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更新日:2016年5月19日

根本周囲の土壌改良による樹勢回復法

研究報告No.20(要旨)

木衰退に関する34事例は、一事例で複数の樹種を対象とする場合もある。そのため対象樹種を事例の多い順に示すと、サクラ類(10例)、スギ(9例)、イチョウ(7例)、ケヤキ、サツキツツジ、マツ類、ウメ(3例)、マテバシイ、シラカシ、ヒノキ、ヒイラギ、ポプラ、スダジイ、シバ〔草本類〕、モミジ類(2例)、ヒマラヤスギ、モチノキ、シャクナゲ、マダケ、エノキ、モミ、カリン、アケビ、カイズカイブキ、キーウィフルーツ、プラタナス、シラカンバ、ニセアカシア、アオギリ、クスノキ、ナワシログミ、トベラ、ヤマモモ、サザンカ、キリシマツツジ、カゴノキ、ハリギリ(1例)の37種、76例となる。これに樹種名の記載がない3例(事例1、19、25)を加えると、合計79例となる。
全79例について、それらの衰退原因を、相互に関係が深い原因ごとに纏めると、立地土壌関連(踏圧、転圧、過湿、客土、切り土植栽、立地が悪い、転圧客土、根元客土、道路舗装、根元舗装)が、53例と全79例の67%を占める。次に、人為的なミス(間伐手遅れ、誤薬剤散布、過度の剪定、未熟堆肥の施用、薬害)が、12例15%を、老化・樹勢低下、気象害関連(落雷、周囲の伐採、風の変化、風害、雪害)が、各11例とそれぞれ14%を、動物(モグラ、ウソ)が、2例と3%を占める。また、原因不明が3例と4%ある。以上では、一例で複数の原因が関与した場合もあり、全79例に対する割合を合計すると100%を越える。
なお、原因を個別に整理すると、踏圧が28例と35%を占め、最も多い。続いて、老化が8例と10%を、転圧、落雷が各7例とそれぞれ9%を、過湿が6例と8%を、間伐手遅れが5例と6%を、客土が4例と5%を占め、以上の原因が比較的多い。
幹枝の腐朽を含む病害は、幹の腐朽・空洞化が、13例と16%を占め、最も多い。続いて、「サクラてんぐす病」が4例と5%を、「サクラ黒色こうやく病」、マツ材線虫病、ベスタロチア属菌、「ウメ白紋羽病」、「モチノキすす病」が、各1例とそれぞれ1%を占める。
虫害は、穿孔虫関連(コスカシバ、スギカミキリ、シロスジカミキリ、コウモリガ、ヤマトタマムシ、ゾウムシ類等)が、13例と16%を占め、最も多い。吸汁虫関連(カイガラムシ類、サクラコブアブラムシ、ツツジグンバイムシ、カメノコロウムシ、ツバキワタカイガラムシ)が、9例と11%を、食葉虫関連(ドクガ類、ベニモンアオリンガ、キシタエダシャク、ツツジキバガ、ハマキガ類、ルリチュウレンジ等)が、8例と10%を占める。
次に、指示した対策を整理する。病虫害の対策として、薬剤散布が、20例と25%を、衰弱木の伐採が、1例と1%を占める。枯れた幹、枝の処理として、それらの切断が27例と34%を占める。土壌改良では、土壌改良・施肥が38例と48%を、施肥が13例と16%を、耕うんが5例と6%を、腐植の堆積、踏圧の防止、客土と砂利敷きが、各1例とそれぞれ1%を占める。それ故、土壌改良・施肥と施肥が、51例で65%と過半数を占め、その他が8例と10%を占める。なんらかの土壌改良は、合計59例と、全79例の、75%にも達する。
これ以外の対策は、植栽関連(二世・後継樹の植栽、新植、補植、植栽方法の変更、改植)が、23例と29%を占め、最も多い。続いて、保育関連(芝生除去、適正間伐、萌芽育成、コケ除去、近くの「サクラてんぐす病」木の伐採、周囲に対する配慮、潅水、管理に十分配慮)が、17例と22%を、幹の処理(補強、腐朽処理、空洞の充填、寄生するカヤの除去、防腐処理)が、12例と15%を、立地関連(排水、駐車場の移動、根元のコンクリート除去)が、7例と9%を占める。その他(柵の設置、通路の変更、ウソの忌避剤使用)が、13例と16%を占める。この場合も、一例で複数の対策を指示した場合がある。
対象とした例の多い上位3樹種(サクラ類、スギ、イチョウ)について、個別に衰退原因と対策を整理する。サクラ類(10例)の場合、衰退原因は、踏圧が6例と最も多く、続いて、転圧、老化が各2例、ウソ食害、雪害、客土が、各1例である。病害は「サクラてんぐす病」が4例、幹腐朽が3例、「サクラ黒色こうやく病」が、1例である。虫害はコスカシバが3例、カイガラムシ類、コウモリガ、サクラコブアブラムシが各1例である。病虫害の対策は、薬剤散布が7例と多く、衰弱木の伐採が1例である。病気の枝を含む幹枝の切断・除去は3例である。土壌改良では、土壌改良・施肥が6例と多く、施肥が2例、耕うんが1例である。その他の対策では、二世の植栽が3例、新植、萌芽育成が、各2例、排水、芝生除去、ウソの忌避剤使用、空洞の充填、幹の補強、柵設置、周囲に対する配慮、駐車場の移動、近くの「サクラてんぐす病」木の伐採、補植が、各1例である。それ故、サクラ類は、踏圧、「サクラてんぐす病」、コスカシバの被害で衰退する例が多く、薬剤散布と土壌改良・施肥が必要となる。
スギ(9例)の場合、衰退原因は、路圧、落雷が各4例、間伐手遅れが2例、風の変化、立地が悪いが、各1例である。なお、不明も1例ある。病害は、幹の腐朽・空洞が3例である。虫害は、スギカミキリが1例である。病虫害の対策はない。枯れた幹、枝の切断は、6例と多い。土壌改良では、土壌改良・施肥が4例、腐植堆積、踏圧防止、施肥が、各1例である。その他の対策では、柵設置、幹の補強が各2例、二世の植栽、新植(常緑広葉樹)、適正間伐、通路変更が、各1例である。それ故、スギは、踏圧、落雷で衰退する例が多く、幹の腐朽・空洞化と枯枝が発生しやすい。そのため、枯れた幹、枝の切断と土壌改良・施肥が必要となる。
イチョウ(7例)の場合、衰退原因は、踏圧が4例と多く、過湿が2例、落雷、間伐手遅れ、転圧客土、老化が、各1例である。病害は、幹の腐朽が1例である。病虫害の対策はなく、枯枝の切断は3例である。土壌改良では、土壌改良・施肥が6例と多く、耕うんが1例である。その他の対策では、柵設置が2例、寄生するカヤの除去、通路変更、周囲に対する配慮、幹腐朽の処理が、各1例である。それ故、イチョウは、踏圧で衰退する例が多く、枯枝が発生しやすい。そのため、枯枝の切断と土壌改良・施肥が必要となる。
例の内容整理から、多くの樹種で、根元周囲の土壌改良による樹勢回復は、極めて重要なことが確認できた。また、衰退しやすい樹種があり、各樹種の衰退の様相に一定の特徴があることも明らかになった。今後さらに多くの事例を集積すれば、樹勢回復のための対策を、ある程度樹種ごとにパターン化できるであろう。本論文が、樹勢診断あるいは樹勢回復技術の、将来の一層の発展に寄与できれば幸いである。

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