminus brasiliensis).ラベル中の採捕日は1997年10月28日の誤り.  20010709ピラニア(トリミング).jpg

写真:2001年7月に霞ケ浦(小野川河口付近)で採捕されたSerrasalmus nattereri(通称,ピラニア・ナッテリー).  PA110013(20061010トロピカルガー).JPG写真:霞ケ浦で採捕された中央アメリカ原産のトロピカル・ガー(Atractsteus tropicus)2006年10月11日に漁業者が採捕した. ガーの仲間は観賞魚店などでよく売られている. 大きくなる魚であるため,飼い主が飼いきれなくなって投棄したのだろう. 責任をもって飼育してもらいたい。  
 

主な文献
荒山和則・須能紀之・山崎幸夫(2008)コクチバスによる産卵場と成育場としてのワンドの利用.茨城内水試研究報告,41: 1-8.
浜田篤信(2000)外来魚類による生態影響-霞ヶ浦はなぜ外来魚に占拠されたか.生物科学, 52: 7-16.
細谷和海(2006)ブラックバスはなぜ悪いのか.細谷和海・高橋清孝編,ブラックバスを退治する-シナイモツゴ郷の会からのメッセージ.恒星社厚生閣,東京.pp. 3-12.
加瀬林成夫(1966)霞ケ浦北浦におけるハスおよびワタカの繁殖について.茨城県霞ケ浦北浦水産事務所調査研究報告, 8: 38-42.
熊谷正裕(2001)大型タナゴ・カネヒラの定着とその影響.霞ヶ浦研究, 12: 6-9.
瀬能 宏(2006)外来生物法はブラックバス問題を解決できるのか? 哺乳類科学, 46: 103-109.
野内孝則・荒山和則・冨永 敦(2008)霞ヶ浦北浦で確認された外来魚の導入経緯.茨城内水試研究報告, 41: 47-54.

 

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農林水産部水産試験場内水面支場

〒311-3512 茨城県行方市玉造甲1560

電話番号:0299-55-0324

FAX番号:0299-55-1787

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