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平成24年度 第9回霞ヶ浦野外講座 自性寺周辺の植物と出久根達郎・霞ヶ浦の文学者

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概要

寒い日が続きますが林内は風がなく穏やかな観察日和でした。

自性寺付近は茨城県自然環境保全地域に指定されており、スダジイ・タブノキ・カシ類などの常緑広葉樹にスギ・ヒノキの人工林からなる安定した自然環境がみられます。

境内には樹齢700年といわれるカヤの大木があり、行方市天然記念物に指定されています。枝にはヨウラクランが着生し花の名残も観察できました。カヤランも着生しています。5月頃花を見に訪れてみたいものです。タラヨウ・モッコク・ヤマモモなどの巨木もみられます。林内にはカラタチバナが赤い実をつけています。マンリョウやヤブコウジやオモトの赤い実も見頃です。ナガバジャノヒゲは瑠璃色の実をつけています。アオキの実はまだ緑色でした。タブノキやシロダモは冬芽が芽鱗で包まれ冬越しの準備完了です。スイカズラも冬葉に変わっています。林縁にはシダ植物のフユノハナワラビが胞子穂を伸ばしています。シダ植物は他にベニシダ・オオバノイノモトソウ・ヤマイタチシダ・オオイタチシダ・ミゾシダ・トウゲシバ・オクマワラビ・ヤマヤブソテツ・ホソバシケシダ・シケシダ・ヤマイヌワラビ・ノキシノブなどがみられます。今回の観察会で107種類ほど観察することができました。

午後は、北浦中学校へ移動して研修しました。出久根達郎は昭和34年3月北浦中学校を卒業し集団就職で上京。月島の古書店「文雅堂書店」の住み込み店員になりました。平成5年「佃島ふたり書房」で直木賞を受賞した作家です。

昭和30年代は帆引き船最盛期で西浦48津、北浦44津が大いに栄えた時代でした。40年代に入ると鹿島開発、50年代には研究学園開発と時代の流れは大きく変化し、いまや霞ヶ浦の漁業者は100人以下になったといいます。

学校の先生や生徒に聞いても出久根氏についてはわからなかったのですが、偶然出会ったご婦人に聞くと、夫が出久根達郎と同級生であったとのことが唯一当時を知る手がかりでした。もったいない気がしましたが、もっとも出久根は受賞の言葉の中で次のように記しています。

「わが老母は87歳だが、受賞決定の翌日、医者の帰り、道ゆく人々に、「おめでとうございます」と声をかけられ、「おめでとう」と返した。旧正月の元日と勘違いしたのである。直木賞を説明するのに、往生した。」


スダジイの巨木;林冠は見事にふさがっています


フユノハナワラビ

 


カヤの樹皮に着生しているヨウラクラン


カラタチバナ;関東南部以西に分布

 

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