○茨城県交通安全計画
平成8年5月30日
茨城県交通安全対策会議告示第1号
交通安全対策基本法(昭和45年法律第110号)第25条第1号に基づき,次のとおり茨城県交通安全計画を策定した。
茨城県交通安全計画
(平成8年度~平成12年度)
目次
第1章 道路交通の安全
第1節 道路交通事故のすう勢と交通安全対策の今後の方向
1 茨城県における道路交通事故のすう勢
(1) 道路交通事故の現状
(2) 道路交通を取り巻く状況の展望
(3) 交通安全における課題
2 道路交通安全対策の今後の方向
(1) 高齢者の交通安全対策の推進
(2) シートベルト着用の徹底
(3) 安全かつ円滑な道路交通環境の整備
(4) 交通安全教育の推進
(5) 効果的な指導取締りの実施
(6) 救助・救急体制の整備
(7) 官民一体となった交通安全推進体制の確保
3 第6次茨城県交通安全計画における目標
第2節 講じようとする施策
1 道路交通環境の整備
(1) 道路の新改築による交通安全対策の推進
(2) 交通安全施設等整備事業の推進
(3) 効果的な交通規制の推進
(4) コミュニティ・ゾーンの形成
(5) 高度情報等を活用した道路交通システムの整備
(6) 交通需要マネジメントの推進
(7) 総合的な駐車対策の推進
(8) その他道路交通環境の整備
2 交通安全思想の普及徹底
(1) 生涯にわたる交通安全教育の振興
(2) 交通の安全に関する普及啓発活動の推進
(3) 交通の安全に関する民間団体等の主体的活動の推進等
3 安全運転の確保
(1) 運転者教育等の充実
(2) 運転免許業務運営の合理化
(3) 運転管理の改善及び運行管理の充実
(4) 交通労働災害の防止等
(5) 道路交通に関する情報提供の充実
4 車両の安全性の確保
(1) 自動車の検査及び点検整備の充実
(2) 自転車の安全性の確保
5 道路交通秩序の維持
(1) 交通の指導取締りの強化等
(2) 交通犯罪捜査及び交通事故処理体制の強化
(3) 暴走族対策の強化
6 救助・救急体制等の整備
(1) 救助・救急体制の整備
(2) 救急医療体制の整備
(3) 救急関係機関の協力関係の確保等
7 損害賠償の適正化等
(1) 自動車損害賠償保障制度の充実等
(2) 損害賠償の請求についての援助等
8 科学技術の振興等
(1) 道路交通事故原因の総合的な調査研究の推進
(2) 都市交通問題の調査
第2章 鉄軌道交通の安全
第1節 鉄軌道事故のすう勢と交通安全対策の今後の方向
第2節 講じようとする施策
1 鉄軌道交通環境の整備
(1) 線路施設等の点検と整備
(2) 運転保安設備の整備
(3) 鉄道構造物の耐震性の強化
2 鉄軌道の安全な運行の確保
(1) 乗務員及び保安要員の教育の充実及び資質の向上
(2) 列車の運行及び乗務員等の管理の改善
(3) 鉄軌道交通の安全に関する知識の普及
(4) 鉄軌道事業者に対する保安監査等の実施
(5) 気象情報等の充実
3 救助・救急体制の整備
第3章 踏切道における交通の安全
第1節 踏切事故のすう勢と交通安全対策の今後の方向
第2節 講じようとする施策
1 踏切道の立体交差化及び構造改良の促進
2 踏切保安設備の整備及び交通規制の実施
3 踏切道の統廃合の促進
4 その他の踏切道の交通の安全と円滑化を図るための措置
第1章 道路交通の安全
第1節 道路交通事故のすう勢と今後交通安全対策の方向
1 茨城県における道路交通事故のすう勢
(1) 道路交通事故の現状
本県の交通事故による死者数は,昭和46年に633人のピークを記録して以来,各種施策や,県民の交通安全意識の浸透などの効果もあり,減少傾向を示していたが,近年,特に平成元年以降に再び増加傾向を示し,平成7年にも418人の死者を記録するなど,7年連続で400人を超えるという,深刻な状況が続いている。
これら本県の近年の交通事故の状況を第5次茨城県交通安全計画策定時及び全国の状況などと比較して見ると,次のような特徴が見られる。
① 事故の発生件数は5年前と比べ1.5倍程度に急増しており,全国の増加率を大幅に上回っている。
② 年間の死者数及び10万人当り死者数とも全国ワースト上位の状況が続いている。
③ 免許人口と車両台数との比較では,全国に比べ免許取得者1人当り車両台数が非常に多く,本県は自動車交通に大きく依存した状況にある。また,免許人口,車両台数とも全国の伸び率を超えて増加しており,現在もこの傾向は続いている。
⑤ 年齢別には,高齢者の交通事故が急増しており,特に発生件数では,5年前と比べ約2.7倍になるなど,大きな伸びを示している。
⑥ 青少年の死者数については,漸減傾向にあるが,発生件数は高い伸びを示している。
⑦ シートベルトの着用率については,若干の改善はあるものの,全国と比較すると着用意識の浸透の度合いは低い。
また,最近の交通死亡事故の主な特徴は次のようになっている。
① 夜間の死者が多く,特に深夜と薄暮時に多発している。
② 事故を起こした者は青少年に多いが,高齢者の増加が目立って来ている。
③ 最高速度違反,一時停止違反,酒酔い運転などの悪質な違反による死亡事故が多発傾向にある。
④ 四輪車による死亡事故が多く,特に青少年の割合が高くなっている。
⑤ 直線と交差点での死亡事故の多発傾向が続いている。
⑥ 高齢者の死亡事故が多発する中,特に歩行中,自転車乗車中の死亡事故が多い。
⑦ 地域的には県南が多いが,人口規模を勘案すると鹿行で多発している。
⑧ シートベルトの非着用の死者が引き続き,多くなっている。
(2) 道路交通を取り巻く状況の展望
本県は,東京に近接していることから,東京圏の機能の受け皿としての地域特性を持ち,今後更に交通体系の変化や社会状況の変化が顕著になるものと予想される。
特に交通体系においては首都圏中央連絡自動車道とその関連アクセスの整備や常磐新線の整備とその沿線開発に伴う関連アクセスの整備などの大きな変化が予想される。
また,社会的には開発に伴う社会増を含めた人口増や高齢者人口の増加による高齢化社会の進展や社会活動,経済活動の24時間化などによる社会の変化が予想され,このような変化は将来の道路交通に大きな影響を与えると考えられる。
(3) 交通安全における課題
以上の状況を整理すると,主に次のような課題が考えられる。
① 高齢化社会の進展に伴い,高齢者への交通安全対策の推進
② シートベルト等の車両の安全装置の使用の促進
③ 自動車交通に大きく依存する本県の特質から,安全で円滑・快適な道路環境及び道路体系の整備と歩行者等の安全性の確保のための交通安全施設の整備の推進
④ 県の発展に伴い変化する道路体系に対する交通安全教育,施策の柔軟な対応
⑤ 交通ルール違反者に対する効果的な取締りの強化
⑥ 県民自らの交通安全意識高揚のための県民運動等での取組
これらの課題に対応出来るよう,効果的な施策を講じて行く必要がある。
2 道路交通安全対策の今後の方向
本県の交通安全における諸課題に対応するためには,人命尊重の理念に立ち,交通事故による大きな社会的・経済的損失をも勘案し,社会・経済状況の変化を踏まえ,交通事故の実態に柔軟に対応した交通安全対策を積極的かつ広範囲に推進する必要がある。
このため,交通事故について調査分析し,実態にあった効果的な交通安全施策を推進するとともに,高齢化,情報化,国際化等の社会情勢の変化や社会の進展に伴う道路体系,交通需要の変化にも十分に配慮し,また防災時の対応についても考慮しながら,施策の展開を図る必要がある。
このような観点から,次のような項目を重点に,官民の連携を緊密にしながら,総合的かつ計画的に交通安全の施策を進めることとする。
(1) 高齢者の交通安全対策の推進
高齢化社会の進展に伴い,高齢者の交通事故防止のため,次のような事項を重点に施策を展開する。
① 参加・体験・実践型の交通安全教育や運転適性診断装置等による運転者教育の推進
② 高齢者交通安全マークの活用及び反射材用品の普及等をとおした交通安全意識の普及徹底
③ 弱者感応信号機,幅の広い歩道,コミュニティ道路等の歩行空間の確保
④ 付加車線,分かりやすい道路標識等の高齢者等が安心して暮らせる道路環境づくりの推進
⑤ 運転免許更新時等における適性検査,運転実技講習の充実などの安全運転対策の推進
⑥ 高齢者の交通安全施策の実施に当たっては,高齢者の交通行動等についての分析を進めるとともに,より効果的な浸透を図るために,高齢者団体,高齢者対策の事業推進部門との連携強化
(2) シートベルトの着用の徹底
自動車乗車中の死亡事故におけるシートベルト非着用者が多いことから,次のような事項を重点に施策を進める。
① 後部座席のシートベルト,チャイルドシートを含めたシートベルトの着用の徹底のために,あらゆる機会をとらえた普及啓発活動,広報活動の実施
② 県,関係機関,市町村及び民間団体等を含む広範囲な県民運動の展開
③ シートベルト着用義務違反者に対する指導取締りの強化
④ ステップ方式その他,効果的な着用推進対策の検討・実施
(3) 安全かつ円滑な道路交通環境の整備
交通事故多発地点に対する重点的な対策を実施するとともに,次のような事項を重点に施策を進める。
① 信号機等の高度化,道路標示の高輝度化などの交通安全施設の高度化と充実
② 歩道,自転車道など,歩行者・自転車利用者等のための空間の整備と休憩・情報提供・地域連携等の機能を有する「道の駅」の整備等の推進
③ 新交通管理システム,交通マネジメント施策の推進
④ 官民一体となった総合的駐車対策の推進
⑤ 災害時を想定した交通安全施設等の整備と災害時の交通安全の確保のための施策の推進
(4) 交通安全教育の推進
生涯に亘る交通安全教育と家庭,学校,職場及び地域等との連携による交通安全教育を推進するとともに,次のような事項を重点に施策を進める。
① 参加・体験・実践型の交通安全教育の推進
② 運転者教育として,免許取得前教育,免許取得時教育,免許取得後再教育の一貫した教育の充実
③ 自動車の安全装置の正しい使用方法等の普及促進
(5) 効果的な指導取締りの実施
交通事故に直結する違反,交通渋滞を引き起こす違反,その他悪質・迷惑性の高い違反を重点に効果的な取締りを実施する。
(6) 救助・救急体制の整備
交通事故による負傷者の搬送途上等における応急処置等の充実と交通事故負傷者の救命率の向上を図るため,次のような事項を重点に施策を進める。
① 心肺そ生法等の応急手当ての普及
② 救急救命士の計画的養成・配置等の促進及びドクターカー等の活用推進
③ 救命救急センター等の整備促進
(7) 官民一体となった交通安全推進体制の確保
交通事故防止については,交通安全関係者のみならず,県民の一人ひとりが自らの責務として,交通安全意識の向上に努めることが必要であることから,県,関係機関,市町村及び民間団体等による官民一体となった推進体制を強化するとともに,「大好きいばらき県民会議」などの民間の自主的組織と連携し,県民の隅々にまで行き渡るような交通安全県民運動の展開を図る。
3 第6次茨城県交通安全計画における目標
以上のような諸施策を総合的かつ強力に推進することにより,交通事故のない「安全で快適な社会」の実現をめざし,県民を交通事故の脅威から守ることを目標とするが,当面,年間の交通事故死者数を平成12年までに350人以下とすることをめざすものとする。
第2節 講じようとする施策
1 道路交通環境の整備
(1) 道路の新設・改築による交通安全対策の推進
ア 適切に機能分担された道路網の整備
基本的な交通の安全を確保するため,高規格幹線道路から居住地域内道路に至るまで,適切に機能分担された道路の体系的整備を推進する。
(ア) 異種交通を分離し,交通流の純化を促進するため,自動車専用道路等の整備を推進する。
(イ) 通過交通の排除と交通の効果的分散により,都市部の混雑と交通事故の発生を抑止するため,バイパス及び環状道路等の整備を推進する。
(ウ) 幹線道路に囲まれた居住地域等において,通過交通を出来るだけ幹線道路に転換するため,補助的な幹線道路,区画道路,歩行者専用道路等の系統的整備と区画道路におけるコミュニティ道路や歩車共存道路(歩道等の設置が困難な道路を対象にハンプや狭さく等を組み合わせて歩行者等の通行を優先し車の走行を抑制する道路)等の交通安全施設の整備等を総合的に実施する。
(エ) ニーズに応じた効率的輸送体系と円滑な交通流が確保された良好な交通環境の確立のため,道路交通,鉄道,海運等複数の交通機関相互の連携を考慮したマルチモーダル施策を進めるとともに,これらの交通機関を利用しやすいようなアクセス道路の整備を推進する。
イ 改築による道路交通環境の整備
交通事故を抑止し,安全で円滑・快適な交通を確保するため,次により道路の改築事業を強力に推進する。
(ア) 歩行者と自転車利用者の安全と生活環境の改善を図るため,歩道等を設置するための既存道路の拡幅,車の交通を分散するための小規模バイパスの建設等,道路交通の安全に寄与する道路の改築を積極的に推進するとともに,県民が安心して歴史や自然に親しめる大規模自転車道の整備を推進する。
(イ) 交差点及びその付近における交通事故の防止と交通渋滞の解消を図るため,交差点の立体交差化等を推進する。
(ウ) 一般道路の新設・改築に当たっては,道路標識,中央帯,車両停車帯,道路照明,防護さく等の交通安全施設についても,併せて整備する。
(エ) 道路の機能が沿道の土地利用を含めた道路の利用実態に適していることが,交通の安全を確保するうえで必要なことから,交通の流れを踏まえた,利用実態にあった副道等の整備,植樹帯の設置,路上駐停車対策等を推進する。
(オ) 商店街等において,歩行者,自転車利用者の安全で快適な通行空間を確保するため,実情に応じ,幅の広い歩道,コミュニティ道路,歩車共存道路,車両通行を禁止又は制限したショッピングモール等の整備を推進する。
(カ) 鉄道駅周辺地区等において,人と車の交通を分離し,歩行者空間の拡大を図るため,地区周辺の幹線道路,ペデストリアンデッキ,交通広場等の総合的な整備を図る。
(キ) 歴史的環境が保全されている地区,観光資源の豊かな地区等では,通常の生活のための交通,通過交通などとそれらの地区への交通を適切に分離するよう,体系的な整備を進める。
(ク) 鉄道駅周辺等で大量の放置自転車がある箇所について,自転車駐車場の整備を推進する。
ウ 災害発生等に備えた安全の確保
地震,豪雨等による災害に強く,安全性,信頼性の高い道路交通を確保するため,道路構造物の補強等により耐震性を向上させるとともに,交通危険箇所について落石防止施設等の整備をするなどの各種防災対策を推進する。
エ 地域の実態に応じた安全の確保
道路交通環境の整備を進めるに当たっては,沿道の人々のニーズ,道路の利用実態,交通流等に応じた,地域の実情を考えた柔軟な対応を図る。
(2) 交通安全施設等整備事業の推進
交通事故の多発している道路,その他緊急に交通の安全を確保する必要のある道路について,平成8年度を初年度とする交通安全施設等整備五箇年計画を作成し,計画的,総合的な整備を進め,安全かつ円滑・快適な交通環境の確立を図る。
ア 事故多発地点の重点的整備
(ア) 事故多発地点のうち緊急度が高い箇所については,詳細な事故分析に基づき交差点改良,視距の改良,付加車線等の整備を,改築事業による整備にあわせて重点的に実施するとともに,道路構造に応じて,中央帯の設置,バス路線等における停車帯の設置及び防護さく,道路標識,区画線等の交通安全施設等の整備を推進する。
(イ) 道路の構造,交通の実態を勘案し,交通事故が発生する危険性が高い場所等に信号機を設置するとともに,既存の信号機については,交通状況の変化に対応出来るよう,地域の実態に応じた集中制御化,系統化,閑散時半感応化等の高度化を推進する。
(ウ) 道路の構造,交通の状況等に応じた交通の安全の確保のため,道路標識の大型化・内照化・自発光化等,道路標示の高輝度化等の交通安全施設等の整備を推進するほか,事故発生地点の把握や現在地の確認等に効果的なキロポスト(地点標)の整備を推進する。また,見通しの悪いカーブで,対向車の接近を知らせる対向車接近システムや幹線単路における高速走行抑止システムの整備を進めるとともに,道路照明,視線誘導標等の設置による夜間事故対策を推進する。
イ 高齢者等の社会参加を支援する歩行空間等の整備
(ア) 歩行者や自転車利用者の交通事故が発生する危険性の高い区間等,おおむね750キロメートル程度について,改築事業等と併せて歩道及び自転車道等を引き続き重点的に整備し,平成12年度までに歩道等の設置済み道路延長をおおむね4,700キロメートルに引き上げるとともに,整備に当たっては,快適な通行空間となるように,幅の広い歩道の整備に努める。
また,コミュニティ道路,歩車共存道路等の整備についても推進するとともに,道路標識の大型化・自発光化等の整備を行い,視認性の向上を図る。
(イ) 高齢者,身体障害者等の社会参加の機会増大に対応し,駅,公共施設,福祉施設,病院等を中心に「平坦性が確保された幅の広い歩道」,音響式信号機,弱者感応信号機,歩行者感応信号機,待ち時間表示装置,昇降装置付立体横断施設等及び自転車駐車場の整備並びに電線類の地中化を道路改築事業等と併せて推進する。また,駅前等の立体横断施設や交通広場等部分に昇降装置やスロープの設置,建築物との直結化などを進め,歩行しやすい空間の確保に努める。
(ウ) 歩道等の整備,押しボタン式信号機,歩行者用灯器等の整備,立体横断歩道,横断歩道等の拡充により,通学路,通園路の安全の確保を図る。
(エ) 市街地部の歩道等の設置が必要な区間で,沿道に利用されていない土地がある場合に,その土地を活用し,歩行者の安全を確保する空間(環境道路)の整備を進める。
ウ 円滑・快適で安全な道路交通の確保
(ア) 道路交通に関する情報の収集,分析及び伝達並びに信号機,道路標識及び道路表示の操作その他道路における交通の規制を広域的かつ総合的に行うため,既存の交通管制センターの改良・高度化を推進するとともに,交通管制センターのエリア拡大等交通管制システムの充実・高度化を図る。
(イ) 幹線道路における交通の変動の状況に対応した信号制御を行うため,信号機の高度化を図る。
(ウ) 多数の路上駐車のため安全で円滑な道路交通が阻害されている都市内の道路において,駐車場,路上駐車施設,駐車場案内・誘導システム,違法駐車抑止システムの整備など,総合的な駐車対策を推進するとともに,過労運転による事故防止や高齢運転者等の増加に対応し,都市間の一般道路における付加車線や「道の駅」などの休憩施設等の積極的な整備を図る。
(エ) 分かりやすく使いやすい道路交通環境を整備し,安全で円滑な交通の確保を図るため,交通監視カメラ,各種車両感知器等の整備,道路・交通・気象等の情報を迅速かつ的確に提供する道路情報提供装置,交通情報板等の整備,交通規制の実効を図るための視認性・耐久性に優れた大型固定標識及び路側可変標識の整備並びに利用者のニーズにあった分かりやすい案内標識の整備を推進する。特に,主要な幹線道路の交差点とその付近の大型案内標識や交差道路標識の重点的整備,外国人のためのローマ字併用表示・シンボル表示の推進を図る。
エ 災害に強い交通安全施設等の整備
地震,豪雨等による災害の発生時に安全な道路交通を確保するため,交通管制センター等の交通管理施設及び交通規制を迅速かつ効果的に行うための交通規制資機材の整備を推進するとともに,災害発生時の停電に備え,信号機電源付加装置の整備を推進する。
また,隣接県等と相互に交通情報の収集・提供を行う広域的な交通管理体制の整備を推進する。
(3) 効果的な交通規制の推進
道路における危険の防止,交通の安全と円滑化を図り,道路機能等の実態と地域の実態等に応じた効果的な交通規制を行う。
ア 地域の特性に応じた交通規制
通過交通のための道路は,駐停車禁止,転回禁止,指定方向外進行禁止,進行方向別通行区分等の交通規制を,地域交通のための道路は,一方通行,指定方向外進行禁止等を組み合わせた交通規制を,また,歩行者・自転車利用者のための道路は,歩行者用道路,車両通行止め,路側帯の設置等の交通規制を強化する。
イ 安全で機能的な都市交通確保のための交通規制
既実施の規制の見直しを含む計画的・総合的な都市交通規制を進め,交通流・量の適切な配分・誘導を図るとともに,路線バス等の大量公共輸送機関の安全・優先通行の確保のための交通規制を積極的に推進する。
ウ 幹線道路における交通規制
道路構造や交通完全施設の整備状況,交通の状況等を勘案し,速度規制,追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止規制等の見直しを行い,適正化を図る。
エ 高速道路における交通規制
交通流の状況,道路構造,交通安全施設の整備状況,交通事故の発生状況等を総合的に勘案し,交通実態に即した適正な交通規制を行うとともに,交通事故,異常気象等の交通障害発生時には,必要な臨時交通規制を迅速,的確に実施し,二次障害の防止を図る。
オ 事故多発地域における重点的交通規制
交通事故多発地域,路線等では最高速度の指定,追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止等の効果的な交通規制を重点的に実施する。
カ 二輪車の安全確保のための交通規制
道路構造,交通の状況等に応じ,二輪車と二輪車以外の自動車の通行部分の分離を図るための交通規制を推進する。
キ 災害発生時における交通規制
災害発生時は,混乱を最小限に抑えるため,緊急交通路を確保し,被災地への流入抑制等の交通規制を迅速かつ的確に実施する。
また,災害対策基本法(昭和36年法律第223号)による通行禁止等の交通規制を迅速かつ的確に行うため,信号制御により被災地への車両の流入を抑制するとともに,迂回指示・広報を行い,併せて災害の状況や交通規制等に関する情報を提供する交通情報板等の整備を推進する。
(4) コミュニティゾーンの形成
住居系地区等では,通過交通の侵入を抑え,地区内の生活の安全確保のためにハンプや狭さく等が整備されたコミュニティ道路等の面的整備とゾーン規制等の交通規制を組み合わせた,良好なコミュニティゾーンの形成を図る。
(5) 高度情報技術等を活用した道路交通システムの整備
最先端の情報通信技術等を活用した人と道路と車とを一体のシステムとして構築し,快適性の向上,交通の円滑化を図る。
ア 道路交通情報通信システム(VICS)の整備
リアルタイムな渋滞情報,所要時間,規制情報等の道路交通情報を提供する道路交通情報通信システムの整備を推進する。
イ 新交通管理システム(UTMS)の構想に基づく施策の推進
交通管制センターの高度化を基本とし,高度な交通情報提供,公共車両の優先等により,安全運転を支援し,交通の快適性を確保しようとする新交通管理システムの構想に基づく施策の推進を図る。
(6) 交通需要マネジメントの推進
交通需要が道路整備を超えて増加する状況下において,道路交通の円滑化を図るため,公共交通機関優先システムと公共交通機関の利便性の向上により,鉄道,バス等の公共交通機関への転換を図るとともに,パークアンドライドの推進,道路交通情報等の充実,相乗りの促進など,道路利用の仕方を工夫し,輸送効率の向上,交通量の時間的・空間的平準化を図る交通需要マネジメントを推進するほか,普及・定着の促進のため,広報啓発活動を積極的に行う。
(7) 総合的な駐車対策の推進
道路交通の安全と円滑化を図り,都市機能の維持及び増進に寄与するため,交通の状況や地域の特性に応じた総合的な駐車対策を推進する。
ア 秩序ある駐車の推進
(ア) 都市部における無秩序な路上駐車を抑制し,安全で円滑な道路交通を確保するため,茨城県警察駐車対策推進基本計画に基づき,駐(停)車禁止規制の適切な推進を図るとともに,交通の安全と円滑上支障がない場所については,駐車の需要等を勘案し,駐(停)車禁止規制の解除,パーキングメーター等の設置を推進するなど,駐(停)車禁止規則の見直しを進める。
(イ) 違法な駐停車が交通渋滞等交通に著しい迷惑を及ぼす交差点においては,違法駐車抑止システム等の整備を推進し,違法駐停車を抑止して交通の安全と円滑化を図る。
(ウ) 違法駐車の取締りについては,悪質で危険性,迷惑性の高い違反に重点を置くとともに,車輪止め措置及びレッカー移動を効果的に活用するなど,重点的かつ効果的に推進する。また,放置駐車違反については,公安委員会による指示及び使用制限命令の積極的な活用を図り,使用者責任を強力に追及する。
イ 駐車場等の整備
都市における駐車場を整備し,道路交通の円滑化と利用者の利便性の向上を図るため,茨城県駐車施設整備基本方針により市町村等の指導を行う。
(ア) 駐車場と駐車の実態を把握するため,市町村による駐車場整備計画調査を促進し,自動車交通がふくそうする地区等における駐車場整備地区の指定を促進するとともに,当該地区において,駐車場の整備に関する基本方針,目標年次及び目標量等を定める駐車場基本計画の策定について市町村を指導する。
(イ) 大規模な建築物に対し駐車場の整備を義務付ける市町村の駐車場附置義務条例の制定を促進するとともに,共同駐車場整備促進事業による補助制度などを活用した地域の実態にあった民間駐車場の整備について指導する。
(ウ) 都市機能の維持・増進を図るべき地区及び交通結節点等,重点的に駐車場の整備を図るべき地域において,特定交通安全施設等整備事業等を活用し,公共駐車場の整備を進めるとともに,幹線道路における短時間の駐車需要に対応する路上駐車施設の整備を推進する。
(エ) 既存駐車場の有効利用を図るため,駐車場案内・誘導システムの整備を推進するとともに,都市空間の有効利用を図るため,道路等の公共空間の地下利用による駐車場整備や立体道路整備制度を活用した建築物と駐車場の一体的整備を推進するほか,パークアンドライド等の普及のための駐車場等の環境整備を推進する。
ウ 違法駐車締め出し気運の醸成・高揚
違法駐車に関する県民の意識を向上させるため,各自治体における違法駐車防止条例の制定を促進するとともに,関係機関・団体と連携した広報,啓発活動を積極的に推進するほか,地域交通安全活動推進委員による違法駐車の排除・駐車意識の向上を目的とした街頭啓発活動,地域での広報・啓発活動を推進することにより,違法駐車締め出し気運の醸成・高揚を図る。
(8) その他の道路交通環境の整備
ア 道路使用の適正化等
(ア) 道路の使用及び占用の抑制
工作物の設置,工事等のための道路の使用及び占用については,道路の構造を保全し,安全・円滑な道路交通の確保のため,真に必要なものについて,適正な許可を行うとともに,道路使用許可条件の履行,占用物件等の維持管理の適正化を図り,特に,地下埋設物の管理については指導監督を強化する。
(イ) 不法占用物件等の排除
道路交通の妨害になる不法占用物件等については,強力な指導取締りにより排除するとともに,不法占用の防止のために,沿道住民に対する啓発活動を積極的に実施する。
(ウ) 道路の掘り返しの規制等
道路の掘り返しを伴う占用工事等については,無秩序な掘り返しと工事に伴う事故を防止するため,極力これを抑制するとともに,計画的な占用工事等の施行を指導するほか,掘り返しを防止する抜本的対策として,共同溝の整備を推進する。
イ 道路法に基づく通行の禁止又は制限
道路構造の保全,又は交通の危険防止のため,道路の破損,決壊又は異常気象により交通が危険であると認められる場合及び工事のためやむを得ないと認められる場合には,道路法(昭和27年法律第180号)に基づき,迅速かつ的確に通行の禁止又は制限をするとともに,車両の寸法,重量等の最高限度を超える車両の通行の禁止又は制限に対する違反を防止するため,必要な体制の強化拡充を図る。
ウ 自転車等駐車対策の推進
(ア) 自転車等の駐車対策については,自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(昭和55年法律第87号)により,市町村における総合計画の策定を促進するとともに,自転車等の駐車需要の多い地域等を中心に交通安全施設等整備事業,都市計画街路事業等による自転車駐車場の整備を推進するほか,大量の自転車等の駐車需要がある施設に自転車駐車場の設置を義務付ける条例の制定について,市町村を指導する。
(イ) 鉄道の駅周辺等における放置自転車等の問題解決のため,県,市町村,道路管理者,鉄道事業者等が協力関係を築くとともに,用地提供について鉄道事業者の積極的な協力を得て,効率的・総合的な自転車等駐車場の整備を推進するほか,市町村及び地域の状況に応じ,自転車等の放置防止条例等を制定し,放置自転車等の整理・撤去等を図る。
(ウ) 自転車利用者に対し,利用する側としての責任の自覚を求めるため,関係団体との連携により,法令の遵守,正しい駐車方法等に関する教育や広報活動を行う。
エ 子供の遊び場等の確保
子供の遊び場の不足を解消し,路上遊戯等による交通事故を防止するとともに,都市における良好な生活環境作り等を図るため,平成8年度を初年度とする第6次都市公園等整備五箇年計画を策定し,広域的・総合的な利用のできる広域公園,緑地等の整備や子供が最も身近に利用できる街区公園,近隣公園等の整備を進めるとともに,都市公園,学校等の公共施設を有機的につなぎ,災害時には避難路として利用できる緑道の整備を推進する。
繁華街,小住宅集合地域,交通頻繁地域等,子供の遊び場等の環境に恵まれない地域又はその近接地域を優先して,児童館及び児童遊園を設置するとともに,公立の小学校,中学校及び高等学校の校庭及び体育施設,社会福祉施設の園庭等の社会解放の促進を図る。また,付近に適当な遊び場が確保出来ない場合には,遊戯道路の設置など居住環境の安全性,快適性を確保するために必要な交通規制を行う。
オ 危険物の輸送に関する交通環境の改善等
危険物の輸送時の事故による大規模な災害を未然に防止するため,危険物運送業者に対し,関係法令の遵守,乗務員教育の実施等の指導を強化する等,危険物輸送上の安全の確保の徹底を図る。
カ 電線類の地中化の推進
都市景観の整備,安全で円滑な道路交通や良好な歩行空間の確保等を図るため,従来の地中化方式よりもコンパクトで低コストな電線共同溝等による電線類の地中化を一層推進する。
2 交通安全思想の普及徹底
(1) 生涯にわたる交通安全教育の振興
生命尊重の理念に基づき,交通社会の一員としての責任を自覚し,相手の立場を尊重する良き社会人の育成を基本方針とし,年齢段階や社会生活の状況に応じた体系的な交通安全教育を推進するほか,指導者の養成・確保,教材等の充実を図るとともに,より効果的な参加・体験・実践型の教育を重点的に推進する。
また,施策の推進に当たっては,家庭,学校,職場,地域等で行われる交通安全教育相互の有機的な連携を図るとともに,県民により身近な存在である市町村との連携を強化しながら,進めるものとする。
ア 幼児に対する交通安全教育
幼児に対しては,身近な生活における安全行動の習慣を身に付けることが出来るよう,計画的かつ継続的な教育を行う。
幼稚園・保育所では,幼児の発達段階や地域の実情に応じた交通安全教育を日常の教育・保育活動の中で,視聴覚教材等を活用するなどの分かりやすい方法で行うとともに,家庭での適切な指導,積極的な話し合いが出来るよう,広報啓発活動等を推進する。
児童館等においては,遊びをとおした交通安全の指導を推進するとともに,母親クラブ等の組織化の促進と活動の強化を図る。
イ 児童生徒等に対する交通安全教育
小学校,中学校及び高等学校の児童生徒に対しては,自他の生命尊重の理念と自主的な社会貢献のこころを養い,必要な交通安全の知識を身に付け,身近な交通環境における的確な安全行動をとれる能力を涵養するとともに,大部分の児童生徒が将来運転者となる現状を踏まえ,計画的かつ継続的な教育を行う。
特に,「児童・生徒に係る交通事故情報提供制度」による身近な事故の教訓を生かした交通安全指導は非常に効果的なことから,当該制度の一層の活用を図る。小学校では,教科「体育」,学級活動,学校行事を中心に,学校教育活動全体を通じ,歩行者としての安全,自転車・乗り物の安全な利用,身近な交通安全施設,交通規制等について重点的に指導する。
中学校では,教科「保健体育」,学級活動,学校行事を中心に,学校教育活動全体を通じ,歩行者としての安全,自転車の安全な利用,自動車の特性と安全な行動,交通事故の防止と安全な生活,応急措置等について重点的に指導する。
高等学校では,教科「保健体育」,ホームルーム活動,学校行事,生徒会活動を中心に,学校教育活動全体を通じ,自転車の安全な利用,二輪車・自動車の特性,交通事故の防止,応急措置等への理解を深めるとともに,交通社会において必要な交通マナーを身に付けるよう指導する。特に,二輪車については,生徒の実態と地域の実情に応じて,理論と実技の指導を通し,安全運転に関する能力と態度の育成を図るなど,交通安全教育の充実に努める。
また,単に交通安全教育の受け手にとどまらず,生徒の自主的な活動として学校内だけでなく地域においても交通安全意識の高揚のための啓発活動を実践することで,地域への交通安全教育の普及につなげる。
これらの指導に当たっては,安全指導の手引き等を活用し,実践的・効果的な指導を行うとともに,各種講習会等により教職員の指導力の向上と教材・教具等の充実を図るほか,「二輪車研究指定校」などの研究指定校制度を活用し,交通安全教育の在り方,指導方法等についての調査研究を推進する。
また,正しい交通安全の習慣が身に付くよう,家庭内での話し合い等を進めるよう広報啓発活動などを推進するとともに,交通安全母の会,民間交通指導員,交通少年団,児童館活動等の交通安全に関する地域活動の積極的な推進に努める。
ウ 成人等に対する交通安全教育
運転者については,地域・職場における実践的・体験的な講習会等により,安全運転の意識,技術の浸透を図る。
また,民間交通安全団体等と連携し,歩行者・自転車利用者の保護,シートベルト・乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底,死亡事故に直結するおそれの高い悪質・危険な運転や違法駐車の防止等の広報啓発活動等により,安全行動についての社会的責任の自覚を醸成するほか,自動車安全運転センターの安全運転中央研修所や指定教習所等の機能を活用し,参加・体験・実践型の講習を進めるとともに指導者の養成に努める。
二輪車運転者については,交通安全意識の高揚と交通安全活動への積極的な参加を促進するため,関係機関・団体等が連携して,二輪車の安全に関する情報の提供,自主的な訓練への協力,講習会等の開催などを実施するとともに,二輪車運転者の組織をとおした啓発活動を強化する。
自動車使用者については,安全運転管理者,運行管理者等に対する法定講習などの各種講習会の充実を図るほか,企業及び事業者団体の自主的な事故防止のための活動等を促進し,企業内での安全管理を徹底する。
地域では,交通安全協会,交通安全母の会,地域交通安全活動推進委員連絡協議会等の民間交通安全団体の活動及び自動車製造・販売団体,自動車利用者団体等の交通安全のための活動に対して,積極的な指導協力を行い,それらの活動を通じて,交通安全意識の浸透を図る。また,社会教育施設で開設する学級・講座の中で交通安全に関する内容を取り上げるなど,交通安全のための活動の促進するとともに,PTA,婦人団体,青少年団体,町内会等による実践活動を促進する。
エ 高齢者等に対する交通安全教育
人口の高齢化の進行に対応し,高齢者に対する交通安全教育の指導体制を充実するとともに,より効果的な参加・体験・実践型の交通安全教育を積極的に推進する。また,老人クラブなどの関係団体や高齢者対策の事業推進部門との連携を強化して,高齢者の集まる多様な機会を活用した交通安全教育の実施や老人クラブ未加入者を始め高齢者のいる家庭の訪問指導等により実態に即した具体的な指導を行うことで,高齢者の自発的な交通安全意識を喚起するとともに,反射材などの有効な交通安全用品の普及に努める。
また,老人クラブ,老人ホーム等における交通安全についての話し合いの場の設置,交通安全指導者の養成等を促進し,高齢者同士の相互啓発を進めるとともに,地域において自主的な交通安全活動を展開するよう指導,援助を行う。
身体障害者については,地域における福祉活動の場を利用するなどにより,交通安全教育を行う。
(2) 交通安全に関する普及啓発活動の推進
ア 交通安全運動の推進
県民一人ひとりがお互いに思いやりの心を持ち,交通ルールを守り,各種の交通安全運動を住民運動として盛り上げることにより交通事故,特に悲惨な交通死亡事故を抑止し,より安全で快適な生活環境をつくるために,茨城県交通安全県民運動を次の方針により組織的・継続的に展開する。
(ア) 交通ルールの遵守と交通マナーの実践,シートベルトの着用の徹底,高齢者の交通事故防止,青少年運転者の交通事故防止,子供の交通事故防止,二輪車・自転車の交通事故防止,安全で快適な交通環境の整備等を目標とする。
(イ) 県,市町村,関係機関及び民間交通安全関係団体等が一致協力し,交通事故の実態,地域の実情に即した交通安全運動を展開する。また,運動の実施に当たっては,地域住民の自主的な参加を得て,活発で効果的な活動となるよう配意するとともに,「大好きいばらき県民会議」との連携により,新たな運動の展開を図る。
(ウ) 県民一人ひとりに運動の趣旨を浸透させるためには,県民にとって身近な行政機関である市町村の役割が大きいことから,特に県,関係機関は市町村との緊密な連携をとり運動を展開する。
イ シートベルトの着用の徹底
自動車乗車中の死亡事故において,シートベルト非着用者が高い割合を占めていることから,本県における交通事故死亡者の削減の重要な課題として,後部座席におけるシートベルトの着用,チャイルドシートの利用を含めたシートベルト着用推進を図るとともに,正しい着用の徹底を図る。
このため,あらゆる機会をとらえた普及啓発活動や各種の広報媒体を活用した広範囲な広報活動を展開するとともに,シートベルト着用体験車の貸し出し事業や巡回事業をとおし,着用効果の体験的理解を図るほか,市町村,地域の民間団体との連携によるキャンペーン等をとおして県民一人ひとりへの着用意識の浸透を図る。そのほか,ステップ方式(教育・広報等と取締りを組み合わせた着用対策)その他効果的なシートベルト着用対策について検討・実施する。
また,高速バス等における乗客のシートベルトの着用について,事業者等を通じてその徹底を図る。
ウ 交通の安全に関する広報の推進
県民一人ひとりが交通安全意識を高め,交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けるため,日常生活に密着した内容の広報を各種広報媒体を活用して,次の方針により計画的かつ積極的に行う。
(ア) 交通事故の実態に即した内容及び重点的に広報する必要のある内容について,官民一体となった広範なキャンペーンや各種広報媒体を活用した集中的なキャンペーンを展開することにより,県民への浸透を図る。
(イ) 社会の基本的な単位であり,交通社会において立場の異なる者で構成されている家庭は交通安全を考える場として重要なことから,市町村の広報誌等家庭向けの各種広報媒体を活用した積極的,かつ,きめ細かい広報を行い,家庭における話し合いや考える機会等の契機を提供することで,子供や高齢者など身近な人の交通事故防止に努めるとともに,交通ルールやマナーの浸透を図る。
(ウ) 県民の交通安全への理解を深めるため,交通安全に関する資料,情報等の積極的な提供を行い,民間団体の広報活動を援助するとともに,県民の交通安全意識の盛り上がりを醸成するため,報道機関の理解と協力を求める。
エ その他の普及啓発活動の推進
このほかに次のような普及啓発活動を推進する。
(ア) 高齢者の交通事故防止のため,高齢者交通安全マークのステッカーを配布することにより,運転者の注意を喚起するとともに高齢者の自覚を促す。
(イ) 反射材の効果についての理解を促進するとともに,反射材用品の普及を促進する。
(ウ) 県民の注意を喚起するため,事故多発地点を公表するとともに,その地点における対応方法についての広報を実施する。
(エ) 自転車利用者のマナーの向上と交通事故を防止するため,歩行者に配慮した歩道通行,無灯火走行の防止等の正しい乗り方の普及啓発活動を推進する。
(オ) 自動車の安全装置の正しい使用方法等の知識の普及促進に努めるとともに,点検整備等の重要性への理解の浸透と自動車の保守管理についての使用者の自己責任の醸成に努める。
(カ) 県内に在留する外国人に対し,我が国の交通ルール等に関する知識の普及啓発活動を市町村の外国人登録の窓口等を利用して推進する。
(3) 交通の安全に関する民間団体等の主体的活動の推進等
交通安全については,交通安全関係者のみならず,茨城県民の一人ひとりが自らの責務として,交通安全に取り組む意識の醸成が必要であるが,そのために民間の交通安全関係団体の果たす役割は非常に重要である。このため,これらの団体の行う交通安全の諸活動への援助や活動のために必要な交通安全関係の情報の提供等を行い,活動の活性化を図る。
特に,交通安全対策の官民の推進母体である茨城県交通対策協議会の構成機関・団体間の連携を強化するとともに,各機関・団体における自主的な交通安全活動を強化し,推進体制の充実を図る。
また,交通安全意識を県内の隅々にまで浸透させるためには,交通安全関係団体だけでなく,これまで交通安全の活動に参加していなかった団体まで含めた広範囲な交通安全の活動を展開する必要がある。このため,県民自らが自主的な活動を展開している「大好きいばらき県民会議」等の団体との連携を強化し,官民一体となって交通安全活動を推進していく。特に「交通安全10万人大作戦」について,「大好きいばらき県民会議」とともに官民一体となり事業を推進していく。
さらに,交通安全を利用する人の視点にたってとらえ,利用しやすい良好な道路交通環境を作り上げるために,通学路点検を始めとして,地域の人々や道路の利用者が主体的に参加する「安全総点検」を実施するとともに,交通安全対策実施段階だけではなく,企画・立案の段階から住民の意見が反映出来るような仕組みをつくり,住民と行政との連携による交通安全対策を推進する。
3 安全運転の確保
(1) 運転者教育等の充実
安全運転に必要な知識及び技能を身に付けた上で安全運転を実践できる運転者を育成するため,免許取得前から,安全意識を醸成する交通安全教育の充実するとともに,免許取得時及び免許取得後においても,特に,危険予知・危険回避能力の向上のための訓練を行うほか,次により運転者教育の充実を図る。
ア 運転免許を取得しようとする者に対する教育の充実
(ア) 自動車教習所における教習の充実
自動車教習所の教習に関し,交通事故実態等を踏まえた安全で効果的な教習を進めるほか,教習指導員の資質向上,教習内容及び技法の充実を図り,教習水準を高める。
(イ) 取得時講習の充実
原付免許,普通二輪免許,大型二輪免許及び普通免許を取得しようとする者に対する取得時講習の充実に努める。
イ 運転者に対する再教育等の充実
取消処分者講習,停止処分者講習,初心運転者講習及び更新時講習により運転者に対する再教育が効果的に行われるよう,講習施設・設備等の拡充を図るほか,講習資機材及び講習内容の高度化並びに講習方法の一層の充実に努める。
また,自動車安全運転センターの安全運転中央研修所や地域における安全運転実技教育の場である自動車教習所等の機能を活用した参加・体験・実践型の運転者教育を推進する。
ウ 二輪車安全運転対策の推進
取得時講習のほか,自動二輪車安全運転講習及び原付等安全講習の推進に努めるとともに,新たに作成された教習カリキュラムの円滑な実施等のための指定自動車教習所における交通安全教育体制の整備等を促進し,二輪運転者に対する教育の充実に努める。
エ 高齢運転者対策の充実
高齢運転者の交通事故防止を図るため,更新時講習,停止処分者講習における高齢者学級の拡充に努めるとともに,運転適性検査の実施及び運転シミュレーターによる個別安全運転指導の推進や臨時適性検査制度等の積極的な活用とその実施体制等の整備を図る。
また,今後急増することが予想される高齢運転者に対して,実車を用いた参加・体験・実践型の教育を積極的に推進するとともに,直接,高齢運転者に対し安全運転を呼び掛けるレター作戦等を推進する。
オ シートベルト及び乗車用ヘルメットの正しい着用の徹底
シートベルト及び乗車用ヘルメットの正しい着用の一層の徹底を図るため,シートベルト体験車による体験や各種講習・交通安全運動等あらゆる機会を通じて,着用効果と正しい着用方法についての教育と広報・啓発を積極的に行うとともに,シートベルト着用義務違反に対する街頭での指導取締りを強化する。
(2) 運転免許業務の合理化
県民の立場に立った運転免許業務を進めるために,運転免許事務の機械化,自動化の推進等の業務の合理化や行政処分制度の適正かつ効果的な運用等に努めるほか,運転免許試験場においては,身体障害者等のための設備・資機材の整備を進めるとともに,運転適性相談に積極的に対応する。
(3) 運転管理の改善及び運行管理の充実
ア 安全運転管理の推進
安全運転管理者,副安全運転管理者に対する講習等により,これらの者の資質の向上を図るとともに,使用者等の安全意識の向上に努め,安全運転管理者等の未選任事業所の一掃を図り,企業内の安全運転管理体制を充実・強化し,安全運転管理業務の徹底を図る。
また,事業活動に関してなされた道路交通法違反等についての使用者等への通報制度を十分活用するとともに,使用者,安全管理者等による下命,容認違反等については,使用者等の責任追及を徹底し,適正な運転管理を図る。
イ 運行管理の充実
(ア) 自動車運送事業者等の行う運行管理の充実
自動車運送事業者等に対して,運行管理の徹底を図るため,監査等による指導監督を強化するとともに,事業者団体等を通じての指導を行う。
また,貨物自動車運送事業者については,試験制度による運行管理者の資質の向上,貨物自動車運送適正化事業実施機関を通じての過労運転・過積載の防止等運行の安全を確保するための指導の徹底を図るほか,高速バス,トラック,タクシー等の高速道路等における事故時の被害を軽減するため,シートベルト着用の徹底等の指導強化を図る。
(イ) 運行管理者等に対する指導講習の充実
運行管理者等への指導講習に当たっては,事故情報の分析結果に基づき,内容の充実と効果的な指導を行い,過労運転・過積載の防止等運行の安全確保の徹底を図る。
(ウ) 運転者に対する適性診断の充実
自動車運送事業等に従事する運転者に対し,運転適性診断の受診促進を図るため,自動車事故対策センター等における受診を積極的に促進する。
(4) 交通労働災害の防止等
ア 交通労働災害の防止
事業場に対して,交通労働災害の防止を図るためのガイドラインを周知徹底することにより,事業場における管理体制の確立,適正な労働時間等の管理,適正な走行管理,運転者に対する教育,健康管理,交通労働災害の防止に対する意識の高揚を促進する。
また,これらの対策が効果的に実施されるよう,関係団体と連携し,事業場における交通労働災害防止管理者の配置を促進するとともに,交通労働災害防止指導員により,ガイドラインに基づいた,同管理者に対する教育の実施や事業場に対する個別指導等を実施する。
イ 運転者の労働条件の適正化
自動車運転者の労働時間,休日,割増賃金,賃金形態等の労働条件の改善を図るため,労働基準法(昭和22年法律第49号)等の関係法令及び「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)の履行を確保するための監督指導を行う。
また,関係行政機関相互の連絡会議の開催及び監督・監査結果の相互通報制度の活用を図る。
(5) 道路交通に関する情報の充実
ア 道路交通情報の充実
多様化する道路利用者のニーズにこたえるため,道路利用者に対し必要な道路交通情報を提供することにより,安全かつ円滑な道路交通を確保するとともに,光ファイバーネットワーク,マイクロエレクトロニクス等の新たな情報技術を活用しつつ,車両監視用テレビ,車両感知器,道路標識,交通情報板等の既存の情報収集・提供体制の一層の充実を図る。
また,運転者に渋滞状況等の道路交通情報を提供する道路交通情報通信システム(VICS)の整備を図ることにより,交通の分散を図り,交通渋滞を解消し,交通の安全と円滑化を推進する。
さらに,交通管制センターの高度化により,高度な交通情報提供,公共車両の優先を図り,安全運転を支援し,交通の快適性を確保しようとする新交通管理システム(UTMS)の構想に基づく施策の推進を図るとともに,各種イベント開催に伴い,臨時の放送局の開設を積極的に許可し,参加者等への交通情報等の各種情報提供の利便と交通安全の確保に寄与する。
イ 気象情報等の充実
大雨,大雪,地震,強風,霧,津波等の自然現象について,予報,注意報・警報等の気象情報の適時,適切な発表と関係機関,道路利用者等への迅速な伝達に努める。また,情報内容の充実と効果的な利用のため,時間的・空間的にきめ細かい予報の発表と予報の情報量の拡大を進めるとともに,静止気象衛星システム等の利用体制,気象レーダー観測網,地域気象観測網,気象資料伝達網の充実強化を図るほか,地震観測等の体制の充実強化を図り,地震情報の迅速な発表と津波予報のきめ細かい発表等,迅速かつ的確な情報発表に努める。
ウ 災害発生時における情報提供の充実
災害発生時において,道路の被災状況や道路交通状況を迅速かつ的確に収集・分析・提供し,復旧対策の早期立案や緊急交通路,緊急輸送路等の確保や道路利用者等への道路交通情報の提供等に資するため,地震計,車両監視用テレビ,車両感知器,道路交通の情報提供装置及び通信施設等の整備を推進する。
4 車両の安全性の確保
(1) 自動車の検査及び点検整備の充実
道路運送車両法の改正により明確になった自動車使用者の保守管理責任を踏まえ,新たな検査及び点検整備制度の趣旨の周知徹底を図る。
ア 自動車の検査体制の充実
道路運送車両法に基づく自動車の新規検査,継続検査,構造等変更検査等の確実な実施を図るため,検査体制の整備を推進するとともに,指定自動車整備事業制度の適正な運用・活用を図るため,事業者に対する指導監督を強化する。また,軽自動車の検査については,その実施機関である軽自動車検査協会における検査の一層の効率化を図るとともに,検査体制の充実強化を図る。
イ 自動車点検整備の充実
(ア) 自動車点検整備の推進
道路運送車両法の改正により,自動車使用者の保守管理責任が明確になったことに伴い,自動車使用者の保守管理意識の高揚と点検整備の促進を図るため,「自動車点検整備推進運動」を関係者の協力の下に全県的に展開するなど,自動車使用者による保守管理の徹底を図るとともに,自動車運送事業者の保有する事業用車両の確実な点検実施のため,点検整備実施者に対し,監査,研修会等をとおし指導する。
(イ) 不正改造車を排除する運動の推進
暴走族の不正改造車や過積載を目的としたダンプカー等の不正改造車(さし枠装着車等)等を排除し,自動車の安全運行を確保するため,関係機関の支援及び自動車関係団体の協力の下に「不正改造車を排除する運動」を全県的に展開するとともに,春・秋の交通安全運動期間中及び年末年始の輸送等に関する安全総点検期間中に広報活動等を推進するほか,関係者への指導,街頭検査等により,不正改造防止についての自動車利用者及び自動車関係事業者等の認識を高める。
(ウ) 自動車整備技術の向上
最新の自動車技術や自動車使用者の要望の多様化に対応し,自動車の適切な維持管理により安全の確保及び公害の防止を図るためには,自動車整備事業による整備技術の向上が必要であることから,その整備技術の向上を図るため,近代化計画に基づく構造改善計画の推進について自動車分解整備事業者に指導する。
(2) 自転車の安全性の確保
ア 自転車安全整備の推進
自転車の安全な利用を確保するため,日本交通管理技術協会茨城県支部,県自動車・二輪自動車商協同組合,県交通安全協会等と連携し,自転車安全整備制度の充実強化に努めるとともに,自転車利用者に対し,日本工業規格等に適合した自転車の利用,定期的な点検整備等の実施について広報啓発を行い,安全意識と点検整備意識の定着を図るほか,整備技術の向上のため,自転車組立整備士制度の拡充を図る。
イ TSマーク保険制度及びSGマーク制度の普及
自転車安全整備士による点検整備を促進するとともに,TSマーク及びSGマークの趣旨の広報とマークの普及を図る。
ウ 反射器材の普及促進
生活の24時間化と夜間交通量の増大に伴い,夜間の交通事故が多発していることから,その防止対策として,自転車の被視認性を向上させる反射器材の普及促進を図る。
5 道路交通秩序の維持
(1) 交通の指導取締りの強化等
ア 一般道路における指導取締りの強化等
歩行者・自転車利用者の事故並びに重大事故の防止に重点を置き,指導取締りを効果的に推進する。このため,指導取締り体制の充実と装備資機材の整備を図るとともに,歩行者等の保護誘導活動の推進,歩行者等を脅かす違反行為の取締り及び交通秩序維持のための街頭監視,無免許運転,酒酔い運転,著しい速度超過,過積載,放置違反駐車等の悪質性,危険性,迷惑性の高い違反に重点を置いた指導取締りの強化を図る。
また,飲酒運転,過積載,過労運転等の構造的違反については,背後責任の追及を徹底し,必要に応じ自動車の使用制限処分を行い,違反の根絶を図る。
イ 高速道路における指導取締りの強化等
高速道路においては,重大な違反行為はもちろんのこと,軽微な違反行為であっても重大事故に直結するおそれがあることから,交通の指導取締り体制の整備に努め,交通流や交通事故発生状況等の交通の実態に即した効果的な機動警ら等を実施することにより,違反の未然防止及び交通の円滑化を図る。
また,交通指導取締りは,悪質・危険性,迷惑性の高い違反を重点に取締ることとし,特に,著しい速度超過,車間距離不保持,シートベルト非着用,過積載,過労運転,路肩走行,駐停車違反等の取締りを強化する。
(2) 交通犯罪捜査及び交通事故処理体制の強化
ひき逃げ事件,その他各種の交通犯罪の捜査及び交通事故事件捜査を迅速かつ適正に行うため,次により要員,装備等の充実強化を図る。
ア 専従捜査体制の強化
交通犯罪捜査及び交通事故事件の捜査体制を強化するため,専門捜査員の確保並びに捜査能力の一層の向上に努めるとともに,迅速かつ適正な捜査活動を図るための捜査機材,資料の収集整備等の充実強化を図る。
イ 初動捜査体制及び科学的捜査体制の強化
初動捜査体制及び科学的捜査体制の強化を図るため,事故処理車,捜査用車等現場の活動に必要な車両及び鑑識装備資機材を整備する。
(3) 暴走族対策の強化
ア 暴走族総合対策の推進
県内の暴走族は,爆音暴走行為や集団暴走行為を繰り返しており,凶悪,粗暴化しているが,暴走族の生まれる背景には,青少年の育つ家庭,社会環境や教育及び車社会の構造や環境等多くの問題があることから,関係機関,団体で構成する暴走族対策会議を中心として,地域,家庭,学校,職場との連携を密にし,次のとおり暴走族対策を強力に推進する。
(ア) 暴走族追放強調運動の展開
暴走族追放機運を高めるための追放運動を展開して,暴走族を許さない世論の形成,暴走をさせない環境づくりを推進する。
(イ) い集,暴走する恐れのある場所等に対する管理措置の強化
暴走族をい集,暴走させないための環境づくりをするため,暴走族の走行実態を把握し,い集,暴走する恐れのある公園,駐車場や道路などの施設の管理者との協議を行い,駐車場の夜間封鎖,交通規制や道路改良等必要な管理措置対策を推進する。
(ウ) 二輪安全運転を中心とした交通安全教育の推進
高校生及び若年層の原付,自動二輪車利用者に対して,正しい利用の仕方と安全な乗り方等の交通安全教育を充実し,暴走族への参加防止,暴走行為の防止を図る。
(エ) 暴走行為を未然に防止する事前対策の強化
関係機関,団体が連絡を密にし,暴走族へ参加しないための呼びかけ,指導警告を徹底して,暴走行為の未然防止を図る。
(オ) ガソリン不売運動の推進
茨城県石油商業組合が中心となって実施しているガソリン不売運動は,暴走族への心理的効果が大きいので,関係機関,団体による推進会議等での効果的推進を図る。
イ 暴走族に対する取締りの強化
暴走族による事故,事件の発生を防止し,交通秩序を確保するとともに,青少年の健全な育成に資するため,次の対策を強力に推進する。
(ア) 暴走族の取締り用資機材を整備するとともに,集団暴走行為その他悪質事犯の検挙及び補導を徹底し,あわせて解散指導を強力に行うなど,指導取締りの強化を図る。
(イ) 暴走族に対する運転免許の行政処分については,迅速に行うとともに,処分者講習により,再犯防止を図る。
(ウ) 暴走行為を助長する車両の不正改造を防止するとともに,車両の部品等が不正改造等に使用されることがないよう,企業,関係団体に対する指導を強化する。
ウ 不正改造車両等の防止対策の強化
関係機関,団体と連携し,不正改造車を排除する運動を展開するなど,広く一般への広報活動を行うとともに,定期的な街頭検査を実施する。
6 救助・救急体制等の整備
(1) 救助体制の整備
交通事故による負傷者の救命を図り,また,被害を最小限にとどめるため,次により救助・救急体制の整備・拡充を図る。
ア 救助・救急体制の整備・拡充
交通事故に起因する救助活動の増大及び事故の種類・内容の複雑多様化に対処するため,救助体制の整備・拡充を図り,救助活動の円滑な実施を期する。
イ 救急現場及び搬送途上における応急処置等の充実
交通事故に起因する負傷者の救命効果の向上を図るため,高度な応急処置が出来る救急救命士の計画的養成・配置等の促進,一般の救急隊員の行う応急処置等の充実,ドクターカー等の活用の促進を図り,救急現場及び搬送途上における応急処置等のより一層の充実を図る。
ウ 救急業務実施市町村の拡大
救急業務未実施市町村については,救急需要の実態等に即した救急業務の実施体制作りを推進するとともに,あわせて救急の補完体制作りを推進する。
エ 高速自動車国道における救急体制の整備
常磐自動車道及び東関東自動車道水戸線における救急業務については,日本道路公団が自主救急として行うほか,沿線市町村でも相協力して,適切かつ効率的な人命救護を行う。このため,両者は通信連絡体制等の充実を図るなど相互に連携を強化するとともに,必要な施設等の整備,従業者への教育訓練等を推進する。
オ 集団救助・救急体制の整備
大規模道路交通事故等による多数の負傷者の発生に対処するため,連絡体制の整備及び救護訓練の実施等,集団救助・救急体制の整備を推進する。
カ 救助・救急設備等の整備
救急医療機関へのアクセスを改善するため,高速自動車道における緊急開口部の整備,交差点改良等の整備を促進する。
また,救助工作車,救助用資機材,高規格救急自動車,高度応急処置用資機材等の整備を推進するとともに,救急指令装置,救急医療情報収集装置,救急業務用地図等検索装置等を一元化した消防緊急通信指令装置の導入を推進し,救急医療機関等の整備とあわせて,救助活動及び救急業務の円滑な実施を図るほか,救急業務におけるヘリコプターの積極的な活用を図っていく。
キ 救助隊員及び救急隊員の教育訓練の充実
複雑多様化する救助・救急事象に対応出来るよう,救助隊員及び救急隊員の知識・技術等の向上を図るため,教育訓練をより一層充実する。
ク 救急救命士の養成
プレホスピタルケア(救急現場及び搬送途上における応急措置)の向上のために,救急救命士の計画的な養成を図るとともに,救急医療施設における救急救命士の実地訓練,教育訓練を充実し,資質の向上を図る。
ケ 応急手当の普及
交通事故による負傷者の救命のためには,心臓停止後3~4分以内の心肺そ生法等の応急手当が効果的であることから,事故現場に居合わせた関係者等により,負傷者に対する迅速かつ適切な応急手当等が行えるようにする必要がある。
このため,心肺そ生法を含めた応急手当の知識・実技の普及を図るため,消防機関,保健所,医療機関,日本赤十字社,民間団体等の関係機関において,指導資料の作成・配布,講習会の開催等を推進するとともに,救急の日,救急医療週間等の機会を通じて広報啓発活動を積極的に推進するほか,応急手当指導者養成を強力に推進する。
自動車教習所における教習及び取得時講習,更新時講習等において応急救護処置に関する知識の普及に努めるとともに,学校においては,中学校,高等学校の教科「保健体育」において止血法や包帯法,心肺そ生法等の応急手当について指導の充実を図るほか,心肺そ生法の実習などの各種講習会により,教員の指導力の向上を図る。
(2) 救急医療体制の整備
ア 救急医療機関等の整備
救急医療体制の基盤となる初期救急医療体制の整備拡充のため,休日夜間急患センターの設置の促進及び在宅当番医制の普及定着を推進するとともに,救急医療告示医療機関及び救急医療協力医療機関の確保に努める。
また,初期救急医療体制では応じきれない重傷救急患者の診療を確保するため,病院群輪番制及び救急医療二次病院で第二次救急医療体制の整備を図るとともに,重篤な救急患者を受け入れるための第三次救急医療体制として,高度の診療機能を有する24時間体制の救命救急センターの整備を進める。
さらに,救急医療施設の情報を収集・提供することにより,救急医療体制が有効に運営できるよう調整を行う救急医療情報センターの整備充実を図るとともに,救急医療機器等の充実を図る。
イ 救急医療施設医師研修の推進
緊急医療施設に勤務する医師を対象に救急医療研修を実施することにより,救急医療担当医師の資質の向上を図る。
ウ 救急処置普及員の養成等
保健所及び市町村の保健婦を対象に救急処置普及員の養成を行うとともに,一般県民に対し救急処置講習会を開催し,救急そ生法等の普及啓発を図る。
(3) 救急関係機関の協力関係の確保等
救急医療施設への迅速かつ円滑な収容を確保するため,救急医療機関,消防機関等の関係機関における緊密な連携・協力関係の確保を推進するとともに,救急医療機関内の受入れ,連絡体制の明確化を図る。
また,救急患者の救命率の向上を図るため,医師,看護婦等が救急自動車に同乗し,救急現場及び搬送途上において救命処置を行う,いわゆるドクターカーの運行の促進や,医師の判断を直接救急現場に届けられるよう救急自動車に設置した自動車電話・携帯電話により医師と直接交信するシステム(ホットライン)等を活用するなど,医療機関と消防機関が相互に連携を取りながら効果的な救急医療体制の整備を促進する。
7 損害賠償の適正化等
(1) 自動車損害賠償保障制度の充実等
交通事故による被害者の救済対策の中核的役割を果たしている自動車損害賠償保障制度について,自動車利用者への浸透を図る。
ア 無保険(無共済)車両対策の徹底
無保険(無共済)車両に対して,「無保険(無共済)車をなくそうキャンペーン」,保険(共済)加入者の一元的管理,街頭の指導取締りの強化等を行い,責任保険(責任共済)への加入率の向上を図る。
イ 任意の自動車保険(自動車共済)の充実等
責任保険(責任共済)とともに重要な役割を果たしている任意保険(任意共済)について,被害者救済等の充実を図るため,その普及率の向上について引き続き指導を行う。
(2) 損害賠償の請求についての援助等
ア 交通事故相談所の活動の強化
県交通事故相談所の業務について,次により充実強化を図る
(ア) 相談内容の多様化・複雑化に対処するため,研修等を通じて相談員の資質向上を図り,相談業務を充実するとともに,市町村の相談業務を強化するため,市町村相談窓口に対する交通事故相談所の指導を強化する。
(イ) 交通事故相談所業務の円滑かつ適正な運営を図るため,関係援護機関,団体等との連絡協調を促進するほか,交通事故紛争処理センター,法律扶助協会及び日弁連交通事故相談センター等の相談機能の積極的な活用を図る。
(ウ) 交通事故相談所において,各種の広報を行うほか,県,市町村の広報紙等の積極的活用等により交通事故相談活動の衆知徹底を図り,交通事故当事者に対し,広く相談の機会を提供する。
イ 自動車事故被害者等に対する援助措置の充実
高等学校交通遺児授業料減免事業による援助を行うとともに,自動車事故対策センターの行う交通遺児等に対する生活資金貸付け,交通遺児育成基金の行う基金事業への協力を行うほか,茨城県社会福祉協議会の行う交通遺児福祉基金の事業への支援を行う。
8 科学技術の振興等
(1) 道路交通事故原因の総合的な調査研究の推進
社会の進展に伴い,複雑多様化する交通事故の実態を的確に把握し,効果的な交通安全対策の検討,立案等に資するため,交通事故の事例について,人,道路及び車両の面から総合的な事故分析を行うとともに,交通事故総合分析センターの機能や国等が進める研究成果なども積極的に活用して,的確な対応策を検討する。
また,国の行う科学的アプローチによる交通事故の総合的調査研究の成果や事故分析の結果等をもとに,交通安全関係者ばかりではなく,広範囲な人の知識やノウハウを結集して,社会状況,交通事故実態にあった対応策の検討を行う。
(2) 都市交通問題の調査
将来の都市交通問題を解決し,円滑な都市機能を確保するため,総合的な都市交通計画を策定するにあたり,県内各地において各種調査を実施する。
第2章 鉄軌道交通の安全
第1節 鉄軌道事故のすう勢と交通安全対策の今後の方向
鉄軌道の運転事故は,長期的な減少傾向を示しており,これは,これまでに講じてきた各種の安全対策の成果と考えられるが,水戸,土浦等主要都市圏の混雑緩和のためのJR常磐線の輸送力増強をはじめとして,列車運行の一層の高速化,高密度化が進められていることに伴い,一度事故が発生した場合,大規模な被害となるおそれが高いため,今後とも安全対策を強力に推進する必要がある。
特に,本県では平成12年に東京の秋葉原とつくば市を結ぶ常磐新線の開通が予定されるなど,今後県南地域を中心とした大規模開発に伴い,列車の利用者が急増することが予想されることから,将来の社会状況を勘案した安全対策が求められる。
このため,自動列車停止装置の設置・高機能化の推進等により,一層の安全性の向上を図るとともに,来るべき高齢化社会に対応し,高齢者,身体障害者等の鉄道施設の安全な利用にも十分配慮した駅施設の整備を促進する。
また,阪神・淡路大震災の経験を踏まえた鉄道構造物の耐震性の強化を推進するとともに,緊急時に備えた運行管理体制の充実,乗務員等の教育訓練の充実,保安監査等における安全管理体制に関する指導の強化,交通安全運動の機会を活用した鉄軌道の安全に関する知識普及等の安全対策を強力に推進することにより,運転事故の一層の防止に努めることとする。
第2節 講じようとする施策
1 鉄軌道交通環境の整備
(1) 線路施設等の点検と整備
鉄軌道交通の安全を確保するためには,基盤である線路施設について常に信頼性を保持する必要があり,軌道や路盤等の施設の保守及び強化を図るとともに,豪雨による土砂崩壊等での施設の被害を防止するため,線路防護施設の整備を促進する。
また,駅施設等については,旅客の安全確保のため,高齢者,身体障害者等の利用にも十分配慮し,所要の設備の整備を促進する。
(2) 運転保安設備の整備
列車運行の高速化,高密度化への対応及び列車運行の安全確保を図るため,列車集中制御装置(CTC)の整備を促進するとともに,既存の自動列車停止装置(ATS)の高機能化,中小民鉄におけるATSの設置等の保安設備の整備・充実を行う。また,事故・地震発生等の緊急時において必要な情報を迅速に伝達し,乗務員が適切な対応が取れるよう列車無線等の通信装置の整備を促進する。
(3) 鉄道構造物の耐震性の強化
平成7年7月26日の鉄道施設耐震構造検討委員会の提言を受け,既存の高架橋,開削トンネル等については,兵庫県南部地震程度の地震に対しても構造物が崩壊しないように緊急耐震補強を促進する。
2 鉄軌道の安全な運行の確保
(1) 乗務員及び保安要員の教育の充実と資質の向上
鉄軌道の乗務員及び保安要員に対する効果的な教育訓練の実施及び科学的な適性検査の定期的な実施について指導するとともに,動力車操縦者の資質の確保を図るため,動力車操縦者運転免許試験を適正に実施する。
(2) 列車の運行及び乗務員等の管理の改善
列車の運行状況を的確に把握し,ダイヤの乱れ,事故の発生等に際して,鉄軌道事業者が迅速かつ適切な措置を講ずることが出来るよう,運行管理体制の強化について指導するとともに,乗務員等の心身機能の把握などの職場における安全管理について指導を行う。
(3) 鉄軌道交通の安全に関する知識の普及
置石,投石等の鉄道妨害,線路内立入り等の外部要因による事故を防止するため,鉄軌道事故防止に関する知識の一般への普及が必要であることから,鉄軌道事業者に対し,学校,沿線住民,道路運送事業者等を対象として,全国交通安全運動等の機会をとらえて,ポスターの掲示,チラシ類の配布等による広報活動を積極的に行うよう指導する。
(4) 鉄軌道事業者に対する保安監査等の実施
鉄軌道事業者に対し,定期的又は必要に応じた保安監査を実施し,施設及び車両の保守管理状況,運転取扱いの状況,乗務員等に対する教育訓練の状況等についての適切な指導を行うとともに,鉄軌道事業経営者に対して,安全管理体制に関する指導を行う。
(5) 気象情報等の充実
鉄軌道交通の安全に関係の深い台風,大雨,大雪,霧,地震等について,予報,注意報・警報等の気象情報の適時,適切な発表と関係機関への迅速な伝達に努める。また,情報内容の充実と効果的な利用のため,きめ細かい予報の発表を行うとともに,観測体制の充実と気象情報伝達のシステムや地震についての観測体制の充実強化を図るほか,広報や講習会等をとおし,気象知識の普及に努める。
3 救助・救急体制の整備
鉄軌道の重大事故等の発生に際して,救助・救急活動を迅速かつ的確に行うため,鉄軌道事業者と救急搬送機関,医療機関その他の関係機関との連絡協調体制の強化を図る。
第3章 踏切道における交通の安全
第1節 踏切事故のすう勢と交通安全対策の今後の方向
踏切事故(鉄軌道の運転事故のうち,踏切障害及びこれに起因する列車事故をいう。)は,長期的に減少傾向にあり,平成7年の発生件数は4件,死傷者数は5人であり,平成2年の発生件数9件,死傷者数14人と比較して,発生件数で56%,死傷者数で64%の減少となっている。
このような踏切事故の減少は,踏切道の改良等の安全施策の積極的な推進によるところが大きいと考えられるが,整備すべき踏切道は,依然として残されていることから,平成8年度を初年度とする第6次踏切事故防止総合対策に基づき,引き続き,踏切道の立体交差化,構造の改良,踏切保安設備の整備,交通規制の実施,統廃合の促進その他踏切道における交通の安全と円滑化を図るための措置を総合的かつ積極的に推進することにより,踏切事故の発生を極力防止することとする。
第2節 講じようとする施策
1 踏切道の立体交差化及び構造の改良の促進
都市部において,列車運行回数が特に多い区間における踏切道については,連続立体交差化することにより,また,これら以外の踏切道のうち遮断時間が特に長く,かつ,道路交通量の多いもの,主要な道路との交差にかかるもの等については,単独立体交差化することにより,踏切道の除去を促進するとともに,道路の新設・改築及び鉄道の新線建設に当たっても,極力立体交差化を図る。
また,自動車が通行する踏切道であって,踏切道の幅員が接続する道路の幅員よりも狭いもの等について,構造の改良を強力に促進する。
2 踏切保安設備の整備及び交通規制の実施
踏切の利用状況,踏切道の幅員,交通規制の実施状況等を勘案し,踏切遮断機の整備を促進する。
また,列車回数が多く,かつ,列車の種別等により警報時間に差が生じているものについては,必要に応じ警報時間制御装置の整備等を,自動車交通の多い踏切道については,道路交通の状況,列車回数等を勘案し,必要に応じ踏切支障報知装置の整備を促進するほか,道路の交通量,踏切道の幅員,踏切保安設備の整備状況,う回路の状況等を勘案し,必要な交通規制を実施する。
3 踏切道の統廃合の促進
踏切道の立体交差化,構造改良等の事業の実施に併せて,近接する踏切道の統廃合を進めるとともに,それ以外の踏切道についても,その利用状況,う回路の状況等を勘案して,地域住民の通行に特に支障を及ぼさないと認められるものについて,統廃合を促進する。
4 その他踏切道の交通の安全と円滑化を図るための措置
踏切道における交通の安全と円滑化を図るため,必要に応じ,踏切道予告標,踏切信号機,歩行者のための横断歩道橋等の設置を進めるとともに,車両等の踏切通行時の違反行為に対する指導取締りを引き続き積極的に行う。
また,踏切事故は,直接横断,落輪等に起因するものが多いことから,自動車運転者や歩行者等の踏切道通行者に対し,安全意識の向上及び踏切支障時における非常ボタン操作等の緊急措置の周知徹底を図るための広報活動等を一層強化する。