使い手の求める品質の麦を、プライドをもってつくる(2019年11月)

坂東市・古河市・境町・常総市
茨城パン小麦栽培研究会

写真1:ゆめかおりを使ったサンドイッチを販売する道の駅さかいの「さかいサンド」

(写真1:ゆめかおりを使ったサンドイッチを販売する道の駅さかいの「さかいサンド」)

茨城パン小麦栽培研究会(以下 研究会)は、坂東市、古河市、境町、常総市の四市町の生産者8名で、パン用小麦「ゆめかおり」を約70ha栽培している組織です。実需者(製粉会社、製パン業者)のニーズに応じた小麦を生産することを目標に掲げ、製粉会社と直接取引を行っているのが特徴です。パン用小麦はタンパク質含有率が高い方が、パンの膨らみが良いため、実需者からはタンパク質含有率13.0~14.0%の品質が望まれています。
目標の品質を得るためには、出穂期の葉色に応じた追肥が重要な管理ポイントとなります。そのため研究会では、適切な追肥を実施するための様々な取り組みを行っています。

スマート農業技術の活用

写真2:GeoMationによる色分けマップ作成

(写真2:GeoMationによる色分けマップ作成)

平成30年度、農業データ連携基盤活用実証として、(株)日立製作所、(株)日立ソリューションズの協力を得て、農業支援アプリケーション「GeoMation」で、出穂期の「ゆめかおり」の葉色を可視化する取り組みを行いました。
普及員がSPAD値を測定してタブレット入力すると、SPAD値に応じて圃場が色分けされ、追肥の際、生産者は自身のスマホで色分け地図を確認しながら作業できるシステムです(写真2)。

これにより、適切かつ効率的な追肥が実施できるようになりました。今後の栽培面積の拡大に向け、今年度は、衛星画像から葉色を把握する実証事業を行っているところです。
また、出穂期にドローンで追肥する取り組みも始まっています。通常、追肥は背負い式ミスト機かハイクリブームで行いますが、背負い式ミスト機は労力負担が大きく、ハイクリブームは小麦を踏み倒してしまうため収穫ロスが発生するのが課題です。そこで、令和元年はドローンで粒状肥料を委託散布し、追肥労力と収穫ロスの軽減に取り組みました。
さらに、アイアグリ(株)の協力により、自動飛行・生育診断・可変施肥が可能な(株)ナイルワークスのドローンの検討を行うなど(写真3)、品質の安定に向け、スマート農業技術の導入に積極的に取り組んでいます。

写真3:ドローン活用の検討

(写真3:ドローン活用の検討)

消費者の笑顔がみえる販売

(写真4:ゆめかおりパン販売イベント)

研究会では、地産地消をすすめるため、関係機関と連携した取り組みを行ってきました。
地元の学校給食導入に取り組んだ結果、平成29年度から境町で、平成30年度から坂東市で、「ゆめかおり100%パン」が年に数回提供されることになりました。
また、道の駅さかい、河岸の駅さかいでは、「ゆめかおり」を使ったパンを提供するパン屋が出店し、人気となっています。こうした地産地消の進展は、「食べる人の笑顔が見えて、生産のモチベーションがあがる」と、生産者の意欲を一層向上させてくれています。
茨城パン小麦栽培研究会は、これからもおいしいパン用小麦を届けるため、また産地のさらなる発展をめざして活動していきます。

 

 

茨城県県西農林事務所 坂東地域農業改良普及センター

2019年11月07日