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更新日:2017年6月30日

池上薬局 池上靖人さん / 創業82年の老舗薬局が果たす、まちの健康相談所としての役割。そして、クリエイティブな漢方。

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インタビュー

突然ですが、「漢方」と聞いて皆さんが思い浮かべるのことは何でしょうか。大半の人が葛根湯くらいかな…?といった感じではないでしょうか。ですが、自分が住んでいる街を注意深く観察してみると、漢方や漢方相談を掲げた薬局は比較的身近にあるようにも思います。

地域に愛された古い商店を改築したシェアオフィス”かどや”(外部サイトへリンク)と元歯科医ビル1棟を改装したシェアオフィス”ひたちたが”(外部サイトへリンク)の2つがある常陸多賀の駅前商店街。その2つのシェアオフィスと同じ商店街沿いに今回取材させて頂いた、池上薬局さんはあります。

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上野から特急に乗り、1時間25分で常陸多賀駅に到着。

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駅前商店街。かつての盛り上がりが残ってるとは言えないものの、歴史や物語が染み付いている雰囲気を醸し出しています。そこにシェアオフィスという新しい場がクロスして、面白い文化が生まれようとしています。

創業82年、4代続く老舗薬局。

創業は昭和10年の1932年。この年、東京では築地市場が開業。また、上野を目指す行商人で溢れた当時の常磐線(当時、常陸多賀駅は下孫駅といったそう)では、婦人行商人専用列車というのが新設された年だったようです。時代を感じます。

そんな中、創業された池上薬局さん。当時薬屋は地域では珍しく、行列が出来た程だったとのこと。現在も3代目の池上和伸さん、息子さんで4代目の靖人さんの親子2代で営まれている”まちの薬局”です。

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看板には「治りたい心と治したい心」とあります。

私の祖父が創業して、母が2代目を継いでおりました。私は家業は手伝わずに、薬剤師としての知見を活かして、県庁や分析センターなど水戸近辺で働いていました。母が亡くなって、こちらに帰ってきて、祖父と母が守ってきた池上薬局を引き継ぐという形になりました。そして息子の代で4代目になります。4代続く薬局ってなかなか珍しいようですよ。(3代目 池上和伸さん)

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3代目の池上和伸さん。白衣にネクタイがとてもお似合いで、快く取材に受け答えして下さいました。

日本の中小企業の場合、30年以上存続する生存確率は約0.025%。それが、80年以上も続くなんてのは奇跡中の奇跡と言えます。(ちなみに同じ常陸多賀商店街にある、呉服屋”志お屋”も90年以上の老舗店で、改めてインタビューを掲載予定です。)

漢方はクリエイティブ

渋谷や恵比寿のドラッグストアで働いていた4代目靖人さんが十数年前、常陸多賀に戻ってきた時を境に池上薬局さんでは本格的に漢方処方を始めました。3代目であるお父さんの和伸さんも、漢方に関しては息子の方がプロフェッショナルですねと言います。

そんな靖人さんが、漢方に興味を持ったきっかけは何だったんでしょうか?

東京に住んでいた時、勤めていたドラッグストアでは、薬以外にもジュースやお菓子なども頑張って売らなければいけなかったので、よく重い荷物を運んでたんですね。そしたら腰を痛めてしまって、痛み止めを常用していたんです。当時漢方には全然興味がなかったのですが、ふと成分表を見てみると入ってるのは漢方なんですよね。そこから、徐々に漢方に興味が湧いてきて、学べば学ぶ程楽しくなってきたんですよね。

漢方って西洋医学のアプローチだとなかなか理解が出来ないんです。木を見ながら、森を見なければいけない学問で。何を処方するか選ぶのがすごく難しいんです。必然的に、短い問診時間での判断がしづらい。なので、患者さんの生活習慣や体質などと時間をかけて向き合って、理解していく必要があるんです。

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ずらりと並ぶ漢方の数々。思わず、これ何に効くんですか?次々と質問攻めをしてしまいます。ちなみに、漢方はあの空海さんが中国より日本に持ち込んだそうです。

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当帰という漢方の一種。冷え性や貧血、血行障害など女性に多い症状に良く効くそうです。

よく漢方って食前に飲みなさいって言われますよね。あれは、食後では吸収しないから食前に飲むのが良いと一般的には言われているんですが、実は違うんです。漢方の成分が、普段私たちの食事に近いからなんです。それにより、意図された漢方成分と混ざり薬方が変わってしまう可能性があるからなんです。

でも、それだけ自然なものなんですよね。口から自然のものを入れて、腸で栄養を吸収して、不要なものは排便をするという素晴らしい機能を人間はもともと持っているわけですから、それを利用しない手はないんですよ。

漢方の腕って…鈍るんですよ。鈍る。カメラマンさんとかも同じかなと思うんですけど。僕らも同じで、漢方やってないと鈍るんです。加えて、勘も磨いておく必要がある。普段の勉強に加え、月に一度東京で開催されている漢方の勉強会や情報交換の場にも積極的に参加しています。

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風邪を引いたら葛根湯一択というのは実は危なくて…と色々とご説明頂きました。奥が深いです!漢方。

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なんと、猿の頭を黒焼きした猿頭霜という漢方も!こちらは脳の疾患に効くそうですが、高額でなかなか使う機会はないとのこと。

漢方×地域

聞けば聞くほど興味深い、池上靖人さんの漢方のお話し。そして取材終了時刻をとうに過ぎた頃、この漢方薬局という形は地域にとって重要な立ち位置に成り得るのかもしれないという気付きを得ることになります。

 今でこそ薬屋さんってお医者さんから出された処方箋の薬をもらう場所ってイメージになってますけど、昔はまちの健康相談所だったんですよね。そういう部分は大切にしたいなと思っていて。ふらっとお客さんが立ち寄ってくれて、色々な話しをする中で、どこどこが調子悪いのよって相談になるんです。それって大事ですよね。

漢方の専門者というのと、気軽に相談出来る地域のお兄ちゃんという存在でいること両方が必要かなと。漢方的なアプローチは、どうしても時間がかかるし、患者さんとの信頼関係が大事なんです。経営的に考えても、そういう治療をする薬局の方が長続きするんじゃないかと思っています。

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気軽に相談出来る地域のお兄ちゃんであり続けたいと池上靖人さん。

必然的に高齢者との付き合いが深くなっていくんですけど、一人暮らしのおばあちゃんとかも大勢いるわけですよね。そうすると、行政サービスとかにお世話になった方が良い場面でも億劫なんですよね、おばあちゃんたち。

そこに僕みたいな地域のお兄ちゃんが間に入って橋渡しをすることもあったりね。漢方相談など含めて日頃からコミニケーションをする機会が多いので、それが商売的な部分じゃないところでも、地域の役に立てればなと考えています。

なるほど。漢方そのものも興味深いですが、地域にとっての漢方という考え方は非常に面白いかもしれません。

漢方処方の質を高めるためには、お客さん一人一人の状態や体質を理解する必要があるのでコミニケーションが非常に重要になってきます。ここで、画一的でない商売の在り方が必要とされます。一見、都会的な視点で見ると非合理的に見えますが、数値化しづらい信頼関係が必然的に生まれていきます。その信頼関係から、先ほどの靖人さんの話しのように高齢者にとってのコーディネーター的な役割も担うことが出来る。そしてだからこそ、地域で80年以上4代に渡って”まちの薬屋”を続けてこれたのだろうと思います。

これって僕たちクリエイターが地域で暮らし働き生きていく上でも大変参考になる関係性ですよね。漢方が持つ一見非合理的でいわゆる東洋的医学的な性質は、ただ薬効を生むだけでなく、地域の繋がりという面を生む可能性も多いにありそうだなと感じました。

 

池上薬局

HP http://ikegami-japan.com(外部サイトへリンク)
住所 / 日立市千石町1-3-3
電話 / 0294-33-0107
営業時間 / 10時~18時
店休日 / 毎週日曜・祝日

今回取材させて頂きました池上薬局さんでは、漢方相談を無料で実施しています。
実は取材中、長年の朝の腹痛を相談したところ一発で原因を当てて下さいました!すごいです。女性系の病気や、心の病気にも漢方は相性が良いようです。ぜひ県北にお越しの際は立ち寄ってみて下さい。

文・写真 / 山根 シン

 

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電話番号:029-301-2715

FAX番号:029-301-2738

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