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第1期茨城県霞ケ浦環境科学センター中期運営計画(平成23年度〜平成27年度)

T.中期運営計画の期間

中期運営計画の期間は、平成23年度から27年度の5年間とする。

それ以降、原則として5年ごとに策定する。

U.霞ケ浦環境科学センターの果たす役割

霞ケ浦環境科学センター(以下「センター」という。)は、平成7年度に霞ケ浦周辺で開催された第6回世界湖沼会議において設置が提唱され、平成17年4月に、県内の水環境、大気環境その他の環境の保全に関する調査研究及び技術的指導並びに環境に係る検査測定を行うための機関として開設された。

センターの目的は、県の環境分野に係る唯一の研究機関として調査研究を進めることにより、霞ケ浦の水環境その他の環境の保全及び創造に関する県民の取組を促進するとともに、環境の保全及び創造に関する研究成果の普及を図り、もって人と自然が共生し、環境への負荷の少ない地域社会の実現に資することとしている。

この目的を達成するため、センターは、霞ケ浦をはじめとする県内の湖沼・河川の水環境や大気環境等の保全に、「調査研究・技術開発」、「環境学習」、「市民活動との連携・支援」、「情報・交流」の4つを柱として、市民、研究者、企業及び行政の4者のパートナーシップのもと進めている。

県内の環境の状況を見ると、霞ケ浦については、平成21年度に北浦のCOD年平均値が全国ワースト1位になるなど水質の悪化が進んでおり、また、大気環境については、人の健康に影響を与える光化学オキシダント濃度が継続して環境基準未達成となっている。

センターの役割は、これらをはじめとする本県の環境上の課題を解決するための調査研究や実態把握に取り組むことはもとより、調査研究の成果から効果的かつ実効性のある対策を立案・提案し、さらに調査研究成果等を分かりやすく広報・発信することである。

V.県民に対して提供する業務

1.調査研究

(1)霞ケ浦に関する調査研究

霞ケ浦については、昭和61年度から5年ごとに湖沼水質保全計画を策定し、水質保全対策を総合的・計画的に実施してきた。また、平成20年度から森林湖沼環境税を導入し、生活排水対策や農地対策などの強化を図ってきた。その結果、霞ケ浦に流入する河川の水質は、CODで見ると改善してきているが湖内の水質は逆に平成21年度は9.5mg/Lと急激に上昇している。

これまでセンターでは、湖内のCODや植物プランクトンなどについて調査し、CODの上昇原因を調査研究している。その結果によると、西浦については、平成17年度までは透明度の低下により一時的に植物プランクトンの増殖が抑制されたことによりCODも抑制されてきたこと、平成18年度以降透明度が改善され、植物プランクトンが増加し、CODが上昇したと推定されている。また、北浦については、湖内の窒素・りん濃度の上昇に伴い、植物プランクトンが増加したと推定している。

また、湖沼の各分野の専門家の解析によると、近年のCODの急激な上昇は、湖内の窒素・りん濃度が高く、植物プランクトンの増殖に十分なレベルにあるため、植物プランクトンが増殖しCODが上昇していること、また、湖内の窒素・りん濃度が高い理由は、西浦は、流入河川の窒素濃度が減少していないこと、底でいからのりんの溶出が減少したものの現在も続いていること、北浦は、流入河川の窒素濃度が上昇していること、底でいからのりんの溶出が増加していることであった。

このように、西浦と北浦でCOD上昇の要因が異なることを踏まえ、きめ細かく効果的な対策を検討する必要があるため、センターにおいては、各水域の状況に応じた汚濁物質の削減手法等の研究を中心に進めていく。


<主な研究の取り組み>
@ 各水域の状況に応じた汚濁物質の削減手法・浄化方策の研究
【研究の方向】

湖内の窒素・りん濃度を削減するため、西浦・北浦について流入河川の窒素濃度の低減など湖内への窒素の流入抑制対策を、北浦では底でいからのりんの溶出抑制対策を実施する必要があり、対策立案に資する調査研究を推進する。

また、CODには粒子態と溶存態のものがあることから、粒子態CODのほとんどである植物プランクトンや溶存態CODについて各水域の状況を調査するとともに、水域に特徴に着目して植物プランクトンの増殖抑制や溶存態CODの削減に関する研究を推進する。

 

(ア)植物プランクトン

【これまでの成果】

【今後の取り組み】

(イ)溶存態COD

【これまでの成果】

【今後の取り組み】

(ウ)湖内に流入する窒素の削減

【これまでの成果】

北浦においては湖内流入部で窒素濃度が急激に減少する。また、脱窒活性も湖内流入部では最も高いことが判明した。

【今後の取り組み】

(エ)湖内に流入する窒素の削減

【これまでの成果】

【今後の取り組み】

A水質浄化対策の効果検証

【研究の方向】

水質浄化対策の推進に当たっては、費用対効果の説明が重要であることから、新たな水質浄化対策について積極的に効果の検証を行う。

また、より費用対効果が大きくなるような実施内容の工夫について、提案・検証を行う。

【これまでの成果】

【今後の取り組み】

(霞ケ浦)

(涸沼・牛久沼)

(水域における濃度レベルを把握する項目)

(2)大気環境・化学物質に関する調査研究

二酸化硫黄や二酸化窒素、浮遊粒子状物質等については環境基準を達成しているものの、高濃度になると目や呼吸器等に影響を与える光化学オキシダントについては未達成となっている。

また、平成21年度には、新たに微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準が設定されたが、県内において粒子状物質(SPM)の濃度などから、環境基準を達成しない懸念がある。

このようなことから、大気・化学物質に関する調査研究は、当面、光化学オキシダントや微小粒子状物質(PM2.5)について研究を進める。

@光化学オキシダント

【研究の方向】

光化学オキシダントの高濃度化は、工場や自動車の排出ガス等に含まれるVOCによると見られる局所的な発生源の影響のほか、国外や首都圏からの移流等、広域的な都市大気汚染の影響も大きい。そのため、国立環境研究所や全国の自治体と共同で、地域汚染の特性(経年変化や季節変化)や高濃度出現時の移流の影響等を解明する。

【これまでの成果】

【今後の取り組み】

光化学オキシダントとPM2.5は共に高い地域依存性を持つと同時に広域汚染の影響を受ける。

そのため、国立環境研究所と本県を含む全国49自治体が共同で測定値のデータベース化を推進し、モデル解析等による発生源寄与率評価の検討を行い、地域汚染特性(経年変化や季節変化)や高濃度出現時の移流の影響、発生源の寄与等を解明する。

A微小粒子状物質(PM2.5)

【研究の方向】

新たに環境基準の設定された微小粒子状物質(PM2.5)については、県内の地域特性等を明らかにし、高濃度地域については、粒子や前駆物質等の測定を行うことにより、微小粒子状物質(PM2.5)が高濃度となる原因を解明する。

【これまでの成果】

【今後の取り組み】

県内の地域差や季節変動など、微小粒子状物質の地域特性を明らかにし、高濃度地域については、粒子濃度や成分、粒子化の前駆物質等の測定を行うことにより、微小粒子状物質が高濃度となる原因を解明する。

B有害大気汚染物質

【研究の方向】

C酸性雨

【研究の方向】

全国の地方自治体の環境研究機関による調査に加わることにより、県内の酸性雨の状況を把握し、酸性化の状況が確認された場合、その原因解明に取り組み、改善対策を提案する。

D航空機騒音

【研究の方向】

E化学物質

【研究の方向】

現在国内で10万種以上が使用されている化学物質のうち、主なものについては、国や他の自治体と協力して環境中の化学物質濃度の実態を把握し、環境リスクの低減に繋げる。

2.事案対応

3.広報・情報発信

W.業務の質的向上、効率化のために実施する方策

1.全体マネジメント

(1)研究体制

県行政の課題、他の研究機関の情報、客員研究員等外部の専門家の意見を踏まえ、センター長を中心として、適宜、調査研究の進行管理や研究成果の内部評価を実施することにより、調査研究の質的向上を図る。

研究テーマの設定・見直しについては、生活環境部をはじめ庁内関係部局の意見も参考にする。

(2)客員研究員の活用

研究企画、研究手法、研究成果の取りまとめ等については、高度な専門的知識を有する外部の研究者からの指導・助言が欠かせないため、客員研究員を十分に活用する。

2.他機関との連携

3.外部資金の獲得方針

試験研究を効率的・効果的に推進するため、国の競争的資金等について情報を収集し積極的に応募するなど、外部資金の導入・活用を図る。

4.県民ニーズの把握方策

センターは、本県の環境に係る唯一の試験研究機関として、県民のニーズに沿った調査研究を効率的・効果的に推進することが求められていることから、関係市町村から意見を聴取する機会を設けるほか、来館者やセンターで実施している様々な環境学習・環境啓発事業への参加者にアンケートを実施するなど、日頃から県民ニーズの的確な把握に努める。

5.内部人材育成

6.研究評価

県民ニーズに沿った試験研究を効率的・効果的に推進するため、中期運営計画の進捗状況及び個別の試験研究内容について、定期的に公正かつ客観的な評価を実施する。

評価結果に基づき、必要に応じ研究内容や研究手法の変更、新たな研究テーマの検討等を行う。