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更新日:2019年3月25日

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かどやでの2年間、常陸太田市でのいまとこれから / Digital dish studio高橋信泉さん (後編)

かどやでの2年間、常陸太田市でのいまとこれから

シェアオフィスかどやに入居し、現在は常陸太田市で活動を展開している Digital dish studioの高橋信泉さんへのインタビュー後編です。

〈 かどやでの2年間、常陸太田市でのいまとこれから(前編)〉

自分のコアな部分に素直になれる環境があるかどうか、そこさえ阻害されなければ、なにごとも前向きに進んでいく

かどやを拠点として約2年活動したのち、空き家バンクで見つけた常陸太田市の古民家に住まいとオフィスを移した高橋さん。事業家である妻・美紀さんの活動(外部サイトへリンク)や子育てのこともあったが、高橋さん自身にとってそこは自由に制作活動をしていくための最適な場所だった。

「音楽ができる場所については現状に甘んじることなく貪欲に追い求めていたい。それがいい音作りにつながりますから。今のところは、ここが一番。機材を置くスペースがあることはもちろん、音を出しても周りの目を気にせずにできる。ドラムをフルに叩いたり、エレキギターを弾いたりと結構な音を出しているんですけど、近所の方からは『もっと出して良いんだよ』と言われることもあります(笑)」

とても苦労したという移住の手続き。暮らしてみてからも、薪割りに芝刈りに回覧板に(回ってくるスピードが早いそう)と、慣れないことでの大変さはあるものの、「自分のコアな部分に素直になれる環境があるかどうか、そこさえ阻害されなければ、なにごとも前向きにすすんで行ける」と高橋さん。

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実はもう一か所、移住先の候補として目星をつけていた場所があったという。それは、高橋さんの生まれ故郷である日立市十王町の空き家。しかしそこは小学校まで片道40分もかかる所にあった。子どもたちへの心配を減らし、自分の時間を持てる方が合理的だ、そう考え今の場所に腰を据えたのだそう。父親業をしていて湧いてきたものをすぐ制作場に持っていける良さもある、そんな話から、高橋さんの言う『クリエイティブ=日常そのもの』という意味がほんのすこしだけ分かったような気がした。

東京にも拠点(スタジオ)を持つ高橋さんは距離という感覚についてこう話す。

「ここで作った音を、今度は東京や軽井沢のスタジオに持っていって別の作業をする。そうやって音楽を完成させていく。近い遠いの距離感については認識の違いですよね。僕はあちこち行ける行動力があるから、ここで暮らしていてもまったく不便さを感じていません。近くに高速バス乗り場もあるし、月に4日くらいは東京に出ています。同じ場所にずっといることの方が危険。ひとつの地域だけで完結させるのではなく、環境を変えながら新しいものを取り入れていくことは大切だと思います」

音楽制作、クリエイターサポート、シェアファーム…音楽を軸に広がる活動。

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常陸太田市に拠点を構えてもうすぐ1年。「音楽をつくっている状況が楽しいと、なにごとも楽しくやれる」と穏やかな表情を見せる高橋さんの活動は、さらに広がりを見せる。

例えば、ダンスミュージックをひと月1曲制作&リリースし、それを1年間続けてアルバムを作る取り組み「Twelve month one song is releasing」(外部サイトへリンク)。地域のクリエイターたちのサポートをしたり、ギター教室を開講したり。

さらには農業もはじめたとか。「この地域では農業をやることが必須、ここで暮らしていくためにはやるしかないからね」と笑いつつ、トマトの栽培をしたり、シェアファームとして貸し出したりと、畑にもすでに仕掛けの芽が植わっていた。

農作業の間にも、インスピレーションが湧くこともあるのですか?と尋ねると、

「それはさすがにないですね(笑)。でも、午前中曲を作ったりしたら、午後はそれを聞きながら作業をして、あ!これ音数が多すぎたなとかそういう修正作業はしています。身体は畑で頭は音楽。意外なことに気づくことはありますね」

からっと笑いながら答えてくれた。

これまでのつながりももちろん続いており、最近では北茨城市で開催された北茨城市地域おこし協力隊主催・桃源郷芸術祭に出演した。イベントは、同じ人と年に何個も行うのではなく、1年にひとつを10人ぐらいと進めていく。皆、自ら発見していくという作業が上手な人たちだと高橋さん。手段は違えど、根っこの部分は一緒。そんな人たちと、音楽を軸につながっている。

芸術が生まれる瞬間を体感できるアートインレジデンス。

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Photo by Nentakahashi_13.jpg

Photo by Nen

そして大きな取り組みをもうひとつ。それは、古民家をアートインレジデンスにするというもの。大人も子どもも集まれる、芸術が生まれる瞬間を目の前で体感できる、そんな空間をつくろうとしているのだ。

すでに高橋さんの古民家には、友人ミュージシャンたちがたびたび訪れ、合宿をしながら音楽を作り、互いに感性を刺激し合い、またそれぞれの場所に戻って活動する、そんな流れが生まれ始めているそう。

これからきちんとした空間にすべく、妻・美紀さんがエントリーした茨城県北ビジネスプランコンペティションの仲間たちの協力を得て、コツコツ手を加えている。次は床を貼り換える作業をするとのこと。

「妻もここでやりたいことがあるんです。彼女はとても大きく、おもしろいことを考えている。僕も僕でマイノリティに目を向けること、例えば、認めてもらいたくてモノが言えない子たちの逃げ道になるような場所もつくっていきたい。いろいろな地域を行ったり来たりと地域をシェアする人が増え、横のつながりも増えていったらいいですね。」

高橋さんと美紀さんの想いが、ここで新たに形となる…。穏やかに話す高橋さんだが、私にはとうてい想像がつかないことを企んでいるに違いない。

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「自分が持っている知識や経験を、伝えていかなくてはと。例えば、世界観は音そのものに表れる。いま、音そのものを身体で感じて楽しもうと生きている人は3割、音の表面的なものを楽しんでいる人が7割くらいなのではと思う。僕は前者の人間だと自覚してやっている。また、これはどの環境にいても感じることですが。ミュージシャンやアーティストが社会にとけこむ・受け入れてもらえるような、裾を広げてほしいし、広くしたいという気持ちもあります。アーティストやミュージシャンにも地位や立場がついてきてはいると思いますが、そこに金銭的なものがついてきているかと言われたら、必ずしもそうではないんですよね。」

スキルとして〇〇ができる人は、地方にもたくさんいる。しかし、ビジョンを語ったり、こういうことをやったらこういうことにつながるのでは?という新しい考え方を、ポジティブに分かりやすく伝えてくれる高橋さんのような橋渡し的存在はまだまだ多くはない。

「運動会でDJをしてみたい!放送室を借りて、カッコイイ曲とともに入場する。おもしろそうじゃないですか?」未来ではあたりまえのことだよ、と言わんばかりの表情を浮かべる高橋さん。私たちは体験して初めてその意味を知るのだろう。

 

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