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更新日:2021年3月23日

#03 挑戦する背中、10代の目|連載:いま、どうしてますか?

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新型コロナウィルスの感染拡大は、わたしたちの身の回りにさまざまな変化をもたらしました。そしてそれは、現在進行形で続いています。

歴史的にも語り継がれるであろう潮目のさなかを、人はどのように過ごし、何を思うのか。

不定期連載「いま、どうしてますか?」。茨城県北地域に暮らす、年代も生業もさまざまなみなさんの「いま」を記録します。

 

コロナ禍を通じて、「これからの社会のこと」とか、「働き方はこう変わる」とか、そんな議論が起きているのを見かけることが増えました。こうして何か書くにしても、「あなたはどう思っているんですか?」と(誰からともなく)問いかけられる気がして、つい手が止まることもあります。

そんななかで、若い人にも話を聞きたくなりました。“社会人”の世界、“大人”の論理であれこれ考えるだけでなく、その手前にいる10代の今について、聞いてみたいと思ったのです。

県内外のさまざまな立場の人をつなぐ仕事をしている、茨城移住計画代表の菅原広豊さんに連絡をとると、高校3年生の小貫椎香さんを紹介してくれました。

おふたりの接点は、菅原さんが運営に携わる人財育成プログラム「Hitachifrogs(外部サイトへリンク)(常陸フロッグス)」です。2008年に沖縄ではじまった「Ryukyufrogs(琉球フロッグス)」がもとになっていて、茨城では今年度が第2期。小貫さんは昨年度受講した1期生だそうです。

本来であれば、およそ半年間にわたるプログラムが組まれており、そのなかでは10日間のシリコンバレー研修も行われるそうなのですが、今年度はコロナ禍を受けて完全にオンライン開催になると話を聞いていました。さてそのあたり、運営の菅原さん的にはどうだったのだろう。

そして、Hitachifrogsやコロナ禍、さらには目前に迫った受験など。この1年半ほどのあいだに起きたさまざまな変化を、高校生の小貫さんはどんなふうに捉えているんだろう。第2期の発表会「LEAPDAY」が終わって間もないタイミングで、おふたりに話を聞かせてもらいました。

取材:2020/12/19

 

――こんにちは。ご無沙汰しています。

先日のLEAPDAYのあと、発表した2期生や運営に関わっていたみなさんが熱い胸のうちを投稿しているのを見て、思わずご連絡しました。とてもいい会になったようで。

菅原:そうですね。ひとまずのゴールを感じつつも、3期に向けた準備はここからなので。あ、終わらないぞって状態です。

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茨城移住計画代表の菅原さん

――2期は結局、すべてオンラインで開催したんですか。

菅原:基本的には全部オンラインでしたね。最終発表のLEAPDAYはリアルな場を使いつつ、オンライン配信もしました。

今回はスタートが2ヶ月遅れたので、1期のときは毎週日曜だけで組んでいたプログラムを、土日に詰め込んで。かなりハードだったと思います。

小貫:わたしも完全にオンラインで大丈夫かなって、少し心配していたんですけど、LEAPDAYのとき実際に会ったら結構びっくりして。みんな距離感が近かったんですよ。

――仲良くなるとか、信頼関係を築くのって、対面じゃないと難しいイメージもありますね。

小貫:ですよね。だから2期生に聞いたんです、なんで?って。そうしたら、「オンラインだと、通話が終わればその空間にひとりになるから、言い残しがないように話すし、一つひとつの言葉にも気をつける。そこがよかったんじゃないか」って言っていて。おもしろいなあと思いました。

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高校3年生の小貫さん(ポーズはfrogsの「F」)

菅原: 説明会に参加する層も、1期と2期では違いましたね。2期は、たとえば人前で何かするのは苦手だけど、自宅からつなげば落ち着いてしゃべれますとか。オンラインならではの心理的安全性、コミュニケーションのしやすさを感じている子が多かったと思います。

デジタルネイティブの世代からすると、オンライン化してよかった面もあるのかな。学校の先生と話していても、「不登校気味だった子が授業に参加できるようになった」と聞くこともあるので。

――なるほど。そもそも参加する層も少し違っていたし、やってみてよい面も見つかったと。

菅原:ただ、オンラインって時間でスパンと切れるから、逃げる環境をつくりやすいんですよ。終盤にいくほどそれは実感して。

もしそれで泣きそうになっていても、「どうした?」って声もかけづらいじゃないですか。だから途中で、このままじゃよくないなと思って。ぼくらのほうから会いに行きました。

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――そうやって伴走するのが、菅原さんたちメンターの仕事?

菅原:手厚くフォローするような形ではないですね。最終的にどうするか決めるのは学生自身なので。

むしろ、ぼく自身が挑戦する姿勢を示し続けることが一番大事だと思っていて。

――挑戦する姿勢。

菅原:10代の感受性って鋭いので、一瞬で見抜かれるんですよ。どういう苦しみを持ちながら、どんな選択をして、どう突き進んできたのか。そして何に向かっているのか。その生き様みたいなものに嘘が混じっていると、まず話を聞いてくれないですよね。

――ポスターに “やるかやらないか、人生はシンプルにその2つ。”なんて言葉を掲げておきながら。

菅原:口だけで中身のない大人だなって。そう思わせてしまったら終わりなので。

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菅原:それはお金を出してくださってる方々に対しても同じなんです。フロッグスは企業の協賛や個人からのクラウドファンディングの支援を得て運営しています。ただ、ギブ&テイクで何かすぐにリターンがあるのかというと、そうじゃない。

「ぼくらは自分たちの時間やお金、命を投入して地域の未来をつくりたいんです。だから一緒につくりませんか?」

そのメッセージを伝えながら、徹底して挑戦し続けることが恩返しになるし、選抜生と向き合ううえでも一番大事な姿勢だと思っています。

――そんな菅原さんたち運営チームのこと、小貫さんの目にはどんなふうに映っていました?

小貫:菅原さんに限らず、本当にみなさん向き合ってくれる大人ばかりで。

じつはLEAPDAYの直前まで、わたしたちのチームは発表内容が決まっていなかったんですね。菅原さんたちも交えて話して、一度は発表しないことになったんです。でもやっぱり、半年かけてやってきたことを形にできないのは悔しいから、最後の追い込みで、泊まりがけでプランを練り直すことにして。

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小貫:その泊まれる場所も、協賛企業の方が提供してくださって、メンターさんは夜中の2、3時まで相手をしてくれて。これはもう、自分なりに出せるところまでやりきらないとダメだなっていうのは、そこで決心がつきましたね。

――当時の発表内容は、どんなものだったんですか。

小貫:食と言語学習をかけ合わせたサービスです。ただ授業を受けるとか、テキストを読むんじゃなく、人との触れ合いのなかで外国語を学べたらいいなと思って。その方法のひとつとして、食卓を囲みながら、そこで生まれる会話から英語を学ぶサービスを考えました。

――へえ、おもしろそう! そのチームは、今も動いている?

小貫:起業しよう、みたいな動きにはなっていませんね。でもわたしのなかで、海外に対する興味がふくらんでいて。LEAPDAYでの発表はすべて英語なんですけど、そこで少しつまずいて悔しかったのもあって、今は英語の勉強をがんばっています。

本当は留学もしたいんです。フロッグスも、最初はシリコンバレーに行ってみたいという理由で申し込んで。

――どこか行きたい国ってあります?

小貫:アジアの文化を学びたいなと思っていて。宗教に関する差別がリアルに残っている国、インドとかにも行ってみたいです。

でも、とにかくいろいろな国に行ってみたいですね。文化とか政治、平和のあり方って、その国ごとに違うなと思っていて。先進国と言われるようなところにも行きたいし、逆に貧富の格差がすごい国にも行きたい。いつになったら行けるのかは、まだわからないですけど。

――もう少し時間はかかりそうですね。

小貫:先のことはわからないから、今やれることはやっておこう、と思っていて。やりたいこととか、理想はちゃんと持っておいて、チャンスがきたら挑戦していきたい。そんな感じです。

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――事業を考えて発表する。そのプランをもとに起業を志すのもすばらしいことですけど、みなさんが目指すのは必ずしもそこではないんだな、というふうに感じます。

菅原:まさにそうで。ぼくたちはフロッグスを通じて起業することがゴールだと思っていません。

今回の2期生で、4人のうち1人だけプレゼンできなかったんです。発表に至るまで、サービスの構想が行きつかなくて。

しばらく音信不通気味になっていたんですが、「最後どういう形で終わらせるのか、LEAPDAYに登壇するかしないかも含めて、自分で答えを出してね。俺らから“これ言いなよ”っていうような誘導は絶対しないから」とは伝えていました。

――はい。

菅原:そうしたら前々日に、「ありのままを伝えたいです」って連絡がきて。当日、プレゼン後に壇上でのアフタートークがあったので、そこで彼に話を振ったんです。彼が言ったのは、

「ここに立つまで、周りの目線がすごく気になっていたし、できない自分を認めるのが怖かった。今回こういう形で終わるのは悔しいけれど、できない自分に気づけてよかった。今後同じような状況に立たされても、とにかくチャレンジすることは続けようと思います」

というようなことでした。

それで、来場者アンケートをとってみたら、「その話が印象に残った」と書く人がとても多くて。

――プレゼンには至らなかったものの、何かが聞く人の心に響いた。

菅原:最初から「発表しなくてもいいよ」って言うのは違います。かといって、プレゼンがゴールでもない。人生において大事なことに、いかに気づき、自分のエネルギーの使い方を学ぶか。その姿に共感が生まれたんだと思うんです。

2020年は、ぼく自身、いろんな人に迷惑をかけまくった年でした。オンラインも苦手だし、できないことだらけで、今まで生きてきて一番自信をなくした年かもしれません。「やべえ、全然できない」って。

ただ、よくもわるくも自分のことがよくわかった一年でしたね。苦しんだぶんだけ、見えてきたことも多かったような気がします。

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人の成長は、「こうしたらこうなる」という明確な因果関係にもとづいて、直線的に進んでいくものではありません。右往左往しつつ、ときに無駄に思えることも経ながら、積み重なっていくもの。

Hitachifrogsを通じて、菅原さんや小貫さんが過ごしてきた時間を思うと、いろいろなことが「できなかった」この1年も無駄ではなかったのかなと、そんな気持ちになりました。前に進んだことや形になったことは少なくても、削ぎ落とされて見えてきたものも、たしかにある。その気づきは、次の一歩を踏み出す原動力になりそうです。

Hitachifrogsは、第3期に向けて動き出しています。何かきっかけを掴みたいという中高大学生も、菅原さんたちと一緒に運営に関わりたいという方も、心が動いたらまずは連絡をとってみてください。

Hitachifrogs Webサイト
https://www.hitachifrogs.com/(外部サイトへリンク)

文 中川晃輔  写真 菅原広豊さん、小貫椎香さん提供(一部中川撮影)

 

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