令和4年第3回定例会で可決された意見書・決議・請願


防災・減災、国土強靱化対策の更なる推進を求める意見書

 令和元年東日本台風や房総半島台風など、近年の気候変動により頻発化・激甚化する自然災害から国民の生命と財産を守るため、令和3年度より新たに対策が重点的・集中的に講じられることとなった「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を着実に実施するとともに、こうした取組の更なる加速化・深化を図ることが極めて重要である。

 また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大やウクライナ情勢による物価高騰などにより、経済の下振れリスクが高まる中、税収の減少、感染拡大防止対策費や社会保障関係費、インフラ施設等の老朽化対策費の増加などにより、厳しい財政運営が懸念される。

 以上のことから、下記の事項を実施するよう要望する。

  1. 令和元年東日本台風により被害を受けた河川等の迅速な災害復旧に取り組むとともに、再度の災害発生を防止するための改良復旧に必要な予算を確保すること。
  2. 「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に必要な予算・財源を確保し、計画的に事業を推進するとともに、5か年加速化対策後も、予算・財源を通常予算とは別枠で確保し継続的に取り組むこと。
  3. 久慈川の災害復旧・復興などで、迅速かつ機動的に実施されている国の権限代行が円滑に推進されるよう地方整備局等の体制の充実・強化や災害対応に必要となる資機材の更なる確保を図ること。
  4. 経済の下支えとなる公共投資を確実に推進していくため、当該公共投資に係る地方負担を軽減する財政措置を講ずること。
    

障害者虐待防止法の改正等を求める意見書

 現在、国は「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下「障害者虐待防止法」という。)において、虐待を未然に防止するために、障害者福祉施設従事者等による虐待を発見した者に対し、市町村等への速やかな通報義務を課している。

 一方で、医療機関の医療従事者等による障害者への虐待については、既存の法令で対応可能な部分があることなどから、障害者虐待防止法の通報義務の対象となっていないが、令和2年4月に厚生労働省が行った調査によると、精神科病院で医療従事者による虐待が疑われる事例が平成27年度から令和元年度までの5年間で72件あったとされている。

 この背景には、60年以上前の昭和33年に国が定めた医療法におけるいわゆる精神科特例により、精神科の医療機関の医療従事者の人員配置標準を一般病院と比較して医師数は3分の1、看護師と准看護師は3分の2と規定したことにより医療従事者に負担が生じていることや、精神科の病床に対する診療報酬が一般病床の約3割に止まり、人員を十分に配置できないことがあると考えられる。

 今後、障害者への虐待を根絶していくためには、障害者の虐待防止に向けた取組を更に推進するとともに、医療機関の医療従事者等による虐待についても、障害者虐待防止法に規定する市町村等への通報義務の対象として加えることが重要である。

 さらに、精神科の医療機関の患者に対する適正な処遇を確保するため、医師や看護師等の人員配置の見直しや、病院経営の基盤強化に向けた施策も不可欠な取組である。

 よって、国会及び政府に対し、精神科の医療機関における虐待を防止するため、次の事項に取り組むよう強く要望する。

  1. 国などで行われている障害者虐待防止・権利擁護研修制度の拡充や取組参考例の周知等を更に進めることにより、障害者の虐待防止に向けた取組を更に推進すること。
  2. 障害者虐待防止法を改正し、虐待発見時の市町村等への通報義務対象に、医療機関の医療従事者等による虐待を発見した者を加えることとし、併せて、その通報者に対する法的保護を規定すること。
  3. 精神科特例を見直すとともに、診療報酬の改善など精神科の医療機関の経営基盤を強化するための施策に取り組み、医療や介護に携わる方々の人材確保と待遇改善を図ること。
    

電気料金をはじめとした物価高騰に対して対策を求める意見書

 長期化するコロナ禍に加え、ロシアによるウクライナへの侵略により世界情勢が混迷を深めるなか、我が国では円安の影響も加わり、物価の高騰が続いている。

 とりわけ、電気料金については、ウクライナ危機などで火力発電の燃料となる液化天然ガスや石炭の輸入価格が高騰したことが影響し、東京電力を含む大手電力10社の全てにおいて燃料費の上昇分を料金に上乗せできる燃料費調整制度の上限に達する見通しとなっており、全社が上限に達する見通しとなるのは燃料費調整制度が現行基準となって以降、初めての事態となっている。

 今般の物価高騰は電気料金だけではなく、原油や原材料の価格高騰により、ガスや食料品等の価格にも及んでいる。この影響は国民のみならず事業者にも及んでおり、新型コロナ感染者の対応に追われる医療機関・介護事業所をはじめ、原油・原材料価格の高騰や円安の影響を受けている中小企業や、米価の低迷などで収入が減少した農家への負担金引き上げが困難な土地改良区から対策を求める声が挙がっている。

 よって、政府においては、電気料金をはじめとした今般の物価高騰に起因する国民の生活及び事業者の経済活動における負担を軽減するため、下記の事項について緊急の対策を講ずるよう強く要望する。

  1. 地方自治体において、今般の物価高騰に伴う国民や事業者等の負担の軽減に向けた取組を確実に進めることができるよう、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の財源確保など、地方に対する十分な財政措置を講ずること。
  2. 電気、ガスなどの公共料金の上昇を抑えるため、供給事業者への適切な支援策を講ずること。
  3. エネルギー及び原材料の価格高騰を踏まえ、経営の安定化を図るとともに販売価格の上昇を抑制するため、各産業分野への支援の強化に取り組むこと。
    

性暴力の根絶に向けて地方自治体との連携強化を求める意見書

 性犯罪・性暴力は、被害者の尊厳を著しく踏みにじり、その心身に長期にわたり重大な影響を及ぼすものであり、その根絶は早急に解決しなければならない喫緊の課題である。

 一方、性犯罪については、犯罪が露見することで加害者が職等を失い更生の道が閉ざされることや、本人だけでなく、家族も平穏な生活を失うことがあるといった問題も指摘されており、被害者支援を積極的に進めるとともに、再犯防止や加害者の更生支援も重要である。

 このような中、本県議会においては、被害者支援並びに犯罪の再発防止及び加害者更生支援を図ることによる性暴力の根絶に向けた条例の制定に取り組んでいるところである。

 条例制定の検討の中で、これらの対策を進めるためには、国、自治体、各種団体等関係機関との連携や加害者等に係る情報の共有が不可欠であるとの意見が出されている。

 とりわけ、情報共有に関しては、再犯防止のための支援を行うに当たっては、対象者の把握・確認等のため、その情報を得る必要があるものの、当該情報については、加害者の利益を保護する必要性等から国の機関など限られた組織のみが所有するものが多く、地方公共団体がそうした情報を独自に収集することは容易ではない。

 このため、これらの情報に関して、厳重な管理の下で、性暴力根絶に真に必要なものについて自治体に共有を図っていただくよう求めるものである。

 よって、下記の事項を実施するよう、要望する。

  1. 性犯罪・性暴力の被害者及び加害者支援の充実を図るとともに、国が所有する加害者等の情報について、捜査から出所後に至るまでの各段階において、厳重な管理の下での共有と併せ、自治体が行う被害者及び加害者支援のための各種事業に係る情報が対象者に確実に提供されるような仕組みを創設すること。
  2. 加害者の再犯防止や更生に向け、地方の実情を十分に聴き取った上で、地域のガイドラインとなる再犯防止プログラムを早期に策定すること。/li>
  3. 上記事項を推進し、性暴力根絶に向けた取組に実効性をもたせるために、関係法令等の整備や十分な予算措置を行うこと。
    

教職員定数改善及び義務教育費国庫負担制度堅持を求める意見書

 学校現場では、貧困・いじめ・不登校など解決すべき課題が山積しており、子どもたちのゆたかな学びを実現するための教材研究や授業準備の時間を十分に確保することが困難な状況となっている。また、新型コロナウイルス感染症対策に伴い、教室の消毒作業等の新たな業務も発生している。ゆたかな学びや学校の働き方改革を実現するためには、加配教員の増員や少数職種の配置増など教職員定数改善が不可欠である。

 令和3年3月の義務標準法の改正により、小学校の学級編制標準は段階的に 35 人に引き下げられることとなったが、今後は、小学校だけに留まることなく、中学校・高等学校での 35 人学級の早期実施も必要である。加えて、きめ細かい教育を進めるためには、さらなる学級編制標準の引き下げ、少人数学級の実現が不可欠である。

 一方、厳しい財政状況の中、独自財源により人的措置等を行っている自治体もあるが、自治体間の教育格差が生じることは大きな問題である。義務教育費国庫負担制度については、「三位一体の改革」の中で平成 18 年度に国庫負担率が2分の1から3分の1に引き下げられた。国の施策として定数改善に向けた財源保障をし、子どもたちが全国のどこに住んでいても、一定水準の教育を受けられることが憲法上の要請であり、ゆたかな子どもの学びを保障するための条件整備は不可欠である。

 よって、国会及び政府においては、地方教育行政の実情を十分に認識され、地方自治体が計画的に教育行政を進めることができるように、下記の措置を講じられるよう強く要請する。

  1. 中学校・高等学校での 35 人学級を早急に実施すること。また、さらなる少人数学級の推進について検討すること。
  2. 学校の働き方改革・長時間労働是正を実現するため、加配教員の増員や少数職種の配置増など教職員定数改善を推進すること。
  3. 教育の機会均等と水準の維持向上を図るため、地方財源を確保した上で義務教育費国庫負担制度を堅持すること。
    

安倍晋三元内閣総理大臣に哀悼の意を表し、暴力に屈しない健全な民主主義を守る決議

 去る7月8日、安倍晋三元内閣総理大臣が参議院議員選挙の応援演説中に銃撃され、逝去されるという前代未聞の事件が発生した。

 暴力によって言論を封殺することは断じてあってはならず、選挙期間中における暴挙は、民主主義の根幹を揺るがす行為であり、決して許されるものではない。

 安倍晋三元内閣総理大臣は、憲政史上、最も長く政権を担われ、力強いリーダーシップにより、内政・外交の両面にわたり、我が国の発展に貢献された。

 また、本県に対しても、G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合の誘致実現及び本県に甚大な被害をもたらした平成27年9月の関東・東北豪雨の際には、すぐに現地を訪れて被災者に寄り添い、被災地域の復興に御尽力いただくなど、様々なお力添えをいただいた。

 ここに茨城県議会は、安倍晋三元内閣総理大臣への哀悼の意を表するとともに、暴力に屈しない健全な民主主義と、安全・安心な県民生活の実現に取り組むことを表明する。

    

教職員定数改善と義務教育費国庫負担制度堅持のための政府予算に係る意見書採択を求める請願

 学校現場では、新型コロナウイルス感染症対策の対応も含め、解決すべき課題が山積しており、子どもたちのゆたかな学びを実現するための教材研究や授業準備の時間を十分に確保することが困難な状況となっている。ゆたかな学びや学校の働き方改革を実現するためには、加配の増員や少数職種の配置増など教職員定数改善が不可欠である。

 昨年度、改正義務標準法が施行され、小学校の学級編制標準が学年進行により段階的に 35 人に引き下げられた。今後、小学校だけに留まるのではなく、中学校での 35 人学級の早期実施が必要である。さらに、きめ細かな教育をするためには 30 人学級などの実現が不可欠である。

 義務教育費国庫負担制度については、「三位一体改革」の中で 2006 年度に国庫負担率が2分の1から3分の1に引き下げられた。一方、厳しい財政状況の中、独自財源により人的措置等を行っている自治体もあるが、自治体間の教育格差が生じることは大きな問題である。国の施策として定数改善にむけた財源保障をし、子どもたちが全国のどこに住んでいても、一定水準の教育を受けられることが憲法上の要請である。ゆたかな子どもの学びを保障するための条件整備は不可欠である。

 こうした観点から、政府予算編成において下記の請願事項が実現されるよう、地方自治法第 99 条の規定にもとづき国の関係機関への意見書提出を請願する。

  1. 中学校での 35 人学級を早急に実施すること。また、さらなる少人数学級について検討すること。
  2. 学校の働き方改革・長時間労働是正を実現するため、加配の増員や少数職種の配置増など教職員定数改善を推進すること。
  3. 教育の機会均等と水準の維持向上をはかるため、地方財源を確保した上で義務教育費国庫負担制度を堅持すること。