○茨城県省エネルギー判断基準

平成7年10月11日

茨城県告示第1129号―3

茨城県地球環境保全行動条例(平成7年茨城県条例第10号)第11条第1項の規定により,事業者の省エネルギーに関する判断の基準として茨城県省エネルギー判断基準を次のとおり定める。

茨城県省エネルギー判断基準

事業者は,事業者全体としてのエネルギー消費原単位を年平均1パーセント以上低減することを目標に,技術的かつ経済的に可能な範囲内で,次に掲げる措置を講じるものとする。

第1 燃料の燃焼の合理化に関する事項

1 燃料の燃焼の管理

(1) 燃料の燃焼の管理は,燃料の燃焼を行う設備(以下「燃焼設備」という。)及び使用する燃料の種類に応じて,空気比について次の表に定める範囲内でその燃焼が最適になるよう管理標準を設定して行うこと。ただし,この範囲の下限以下の空気比で運転が可能な場合は,その値に従うこと。

区分

固体燃料

液体燃料その他

ボイラー

1.2~1.45

1.05~1.3

工業炉

1.2~1.5

備考 空気比の算定は,次式によって行う。

空気比=21/(21-排ガス中の酸素濃度(パーセント))

(2) 複数の燃焼設備を使用する場合は,燃焼設備全体としての熱効率(投入熱量のうち対象物の付加価値を高めるために使われた熱量の割合をいう。以下同じ。)が高くなるように管理標準を設定し,それぞれの燃焼設備の燃焼負荷を調整すること。

2 燃料の燃焼に関する計測及び記録

燃焼設備ごとに,燃料の供給量,燃焼に伴う排ガスの温度,排ガス中の残存酸素量その他の燃料の燃焼状態の把握及び改善に必要な事項について管理標準を設定して定期的に計測を行い,その結果を記録すること。

3 燃焼設備の保守及び点検

燃焼設備は,管理標準を設定して定期的に保守及び点検を行い,良好な状態に維持すること。

4 燃焼設備の新設に当たっての措置

(1) バーナー等の燃焼機器は,燃焼設備及び燃料の種類に適合し,かつ,負荷及び燃焼状態の変動に応じて燃料の供給量及び空気比を調整できるものとすること。

(2) 通風装置は,通風量及び燃焼室内の圧力を調整できるものとすること。

第2 廃熱の回収及び利用に関する事項

1 廃熱の回収利用の基準

(1) 排ガスの廃熱の回収利用は,排ガスを排出する設備等に応じ,排ガスの温度又は廃熱回収率に関して,ボイラーについては別表第1を,工業炉については別表第2を参考にして管理標準を設定して行うこと。

(2) 蒸気ドレンの廃熱の回収利用は,廃熱の回収を行う蒸気ドレンの温度,量及び性状の範囲について管理標準を設定して行うこと。

(3) 加熱された固体若しくは流体が有する顕熱,潜熱,圧力,可燃性成分等の回収利用は,回収を行う範囲について管理標準を設定して行うこと。

2 廃熱に関する計測及び記録

廃熱の温度,熱量,廃熱を排出する熱媒体の成分その他の廃熱の状況を把握し,その利用を促進するために必要な事項について管理標準を設定して定期的に計測を行い,その結果を記録すること。

3 廃熱回収設備の保守及び点検

廃熱の回収利用のための熱交換器,廃熱ボイラー等(以下「廃熱回収設備」という。)は,管理標準を設定して定期的に伝熱面等の汚れの除去,熱媒体の漏えい部分の補修等を行い,廃熱回収及び廃熱利用の効率を維持すること。

4 廃熱回収設備の新設に当たっての措置

(1) 廃熱を排出する設備から廃熱回収設備に廃熱を輸送する煙道,管等を新設する場合には,空気の侵入の防止,断熱の強化その他の廃熱の温度を高く維持するための措置を講ずること。

(2) 廃熱回収設備を新設する場合には,廃熱回収率を高めるように伝熱面の性状及び形状の改善,伝熱面積の増加等の措置を講ずること。

第3 生産設備その他の機械器具のエネルギー効率の向上に関する事項

1 エネルギー使用設備の管理

(1) 熱媒体及びプロセス流体の輸送を行う配管その他の設備並びに加熱等を行う設備(以下「熱利用設備」という。)の断熱化の工事は,日本工業規格A9501保温保冷工事施工標準及びこれに準ずる規格に規定するところにより行うこと。

(2) 変圧器は,適正な需要率を維持するように管理標準を設定し,稼働台数の調整及び負荷の適正配分を行うこと。

(3) 受変電設備の配置の適正化及び配電方式の変更による配電線路の短縮,配電電圧の適正化等について管理標準を設定し,配電損失を低減すること。

(4) 受電端における力率については,90パーセント以上とすることを基準として,別表第3左欄に掲げる設備(同表右欄に掲げる容量以下のものを除く。)又は変電設備における力率を進相コンデンサの設置等により向上させること。ただし,発電所の所内補機を対象とする場合は,この限りでない。

(5) 進相コンデンサは,これを設置する設備の稼働又は停止に合わせて稼働又は停止させるように管理標準を設定して管理すること。

(6) 電動機は,適正な負荷率を維持するように管理標準を設定し,その容量を決定すること。

(7) 照明設備については,個別スイッチの設置などにより不要な場所の消灯を適宜行うことができるようにすること。

(8) 三相電源に単相負荷を接続させるときは,電圧の不平衡を防止するよう管理標準を設定して行うこと。

2 エネルギー使用設備の新設に当たっての措置

(1) 熱利用設備を新設する場合には,断熱材の厚さの増加,熱伝導率の低い断熱材の利用,断熱の二重化等により,断熱性を向上させること。

(2) 熱利用設備を新設する場合には,開口部の縮小又は密閉,開口部への二重扉の取付け等により,放散及び空気の流出入による熱の損失を防止すること。

(3) 熱利用設備を新設する場合には,熱媒体を輸送する配管の径路の合理化により,放熱面積を低減すること。

(4) 工業炉を新たに炉床から建設するときは,別表第4に掲げる炉壁外面温度の値を基準として,炉壁の断熱性を向上させるように断熱化の措置を講ずること。また,施工が可能な場合には,既存の工業炉についても,この値を基準として断熱化の措置を講ずること。

(5) 変圧器を新設する場合には,使用する電力に見合った容量のものとすること。

(6) 空気調和設備を設置する場合は,当該設備が消費する年間のエネルギー量を,一定の条件で計算した仮想的な空調負荷と比較することにより,設置すべき空気調和設備を決定すること。

(7) 照明機器や事務用機器を設置する場合は,発生熱量の少ない照明機器や事務用機器にすることにより,内部発生熱の低減に努めること。また,照明設備を設置する場合は,空調負荷との関係を勘案して,できるだけ自然光を取り入れるような構造にすること。

第4 生産設備その他の機械器具の運転管理に関する事項

1 エネルギー使用設備の運転管理

(1) 熱利用設備

ア 蒸気等の熱媒体を用いる加熱設備,冷却設備,乾燥設備,熱交換器等については,加熱及び冷却並びに伝熱(以下「加熱等」という。)に必要とされる熱媒体の温度,圧力及び量並びに供給される熱媒体の温度,圧力及び量について管理標準を設定し,熱媒体による熱量の過剰な供給をなくすこと。

イ 加熱,熱処理などを行う工業炉については,設備の構造,被加熱物の特性,加熱,熱処理等の前後の工程等に応じて,熱効率を向上させるように管理標準を設定し,ヒートパターン(被加熱物の温度の時間の経過に対応した変化の態様をいう。)を改善すること。

ウ 加熱等を行う設備は,被加熱物又は被冷却物の量及び炉内配置について管理標準を設定し,過大負荷及び過小負荷を避けること。

エ 加熱等を行う設備を複数使用するときは,設備全体としての熱効率が高くなるように管理標準を設定し,それぞれの設備の負荷を調整すること。

オ 加熱を反復して行う工程においては,管理標準を設定し,工程間の待ち時間を短縮すること。

(2) 電気使用設備

ア 電動力応用設備については,電動機の空転による電気の損失を低減するよう,始動電力量との関係を勘案して管理標準を設定し,不要時の停止を行うこと。

イ 複数の電動機を使用するときは,それぞれの電動機の適正な需要率が維持されるように管理標準を設定し,稼働台数の調整及び負荷の適正配分を行うこと。

ウ ポンプ,ファン,ブロワー,コンプレッサー等の流体機械については,管理標準を設定し,その使用端圧力及び吐出量の見直しに基づく台数制御,回転数の変更,配管変更,インペラーカット等により,送出量及び圧力を適正に調整し,電動機の負荷を低減すること。

なお,コンプレッサーを使用するときは,使用端圧力の見直しによりコンプレッサー出口圧力を適正に調整すること。

エ 誘導炉,アーク炉及び抵抗炉は,管理標準を設定し,被加熱物の装てん方法を改善することにより,その熱効率を向上させること。

オ 電解設備は,適切な形状及び特性の電極を採用し,管理標準を設定し,電極間距離,電解液の濃度,導体の接触抵抗等を適正に管理することにより,その電解効率を向上させること。

カ 照明設備については,日本工業規格Z9110照度基準及びこれに準ずる規格に規定するところにより管理標準を設定して使用すること。また,適宜消灯を行うことにより,過剰又は不要な照明をなくすこと。

キ 空気調和の管理は,空気調和を施す区画を限定し,当該区画ごとに建物の構造,設備の配置,作業の内容等に応じ,冷暖房温度,換気回数,湿度等についての管理標準を設定して行うこと。

ク 冷蔵設備については,管理標準を設定し,内容物の種類に応じて適正な庫内温度に調整するとともに,扉開閉時における外気の侵入を防止すること。

ケ 電動力応用設備,電気加熱設備,照明設備等の電気を使用する設備(以下「電気使用設備」という。)ごとに,その電圧,電流,力率及び需要率についての管理標準を設定して電気の使用を管理すること。

コ 電気使用設備の稼働について管理標準を設定し,調整することにより,電気の使用を平準化して最大電流を低減すること。

2 エネルギー使用設備の運転管理に関する計測及び記録

(1) 加熱等を行う主要な設備ごとに,熱の損失の状態を把握し,改善するため,管理標準を設定して炉壁外面温度,被加熱物温度,廃ガス温度等の測定及びその結果に基づく熱勘定などの分析を行い,その結果を記録すること。

(2) 被加熱物又は被冷却物の温度,加熱等に用いられる蒸気等の温度,圧力及び流量その他の熱の移動の状態の把握及び改善に必要な事項について管理標準を設定し,これらの事項を定期的に計測し,その結果を記録すること。

(3) 電気の使用量並びに受変電設備及び主要な配電設備の電圧,電流,力率,負荷率及び需要率の計測を,管理標準を設定して定期的に行い,その結果を記録すること。

(4) 主要な電気使用設備ごとに,電圧,電流,力率及び需要率について管理標準を設定し,これらの事項を定期的に計測し,その結果を記録すること。

(5) 照明設備については,(4)に定めるもののほか,照明を施す場所の照度の計測を,管理標準を設定して定期的に行い,その結果を記録すること。

(6) 空気調和を施す区画ごとに,温度,湿度その他の空気の状態の把握及び空気調和効率の改善に必要な事項について管理標準を設定し,これらの事項を定期的に計測し,その結果を記録すること。

3 エネルギー使用設備の運転管理に関する保守及び点検

(1) ボイラー,工業炉,熱交換器等の伝熱面その他の伝熱に係る部分は,管理標準を設定し,定期的にばいじん,スケールその他の付着物を除去し,伝熱性能の低下を防止すること。

(2) 熱利用設備は,その欠損による熱媒体の漏えいを防止するように管理標準を設定し,定期的に保守及び点検を行うこと。

(3) 熱利用設備の断熱のための措置を講じた部分は,放散による熱の損失を防止するように管理標準を設定し,定期的に保守及び点検を行うこと。

(4) スチームトラップは,その作動の不良などによる蒸気の漏えいを防止するように管理標準を設定し,定期的に保守及び点検を行うこと。

(5) 受変電設備及び配電設備は,良好な状態に維持するように管理標準を設定し,定期的に保守及び点検を行うこと。

(6) 電動力応用設備は,負荷機械(電動機の負荷となる機械をいう。以下同じ。),動力伝達部及び電動機における機械損失を低減するように管理標準を設定し,定期的に保守及び点検を行うこと。

(7) ポンプ,ファン,ブロワー,コンプレッサー等の流体機械は,流体の漏えいを防止し,流体を輸送する配管の抵抗を低減するように管理標準を設定し,定期的に保守及び点検を行うこと。

(8) 電気加熱設備及び電解設備は,配線の接続部分,開閉部の接触部分等における抵抗損失を低減するように管理標準を設定し,定期的に保守及び点検を行うこと。

(9) 照明設備については,管理標準を設定し,照明器具及び光源ランプの清掃並びに光源ランプの交換を適宜行うこと。

(10) 空気調和設備は,管理標準を設定し,定期的にフィルターの目づまり,熱交換器への着霜及び凝縮器に付着したスケールの除去等を行い,良好な状態に維持すること。

第5 原材料及び製品の輸送に関する事項

1 輸送の管理

原材料及び製品の輸送については,効率的な輸送を行うよう管理標準を設定して行うこと。

2 輸送に関する計測及び記録

輸送計画,輸送実績の把握及び改善に必要な事項について管理標準を設定し,定期的に計測を行い,その結果を記録すること。

第6 建築物に係る熱の損失の防止に関する事項

ホテル若しくは旅館,病院若しくは診療所,物品販売業を営む店舗,事務所又は学校の用途に供する建築物においては,建築物の外壁,窓等を通しての熱の損失を防止するため,空気調和に必要となる年間の熱負荷の値を計算して,その構造及び形状,大きさなどを決定すること。

別表第1:ボイラーに関する標準廃ガス温度

固体燃料(℃)

液体燃料(℃)

気体燃料(℃)

180~320

150~250

110~220

備考

1 この表に掲げる標準廃ガス温度の値は,定期検査後,ボイラー通風装置入口空気温度20℃の下で,負荷率100パーセントで燃焼を行うとき,ボイラー出口において測定される廃ガス温度について定めたものである。

2 この表に掲げる標準廃ガス温度の値は,労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第1条第4項に規定する小型ボイラー及び水以外の熱媒体を使用するものなど,特殊なボイラーの廃ガス温度については適用しない。

別表第2:工業炉に関する標準廃ガス温度

排ガス温度(℃)

標準廃ガス温度

(℃)

(参考)

回収率(%)

予熱空気温度(℃)

500以上600未満

395

25

165

600以上700未満

470

25

195

700以上800未満

545

25

220

800以上900未満

620

25

255

900以上1000未満

645

30

335

1000以上

715

30

370

備考 「排ガス温度」は,炉室から排出される排ガスの炉出口及びレキュペレータ入口における温度をいう。

別表第3:力率を向上すべき設備

設備名

容量(kW)

かご型誘導電動機

100

巻線型誘導電動機

100

るつぼ型誘導炉

100

みぞ型誘導炉

100

真空誘導炉

100

製鋼用アーク炉

揺動用アーク炉

フラッシュバット溶接機(携帯型のものを除く。)

10

アーク溶接機(携帯型のものを除く。)

10

整流器

10,000

備考 防爆型等安全性の面から適用が難しい設備を除く。

別表第4:基準炉壁外面温度

炉内温度(℃)

基準炉壁外面温度(℃)

天井

側壁

外気に接する底面

1,300以上

140

120

180

1,100以上1,300未満

125

110

145

900以上1,100未満

110

95

120

900未満

90

80

100

備考

1 この表に掲げる基準炉壁外面温度の値は,外気温度20℃の下での定常操業時における炉の外壁面(特異な部分を除く。)の平均温度について定めたものである。

2 この表に掲げる基準炉壁外面温度の値は,次に掲げる工業炉の炉壁外面温度については適用しない。

(1) 定格容量(バーナーの燃料の燃焼性能)が毎時(重油換算)50リットル未満のもの

(2) 炉壁を強制的に冷却するもの

(3) ロータリーキルン

(4) 開発,研究又は試作の用に供するもの

茨城県省エネルギー判断基準

平成7年10月11日 告示第1129号の3

(平成7年10月11日施行)

体系情報
第7編 生/第4章 環境保全/第1節
沿革情報
平成7年10月11日 告示第1129号の3