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更新日:2021年8月23日

「登る山も、進む道もここにある」 走り出した「KENPOKU PROJECT E」

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インタビュー 

2020年2月、茨城県北地域の課題を起業で解決する地域おこし協力隊が誕生した。そこから1年2か月、2021年4月、それは茨城県北を舞台に、地域課題解決や地域資源の活用につながるビジネスをとおした地域経済の発展や地域活性化を目指すプロジェクト「KENPOKU PROJECT E」へと進化した。

「KENPOKU PROJECT E」には、「茨城県北地域で、探検(Explore)し、地域経済(Economy)の発展や雇用(Employ)を生み出し、稼ぐ(Earn)事業(Enterprise)を起こし、その拡大(Expansion)を図り、稀代の起業家(Entrepreneur)をここから生み出す」そんな思いが込められた名前だ。

8月までに、既に5人が委嘱状を手にしている。

このプロジェクトに応募した背景や茨城県北を選んだ理由、そして走り出したそれぞれのプロジェクトはー?

今回は、「KENPOKU PROJECT E」メンバーの起業に向けたサポートを行う株式会社えぽっくの若松佑樹さん、委嘱を受け大子町に移住して動画制作を手掛ける小林敬輔さん、常陸大宮市に家族で移住し古民家改装や農業体験などを企画するINORIさんに話を聞いた。

文=高木真矢子、写真=柳下知彦
取材:2021/7/9

 

―お二人は既に移住し、活動を始められていると伺いました。小林さんは、なぜこの企画に応募しようとされたんですか?

小林敬輔(以下、小林):自分は日立市の出身です。大学で県外に出て、茨城の企業に就職して水戸に戻っていましたが、今年2月に独立しました。映像制作を始めたときに、映像を使って地域に貢献したいなっていうのが一番だったんですけど、当時は、そんな人に大々的に言えるようなレベルではなかったので自分の胸の内に秘めていたんです。そんな時に、ちょうどこの「PROJECT E」という事業があって、自分のやってきたことを発信できるきっかけになる!と、応募しました。

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―今は大子町を拠点に映像制作の事業を始められているんですよね。映像制作自体は前職の影響で始められたんですか?

小林:いえ、社会人1年目はサラリーマンとして働いていて、2年目を迎えるときに、しんどくなってしまって。新しいことを始めたいなと思ったときに、好きだった写真を始めようと思ったんです。でも、写真を始めるつもりが、YouTubeでたまたま流れてきた海外の映像クリエイターの映像に衝撃を受けて、自分はこんな映像を作りたい、という気持ちに変わりました。そこからは独学で映像制作の勉強を始めて、「やっぱり好きなことをしたい」という思いと、仕事に行っても夕方になってくると働いていても体が痛くなるようになってしまったんです。別に根拠は全くなかったんですけど、それでもやっぱりここはチャレンジした方がいいなと決心がついて退職を決めました。

―地域に貢献したいという思いには、何か人との出会いなどのきっかけがあったのですか?それとも、学生時代のころからそういう思いはもっていらっしゃったんですか?

小林:YouTubeで地元日立のプロモーションビデオを調べてみた時に、率直にいうと、制作がちょっと古いものもあって、新しく時代のニーズにあった映像を自分のこの手で作りたい!映像で地域貢献したい!と考えるようになったのが原点ですね。

―そこから地域貢献という思いが強まっていったんですね。小林さんは、日立市や茨城県にいずれ戻ってきたいという考えはあったんでしょうか?

小林:はい。自分の性格的には茨城、日立で過ごす方が自分らしく生きられると感じていました。東京にも就職は決まっていたんですが、それをやめて、茨城で就職するために戻ってきて、自分が一番過ごしやすいところは、やっぱり地元だなと痛感しました。

―INORIさんの方はどんなきっかけで「PROJECT E」に応募されたんでしょうか?

INORI:私は夫の知人が常陸大宮市の地域おこし協力隊として活動していた縁で、常陸大宮市に足を運ぶ機会があって。拠点探しから1年以上かかりましたが、並行して衣食住・育(子育て)・アートを大切にする動画(YouTube:「ACTRS channel(外部サイトへリンク))で配信中)も撮影し続けて、拠点となる古民家が見つかったのを機に、古民家再生や自然や農業を軸にした活動を始めました。活動を始めた矢先にこのプロジェクトを知人から教えていただいて応募しました。

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―それは具体的にはどのようなことをされるんでしょうか?

INORI:常陸大宮市の美和地区で「WISH HOUSE project(外部サイトへリンク)」という生きることのすべてをプロセスエコノミー(※)しながら体験を共有する、という活動をしています。
今、借りている2軒の古民家のリノベーションや、「みわもり」という山や沢歩き体験を通した五感との対話。苗木づくりや間伐をしながら、ちょっと大きな話になっちゃうんですけど、「森を再生したい」という目標もあります。

※プロセスエコノミー:完成した状態(製品など)ではなく、過程や途中経過に価値を見出しビジネスとすること
参考:日経MJ https://www.nikkei.com/article/DGXKZO73897780V10C21A7H21A00/

―森の再生までとは壮大な計画ですね!INORIさんは、これまでどのようなことをされていたんですか?今の活動内容につながる部分もあったのでしょうか?

INORI:私は、青森県竜飛崎の出身で、高校卒業後すぐ声優を志して上京し20年くらい活動していました。子どもが産まれたというきっかけもあったんですが、自分自身と向き合ったときにやっぱり自分の原体験である自然っていうのが大事だなと感じて、子どもにとっても自然豊かなところで育てたいと1年以上前から地方の拠点をいろいろ探していたんです。
(夫の知人の)常陸大宮市の地域おこし協力隊OBの方に拠点となる場所を探していただいて、そのご縁もあって美和地区に拠点となるお屋敷を貸していただけることになりました。

―そこから常陸大宮との縁ははじまっていたんですね。

INORI:お屋敷のほかに、森も借りていますが、森も美和地区で紹介していただいて決まったんです。すごく縁があったんだなと実感しています。もう1軒見つけた家も、美和地区なんですよ。

―常陸大宮は、平成の合併で広くなったのですごい確率ですね。

INORI:(私の)実家(竜飛岬)は津軽半島の最北端ですっごく一番端っこなんです。今はコンビニもありますけど、なんだか森に囲まれたりしていて、美和と共通点が多いなと。
山や沢歩き体験を通した五感との対話「みわもり」も、ひとまずやってみようって。

―移住して間もないとは思いますが、常陸大宮で課題だなと感じていることってありますか?

INORI:拠点探しで分かったのが、常陸大宮、茨城県北に限らず、空き家にしても家を借りるのも、知り合いづてでないと難しいということなんです。たとえ決まりかけてもオーナーさんの親族に反対されて成立しないというのが結構あるんですね。空き家を探すのってこんなに大変なんだっていうのは(実体験も含めて)感じています。
初めは地方に行けば空き家があるだろうと思ったんですけど、空き家かなと思っても実際のところがわからないとか、そういう情報も信頼関係あってこそなんですよね、きっと。

INORI:今、コロナもあって、リモートワークできる仕事も増えて、田舎に住める(環境にある)人は増えているはずなのに、住めないというのは一番課題じゃないかなと。例えば、常陸大宮の空き家バンクも未成約の物件は5件(※取材日時点)しかないんですよね。そんな背景もあるので、私たちが改修した古民家をコミュニティスペースとして宿泊の場として提供して、そんなきっかけの場にもしたいですね。

―若松さんは、そんな皆さんの取りまとめということですね。率直に、お二人の印象はいかがでしたか?

若松佑樹(以下、若松):二人とも地域に溶け込んでくれるかなと。起業家だからといって、自分の主張だけが強すぎると難しいんですよね。地域という文化や人とのつながりの中で、ビジネスをしていくには、うまく付き合うだとか、信頼を得ないと進まないこともあると思います。例えば、よくわからない人には(土地にしても家にしても)貸せないとか(都会だとか田舎だとかに関わらず)ありますよね 。そういうところで、地域の方と仲良くなるとか、 協力を得ることができるような信頼関係は必要なので、そういった要素を持ち合わせているかなという雰囲気を持っていると思います。

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―今日も午前中にコーディネーターによる面談をされたと伺いました。サポートをされている若松さんの方で、そういった地域ならではの悩みなども面談でフォローされているんですか?

若松:そうですね。うちの(会社の)方で、担当コーディネーター制度を作らせていただいていて、それぞれのメンバーに1名つけています。例えば地域ごとの特徴とか、観光ジャンルであればこの人に聞いた方がいいねとか、相談内容に合わせてサポートをしています。

若松:まだ走り出したばかりで、コーディネーターの面談も2回目を終えたばかりですが、30年近く起業家育成をするNPOや岡山県の西粟倉村(にしあわくらそん)で起業家をサポートする会社などにアドバイザーに入ってもらっていて、セミナーや研修などを開催していきます。
また、月1回の集合研修をはじめ、相談内容に合わせて詳しい人をつなげるなど、僕らも成長しながら一緒にサポートしていくようなイメージで進めています。
今後は、事業計画書の書き方やビジネスプランのブラッシュアップなどを面談、ないしは勉強会などで展開していく予定です。

―実際に移住されて約1カ月ということですが、それぞれの移住先の地域はいかがですか?

小林:やはり静かですね。ちょっとありきたりですけど、ノイズが少なくて、落ち着いた環境で仕事ができるっていうのは、今までと違いますね。

小林:それに今、平屋を借りているんですが、広いです。行ってみて感じたのは、今の住居に住む前に、一通り近所に挨拶させてもらったときの印象がみんな良い人たちばかり。「お茶よばれてけ(飲んでいけ)」とか、「これ食べなさい」とか、何だか今までなかった近所付き合いというか、あたたかさを感じています。
役場のまちづくり課の人たちも親切で、いい人たちだなってしみじみ感じますね。町の中で、自分はまだ若いので、年齢が上の人ばかりですけど。

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―水戸や日立と比較して生活の不便さなどはないですか?大子はお店の閉店時間が早いなどの印象もありますが。

小林:買い物もバイパス通りの方に行けばなんとかなりますし、仕事で町外に行った時に買って帰ってしまったりもするので特に不便なことはないですね。

―それはなによりです。INORIさんは移住してからのエピソードなどはいかがでしょうか?

INORI:そうですね。農業体験などの企画もあり、借りている家の隣に田んぼを借りようと「田んぼを使っていいですか」って聞いたら、「いいよ、いいよ、お金なんて!使ってくれればいいから」と貸してくださったり、近所の方にお野菜をいただいたり、みなさんとっても好意的です。

―本当にいろいろな縁がつながっていますね。続いて、若松さんにお伺いするんですが、お二人のようにこの事業で委嘱されたメンバーが県北に入っていくことで期待することはありますか?

若松:やっぱり新しい人が入ってきて、何か新しいことを始めていく中で、地域の方たちも触発されるというか、なんかこんなことやっているんだったら自分もこういうことやりたいから、なんかこれ一緒にできないかなみたいな話って絶対出てくると思うんです。
同じ地域の人たちも一緒に巻き込みながら、巻き込まれながら、「こんなことやりたかった」と考えられるっていうのはすごくいいことだなと。
そこから6市町の中で新しい岐路が出てくるんじゃないかなと期待しています。

―INORIさんは、ご夫婦で映画祭を開催されたりもしているんですよね?

INORI:はい。今年10月に、旧美和小学校で「JAPAN WORLD FILM FESTIVAL」という映画祭を開催します。地域と世界の多様性を楽しむイベントとして企画しております。
夫が映画・舞台のアーティストコミュニティTOKYO CINEMA UNIONやミニシアターを運営していて、過去に小さな映画祭を企画した時に海外からもゲストの方がたくさん来てくださってすごく良かったと言ってくれて、そこでのノウハウなども生かしています。
今後も継続して開催していきたいと思っている映画祭なんですけど、映画を見るっていうだけじゃなくて、ピクニックのようにカジュアルに楽しんで、地域が盛り上がるようなイメージです。
以前開催した時には、スペースの関係で飲食ブースの出店は実現できませんでした。今年は、常陸大宮、東京、長野との3箇所になるんですけど、「地域を旅する映画祭」として開催します。他の地域でもいろいろ回って、現地の方や飲食とコラボして、小さくても地域が盛り上がるような企画をとおして、皆さんに楽しんでもらいたいです。

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―今後目指していることや成し遂げたいことはありますか?

小林:自分は、スキルとかも人並み以上にあったわけではないですし、今こうやって話ししてますけど、もっともっと喋れない人間だったし。こういう活動のおかげで、やりたいっていうことが出てきたんですよね。今の自分の地位というか実力というか、立場的にはやはり相手にされない部分もあるんで、どんどん実績を積み上げていって、いろいろなところから声をかけてもらえるように頑張っていこうと思っています。
映像を見てここに行きたいなとか、この人に会ってみたいなって、思ってもらいたいです。茨城にせっかくいいものがあっても、それが伝わらないとなかなか難しいところなので、映像作品を通して実現したいですね。

INORI:本当に、死ぬまでやり続けるしかないと考えてますね。ゴールはないなと。
農業・自然体験や古民家の改修などをとおして、古き良きものを知ることや、古民家を使ったコミュニティを広げて、最終的には森の再生まで発展させていきたいですね。
これまでは、ただ漠然と、「自然がいいな」っていうだけだったんですけど、自分も田舎で育ちながら自然のことを何もわかってなかったなってここ数年勉強して痛感しています。これまでの自然の循環が少しずつ壊れてきてるんだなっていうのを感じるので、自分の力だけでは小さいんですが、小さくとも森の再生を続けることで、未来の子供たちに残していきたいです。

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若松佑樹
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小林敬輔
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INORI

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取材協力:Cafe結+1(常陸太田市東一町2288)
https://yui-1.com/cafe/
https://www.facebook.com/cafeyui1

 

 
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KENPOKU PROJECT Eに興味のある方は、こちらから

 

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〒310-8555 茨城県水戸市笠原町978番6

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