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平成24年度 第10回霞ヶ浦野外講座 冬の里山の植物と鼓ガ峰(富士山)

写真

概要

今年の冬はとりわけ寒い日が続きますが,穏やかな観察日和で標高152mの山頂まで登りました。

富士山はもともと入会地の山で,スギ・ヒノキが植林された山です。林床にはベニシダ・リョウメンシダを中心に,オオカナワラビ・ウラジロ・ホラシノブ・カニクサ・ホシダ・コハシゴシダなどのシダ植物が多く生育しています。今回28種類確認できました。皆同じに見えるとの声もあり区別するのは大変です。ヤブコウジ・マンリョウ・マルバノホロシ・ナンテン・カラタチバナなど赤い実をつける植物が目立ちます。フユイチゴの実はおいしいのですが残念ながら時期が遅かったようです。トンボソウ・コクラン・ミヤマウズラ・サイハイラン・シュンランなどラン科の植物もみられます。ナガバジャノヒゲの瑠璃色の実はきれいです。ホオノキ・シロダモ・ムラサキシキブは冬芽が芽鱗で包まれ冬越しの最中です。スイカズラも冬葉に変わっています。冬の里山の植物たちはそれぞれが冬の寒さをやり過ごして,したたかに生きていました。今回の観察会で129種類ほど観察することができました。

午後は,山頂に鎮座する浅間神社で研修しました。富士山は「ふじやま」と読みます。筑波山周辺には富士山が3つほどあり,小字の地名に「富士」の着くものがやたらに多く、10カ所もあるそうです。一帯の「柿岡盆地」には,このように取り残された山がいくつもあります。麓の人の話によると山の峰には足で強く踏むと震動するような場所があるといいます。それで鼓ガ峰といわれたのでありましょうか。いまから三百数十年前,筑波山の名所であったことがうかがえる文献があります。日本武尊東征の伝説もある山です。夏に麓の人たちによる祭礼が続いているようです。ご婦人たちは直登する登山道は登りがきつくて,途中までしか登れませんとのことでした。

明治45年,東京に比較的近いことと,「将来にわたって電車が通りそうもない所」との理由から気象庁地磁気観測所がこの地につくられました。以来柿岡から世界に向けて精確な観測データを発信しています。柿岡を舞台に地磁気観測を支えた研究者の中から,長岡半太郎,初代気象庁長官和達清夫,寺田寅彦,中谷宇吉郎,新田次郎などの優れた人材を輩出しました。

自然豊かな柿岡盆地にある小高い山,歴史的にも注目されてきた山を満喫した観察会でした。

今年度の野外講座は今回で予定通り終了することができました。来年度も計画しますのでよろしくお願いします。


シダ植物を見分けるのは大変です


オオカナワラビ

 


赤い実をつけたヤブコウジ


皆さん熱心に午後の研修中