ホーム > 茨城県の各部局の業務案内 > 政策企画部 > 本庁 > 県北振興局 > ケンポクの記事 > 地元を想う気持ちを、自分らしいやり方で地元に還元していく環境をつくる/常陸大宮市・山方の地域活動プロジェクト「トリングル・ユナイテッド」鹿島拓人さん
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更新日:2017年10月17日
こんにちは。最近、茨城県北の山側エリアが気になっている、日立市在住の柴田美咲です。
今回は、茨城県の北西部に位置する常陸大宮市で、消防士をしながら地域活動プロジェクト「トリングル・ユナイテッド」を立ち上げた、鹿島拓人(かしまたくと)さんにお話を伺いました。
スカッとした秋晴れの日。
常陸大宮市を流れる久慈川の河川敷で、小石を探し、水切りをする青年の姿がありました。
鹿島さんにとって自然は最高の遊び場
鹿島拓人さんは生まれも育ちもここ常陸大宮市。なかでも地元である山方地区に対する思い入れが強く、現在は消防士として仕事をするかたわら、自ら立ち上げた地域活動プロジェクト「トリングル・ユナイテッド」の活動もされています。
常陸大宮市山方地区の美しい田園風景
さらには、山や川で遊んだり、海まで車を走らせてサーフィンをしたり、自宅で音楽や動画の制作をしたり、木製のサーフボード作りにチャレンジしたりと、クリエイティブな暮らしぶり。暮らしそのものを楽しんでいる様子が目に浮かびます。
これでなにかできそうだと思いもらってきたという古い机
高校までは山方に住んでいて、卒業後は神奈川県の大学に進学しました。神奈川に住むようになっても、しょっちゅう地元に戻ってきてましたね。大学4年生のときには神奈川の家を引き払って、常陸大宮から通学してたんです(笑)。やっぱ地元が好きだし、しかも常陸大宮を拠点にしていればいつだって山遊びも川遊びも楽しめる。少し車を走らせれば、思う存分サーフィンもできますからね。
鹿島さんが代表を務める「トリングル・ユナイテッド」は、「自分の地元を語れる自分に」をミッションに掲げた、地元の若者を中心とした地域活動プロジェクト。主な活動として、常陸大宮市の暮らしの様子やイベント情報をSNSやラジオで発信したり、市内のガイドをしたり、地域のローカル情報や山方地域のお祭りで踊る山方音頭を紹介する動画(外部サイトへリンク)を制作・配信したりしています。最近は空き家を借り、鹿島さん自身が住みながら、地域の若者や留学生が集える場づくりも始めているそうです。
川辺だけでも様々な過ごし方ができるそう
友人の紹介で知り合った県外の大学生など外の人だけでなく、あえて地元の若者をガイドすることもあります。各場所に行くだけでなくそこでの楽しみ方を伝えたり、地域住民のライフスタイルや現状・課題も見てもらったり、地元の人と話したりできるよう工夫しています。空き家を借りて住むようになってからは、高校生たちが家に訪ねてきて悩み相談を受けるようにもなりました(笑)。その子の口から自然に地域の課題点についての話が出てくるようになったのはうれしかったですね。少し前にはパラオ共和国からの留学生が滞在していたので(※)、一緒にまちを歩いたり、地域のソフトボールの練習にも連れていきました。最初はなんで連れてきたんだよという険悪なムードでしたが、最後のほうには打ち解けて、いつの間にか次の約束まで(笑)。いろんな方法でこういう連鎖を広げていきたいですね。
※常陸大宮市は今年4月、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおけるパラオ共和国の事前キャンプ地として決定しました。
まさに地域のパイプ役的存在の鹿島さん。取材中のこのときも近所のお父さんが鹿島さんのお宅へ訪ねてきました。これから一緒に小学校の手伝いをしてくるそうです。若者に限らず、地域の人と人とのつながりを大事に活動されています。
トリングル・ユナイテッドを立ち上げたのは、同級生の存在が大きなきっかけとなりました。地元には80人の同級生がいます。小さい頃からの付き合いなので、いまも仲が良いんです。家業を継いだり、好きなことを生業としていたり、個性が強い友人たちだけど、『地元が好き』という想いは一緒。中には、バックパッカーやオペラ歌手を目指して世界に飛び出してる人もいる。でもみんないつかはここに戻ってきたいと言っているし、実際に戻ってきている人もいますね。彼らの唯一無二の経験や世界観を表現できる環境をつくるのが、地元に残っている自分の役目だと感じたんです。
アーティストとして活動されている、同級生の桐原翔太さんが作った作品
故郷を離れても変わることのない、地元が好きという気持ち。自分の経験をいつか故郷に持ち帰り、恩返しをしたいという気持ち。一度故郷を離れたことのある鹿島さんは、そんな仲間たちの気持ちがよく分かるのでしょう。仲間たちが安心して戻って来れるように、ここで自分というものをまるごと社会に活かせるように、自分が環境を整える。
鹿島さんがそう思ったのは、消防の採用試験を受ける前からのこと。面接の際にもこの想いを語ったそうです。
トリングル・ユナイテッドを立ち上げて約5年が経ち、これからは地元や茨城だけにとどまらず、県外や海外に向けてもどんどん発信していきたいと言います。
鹿島さんの住居兼交流スペース。もともと空き家で少しずつ改修しながら暮らしている
伝統的な住まいの雰囲気を感じられる
山方での暮らしを体感できる場所、活動の拠点となる場所をつくりたくて、空き家を借りました。常陸大宮市の中でも、ここ(山方)は観光スポットと呼ばれる場は少ないので、ここでの日常そのものを楽しめる仕組みをつくって、県外や海外の人に味わってもらいたいなと。実際に、知人の紹介で海外から人が来てるんですが、仲間を呼んで日本食をふるまったり、地域のソフトボールチームの練習をした後に川でバーベキューしたり、ここを拠点に近隣のまちに出かけたり、住民目線で過ごしてもらっています。この辺は空き家が多いのですが、活用まではなかなか難しいのが現状です。今後、地域の人へ空き家の有効活用を提案していくためにも、まずはここで試しているところです。空き家活用のいいモデルになれたら。
名前に込めた想いとしては、まず、地域には「子ども・成人・高齢者」がいて、 地域づくりには「よそ者・ばか者・わか者」が必要。その3者をリンクすることにトライし、トライアングルを形成していく意を込めて「トライ・リンク・トライアングル=トリングル」。さらに、個々の様々な視点からできる範囲で地域にアプローチするという、全く新しい集合体ということでユナイテッド。地域活動に団体という組織は必要ないのではと思って。
団体や組織という形にこだわらず、集合体という横のつながりでプロジェクトを進めていきたい。現にコアメンバーをつくっておらず、でもなにかやるとなったときは協力してくれる人がたくさんいると言います。以前は先頭に立って動いていた時期があり、チーム内や地域の人との温度差を感じることもあったとのこと。これではまち全体を盛り上げていくことは難しい、みんながもっと自然に地域のことを考えたり、気軽にアクションを起こしたりするには、どうしたらいいのだろうか。今の在り方はその経験から導き出したものでした。
チームとして誰かが先頭に立ってなにかをやる、それをくり返すよりも、それぞれができることを自ら実行する力を広げていったほうがいい、そう思ったんです。例えば、自分の地元のことを人に話すとか、情報を発信するとか、地域で仕事をするとか。考える、それだけでも地域活動になる。イベントをやれば盛り上がりますが、最大の目的は地域のことに無関心である住民や若者にアプローチしていくこと。『自分を表現できる場所』が若者たちに浸透していき、自分で考え、仲間と語り、アクションを起こしていきやすい環境づくりが大事かなと。そうなれば住む人が増えたり、自ら仕事を生み出せる人が増えたりするかもしれない。地元が好きという気持ちを気軽に地域へ還元していく仕組みをつくりたいです。
自分たちがやっていることは中長期的なものだから結果として見えにくいし、こういう運営の仕方は前例がないのできっと分かりにくいと思います。パッとはしないけど、じわじわ浸透させていくパターン。長い目で見ていくしかない。今、好き勝手やらせてもらっているように、僕がおじいちゃんになったときには、若者の活動を見守るポジションに移れているといいな。そのためにも今、ベースづくりを責任もってやっていかないとですね。
活動を見守ってくれている職場の方々や地域の方々に感謝しかないと鹿島さん。好き勝手やるのではなく、暮らしている人のことをしっかり考えて行動する。これからも鹿島さんらしいやり方で活動を続け、温かさをもつないでいってくれることでしょう。常陸大宮市への移住を考えている方は、ぜひ一度、鹿島さんとお話をしてみてください。
文 ・写真 / 柴田美咲
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