○茨城県緑化基本方針
平成7年10月11日
茨城県告示第1129号―8
茨城県地球環境保全行動条例(平成7年茨城県条例第10号)第28条の規定により,緑化を推進するための基本的な方針として茨城県緑化基本方針を次のとおり定めたので,同条の規定により公表する。
茨城県緑化基本方針
緑は,多様な野生生物の生息環境となり,一方ではこれが存する地形や建築物等と一体となって美しい景観を形成しており,人々のレクリエーションや自然とのふれあいの場ともなっている。また,緑は,水源かん養や地形の保全の機能を有するとともに,災害時においては避難拠点となって防災上の大切な役割を果たすなど,私たちに限りない恩恵を与えてきている。更に,緑は,地球温暖化の原因とされる炭酸ガスの同化機能や省エネルギーに資する気温変化の緩和作用など,地球規模の環境問題の改善についても重要な役割を果たしている。このように緑の果たす役割は計り知れない程多大であり,その機能を維持・保全し,そして拡大していくため,我々は環境への人為的負荷を低減していく必要がある。
本県は,暖温帯の常緑広葉樹林域から冷温帯の落葉広葉樹林域への推移帯に位置しており,これを反映して,北限と南限の植物が分布するなど,豊かな植生をみせている。しかしながら,県土の基盤整備や地域開発等に伴い年々平地林などの緑が失われてきており,今後も人口の増加やそれに伴う都市的土地利用の進展等により,引き続き緑の減少傾向が予想される。
このような状況から,緑の保全と創出を進めるに当たっては,本県の生態系や植生等を十分踏まえて対応する必要がある。
このため,行政,事業者及び県民が一体となって緑を守り,増やし,そして育てることを目指して,「茨城県地球環境保全行動条例」の理念の下,この基本方針を定める。
第1 緑化の基本目標
1 都市地域については,公園,緑地等の面的な緑並びに道路の沿線及び河川,湖沼等の線的な緑の量の拡大を一体的に目指す。また,本県の生態系や植生等を生かした,茨城らしさ,地域らしさをかもし出す潤いのある緑づくりを進め,市街地における永続性のある緑地の割合を3割以上確保することを目指す。
2 森林地域及び田園地域については,現存する有益で良好な緑はできるだけ保全を図るものとする。
また,緑の利用に当たっては,周囲の自然環境との調和を保ちながら,できるだけ自然への負荷が少ない利用を目指す。
3 県民一人ひとりの緑に対する理解と認識を深め,県民の参加と協力を得た緑づくりを目指す。
第2 緑化の推進
1 緑化推進の基本項目
第1の基本目標を実現するため,県民,事業者並びに県及び市町村は,次の3つの項目を柱として緑化を推進する。
(1) 緑を増やす
潤いのある快適な環境を創出していくため,本県の生態系や植生等に配慮した緑化を進める。
また,植栽地の確保が困難な業務・商業集中地区では,ビル等の屋上緑化,壁面緑化等の緑化手法を活用して緑化を進める。
(2) 緑を守る
緑豊かな環境を将来にわたり確保していくため,緑の根幹である森林の保全,自然公園,保安林等の良好な緑の保全及び平地林等の身近な緑の保全を図る。
また,緑を環境学習や自然に親しむ場として利用する場合には,周囲の自然環境と調和を保ち,自然への負荷をできるだけ少なくする。
(3) 緑への意識を高める
ア 県民及び事業者は,緑に関する環境学習を推進するなどして,緑への意識を高める。
イ 県及び市町村は,緑を増やし,守ることについて,県民一人ひとりの理解と協力を基にした地域での緑化活動等を促進するため,緑に関する環境教育や普及啓発活動等の充実を図る一方,緑に関係する団体の育成や活動の支援を図る。
2 県民の行う緑化
(1) 緑を増やす
ア 住宅の緑化
住宅の緑化は,地域の緑づくりの原点とも言えるものであるので,県民一人ひとりが,生け垣や接道部分等を緑化することにより,緑豊かな地域環境づくりを進めるとともに,宅地については,できるだけ敷地面積の2割以上の緑地を確保するように努める。
イ 緑化協定の活用等
住宅地域においては,緑化に関する協定の活用等により,住民等が互いに協力・連携して,地域の風土や個性を生かした緑化に努める。
(2) 緑を守る
ア 山林,平地林等の保全
山林,平地林等の適正な保育を推進し,緑の保全に努める。
イ 緑地保全協定の活用等
緑地の保全に関する協定の活用等により,地域の基幹となる緑や貴重な緑の保全に努める。
ウ 貴重な動植物が生息する緑の保全
本県における貴重な動植物が生息している優れた自然環境を構成している緑については,極力その保全を図る。
エ 大木・高木の保全及び巨樹・巨木林の保護
都市における大木・高木の保全に努める。
また,地域のシンボルとなっている巨樹・巨木林の保護を進める。
(3) 緑への意識を高める
ア 環境学習の推進
地球環境の保全に向けて,県民一人ひとりが,緑に関する環境学習を進めることにより,緑を増やし,及び守ることの大切さについて理解と関心を高めることに努める。
イ 緑の県民運動の推進
積極的に緑の環境づくりを進めるため,緑に関する県民運動の推進に努める。
3 事業者の行う緑化
(1) 緑を増やす
ア 事業場の緑化
良好な環境の創造に資するため,自ら定めた計画に基づき地域環境と調和のとれた事業場の緑化を進める。
また,可能な限り野生生物の生息環境等に配慮した緑づくりを進める。
イ 商店街等の緑化
買い物客に潤いを与え,街のオアシスとなる緑を拡大するため,土地の制約等がある商店街等においては,緑化余地を有効に活用した樹木の植栽やプランター等による緑化に努める。
ウ 緑化協定の活用等
緑化に関する協定の活用等により,地域の緑のネットワーク化を図り,地域全体の緑化に努める。
(2) 緑を守る
ア 山林,平地林等の保全
山林,平地林等の適正な保育を推進し,緑の保全に努める。
イ 緑地保全協定の活用等
緑地の保全に関する協定の活用等により,地域の基幹となる緑や貴重な緑の保全に努める。
ウ 貴重な動植物が生息する緑の保全
本県における貴重な動植物が生息している優れた自然環境を構成している緑については,極力その保全を図る。
エ 大木・高木の保全及び巨樹・巨木林の保護
都市における大木・高木の保全に努める。
また,地域のシンボルとなっている巨樹・巨木林の保護を進める。
オ 土地利用に当たっての配慮
土地利用に当たっては,周囲の自然環境と調和を保ち,できる限り表土を保全するなど,自然への負荷が少ない利用に努める。
特に,住宅団地や工業団地等の大規模な土地利用に当たっては,現存する良好な緑をできる限り保全し,緑を生かした利用を進めるとともに,動植物の生息空間等自然の生態系に配慮した工夫及び手法を用いた事業の推進に努める。また,その事業が環境へ与える影響については,必要に応じ,事前に十分な調査や予測及び評価を行い,その影響をできるだけ少なくするような対策を講じるよう努める。
(3) 緑への意識を高める
ア 従業員教育の推進
地球環境の保全に向けて,従業員に対して,緑に関する環境教育を進めることにより,緑を増やし,及び守ることの大切さについて理解と関心を高めることに努める。
イ 消費者等に対する意識の高揚等
事業活動を通じて,消費者等の緑に関する意識の高揚を助長するとともに,緑に関係する団体等への支援に努める。
(4) 県及び市町村の施策への協力
県及び市町村が実施する緑化に関する施策に積極的に協力する。
4 緑を創造し,保全するための施策
(1) 県及び市町村の役割分担
県及び市町村は,相互に連携と協力を図り,それぞれ次の役割分担の下に,緑を創造し,保全するための施策を積極的に進めることとする。
ア 県の役割
(ア) 茨城県緑化基本方針の実現に向けた全体の企画及び調整を図ること。
(イ) 全県的に取り組む必要がある緑の環境づくり事業の推進を図ること。
(ウ) 市町村等が行う緑の環境づくり事業に対し,必要な支援を行うこと。
(エ) 緑に関する県民運動の育成及び援助を図ること。
(オ) 国に対して,緑化の促進に関する要請等を行うこと。
イ 市町村の役割
(ア) 市町村における緑の計画等の策定を進めること。
(イ) 地域の実状に即した緑の環境づくりを進めること。
(ウ) 地域住民の参加による緑の環境づくりを進めること。
(2) 緑を増やす
県及び市町村は,他の模範となるように積極的に緑化の推進に努める。
ア 身近な緑を増やす
(ア) 公共施設の緑化
庁舎,文化会館等の公共施設は,地域のランドマークとなる建築物であり,緑の景観を形成する上で重要な位置を占めている。このため,これらの公共施設については,これを訪れる県民に心の安らぎや落ち着きを感じさせる快適な空間を創出し,地域の緑化推進のシンボルとするため,積極的かつ先導的に緑化を進める。
また,可能な限り野生生物の生息環境に配慮した緑化を進める。
(イ) 学校の緑化
学校における緑は,そこで教育を受ける児童・生徒にとって,自然を学習し,豊かな心を育てる場となるばかりでなく,地域のオープンスペースとして重要な役割を果たしている。このため,学校については,児童・生徒の豊かな心を育み,地域緑化のシンボルとなるような緑化を進める。
また,可能な限り野生生物の生息環境等に配慮した緑化を進めることにより,環境学習の推進に役立てるものとする。
イ 緑の拠点をつくる
(ア) 都市公園・緑地の整備
都市公園・緑地の整備については,既存樹及び既存林を生かし,周辺景観や地域の自然環境,歴史,文化等と調和した特色ある公園・緑地づくりを進め,都市における緑の骨格となるよう,平成15年度末までに1人当たりの都市公園面積10.0平方メートルを目標に整備を進める。
(イ) 緑とふれあう場の整備
県民の緑とのふれあいを高めるため,県民の森や自然を観察する施設等の整備を進める。
また,その整備に当たっては,事前に十分な調査を行い,緑の利用と自然生態系の保全との調和を図る。
ウ 緑と緑を結ぶ
(ア) 道路の緑化
道路の緑化に当たっては,公園・緑地と組み合わせた緑のネットワーク整備や駅前の幹線道路等の植栽を中心とした緑化を進め,ゆとりと潤いのある空間の創造を図る。
(イ) 河川・湖沼の緑化
河川・湖沼については,「水」と「緑」が一体となった景観に配慮し,線的な「緑」として地域の広域的緑地体系に沿い,かつ,治水・利水と調和のとれた潤いのある緑化を進める。
(3) 緑を守る
ア 山林等の緑の保全
自然公園法,自然環境保全法及び森林法等を活用して,良好な山林等の緑の保護・育成及び適正な利活用を進める。
イ 平地林の保全
古くから地域の人々に親しまれ,生活に安全と潤いを与えてくれる平地林についての保全のための対策を拡充し,適正な保育と利活用を進める。
ウ 都市緑地等の保全
都市における緑地の保全は,市町村の緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画に基づき総合的に進める。特に,シンボル的な存在となっている良好な緑並びに動植物の生息地又は生育地となっている緑など保全する必要がある緑は,緑地の保全に関する協定の締結や緑地保全地区の指定の推進を図ることにより保全する。
また,景観上重要な斜面緑地等については極力保全を図るものとし,防災等のために工事を施工する場合には,安全性に加えて緑豊かな斜面となるよう緑化に努める。
エ 貴重な動植物が生息する緑の保全
本県における貴重な動植物が生息している優れた自然環境を構成している緑については,極力その保全を図る。
オ 大木・高木の保全及び巨樹・巨木林の保護
都市における大木・高木の保全に努める。
また,地域のシンボルとなっている巨樹・巨木林の保護を進める。
カ 土地利用に当たっての配慮
土地利用に当たっては,周囲の自然環境と調和を保ち,できる限り表土を保全するなど,自然への負荷が少ない利用に努める。
特に,住宅団地や工業団地等の大規模な土地利用に当たっては,現存する良好な緑をできる限り保全し,緑を生かした利用を進めるとともに,動植物の生息空間等自然の生態系に配慮した工夫及び手法を用いた事業の推進に努める。また,その事業が環境へ与える影響については,必要に応じ,事前に十分な調査や予測及び評価を行い,その影響をできるだけ少なくするような対策を講じるよう努める。
(4) 緑への意識を高める
ア 緑に関する意識を高めるための普及・啓発事業の推進
緑豊かで潤いのある環境づくりは,県民一人ひとりが緑を守り,増やし,そして育てることによって可能となる。このため,県民の緑に関する意識を高めるための普及・啓発事業を推進する。
イ 緑に関する環境教育,環境学習等の推進
幼少期から緑に関する意識を育てるための環境教育や緑に関する関心と理解を深めるための環境学習を積極的に推進する。
(5) 緑を増やし,守る体制の強化
ア 緑化に関する指導及び助言並びに支援
県は,事業場の緑化を推進するため,事業者に対し,緑化判断基準等を勘案して必要な指導及び助言並びに支援を行う。
イ 緑化技術等の普及
県は,緑の保全や緑化技術に関する必要な調査研究を進め,手引書の作成,情報の提供等を進める。
ウ 緑の維持管理体制の整備
県は,緑が適正に維持管理されるように維持管理,技術指導,相談等を行う体制の整備を進める。
エ 緑化に関する県民運動の育成及び援助
県は,市町村と協力して,積極的に緑の環境づくりを繰り広げる団体を育成し,その活動を援助するなど県民運動の推進を図る。
オ 緑化基金の活用
県は,緑化基金の運用益を活用して,県民参加による緑化事業や緑の保全を図るための施策を推進する。
カ 国への働きかけ
国が管理する道路,公園などの緑化及び緑化に関する支援制度の拡充について,国に対して積極的に働きかけていく。