露地で春に発生するマイタケ栽培の研究について（続報）

平成23年12月

きのこ特産部

1.はじめに

林業技術センターでは,毎年春に発生するという野生のマイタケを入手し,菌糸体を分離・培養し,林内での原木露地栽培試験に取り組んできました。その結果,「春（5～6月）にきのこが発生する」という珍しい性質を持つことを確認することが出来ました（きのこ研究開発トピックス「露地で春に発生するマイタケ栽培の研究について」参照）。また,春に発生するマイタケ（以下,春マイタケ）についての栽培の特性を解明したので,その概要をご紹介します。

2.春に発生する原木マイタケの栽培特性

（1）ほだ木の埋め込み適期

図-1平成19年度春にテーダマツ林で発生したマイタケ

春（5～6月）に発生させるための適切なほだ木の埋め込み時期を探るため,林業技術センター構内の林地に春マイタケのほだ木を埋め込み,マイタケの発生状況を調査しました。ほだ木の林地への埋め込み時期は,平成15年12月,平成16年4・5・11・12月,平成17年5・6・11・12月,平成18年1・2・3・5・6・12月,平成19年1月,平成20年6・7・8月に設定しました。
その結果,平成15年12月及び16年4月にほだ木を埋め込んだ試験区では17年の春に,平成16年5・11・12月及び17年5・6月に埋め込んだ試験区では18年の春に,平成17年11・12月及び18年1・2・3・5・6月に埋め込んだ試験区では19年の春に,平成18年12月及び19年1月に埋め込んだ試験区では20年の春に,平成20年6・7・8月に埋め込んだ試験区では21年の春に,それぞれマイタケの発生を確認することができました（図-1,表-1）。なお,一部では秋（9～10月）にも発生が見られました。一方,比較対照として,市販品種も同時に栽培したところ,秋（9～10月）にしかきのこが発生しませんでした。このことから,春にきのこを発生させるためには,遅くとも前年の8月中旬までにほだ木を林地に埋め込む必要があることが示唆されました。

（2）春マイタケの発生継続年数

平成16年4月にほた木を埋め込んだ試験区では,平成17～22年春（5～6月）に6年連続してマイタケの発生を確認することができました（表-1）。

（3）春マイタケの発生量

きのこの発生量について,原木1キログラム当たりの収量割合を春と秋で比較すると,春の方が多く,総収量の約7割が春に発生しました（表-2）。
また,春マイタケと市販品種で総収量を比較したところ,春マイタケは市販品種と比べて少なく,7割程度の収量にとどまりました（表-3）。

（4）ほだ木を埋め込む林地の種類

春マイタケのほだ木を,平成18年に,林業技術センター構内の自然環境条件の異なる4カ所（コナラ林,テーダマツ林,スギ林,ヒノキ林）の林地に埋め込んだところ,平成19年春に全ての林地で発生しました（表-4）。

3.春に発生したきのこの特徴

春マイタケの特徴として,秋に発生するきのこと遜色のない姿形であること,秋に発生するものよりも柄部が太くてボリュームが多く,傘部が大きくなりやすいことが明らかになりました。
この特徴を活かすことで,地域の新たな特産品としての需要が期待されるため,春マイタケの栽培技術を現地普及に移すこととしました。

4.春に発生する原木マイタケ栽培の現地普及状況について

図-2大子町のPRイベントの様子

平成20年に大子町で,平成22年に鉾田市で,平成23年には,水戸市,常陸太田市,高萩市,桜川市で,生産者グループによる試験栽培が始まりました。
大子町では,平成21年に初めて春にきのこが収穫できたため,道の駅「奥久慈だいご」において,平成21年5月31日に,実物とパネル展示,マイタケご飯の試食等のPRを行いました（図-2）。
今後は,春マイタケの知名度を上げるための各種イベントの開催や,販売先の開拓に力を入れ,地域および季節限定の特産品として育成することとしています。

5.おわりに

林業技術センターでは,今後,春マイタケの収量性,品質性,病害虫防除等の技術改良を図り,生産者グループへの栽培技術面での支援を行っていきたいと考えています。

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