○行政不服審査法及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律等の施行に関する自治事務次官通達について

昭和37年11月28日

37学発第227号

茨城県総務部長

各課(局,所)長

各出先機関の長

上のことについて,自治事務次官から別添のとおり通達があつたので移達する。

なお,この取扱いについては遺憾のないように願いたい。

自治乙文発第24号

昭和37年10月29日

各都道府県知事

各都道府県選挙管理委員会委員長 殿

各都道府県人事委員会委員長

自治事務次官

行政不服審査法及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律等の施行について

行政不服審査法及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律は第41国会(臨時会)において成立し,9月15日法律第160号及び法律第161号をもつてそれぞれ公布され,また行政事件訴訟法及び行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律は,第40国会(常会)において成立し,本年5月16日法律第139号及び法律第140号をもつてそれぞれ公布され,次に掲げる関係政令等とともに,昭和37年10月1日から施行されることとなつた。

○ 行政不服審査法及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律の施行に伴う関係政令の審理に関する政令(昭和37年9月29日政令第391号)

○ 行政事件訴訟法及び行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律の施行に伴う関係政令の整理に関する政令(昭和37年9月29日政令第392号)

○ 行政不服審査法及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律の施行に伴う関係省令の整理に関する省令(昭和37年9月29日自治省令第21号)

行政不服審査法(以下「審査法」という。)は,訴願法又はその他の法令によつて運用されてきた訴願制度が幾多の不備かつ不統一の面を有する実情にかんがみ,訴願法が採用していた,いわゆる列記主義を改めて,不服申立てができる事項については,一般概括主義を採り入れる等,その内容を整備するとともに,不服申立制度に関する統一法規を定めることによつて,国民の権利利益の救済と行政の適正な運営を確保することを目的とするものであり,また行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(以下「不服審査整理法」という。)は審査法の施行に伴い,各種行政法規につき,同法と重複する規定を削り,同法の適用を受けない不服申立制度の名称を改め,同法に対する必要な特例規定を設ける等関係法律について必要な整理等を行なつたものである。

次に行政事件訴訟は,日本国憲法の施行に伴い制定された行政事件訴訟特例法によつて運用されてきたのであるが,この特例法は,解釈上幾多の疑義があるとともに,行政事件訴訟の特質及び各種行政法規との関連についての考慮が十分でなく,その運用の面においても幾多の困難を生じていたので法制審議会の答申を尊重し,慎重に審議の上,これらの疑義欠陥をできるだけ除去し,国民の権利の伸長及び行政の運営の円滑化を図るべく,先般行政事件訴訟に関する一般法として行政事件訴訟法(以下「訴訟法」という。)が制定されたものであり,また,行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(以下「訴訟整理法」という。)は,訴訟法の施行に伴い,同法の規定の趣旨に則り,各種行政法規における訴訟に関する規定の整備等を行なつたものである。

従つて,これらの法律の運用にあたつては,特に下記の事項に留意の上,遺憾なきを期せられるとともに,行政の適正な運営につき,さらに格段の御配慮をわずらわしたい。

なお,行政不服審査法の施行に関する行政管理事務次官の通達写を別添のとおり参考までに添付する。

おつて,貴管下市町村に対しても,この旨御示達の上,適切な御指導を願いたい。

第1 審査法の施行に関する事項

一 この法律制定の趣旨

行政不服審査制度は,行政庁の違法又は不当な処分に関し行政庁に不服申立をさせ,行政庁による簡易迅速な手続により国民の権利利益の救済を図るとともに,行政の適正な運営を確保することをその目的とするものであつて,その制定にあたつては,従来の制度の欠陥を是正するため,特に国民の権利利益の救済に十分に意を用いており,審査法の全般にわたつて具体化されているので,その運用にあたつては,その立法の趣旨を十分に理解し,尊重するよう注意すべきものである。

二 総則に関する事項

1 一般概括主義の採用

(1) 一般概括主義の原則

審査法は,「行政庁の違法又は不当な処分,その他公権力の行使に当たる行為に関し,国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開く」(審査法1①)旨を宣言するとともに,具体的には,第4条において処分についての一般概括主義を規定し,また,第2条において処分には事実行為で,その内容が継続的性質を有するものを含ましめ,さらに第7条において行政庁の不作為についても,不服申立てをすることができるものとしている。この一般概括主義の採用は,不服申立てをすることができる事項が少なく,かつ,その範囲が不明確,不統一な現行制度の欠陥を抜本的に是正したものであつて,今回の審査法の制定において最も重要な基本的事項である。なお,一般概括主義の採用に伴い,不服審査整理法において,訴願等をすることができる旨を定めた規定は重複するこことなるので削除された。

(2) 一般概括主義の例外

審査法は,一般概括主義の例外として,審査法自体において11項目の処分につき,不服申立てをすることができないものとしているが(審査法4①ただし書),これらの処分は,次のような性質を有するものについて審査法の適用を除外するのが適当と認められたものであるから,審査法の運用上留意すべきものである。

(一) 慎重な手続で行なわれた処分であり,再考の余地がなく,不服申立てを認めても,結局同じ結果になるもの(審査法4①ただし書Ⅰ~Ⅳ)

(二) 他の救済手続によつて処理するのが適当であるもの(審査法4①ただし書Ⅴ~Ⅶ)

(三) 処分の性質上,一般法たる審査法による手続によつて処理するのが適当でないもの(審査法4①ただし書Ⅷ~XI)

また,審査法は,これらの処分のほか,別に他の法律でそれぞれ不服申立てをすることができない旨の定めをすることができるものとしているが(審査法4①),これらは,審査法において一括して除外することが困難なため,不服審査整理法において,必要なものにつき,上記と同様の理由によりそれぞれ措置されているものである。

(3) 再審査請求についての措置

再審査請求については,すべての処分についてこれを認める必要がないため,それぞれの法律(条例に基づく処分については,条例を含む。)において,必要なものにつき,個々に再審査請求することができる旨を定めることとされており(審査法8①I)それぞれ不服審査整理法において措置されたが,地方自治法第153条の規定に基づき権限の委任が行なわれた場合に審査庁の階層に不均衡が生ずることを避けるため,このような場合には概括的に再審査請求を認めることとしたものである(審査法8①Ⅱ,③)

2 不作為についての不服申立て

「行政庁が法令に基づく申請に対し,相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をなすべきにかかわらず,これをしないこと」すなわち,行政庁の不作為(審査法2②)についてもあらたに不服申立てのみちが開かれ,当該不作為に係る処分その他の行為を申請した者は,異議申立て又は,審査請求のいづれかをすることができるものとされた。(審査法7)

この場合において,審査法は,不作為庁の理由開示,不作為庁の直近上級行政庁の必要な命令等の措置を規定しているが(審査法50,51),かかる新しい制度が採り入れられたのは,法令に基づく申請に対して行政庁の行なう許可,認可等に関する処分が必ずしも迅速かつ適正に行なわれないため,国民の受ける不利益を考慮し,行政の迅速かつ適正な処理の促進を図る趣旨に出るものであつて,審査法の大きな特色をなしているものであるから,その運用には,特段の配意が必要であるとともに,行政の能率的な処理について,なお一層の配慮が望まれるものである。

3 不服申立ての名称の統一

不服申立ての名称が区々であるために生ずる国民の不便を考慮して,審査法による不服申立ての名称を審査請求,異議申立て及び再審査請求の三種類に統一し,処分庁又は不作為庁以外の行政庁に対してするものを審査請求,処分庁又は不作為庁に対してするものを異議申立て,審査請求の裁決を経た後さらに行なうものを再審査請求とした(審査法3)

なお,これに伴い不服審査整理法において,関係法律につき,不服申立てに関する名称の整理を行なつた。

4 処分についての審査請求と異議申立てとの関係

(1) 審査法は第1に,処分庁に上級行政庁がある場合には原則として審査請求,第2に,処分庁に上級行政庁がない場合及び処分庁が主任の大臣又は外局若しくは,これに置かれる庁の長である場合には原則として異議申立てをすることができるものとしているが,後者に該当する場合において法律又は条例に審査請求することができる旨の定めがあるときは,原則として異議申立てを排除しているものである(審査法5,6)

(2) なお,これらのほか処分庁に上級行政庁がある場合において,法律に異議申立てをすることができる旨の定めがあるときは異議申立ての前置をすべきものとされているが(審査法20),このような場合における異議申立てについては,例えば課税処分の如く大量集中的に行なわれ,かつ,当該処分に対する不服の理由が,概して要件事実の認定の当否に係るようなものにつき,その立法の趣旨を考慮して,不服審査整理法においてそれぞれ措置されたものである。

(3) 審査庁は,法律又は条例に特別の定めがある場合を除くほか,処分庁又は不作為庁の直近上級行政庁とされた(審査法5②)

三 教示に関する事項

審査法第3章において規定されている教示制度は,審査法が採り入れた最も重要な制度の一つであつて,新しい行政不服審査制度が国民のために十分にその効用を発揮することができるよう配慮されたものであるから,その運用にあたつては,格段の留意をすべきものである。

1 教示の義務

教示は,審査法による審査請求又は異議申立てをすることができる処分についてだけではなく,他の法令に基づく不服申立てをすることができる処分についても,これらの処分を書面でする場合にすべきものとされており,この場合には,不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を教示しなければならないものとされた。また,行政庁は,利害関係人から上記の事項について教示を求められたときは,これらの事項を教示し,書面による教示を求められたときは書面で教示しなければならないものとされた(審査法57)

2 教示しなかつた場合又は教示を誤つた場合の救済

行政庁が教示をしなかつた場合における不服申立ては,当該処分庁に不服申立書を提出することによつて行なうことができるのであつて,事後の処理は,処分庁において当該不服申立てが適法に行なわれたものとされるよう措置すべきものとされ(審査法58),また,審査法による不服申立てをすることができる処分について教示を誤つた場合において,その誤つて教示されたところに従つて不服申立てをすれば,関係行政庁の間で適法なものとして処理されるよう措置すべきものとされた(審査法18,19,46)

四 不服申立期間に関する事項

不服申立期間については,訴願法その他の法令における不備不統一を改め,不服申立ては,処分があつたことを知つた日の翌日から起算して60日以内(異議前置の場合の審査請求又は再審査請求にあつては,決定又は裁決があつたことを知つた日から30日以内)にしなければならないものとし,天災その他不服申立てをしなかつたことについてやむをえない理由があるときは,その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内にすることができるものとし,また,処分の決定又は裁決があつた日の翌日から起算して一年を経過した時は,正当な理由がない限りすることができないものとされたが(審査法14,45,53),その趣旨は,従前個々の法律により不服申立て期間が区々にわたつていたため,期間が徒過して不服申立てをすることができない結果を招来することが見受けられた欠陥を是正したものであり,不服審査整理法において措置された若干の特例を除き,上部の期間に統一されたものである。

五 不服申立ての手続に関する事項

不服申立ての手続に関しては,訴願法その他の法律の定めるところが不備であつた実情にかんがみ,審査法においては不服申立人の権利利益の救済の見地から特に詳細に規定し,不服申立人の立場を強化するとともに,できるだけ簡易迅速を旨とするよう定められているが,その主な事項は次のとおりである。

1 不服申立ては,審理の正確と迅速とを期するため,他の法律で口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き,書面でするものとされ,口頭でする場合においても規定の整備がなされた(審査法9,16)

2 審査請求の場合においては,審査庁は処分庁に弁明書の提出を求めまた,審査請求人が反論書を提出することができるものとされた(審査法22,23)

3 利害関係人が不服申立てに参加するみちが開かれた(審査法24)

4 不服申立ての審理は,書面によることとされたが,不服申立人又は参加人の申立てがあつたときは申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならないものとされた(審査法25)

5 不服申立人又は参加人は,証拠書類又は証拠物を提出することができるものとされた(審査法26)

6 審査庁は,不服申立人若しくは参加人の申立てにより又は職権で,事実の陳述,物件の提出及び留置,検証,不服申立人又は参加人に対する審尋等をすることができるものとし,なお検証の際における申立人の立会い等につき必要な規定が設けられた(審査法27~30)

7 不服申立人又は参加人は審査庁に対し,特別な場合を除き,処分庁から提出された書類その他の物件の閲覧を求めることができるものとされた(審査法33)

8 執行停止については,従前と同様申立てにより直ちに執行停止の効果を生ずることはないが,不服申立人に執行停止の申立権を与えるとともに,全面的に規定を整備し,特に処分の執行等により生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは,原則として執行停止をしなければならないものとしており,また執行停止の申立てがあつたときは,審査庁は,すみやかに執行停止をするかどうかを決定しなければならないこととしているので,その運用には十分留意されたい(審査法34,35)

9 裁決及び決定についても,全面的に規定の整備が図られ,特に処分庁の上級行政庁である審査庁に対しては不服申立人に不利益にならない限度において処分の変更権を認め,また,処分が違法又は不当であつても,これを取り消すことが公共の福祉に適合しないこととなるような特別の場合には,当該不服申立てを棄却することができるものとするいわゆる事情裁決の規定を設けているが,その運用は十分慎重に行なわれるべきものである(審査法40)

第2 不服審査整理法等に関する事項

一 審査法の施行に伴う自治省設置法等の整理等に関する事項

審査法の施行に伴い,同法の適用を受ける関係規定及び同法の適用を受けない関係規定について,所要の整理を行なつた(自治省設置法4のⅩⅥのⅢ,ⅩⅩⅣ13Ⅱ,17Ⅲ,Ⅶ,Ⅸ自治省組織令12の2)

二 審査法の施行に伴う地方自治法等の整理等に関する事項

1 審査法の適用を受ける不服申立制度に対する特例に関する事項

審査法の施行に伴い地方自治法(以下「自治法」という。)の規定による処分についても,原則として審査法の規定により不服申立をすることとなつたが,普通地方公共団体の長の失職の決定,給与その他の給付に関する処分,財産又は営造物を使用する権利に関する処分,過料の処分,分担金,夫役現品,使用料,加入金及び手数料の賦課又は徴収並びに第225条第3項から第5項までの規定による滞納処分等については,従来どおり不服申立てをすることができるよう審査法に対する特例を定めた(自治法143,206,215,223,224,225)

なお,過料の処分については,まず普通地方公共団体の長に異議申立て又は審査請求をするものとされた(自治法223)

さらに,第168条第180条の5及び第184条並びに地方自治法施行令(以下「自治令」という。)第209条の10において第118条第5項の準用を第143条第2項から第4項までの準用に改めた(自治法168⑨,180の5⑧,184②,自治令209の10②)

2 審査法の適用を受けない不服申立制度に関する事項

(1) 審査法により不服申立てをすることができない同法第4条第1項ただし書各号に掲げる処分に対する不服申立て並びに民衆争訟及び機関争訟の性格を有する不服申立てについて審査法による不服申立てと区別するため次のように名称の改正が行なわれた。

(一) 条例の制定又は改廃の請求書の署名簿の署名に関する異議の申立及び訴願を異議の申出及び審査の申立てに改めた(自治法74の2④~⑦,⑨~⑪,74の3②)

(二) 普通地方公共団体の議会において行なう選挙の投票の効力に関する訴願を審査の申立てに改めた(自治法118⑤)

(三) 普通地方公共団体の議会の議決又は選挙がその権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認め再議に付し又は再選挙を行なわせてもなお権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときの当該普通地方公共団体の長がする審査請求を審査の申立てに改めた(自治法176⑤~⑦)

(四) 自治法の規定により普通地方公共団体の機関がした処分のため違法に権利を侵害された者からする訴願を審決の申請に改めた(自治法255の2)

(五) 地方公共団体の組合の経費の分賦に関する異議の申立を異議の申出に改めた(自治法291①②)

(2) 自治法の規定により不服申立てをすることができる場合における裁決期間,審査法の規定の準用等について規定した。

(一) 審査の申立てに対する裁決期間等について

自治法に特別の定めがあるものを除くほか,同法の規定による審査の申立てに対する裁決は,申立てを受理した日から90日以内にしなければならないこととされた(自治法257①)及び自治法の規定による異議の申出又は審査の申立てに対して決定又は裁決をすべき期間内に決定又は裁決がないときは,その申出又は申立てをしりぞける旨の決定又は裁決があつたものとみなすことができることとされた(自治法257②)

(二) 審査法の準用について

自治法の規定による不服申立てについては,自治法又は自治令に特別の定めがあるものを除くほか,審査法中の若干の規定を準用することとし,これに伴い所要の整理を行なつた(自治法258,256,257③,258の2,自治令175)

(3) その他

審査法の施行に伴い所要の整理を行なうほか,他の法令の改正に伴い別表及び自治令中所要の整理を行なつた。

三 審査法の施行に伴う地方公務員法の整理等に関する事項

1 審査法の施行に伴い,同法の趣旨に従つて職員に対する不利益処分に関する審査の請求,公務災害補償の実施に関する審査の請求等に関する制度の改正が行なわれ,所要の整備がなされたものである。

2 懲戒その他その意に反する不利益な処分を受けた職員は,人事委員会又は公平委員会に対してのみ審査法による不服申立て(処分権者が人事委員会又は公平委員会である場合は異議申立て,その他の場合は審査請求)をすることができるものとされた(地方公務員法(以下「地公法」という。)49の2①)

3 懲戒その他職員の意に反する不利益な処分を除くほか,職員に対する処分については,審査法による不服申立てをすることができず,職員がした申請に対する不作為についても,同様とされた(地公法49の2②)

4 職員団体の登録の取消しについては,審査法による不服申立てをすることができないこととされた(地公法53⑦)

5 懲戒その他その意に反する不利益な処分を受けた職員の不服申立てについては,審査法第2章第1節から第3節までの規定を適用せず,人事委員会規則又は公平委員会規則で必要な事項を定めることとされた(地公法49の2③,51)

6 懲戒その他その意に反する不利益な処分を受けた職員の不服申立ては,処分があつたことを知つた日の翌日から起算して1年を経過したときは,することができないこととされた(地公法49の3)

7 人事委員会又は公平委員会は,必要があると認めるときは,不服申立てに対する裁決又は決定を除き,審査に関する事務の一部を人事委員会の委員若しくは事務局長又は公平委員会の委員に委任することができることとされた(地公法50②)

8 職員がその意に反して不利益な処分を受けたと思うときに任命権者に対して行なう処分事由説明書の請求について定められていた期限が廃止された(地公法49②)

9 処分事由説明書には,当該処分につき,人事委員会又は公平委員会に対して不服申立てをすることができる旨及び不服申立期間を記載しなければならないこととされた(地公法49④)

10 公務災害補償の実施に関し異議ある者は,審査法による不服申立てとは別に,地公法の定めるところにより審査の申立てをすることができることとされ,これに関する規定の整備が行なわれた(地公法45②~④)

11 条件附採用期間中の職員及び臨時的に任用された職員並びにこれらの者に対する処分については,審査法の規定を適用しないこととされた(地公法29の2①)

四 審査法の施行に伴う公職選挙法等の整理等に関する事項

1 公職選挙法(以下「公選法」という。)関係の不服申立てには選挙人名簿に関する異議の申立並びに選挙の効力及び当選の効力に関する異議の申立及び訴願があり,これらについては,従来もつぱら同法に定めるところによつており,ただ選挙の効力及び当選の効力に関する訴願についてのみ訴願法の一部の規定が適用されていたのであるが,審査法の制定に伴い,この点について所要の改正が行なわれた。すなわち,公選法関係の不服申立てについては,審査法の規定は一般的には適用されないものであるが(公選法265),必要に応じてその一部の規定が準用されることとなつた(公選法23③,29,216),ほか必要な規定の整備が図られた。

選挙人名簿に関する不服申立てに関する事項

(一) 異議の申出について

(イ) 審査法の適用を受けない不服申立制度の名称を改めることとする趣旨から,異議の申立を異議の申出と改めた(公選法23,24,27,29,公職選挙法施行令20,21)

(ロ) 従来は,選挙人名簿に係る異議の申立てに関して,異議申立書の記載事項,審理の方式その他審理の手続等については,公選法に定めるもののほか特に規定がなされていなかつたが,今回の改正により審査法の一部の規定が準用されることとなつた(公選法23③,29)

なお,選挙人名簿に関する異議の申出は,その対象が選挙人名簿における個々の選挙人の脱漏又は誤載であること及びその迅速な処理が必要であることから,選挙の効力及び当選の効力に関する異議の申出の場合に比して準用される規定が少なくなつている。

(二) 選挙の効力及び当選の効力に関する不服申立てについて

(イ) 審査法の適用を受けない不服申立制度の名称を改めることとする趣旨から異議の申立を異議の申出と改めた(公選法34③,96,109,Ⅳ110②,202,203,205①,206,207,208①,209①,209の2,212①213①,214,215)

(ロ) 従来は,地方公共団体の議会の議員及び長の選挙の効力及び当選の効力に係る異議の申立に関して,共同申立の場合における総代の権限,異議申立書の記載事項,審理の方式その他審理の手続等については,公選法に定めるもののほか,特に規定がなされていなかつたが,今回の改正により,審査法の一部の規定が準用されることとなつた(公選法216①,③)

(三) 審査の申立てについて

(イ) 審査法の適用を受けない不服申立制度の名称を改めることとする趣旨から訴願を審査の申立てと改めた(公選法34③,96,109Ⅳ,110②202,203,205①,206,207,209①,209の2,212①,213①,214,215)

(ロ) 従来は,地方公共団体の議会の議員及び長の選挙の効力及び当選の効力に係る訴願に関しては,公選法に定めるもののほか,訴願法の一部の規定が適用されていたが,これらにかわつて,審査法の一部の規定が準用されることとなつた(公選法216②,③)。すなわち,従来適用されていた訴願法第6条(訴願書),第7条第1項(共同訴願),第9条(訴願の却下及び還付),第13条(審理)及び第16条(裁決の拘束力)のそれぞれの規定にかわるべきものとして,審査法第15条(審査請求書の記載事項)第1項第1号から第4号まで,第6号,第2項及び第4項,第11条(総代)第40条第1項(却下)及び第21条(補正)第25条(審理の方式)及び第30条(審査請求人又は参加人の審尋)並びに第43条第1項(裁決の拘束力)のそれぞれの規定が準用されることとなつたことのほか,従来は特に規定されていなかつた事項についても,同法の規定が準用されて手続の明確化が図られた。

なお,従来適用されていた訴願法第10条第1項(訴願書の差出)の規定にかわるべき準用規定はないが,審査の申立書は郵便で提出することができるものであり,この場合審査法第14条第4項の規定は準用されないので郵送に要した日数は,従来どおり審査の申立期間に算入されるものである。

五 審査法の施行に伴う地方財政法等の整理に関する事項

1 審査法の施行に伴い,地方財政法の関係規定の整理を行なつた。(地方財政法27)

2 審査法の施行に伴い,地方交付税法の関係規定の整理を行なつた(地方交付税法4,18,19)

六 審査法の施行に伴う地方公営企業法の整理に関する事項

地方公営企業法第39条(地公法の適用除外)の規定の一部が改正された結果,不服審査整理法によつて改正された地方公務員法(以下「改正後の地公法」という。)の規定中第49条の2から第51条までの規定が企業職員に対してあらたに適用されることになるとともに,審査法の規定は適用されないことになるものであるが,この措置は,企業職員の公務員関係における権利利益の救済については,従前の取扱いを変更しない方針で,地方公営企業法と改正後の地公法及び審査法との間に必要な調整を図つたものである。したがつて,企業職員については,従前どおり地方公営企業労働関係法または労働組合法等の定めるところによりその権利利益の保護ないし救済が図られる。

第3 訴願法の施行に関する事項

一 行政事件訴訟特例法と異なり訴訟法は,訴訟の種類を類型化し,それに適用される法規を明確にした。すなわち,行政事件訴訟を抗告訴訟,当事者訴訟,民衆訴訟,機関訴訟の四種に分け(訴訟法2,3,4,5,6)さらに抗告訴訟の態様として,処分の取り消しの訴え,裁決の取り消しの訴え,無効等確認の訴え,不作為の違法確認の訴えを例示し,それぞれについての定義規定を設け,適用もしくは準用させる規定の範囲を明らかにした。

二 国民の権利救済の面から訴願前置主義を原則として廃止した(訴訟法8)

ただ訴願を前置する必要のある行政処分については,個々にそれぞれの特別法で所要の規定を置くこととした。(訴訟法8①ただし書)

三 現行の専属管轄の制度を廃止し,一般管轄のほかに特別管轄を認めることとした(訴願法12,43)

四 訴訟提起があつた場合における行政処分についての執行停止の制度を整備するとともに,現行の執行停止に対する内閣総理大臣の異議の制度については,これによつて国民の権利救済が不当に阻害されることのないようその政治的責任を明らかにするための規定を設けた(訴訟法25~29,43)

五 行政処分の取り消しの判決は,公法上の法秩序安定のため,第三者に対してもその効力が及ぶものとし(訴訟法32①),これと関連し現行の訴訟参加の制度を改め(訴訟法22,23),また第三者保護のために再審の訴えを認めることとした(訴訟法34)

六 行政処分の無効等確認の訴えは,現在の法律関係に関する訴えによつては目的を達することができない場合に限つて許されることを明らかにする(訴訟法36)とともに,これに関連して,行政処分の効力等を争点とする私法上の法律関係に関する民事訴訟についても所要の規定が設けられた。

以上のほか,出訴期間(訴訴法14)

当事者適格(訴訟法9,11,36,38,43)

関連請求の併合(訴訟法13,16~20,43)

処分取り消しの訴えと裁決の取り消しの訴えとの関係(訴訟法10②,43①)

事情判決(訴訟法31,43)

その他各般の事項にわたり現行法の規定を改正し,あるいは新たに規定を設け,現行法の欠陥を是正するとともに解釈上の疑義を除去するため所要の措置を行なつたものであるが,この法律に定めがない事項については,民事訴訟の例によることとなつているので,留意されたい。

第4 訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律等に関する事項

一 訴訟法の施行に伴う自治法等の整理に関する事項

1 訴願前置に関する事項

訴訟法は,従来行政事件訴訟特例法のとつていた訴願前置主義を原則的に廃止したが,処分の性質に応じ,又は不服申立てに対する決定等の手続に応じ,個別法で訴願前置の制度を設けることができるものとしている(訴訟法8①ただし書)。自治法においては,この趣旨に基づいて,法律に特別の定めがあるものを除くほか,普通地方公共団体の事務に係る処分の取消しの訴えは,当該処分につき当該普通地方公共団体の機関以外の行政庁(労働委員会を除く。)に審査請求,審決の申請その他不服申立てをすることができる場合には,その不服申立てに対する決定を経た後でなければ提起することができない旨を規定した(自治法256)

この場合において,地方公共団体の事務には,法令に基づく事務のみならず条例に基づく事務も含まれるが,いわゆる機関委任事務は含まれないことに留意されたい。

なお,普通地方公共団体の機関がした分担金,夫役現品,使用料,加入金又は手数料の賦課又は徴収及び第225条第3項から第5項までの規定による滞納処分等については,従来どおり,当該普通地方公共団体の長がした審査請求又は異議申立てに対する裁決又は決定を受けた後でなければ裁判所に出訴することができないものである(自治法224⑥,225⑩)

これらの場合において,訴訟法第8条第2項第1号の規定により審査請求,異議申立てその他不服申立てがあつた日から3箇月を経過しても裁決,決定その他の行為がないときは不服申立てを経ないで訴えを提起することができ,また自治法の規定による不服申立てに対して決定又は裁決をすべき期間内に決定又は裁決がないときは,当該不服申立てをしりぞける旨の決定又は裁決があつたものとみなして訴えを提起することができる(自治法257②)

2 直接請求に関する訴訟の専属管轄等に関する事項

条例の制定又は改廃の請求者の署名に関する訴えは,異議の申出又は審査の申立てに対する決定又は裁決をした選挙管理委員会の所在地を管轄する地方裁判所又は高等裁判所の専属管轄とされた(自治法74の2⑫)

また,当該訴えの早期結審を図るため,訴訟法第43条の規定にかかわらず,同法第13条(関連請求に係る訴訟の移送)の規定は準用しないこととされたこと並びに同法第4条(請求の客観的併合),第17条(共同訴訟),第18条(第三者による請求の追加的併合)及び第19条(原告による請求の追加的併合)の規定は,署名簿の署名の効力を争う数個の請求に関してのみ準用することとされた(自治法74の2⑬)

3 議会の開放の投票等に関する訴訟に関する事項

自治法第85条第1項の規定により,普通地方公共団体の議会の解散の投票に訴訟法第25条から第29条まで(執行停止等)及び第31条(特別の事情による請求の棄却)に関する部分等は準用することとされ,これに伴い読み替え規定が整備された(自治令108①,109)

なお,財産又は営造物の管理処分についての賛否の投票及び特別法の住民投票に公選法中普通地方公共団体の選挙に関する規定を準用する場合についても普通地方公共団体の議会の解散の投票についてと同様の改正がなされた(自治令141の6①,147の7,186①,187)

4 その他

訴訟法の施行に伴い,規定の整理を図つた(自治令109)

二 訴訟法の施行に伴う地公法の整理に関する事項

懲戒その他職員の意に反する処分であつて,審査法による不服申立てをすることができるものの取消しの訴えの提起につき,不服申立ての前置が定められた(地公法第51条の2)

三 訴訟法の施行に伴う公選法の整理等に関する事項

公選法関係の訴訟には,選挙人名簿に関する訴訟並びに選挙の効力及び当選の効力に関する訴訟があり,これらについては,従来同法に定めるもののほか,行政事件訴訟特例法の一部の規定が適用されていたのであるが,訴訟法の制定に伴い,この点について所要の改正が行われた。すなわち,公選法関係の訴訟については,特別の規定を除いては,訴訟法第4章民衆訴訟の規定が適用されることになつた(公選法24④,29,219)ほか,必要な規定の整備がはかられた。

1 選挙人名簿に関する訴訟

(1) 選挙人名簿に関する訴訟については,従来は市町村の選挙管理委員会の委員長を被告とするものとされていたが,今回の改正により市町村の選挙管理委員会を被告とするものとされ(公選法24①,29),また裁判管轄についても当該市町村の選挙管理委員会の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄とすることが明らかにされた(公選法24②,29)

(2) 選挙人名簿に関する訴訟については,公選法に定めるもののほかは,従来は行政事件訴訟特例法の一部の規定が適用されていたが,これにかわつて訴訟法第42条及び第43条第1項の規定が適用されることになつた。従つて,同法第9条及び第10条第1項の規定を除く同法第2章第1節(取消訴訟)の規定が準用されることになるが,選挙人名簿に関する訴訟の特性にかんがみ,次の規定の準用が排除され,また第16条から第18条まで(請求の客観的併合等)の規定は一の選挙人名簿に係る脱漏又は誤載を争う数個の請求に関してのみ準用されるものである(公選法24④,219)

(一) 第13条(関連請求に係る訴訟の移送)

(二) 第19条から第21条まで(原告による請求の追加的併合等)

(三) 第25条から第29条まで(執行停止等)

(四) 第31条(特別の事情による請求の棄却)

(五) 第34条(第三者の再審の訴え)

なお,準用は排除されていないが,次の各条は,次にそれぞれ掲げる理由によつて働く余地はないものである。

(一) 第8条(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)

訴訟を提起できる者は,決定に不服がある者に限られる(訴訟法42,公選法24①)ため,常に決定があることを前提としているからである。

(二) 第10条第2項(取消しの理由の制限)

訴訟は決定を前提とするものであるため,処分の取消しのみの訴えは提起できないからである。

(三) 第11条(被告適格)第12条(管轄)及び第14条(出訴期間)

それぞれ公選法で定められているからである(公選法24,29)

(四) 第30条(裁量処分の取消し)

この訴訟の対象は,裁量処分でないからである。

(五) 第32条第2項(執行停止の決定等の効力)

執行停止がないからである(公選法24④,214)

(六) 第33条第2項から第4項まで(取消判決等の効力)

第2項及び第3項については,一般的には判決において裁決にあわせて処分の効力が判断され,判決に基づく措置について公選法に規定があるからである。第4項については(五)に同じ。

(3) 従つて,選挙人名簿に関する訴訟については,第15条(被告を誤つた訴えの救済)第22条(第三者の訴訟参加)第23条(行政庁の訴訟参加)第24条(職権証拠調べ)第32条第1項第33条第1項(取消判決等の効力)及び第35条(訴訟費用の裁判の効力)並びに一の選挙人名簿に係る数個の請求に関して第16条(請求の客観的併合)第17条(共同訴訟)及び第18条(第三者による請求の追加的併合)の規定が準用されるがその主な内容は次のとおりである。

(一) 被告を誤つた場合の訴えの救済措置が明らかにされた(訴訟法15)

(二) 訴訟参加は職権のみでなく,申立てによつても認められることとなつた(訴訟法22,23)

(三) 訴訟費用の裁判の効力が明らかにされた(訴訟法35)

(四) 訴えの併合が認められた(訴訟法16~18)

2 選挙の効力及び当選の効力に関する訴訟

(1) 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙の効力及び当選の効力に関する訴訟について

(一) この訴訟については,異議の申出又は審査の申立てに対して決定又は裁決をした都道府県の選挙管理委員会を被告とすることが明らかにされた(公選法203①,207①)

(二) この訴訟は,都道府県の選挙管理委員会の決定又は裁決に対してのみ提起することができることが明らかにされた(公選法203②,207②)。従つて,決定又は裁決の取消しを請求することなく単に選挙又は当選の効力のみを争うことはできず決定又は裁決の取消しの請求を前提としながらあわせて選挙又は当選の効力を争わなければならないものである。

(2) 衆議院議員及び参議院議員の選挙の効力及び当選の効力に関する訴訟について

この訴訟については,従来は選挙の効力に関する訴訟にあつては都道府県の選挙管理委員会(参議院全国選出議員の選挙にあつては中央選挙管理会)の委員長を,当選の効力に関する訴訟にあつては当選人を被告とするものとされていたが,今回の改正により,いずれも都道府県の選挙管理委員会(参議院全国選出議員の選挙にあつては,中央選挙管理会)を被告とするものとされた(公選法204,208)

(3) 選挙の効力及び当選の効力に関する訴訟における訴訟法の適用等について

この訴訟については,公選法に定めるもののほかは,従来は行政事件訴訟特例法の一部の規定が適用されていたが,これにかわつて訴訟法第42条及び第43条第1項の規定が適用されることになつた。従つて,同法第9条及び第10条第1項の規定を除く同法第2章第1節(取消訴訟)の規定が準用されることになるが,そのうち準用が排除される規定,準用は排除されていないが働く余地のない規定及びその理由並びに準用される規定及びその主な内容については1,(2),及び(3)と同様である。なお,第16条(請求の客観的併合)第17条(共同訴訟)及び第18条(第三者による請求の追加的併合)の規定は,一の選挙の効力を争う数個の請求,公選法第207条若しくは第208条の規定により一の選挙における当選の効力を争う数個の請求,同法第211条の規定により当選の効力を争う数個の請求又は選挙の効力を争う請求とその選挙における当選の効力に関し同法第207条若しくは第208条の規定によりこれを争う数個の請求とに関してのみ準用されるものであり(公選法219),選挙の効力を争う請求をその選挙における当選の効力に関し同法第211条の規定によりこれを争う請求とに関する場合,または同法第207条の規定により当選の効力を争う請求と同法第211条の規定により当選の効力を争う請求とに関する場合等については準用されない。

四 訴訟法の施行に伴う最高裁判所裁判官国民審査法の整理等に関する事項

最高裁判所裁判官国民審査に関する訴訟については,最高裁判所裁判官国民審査法(以下「最高裁審査法」という。)第41条の規定により,同法に定めるもののほかは,民事訴訟(再審を除く。)の例によることとされていたが,今回の改正により,同法に定めるもののほかは公選法第214条(争訟の提起と処分の執行)の例によることとし,同法第219条(選挙関係訴訟に対する訴訟法規の適用)の規定により準用を排除される規定を除き,訴訟法第43条第1項の規定により準用する同法第2章第1節(取消訴訟)の規定の例によることとされた(最高裁審査法41)

従つて,参議院全国選出議員の選挙に係る訴訟における訴訟手続と同様の訴訟手続になるが,被告が従来どおり中央選挙管理会の委員長である点が異なつている(最高裁審査法36,38)

(写)

行管乙第204号

昭和37年9月26日

自治事務次官殿

行政管理事務次官

行政不服審査法の施行について

行政不服審査法は,第41回臨時国会において成立し,9月15日法律第160号をもつて公布され,本年10月1日から施行されることとなつた。

行政不服審査法は,訴願法又はその他の法令によつて運用されてきた訴願制度が幾多の不備かつ不統一の面を有する実情にかんがみ,列記主義を改めて一般概括主義を採り入れる等その内容を整備するとともに,不服申立制度に関する統一法規を定めることによつて,国民の権利利益の救済と行政の適正な運営を確保することを目的とするものであり,訴願制度調査会の慎重な検討の結果に基づいて立法せられたものである,従つてその運用にあたつては,特に次の事項に御留意のうえ,遺憾なきを期せられるとともに,行政の適正な運営につき,さらに格段の御配慮をわずらわしたい。

第1 この法律制定の趣旨

行政不服審査制度は,行政庁の違法又は不当な処分に関し行政庁に不服申立てをさせ,行政庁による簡易迅速な手続により国民の権利利益の救済を図るとともに,行政の適正な運営を確保することをその本来の目的とするものであるが,訴願法については,訴願することができる事項が少なく,かつ,その範囲が不明確であること,裁決庁に関する規定の仕方が不明瞭であること,手続規定が不十分であること等の欠陥があり,また,他の法令における不服申立てについても,申立事項が不統一であること,申立期間が極端に短かいものが相当にあること,申立手続に関する規定がほとんど整備されていないこと等の欠陥があり,これらはいずれも国民の権利利益の救済に不十分な実情となつている。

従つて,行政不服審査法(以下「審査法」という。)においては,その目的を「簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに,行政の適正な運営を確保すること」(第1条第1項)と規定し,制度本来の目的を達成するよう配慮しているが,制定にあたつては,上記のような欠陥を是正するため,特に国民の権利利益の救済に十分に意を用いており,このことは審査法の全般にわたつて具体化されているのでその運用にあたつては,かかる立法の趣旨を十分に理解し,尊重するよう注意すべきものであること。

第2 総則に関する事項

1 一般概括主義の採用

(1) 一般概括主義の原則

審査法は,訴願法の概括的列記主義を改めて一般概括主義を採用することとし,「行政庁の違法又は不当な処分,その他公権力の行使に当たる行為に関し,国民に対し広く行政庁に対する不服申立てのみちを開く」(第1条第1項)旨を宣言するとともに,具体的には,第4条において処分についての一般概括主義を規定し,また,第2条において処分には事実行為でその内容が継続的性質を有するものを含ましめ,さらに第7条において行政庁の不作為についても不服申立てをすることができるものとしているが,一般概括主義の採用は,不服申立てをすることができる事項が少なく,かつその範囲が不明確,不統一な現行制度の欠陥を抜本的に是正したものであつて,訴願法の改正に関する多年の懸案を解決したものであり,今回の審査法の制定において最も重要な基本的事項であること。なお,一般概括主義の採用に伴い行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(法律第161号)(以下「整理法」という。)において,訴願等をすることができる旨を定めた規定は重複することとなるので削除されたこと。

(2) 一般概括主義の例外

審査法は,一般概括主義の例外として,審査法自体において11項目の処分につき不服申立てをすることができないものとしているが(第4条第1項ただし書),これら処分は次のような性質を有するため,審査法の適用を除外するのが適当と認められるものであるから,一般概括主義の例外として,審査法の運用上留意すべきものであること。

ア 慎重な手続で行なわれた処分であり,再考の余地がなく,不服申立てを認めても結局同じ結果になるため(第4条第1項第1号から第4号までに掲げられている処分)

イ 他の救済手続によつて処理するのが適当であるため(同第5号から第7号までに掲げられている処分)

ウ 処分の性質上,一般法たる審査法による手続によつて処理するのが適当でないため,(同第8号から第11号までに掲げられている処分)

また,審査法は,これらの処分のほか,別に他の法律でそれぞれ不服申立てをすることができない旨の定めをすることができるものとしているが(第4条第1項ただし書)。これらは,審査法において一括して除外することが困難なため整理法において,必要なものにつき,上記と同様の理由によりそれぞれ措置されているものであること。

(3) 再審査請求についての措置

再審査請求については,すべての処分についてこれを認める必要がないため,それぞれの法律(条例に基づく処分については,条例を含む。)において,必要なものにつき,個々に再審査請求をすることができる旨を定めることとされており(第8条第1項第1号),それぞれ整理法において措置されたが,地方自治法第153条の規定に基づき権限の委任が行なわれた場合に審査庁の階層に不均衡が生ずることを避けるため,このような場合には概括的に再審査請求を認めることとしたものであること(第8条第1項第2号及び同条第3項)

2 不作為についての不服申立て

「行政庁が法令に基づく申請に対し,相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をなすべきかにかかわらず,これをしないこと」すなわち行政庁の不作為(第2条第2項)についてもあらたに不服申立てのみちが開かれ,当該不作為に係る処分その他の行為を申請した者は異議申立て又は審査請求のいずれかをすることができるものとされたこと(第7条)

この場合において,審査法は,不作為庁の理由開示,不作為庁の直近上級行政庁の必要な命令等の措置を規定しているが(第50条及び第51条),かかる新しい制度が採り入れられたのは,法令に基づく申請に対して行政庁の行なう許可,認可等に関する処分が必ずしも迅速かつ適正に行なわれないため,国民の受ける不利益を考慮し,行政の迅速かつ適正な処理の促進を図る趣旨に出るものであつて,審査法の大きな特色をなしているものであるから,その運用には特段の配意が必要であるとともに,行政の能率的な処理について,なお一層の配慮が望まれるものであること。

3 不服申立ての名称の統一

不服申立ての名称が区々であるために生ずる国民の不便を考慮して,審査法による不服申立ての名称を審査請求,異議申立て及び再審査請求の三種類に統一し,処分庁又は不作為庁以外の行政庁に対してするものを審査請求,処分庁又は不作為庁に対してするものを異議申立て,審査請求の裁決を経た後さらに行なうものを再審査請求としたこと(第3条)。なお,これに伴い整理法において,関係法律につき,不服申立てに関する名称の整理を行なつたこと。

4 処分についての審査請求と異議申立てとの関係

不服申立ては,制度の本旨からみて,処分庁以外の行政庁に対してするのが望ましいのであるから,審査法による不服申立ても,また,この趣旨にそい,審査請求が制度の中核として構成され,なるべく審査請求が多くなるよう考慮されている点に留意すべきものであること。すなわち,

(1) 審査法は,第1に,処分庁に上級行政庁がある場合には原則として審査請求,第2に処分庁に上級行政庁がない場合及び処分庁が主任の大臣又は外局若しくはこれに置かれる庁の長である場合には原則として異議申立てをすることができるものとしているが,後者に該当する場合において,法律又は条例に審査請求をすることができる旨の定めがあるときは,原則として異議申立てを排除しているものであること(第5条及び第6条)

(2) なお,これらのほか処分庁に上級行政庁がある場合において,法律に異議申立てをすることができる旨の定めがあるときは,異議申立ての前置をすべきものとされているが(第20条),このような場合における異議申立てについては,例えば課税処分の如く大量集中的に行なわれ,かつ,当該処分に対する不服の理由が,概して要件事実の認定の当否に係るようなものにつき,その立法の趣旨を考慮して,整理法においてそれぞれ措置されたものであること。

(3) 審査庁は,法律又は条例に特別の定めがある場合を除くほか,処分庁又は不作為庁の直近上級行政庁とされたこと(第5条第2項)

第3 教示に関する事項

審査法第3章において規定されている教示制度は,審査法が採り入れた最も重要な制度の一つであつて,新しい行政不服審査制度が国民のために十分にその効用を発揮することができるよう配慮されたものであるから,その運用にあたつては,格段の留意をすべきものであること。

1 教示の義務

教示は,審査法による審査請求又は異議申立てをすることができる処分についてだけでなく,他の法令に基づく不服申立てをすることができる処分についても,これらの処分を書面でする場合にすべきものとされており,この場合には不服申立てをすることができる旨,並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を教示しなければならないものとされたこと。また,行政庁は,利害関係人から上記の事項について教示を求められたときは,これらの事項を教示し,書面による教示を求められたときは,書面で教示しなければならないものとされたこと(第57条)

2 教示しなかつた場合又は教示を誤つた場合の救済

行政庁が教示をしなかつた場合における不服申立ては,当該処分庁に不服申立書を提出することによつて行なうことができるのであつて,事後の処理は,処分庁において当該不服申立てが適法に行なわれたものとされるよう措置すべきものとされ(第58条),また,審査法による不服申立をすることができる処分について教示を誤つた場合において,その誤つて教示されたところに従つて不服申立てをすれば,関係行政庁の間で適法なものとして処理されるよう措置すべきものとされたこと(第18条第19条及び第46条)

第4 不服申立期間に関する事項

不服申立期間については,訴願法その他の法令における不備不統一を改め,不服申立ては,処分があつたことを知つた日の翌日から起算して60日以内(異議前置の場合の審査請求又は再審査請求にあつては,決定又は裁決があつたことを知つた日から30日以内)に,しなければならないものとし,天災その他不服申立てをしなかつたことについてやむをえない理由があるときは,その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内にすることができるものとし,また,処分決定又は裁決があつた日の翌日から起算して一年を経過したときは,正当な理由がない限りすることができないものとされたが(第14条第45条及び第53条),その趣旨は,従前個々の法律により,不服申立期間が極めて区々にわたつていたため,期間が徒過して不服申立てをすることができない結果を招来することが見受けられた欠陥を是正したものであり,整理法において措置された若干の特例を除き,上記の期間に統一されたものであること。

第5 不服申立ての手続に関する事項

不服申立ての手続に関しては,訴願法その他の法律の定めるところが極めて不備であつた実情にかんがみ,審査法においては,不服申立人の権利利益の救済の見地から特に詳細に規定し,不服申立人の立場を強化するとともに,できるだけ簡易迅速を旨とするよう定められているが,その主な事項は次のとおりであること。

1 不服申立ては,審理の正確と迅速とを期するため,他の法律で口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き,書面でするものとされ,口頭でする場合においても規定の整備がなされたこと(第9条及び第16条)

2 審査請求の場合においては,審査庁は処分庁に弁明書の提出を求め,また,審査請求人が反論書を提出することができるものとされたこと(第22条及び第23条)

3 利害関係人が不服申立てに参加するみちが開かれたこと(第24条)

4 不服申立ての審理は,書面によることとされたが,不服申立人又は参加人の申立てがあつたときは,申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならないものとなされたこと(第25条)

5 不服申立人又は参加人は,証拠書類又は証拠物を提出することができるものとされたこと(第26条)

6 審査庁は,不服申立人若しくは参加人の申立てにより又は職権で,事実の陳述,物件の提出及び留置,検証,不服申立人又は参加人に対する審尋等をすることができるものとし,なお,検証の際における申立人の立会い等につき必要な規定が設けられたこと(第27条から第30条まで)

7 不服申立人又は参加人は,審査庁に対し,特別な場合を除き,処分庁から提出された書類その他の物件の閲覧を求めることができるものとされたこと(第33条)

8 執行停止については,従前と同様申立てにより直ちに執行停止の効果を生ずることはないが,不服申立人に執行停止の申立権を与えるとともに,全面的に規定を整備し,特に,処分の執行等により生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは,原則として執行停止をしなければならないものとしており,また執行停止の申立てがあつたときは,審査庁はすみやかに執行停止をするかどうかを決定しなければならないこととしているので,その運用には十分留意されたいこと(第34条及び第35条)

9 裁決及び決定についても,全面的に規定の整備が図られ,特に,処分庁の上級行政庁である審査庁に対しては不服申立人に不利益にならない限度において処分の変更権を認め,また,処分が違法又は不当であつても,これを取り消すことが公共の福祉に適合しないこととなるような特別の場合には,当該不服申立てを棄却することができるとするいわゆる事情裁決の規定を設けているが,その運用は十分慎重に行なわれるべきものであること(第40条)

第6 その他

審査法の施行に伴い,整理法において関係法律268件が改正され,本年10月1日以降,各法律における行政不服審査に関する制度は大巾に改正されることとなるものが多いので,各省庁にあつては,事務処理に誤りのないよう留意するとともに,特に地方支分部局,地方公共団体等国民と直接関連を有する面の多い関係機関に対しては,指導に遺憾なきを期すること。

行政不服審査法及び行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律等の施行に関する…

昭和37年11月28日 学発第227号

(昭和37年11月28日施行)

体系情報
第3編 員/第10章 利益保護
沿革情報
昭和37年11月28日 学発第227号