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更新日:2015年4月1日

情報041:宇宙観測を支える世界的テクノロジー『音叉式高精度力センサ』

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新光電子株式会社

音叉センサの一体型ユニットを開発

JAXA筑波宇宙センターが存在するなど、茨城は、宇宙と縁の深い県です。
もう一つ、宇宙と茨城を繋げる事柄があることを、みなさんはご存知でしょうか。

 

 

 

 

 

 

国立天文台がハワイ観測所で運用する光学赤外線望遠鏡『すばる望遠鏡』。最先端の技術の粋を結集させた『すばる望遠鏡』は、1991年の計画発足から1999年のファーストライト(試験観測開始)、2000年の正式な観測開始までの10年間をかけて完成に辿り着きました。1枚ガラスを用いた主鏡はなんと有効直径8.2mにもおよび、完成当時は世界一を誇る天体望遠鏡として誕生したのです。国家的プロジェクトとして、当時、ニュースなどでも紹介されていましたから、ご記憶の方も多いことでしょう。

 

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ハワイのマウナケア山頂(標高4205m)から宇宙を観測し、新発見を続ける『すばる望遠鏡』。宇宙の仕組みを解き明かす、このテクノロジーの集合体には、茨城県下妻市に、つくば事業所を構える新光電子株式会社の開発した、ある技術が深く関わっています。それが『音叉式高精度力センサ』です。音叉とは、特定の音を発する、二股に分けられた金属製の道具で、時計や楽器などの音の基準になっていることからもわかる通り、振動数は正確で安定しています。この振動特性をさらに引き出しやすい状態にするため、二つの音叉を上下に組み合わせたものが金属音叉振動子と呼ばれるもの。はかり機構部に組み込まれた音叉振動子に電圧を加え、あらかじめ一定の周波数で振動させた状態に荷重が加わると、音叉振動子を引っぱり周波数が変化。その変化が読み取られ、コンピューター処理によって、重量信号へと変換されるのです。もう少々、平易に説明すると、振動する周波数の音叉に力が加わると、周波数が変わります。この周波数の変化を利用して、加わる力(重量)を正確に測ることができるというわけです。

一般的に使用される電子はかりには、三つの種類があります。ひずみゲージ式、電磁式。そしてもう一つが、音叉振動式、です。音叉振動式の元になる音叉センサは、もともと日本で開発された技術として存在していました。しかし音叉センサだけでは、測ることができません。

そこで、音叉センサを、はかりに応用するため、新光電子が研究開発を繰り返し、一体型のユニットをつくることで1983年に完成したのが、『音叉式高精度力センサ』なのです。センサーの消費電力が少ない、起動のウォーミングアップが不要、耐ノイズ性に強い、長期安定性に優れる、など数々のメリットを持つ『音叉式高精度力センサ』による音叉振動式はかりは、研究機関、医療、製造、物流などなど、高性能なはかりを必要とするあらゆる分野で、大きく貢献しています。

直径8.2m、重量23tの歪みを一瞬で測定補正

今一度、『すばる望遠鏡』の話に戻しましょう。様々なテクノロジーが集結した『すばる望遠鏡』。中でも、有効直径8.2mの巨大な主鏡を理想的形状へ保ち続けるためには、力を測るセンサーがキーテクノロジーとして必要でした。8.2mの主鏡は、重さが23tもあり、261本のアクチュエータ(能動支持機構)で支えられています。

 

天体観測は、夜から明け方まで、星に合わせ、望遠鏡も同じように動くため、23tという、とてつもない自重により、どうしても歪みが発生してしまうのです。それを、瞬時に『音叉式高精度力センサ』の組み込まれたアクチュエータが重さによる歪みを測定、補正し、円滑にして正確な観測を実現します。数値的には、関東平野に匹敵する直径100kmの表面をプラスマイナス2mmの歪みに抑える超高精度が求められる、といえば、どれ程、凄いことかが、ご理解いただけるのではないでしょうか。

このキーテクノロジーを実現するため、最適なセンサーをプロジェクト関係者が探していたところ、『音叉式高精度力センサ』の開発を伝える展示会を通し、その存在を知り、新光電子に声がかかったのだそうです。「世界一の望遠鏡をつくろうと、あきらめずに技術を集結させようとしていた段階で、偶然、当社の展示会が目にとまったようです。このセンサーの技術を使えば実現できるのでは、の着眼点を持ち、お声をかけていただきました。当社としても、開発した『音叉式高精度力センサ』を、はかり以外の違う分野で活用できないだろうか、の想いがありましたから、お話をいただいた時点で、参画を決断しました」と、当時を振り返ってくれたのは、当プロジェクトにも深く携わった、新光電子・技術部部長の照沼孝造さんです。

とはいえ、『すばる望遠鏡』に『音叉式高精度力センサ』を適合させるための開発は、決して平坦なものではありませんでした。それまで『音叉式高精度力センサ』を用いて商品化していたはかりは、数kgを測れるもの。それが、1本のアクチュエータにつき、90kgを誤差なく測れるようにとの内容でしたが、最終的には150kgを測れるものを、という要望が出されました。厳しい要求精度を、その都度クリアし、最終的なセンサーの形が完成するまでには、3年~4年の月日を要したのです。

 

創始者から受け継がれた「独自性を持つ」ことへの想い

2002年:第27回『発明大賞』大賞を受賞
2005年:第1回『ものづくり日本大賞』優秀賞を受賞
2007年:『いばらき産業大賞』奨励賞を受賞
2009年:『日本機械学会関東支部技術賞』を受賞

これらは、『音叉式高精度力センサ』の技術に関する、新光電子の主な受賞歴です。また、新光電子は、2006年、経済産業省による『元気なモノ作り中小企業300社』にも認定されています。ここで、再び、新光電子の照沼さんにお話を聞きましょう。

 

「当社、新光電子の創設者である故人の西口護は、生粋の技術者であり、学者であり、大学の先生もしていました。差動トランス式測定器を、日本で初めて工業化した人物でもあったのです。西口には、他社にマネのできない独自性を打ち立てたものでやっていこう、との強い信念があり、私たち社員は、その想いを今も受け継いでいます。その意味で、当社の技術が『すばる望遠鏡』に採用されたことは、創設者の想いを実現できた象徴的なこと。小さな一企業に過ぎない新光電子が、『音叉式高精度力センサ』というオリジナルのテクノロジーで、日本の科学技術に貢献できたことを嬉しく思います」

 

 

ふと疑問に感じたのは、世界に誇れる技術を持った企業が、なぜ茨城県下妻市にあるのか、の点。この疑問を照沼さんに投げかけると「新光電子・つくば事業所の所在地は、はかり工業団地と呼ばれる工業団地です。かつては12社程の、はかりに関する会社が存在していました。そこで当社も、1973年に、つくば事業所として工場を新設したのです」とのことでした。様々な分野で、大きなポテンシャルを有する茨城県という場所。今回、取材を受けてくださった新光電子のように、世界レベル、果ては宇宙規模のテクノロジーが、ここ茨城県から誕生していくことを、これからも期待したいものです。

 

音叉式センサと防爆技術で水素社会の発展に貢献~水素計量~

水素は安定供給が可能で使用時にCO2や有害物質を排出しないクリーンなエネルギーです。また、水素を使用する燃料電池は、高いエネルギー効率が得られ省エネが期待できます。そのため水素の利用、水素社会の実現は地球環境保全に大きな貢献をします。

水素社会の取り組みのひとつに、燃料電池車があります。この燃料電池車に水素を供給する水素ディスペンサーは取引・証明に利用されるため、適正な計量の実施が求められ、水素ディスペンサー用の流量計の検査は重量法で行うことが日本工業規格(JIS)で制定されました。

水素用流量計の校正には、350kgを1gの単位で計量する高精度な電子はかりが必要です。また、水素は極めて危険なガスの一つで、高度な防爆構造技術が不可欠です。


世界唯一の音叉式センサと防爆技術

これを実現したのが弊社の音叉式高精度水素防爆電子はかりです。音叉式力センサの計量性能と防爆技術を組み合わせた、本質安全防爆構造の電子はかりです。
新光電子株式会社は、これからも独自の技術で豊かな社会づくりと地球環境保全に貢献します。

 

関連情報

新光電子株式会社(外部サイトへリンク)

 

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