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更新日:2022年3月8日

北茨城から「あんこう」を世界に発信 逆風でも「変革のチャンス」 経営は「第2ステージ」へ まるみつ旅館 武子社長の「あんこう」物語

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インタビュー 

創業74年、北茨城市・平潟港温泉「あんこうの宿 まるみつ旅館」。
東日本大震災に新型コロナウィルス。旅館経営という観光業に吹き荒れる逆風にも折れることなく立ち向かう3代目社長 武子能久(たけし よしひさ)さんに「あんこう」を軸に進めてきた事業の「第1ステージ」から「第2ステージ」への話を伺いました。

文・写真=高木真矢子
取材:2022/1/19

ーまずは手がけていらっしゃる事業について教えてください。

武子:旅館を主にやっています。コロナ禍で旅館を利用するお客さまが減るなかで、一昨年の5月末からは、あん肝を使ったラーメンの提供を始めて、現在、輸出するまで成長したところです。
元々は旅館の2階でラーメンを提供していましたが、昨年12月に「365日美味しくあんこうが食べられる」をコンセプトに新たなレストラン「あんこうダイニング」をオープンしました。直近では、あんこうラーメンに続き、3カ月限定で「あん肝クリームパスタ」も始めました。
そのほか、お菓子とスイーツの店「まるみつ旅館プリン部」を作り、2021年6月15日に、あんこうのコラーゲンを隠し味に使ったプリン専門店「4時間プリン」をいわき市にオープンしました。
トラフグ養殖の事業は、今はコロナ禍ということでストップしていますが、新たに宇宙食の開発にも挑戦しています。

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ーさまざまな展開を精力的に進めていらっしゃいますね。その原動力は何なのでしょうか?

武子:「ピンチのときこそ変革できるチャンス」ということで、もう、やるしかない。このままいったらスタッフも守れなくなってしまう。変われるチャンスだと思って、大変なこともたくさんありましたが、いろいろ挑戦しています。

ー社長職を引き継がれたころから、旅館業以外のこともやってみようという考えはあったのでしょうか?

武子:旅館の社長を引き継いだ当時は、漠然と何かしなければというぐらいでした。その後、精神的な支柱になっていた祖父母が亡くなり、そこから、あんこうの文化を残しつつ、まず徹底的にあんこうの研究をして、価値を上げよう、みなさんにもっとおいしさを届けようと、旅館を創業した祖父の命日である2015年10月22日に「あんこう研究所」を立ち上げました。
あん肝ラーメンは、コロナ禍になって正式に始めたのですが、いきなり出したというより、地元のイベントで2015年から出していたものでした。研究所でいろいろ試行錯誤をする中で、世に出ていないメニューも含めて、あんこうコラーゲンの入浴剤、コロッケ、バーガー、おでんなど20品くらい開発してきました。その中でラーメンは一番評判が良かったんです。でも旅館が主なので、ラーメン屋をやる、というのは考えていなかったのですが、コロナ禍で旅館には待っていてもお客さまは来ない。じゃあ、ダメ元で地元の方向けに「あん肝ラーメン」専門でやってみようかと始めたところ、それが今では、県外からのお客さまの方が多いくらいになりました。

ーそれは素晴らしいですね。

武子:やっぱりラーメンは裾野が広いなと感じました。ラーメンを通じて、あんこうの持つ「秋冬」というイメージを何とか変えたいと思っています。

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ーそれが、「365日おいしく食べられる」、というコンセプトにつながるんですね

武子:はい。宇宙食については、「あん肝ラーメン」や「あんこう鍋」のような「食」では伝えきれなかった方や、北茨城まで来ていただけないような方にもPRできる切り口という意味で挑戦しています。
今、あんこうの「肝」の成分を徹底的に調べてもらっていますが、健康に良いとか、美容に良いとかいろいろあると思うので、その優位性をデータ化して、新しい商品につなげていきたいです。その中から、宇宙食の開発だけでなくいろいろな商品が出てくると思っています。

ーそれは楽しみですね。私もお話を伺っていてワクワクします。

武子:美味しくて安いものは、たくさんありますから、地元ならではとか、ストーリー性があるとか、付加価値がついているもので勝負しないとなかなか売れない時代です。

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ーあん肝同盟、私も登録させていただいたのですが、あん肝にチョコレートがかかった商品の写真があるなど、これは相当いろいろなものが生まれているぞ、と思ったのですが、開発や研究はどなたかと一緒に取り組んでいらっしゃるのですか。

武子:基本的に私1人で研究していますが、時々スタッフの意見を聞いています。

―価値を高めるためのものも含めて総合的に研究されて、いろいろな開発をしたりチャレンジしたりということですね。

武子:昔からあるあんこうの郷土料理や歴史と新しいあんこうの価値の発信、この2つが柱です。
そこから派生して「あんこうダイニング」、宇宙食へと発展できたので、私の中の「第1ステージ」は終わり、宇宙食からは「第2ステージ」です。

ー「第2ステージ」に向けた開発というのは。

武子:その辺りは今後発表しますので、お楽しみということで。

ー楽しみにしています。
あんこうの文化を残しつつ、新しい価値を作っていくというお話がありましたが、おじいさまおばあさまなどとの約束や、エピソードはありますか?

武子:あんこうとともに育ち、吊るし切りも昔から見ていました。気づけばいつもあんこうがそばにありましたね。2年ほど前に「日立 世界ふしぎ発見!」に出演させていただいたら、祖父母も黒柳さんのデビューの頃に接点があったことがわかりました。

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ー小さい頃からあんこうと共に生活してきていた、ということですが、初めから後を継ぐことを決めていたのですか?

武子:いえ。小さい頃は、服にあんこうの匂いがつくのがイヤな時もあったくらいです。
自分は次男ですし、(跡を)継ぐことは考えていなかったので、一般企業に就職しました。しかし、年末年始でも家族は旅館の仕事で忙しくしていて、自分だけが休んでいるわけにもいかないな、と(笑)。
そんな風に思っているうちに、自分の人生で使う時間・・・生きてる時間は限られているのだから、生きぬくなら付加価値をつけて、徹底的に(あんこうの価値を)つくってみようというところからです。人生一回ですからね。

ー時間をどう使うかみたいなところで、いろいろ考えられたというのは何かきっかけがあったのですか?

武子:そうですね。東日本大震災があって、祖父母が亡くなった頃、そこが一番のターニングポイントですね。
何かスイッチが入ったような感じがしました。今回のコロナ禍もそうですが、観光業はこういう災害などに弱いですから、今進めている菓子事業や地元の方向けのレストランなどのように多角化していかないと厳しいなと思います。

ーそういうさまざまな挑戦のアイデアはどんなときに浮かぶのですか。

武子:たとえば、簡単な作業をしている時とか、お風呂に入っている時とかですね。そのほか、繁盛店に行って勉強もするようにしています。

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―創業の地、北茨城の魅力や好きなところはどんなところですか?

武子:自然豊かで、世界に発信できる伝統文化もあるところです。今はまだうまく魅力を発信できてはいませんが、まだまだ可能性はあると思います。
たとえば、今、温泉で茨城が群馬に勝とうというのは難しいですが、名産品のあんこうを使った今までにない料理なら勝ちやすい。私は0から1にするのが大好きなんです。旅館が、ラーメン屋さんとガチンコで勝負したら厳しいのは分かっていますので、あんきもラーメン専門店にしぼるということです。

ーここだからできること、ですね。それを海外にも展開されている。

武子:はい。ラーメンの海外展開は、まだ始めたばかりですが、日本で「とんこつラーメン」にあたるものの代替として、「あん肝ラーメン」ならハラール対応(注)にもなる。吊るし切りも、外国の方は喜んでくださいます。
今は、下調べの段階で、狙っているのはシンガポールを含めたASEAN諸国です。現地で知名度のあるとんこつラーメンを動物のダシを使わないで超えることができる濃厚なラーメンは「あん肝ラーメン」だと確信しています。

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▲館内のいたるところにアンコウのモチーフが・・・これは急須ではなくポストです(笑)実際に投函もできて、毎日旅館のスタッフが郵便局へまとめて出しに行くそうです。

 

ー先を見据え、世界に目を向けていらっしゃるのですね。

武子:自分でもこのラーメンがこんなに喜んでいただけるのは楽しいです。海外にどうPRしていけるか。
一方で、宇宙食のゴールはちょっと先だと思っています。宇宙食には、さまざまな制限があるのですが、このコロナ禍だからこそ挑戦したいのです。

ーちなみに宇宙食は、どんな品目で開発されているのですか?

武子:今はまだ、「あんこう」というところだけしか決まっていません。
あんこうをもっと極めたら、フグ肝の研究も進める、という感じです。
私は調理師免許も持っていますし、調理もしますけれど、以前は自動車関連企業の会社員ですからね(笑)。でも、あんこうに関してなら、有名シェフと肩を並べて対等に喋れます。あんこうだけは負けません。

ーこれだけは負けないというものは大事ですね。

武子:そうですね。今は、コロナ禍で大変ですが、楽しむようにしています。つらいときはお酒を飲んで寝てしまいます(笑)。不安もありますが、下を向いてしまうと、良い発想は出て来ないし、スタッフも心配しますからね。

ーそこは経営者としての姿勢ですね。

武子:(色々なことがある時代なので)ある意味で良い時代に経営していると思います。東日本大震災後、この辺りの魚介類も制限がありましたが、あんこうは1回も制限がかかりませんでした。おかげで研究所を立ててもっと極めようというきっかけにもなりましたし、振り返ってみると、何かあるとあんこうに救われています。

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ー今後、成し遂げたいことはありますか?

武子:ゴールは常に変わるので、一概には言えませんが、この時代を経験して思うのは、変化できないとつぶされるということです。変化するのが一番大事だと思います。変化すれば、ゴールも変わる。だから、完成しないストーリーなのだと思っていますが、あんこうは極め抜きたいですね。そして、こんな人居たねと名前が残ればありがたいし、私が死んでも「あん肝ラーメン」が残ると嬉しいです。新しい価値とか料理、そういうのを残していきたいなという願望はあります。

ー海外進出のお話もお伺いできて勉強になりました。

武子:世界は広いです。日本は中々給料も上がらないし、人口も減っていますがASEANは逆です。
今、世界の乾麺の消費量ランキングの5位(2019年度)にはベトナムが入っています。(※1人当たり年間消費量では2020年度 世界2位)

日本だけ見ていてはわからないですが、世界に目を向けると経営的にも大きく見られるので、まだまだできるぞ、と前向きな気持ちになります。

今度、自動販売機(冷凍)での販売も始まり、「ご当地セレクション」というカテゴリの中で販売されます。どこまで行けるのかなとワクワクしています。
(こちらは取材後、販売が開始されています。)
「第2ステージ」、このダイニングからどこまでいけるか、自分でも楽しみです。

ー最後に、武子さんにとって、「あんこう」とはどんな存在ですか?

武子:人生においての教科書みたいなものですね。プライベートも仕事もあんこうが常にどこかにあります。迷うと何か助けてくれる。そんな存在です。

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(注)ハラール:イスラム教の教義に従っていると判断されるもの。特に、必要な作法どおりに調製された食品をいう。

  

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