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更新日:2018年1月31日

人と人が交わる“公園”のような喫茶店「シフォンケーキと紅茶の店 詩穂音」(日立市)

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けんぽくレポート

公園の風景は、天気・時間・季節・やってくる人など、そのとき居合わせたものたちによって変化してゆきます。常に変化する空間の中で、人はそれぞれ思い思いの時間を過ごしていますが、ときに人やモノが交差したり、新しいものが生まれたりすることもあるでしょう。

先日そんな光景を目にしたのですが、そこは公園ではなく喫茶店でした。

こんにちは。日立市在住ライターの柴田美咲です。
芸術の秋真っただ中の11月、私は日立市川尻町の静かな住宅街にある『シフォンケーキと紅茶の店 詩穂音(しふぉん)』を訪ねました。

それぞれの時間を楽しみ、ときにテーブルを越えて会話が生まれる。

 

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絵本に出てきそうなかわいらしい外観。

 

日立市の北東部に位置する川尻町は、住宅が立ち並ぶ静かで穏やかなエリア。太平洋に面したまちの東側には小さな海水浴場や漁港があり、かつてにぎわっていたであろう港町の雰囲気が漂っています。
最寄り駅はJR常磐線の十王駅。駅から東に向かって歩くこと10分ほど、住宅街の一角に「シフォンケーキと紅茶の店 詩穂音」(以下「詩穂音」)はあります。
2000年に老舗菓子店・大高かおる堂の姉妹店としてオープンした詩穂音さん。外観は絵本に出てくるようなかわいらしいおうちのようです。ただ、隠れ家のように佇んでいるこの店は、何度来ていてもたまに通り過ぎてしまうことがあります。

 

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詩穂音マスターの小峰力さん

 

お店に着いたのは15時。店内に入るとマスター・小峰力(こみねつとむ)さんが出迎えてくれました。
この日は茨城県笠間市を拠点に活動されている作家さん、あたかゆきさんと薺藤詩織さんのおふたりによる個展『sotto yorue(そっとよるへ)展 「いつだってここに夜」』の初日。搬入を終え、展示作業をしていたおふたりの姿と、ドリンク片手に楽しそうに語り合うお客さまの姿がありました。
みんなふらっとここに来て、本を読んだり作品を鑑賞したりしてそれぞれの時間を楽しむ、かと思えばお客さん同士で会話が交わされたり、たまにマスターもお話に加わったり、そしてまたそれぞれの時間に戻っていたり。それぞれのペースで楽しんでいるように見えました。

作品だけでなく作り手にも出逢え、自らも作り手となれる機会がある

そんなことを感じていると、注文したシフォンケーキセットが到着。店名の通り、シフォンケーキと紅茶がオススメのこちらのお店。軽いイメージのあるシフォンケーキですが、詩穂音さんのケーキはふわふわ&もっちりしているため、けっこう食べ応えがあります。紅茶も常時数種類用意されていて、ポットでたっぷりいただけます。

 

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マスターがつくるシフォンケーキ。この日はマーブル。

 

シフォンケーキをいただいている間、作家さんがひとつ、またひとつと作品で彩っていきます。展示会へ行き作品を見ることはあっても、展示作業を見る機会はそうそうありません。作品はもちろん展示も表現のひとつ。その過程もまた感性を刺激してくれます。

 

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作家さんがふわりと壁を変化させてゆく。『sotto yorue』のあたかゆきさん。

 

店内が喫茶店兼ギャラリーへと変わっていったのは2003年のこと。どうしてそのような形態にされたのか、マスターの小峰さんに理由を尋ねました。

ぼくのライフワークは画家なんです。出身は東京ですが、結婚をして妻の実家である日立市に住まいを移したことをきっかけに、妻は菓子職人として、僕はこの喫茶店の雇われマスターとして働くことになりました。それが2002年のことです。
当時、壁が真っ白で、それがあまりにも寂しかったから、自分の作品を飾ることにしたんです。さすがに自分のものだけでは飽きてくるので、作家として活動している学生時代の友人に電話して、作品を郵送してもらい企画展を開いたんです。そのことがギャラリーの始まりでした。
水戸より北に住んでいると、首都圏に出るのもけっこう労力がいりますよね。作品に触れたくてもなかなか足を運べない、そんなお客さまがここで作品に出会い、気に入ったら購入することもできたらいいなって。喫茶店なので展示の条件は悪いかもしれないけど、作家さんとお客さんとが出会うきっかけをつくれるんじゃないかなと思ったんです。

日立には美術館がないし、ギャラリーも少ない。美術の出版物を扱う書店ですらほとんどありません。日立はすごく大規模な工業都市だけど、残念ながら文化都市ではないなと小峰さんは日立に来て感じたそう。こうして展覧会を始めて8年が経ち、これから本腰を入れてやっていこうとなった2011年、東日本大震災が起きました。

震災後、企画展のような作品を鑑賞すること以外の何かを地域の方たちと一緒にできないかと考え始めました。そこで立ち上げたのが詩穂音写真部。画家のタケベユウくん、写真家のataca makiくんなどとアイディアを出し合って、見る人と見られる人じゃなくて自分も作品に関わる参加型イベントにシフトしたんです。そんな試みを続けていくうち、お客さんが他のお客さんを呼んでくれるようになり、新たな出会いも増えていきました。

 

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出逢いの瞬間。

 

取材をした日は『sotto yorue(そっとよるへ)展 「いつだってここに夜」』初日。企画展は小峰さんが自分で見つけた作家さんと打ち合せを重ね展覧会を作っていきます。これから小峰さんはどんな企みを形にしていくのでしょうか。とても楽しみです。

ギャラリーのスタートと同じ頃、詩穂音では絵画教室もスタートしました。来店されたおばあちゃんから「絵を教えてほしい」との話をいただいたことがきっかけとなり、小峰さん自らが講師となって実施されているそうです。現在の開催日は毎週木・金・土曜日の18:00~20:00。喫茶店営業をいつもより早めに終わりにし、いつもの客席がやがてデッサンの場へと変わってゆきます。
創作が大事と言われている一方で、そういったことを学ぶ機会が圧倒的に少ないように感じると小峰さんは言います。喫茶店という枠を超え、絵を描いて学ぶことができる貴重な学び舎となっています。

詩穂音公園化計画

 

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ある日の風景。

 

昨年5月にオーナーが代替わりして、「詩穂音公園化計画」という新たなプロジェクトが動き出しました。この喫茶店をあたかも公園のように、自然とコミュニティが生まれる空間にしていこうというプロジェクトです。震災のあと、みんながアイディアを出してくれて、常連さんのあたたかさに支えられ、作家さんたちともうまくやりながら今に至っています。僕たちがじゃなくて、人が人を呼んでくれているんです。詩穂音に行くならあの人と、って考えて一緒に来てくれるんです。

取材当日もたくさんの人でにぎわい、居合わせた人同士いつのまにか会話をしているというシーンも多々見られました。その光景はまさに公園。12月には詩穂音で出逢った3人によるライブイベントが店内で開催されました。しかし、コミュニティースペースをつくろうとしているわけではないと小峰さんは言います。

ただなんとなく集まって、何でもいいからコミュニケーション取りましょう、という場にはしたくない。僕が仲良しこよしチームを作ろうとか、まちの活性化のための拠点にしようとか思ってなくて。僕はそういうところには興味がないんです。
ここはあくまでも喫茶店。お店なんだからお客さんがちゃんと楽しむように作っていくことをベースとしたいですね。お客さんのあいだで自然にやりとりが生まれ、たまたまそこから仲良くなって自然に何かが始まったら嬉しいなと思います。

アート作品に囲まれてお茶や食事ができる喫茶店。また、お菓子屋さんでもあり、絵画教室という学びの場でもある喫茶。人と人、人とモノが交わる、でも同じ風景は二度とない公園のような喫茶店。喫茶店と聞くとすこし緊張もするけれど、勇気をもってお店の扉を開いてみてください。


 

紅茶とシフォンケーキの店 詩穂音-シフォン-
住所 / 茨城県日立市川尻町5-5-8
Tel / 0294-43-7855
HP / https://www.chiffonkun.com/(外部サイトへリンク)

営業時間 / 日月火曜11:00〜19:00
 木金土曜11:00〜17:00
定休日 / 水曜日
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