○茨城県公共事業等景観形成指針

平成7年6月15日

茨城県告示第752号

茨城県景観形成条例(平成6年茨城県条例第40号)第33条第1項の規定により,公共事業等に係る景観形成のための指針として公共事業等景観形成指針を定めたので,同条第4項の規定により公表する。

茨城県公共事業等景観形成指針

第1 趣旨

公共事業等の実施によって整備される施設は大規模なものが多いため,地域の景観形成に極めて大きな影響を及ぼすものである。

したがって,公共事業等の実施に当たっては,本県の優れた自然景観や貴重な歴史的・文化的景観を保全するとともに,個性豊かで潤いに満ちた魅力的な景観を創造するため,地域の景観形成に先導的な役割を果たすよう努めなければならない。

このため,公共事業の実施等に当たって,より快適な環境づくりを進める観点から,県,市町村等が率先して県土の優れた景観を保全し,又は創造するための指針として,茨城県景観形成条例(以下「条例」という。)第15条第1項の規定に基づき,この指針を定める。

(平24告示1290・一部改正)

第2 基本的事項

公共事業等の実施に当たっては,安全性及び機能性の確保を基本としつつ,地域の特性を生かした優れた景観を形成するため,次の事項に留意するものとする。

1 自然景観,生態系及び植生との調和に配慮する。

2 地域の歴史的及び文化的特性に配慮する。

3 行為地において,条例第17条第1項に規定する景観形成住民協定,条例第22条第1項に規定する景観形成事業者協定が締結されている場合その他これに類する景観形成のための計画,基準等が策定されている場合は,その内容に配慮する。

(平24告示1290・一部改正)

第3 指針運用の方針

指針の運用に当たっては,次の事項に留意するものとする。

1 関係公共団体等との連絡調整を図り,整合性のとれた景観形成に努める。

2 公共事業等の計画,設計及び維持管理の段階に応じて,指針の適切な運用に努めるとともに,関連するマニュアル等が定められている場合は,その活用に配慮する。

3 地域の特性の把握に努めるとともに,住民の意向の反映にも配慮する。

4 公共事業等の実施に関して景観形成のための計画を定める場合は,指針の運用との調整を図りながら,その推進に努める。

第4 共通指針

公共事業等の実施に当たっての共通の指針は,次のとおりとする。

1 のり面

(1) のり面のこう配は,できる限り緩やかにとり,圧迫感を軽減させるよう配慮する。

(2) のり面は,長大とならないよう努めるものとし,やむを得ず長大となるのり面の覆工については,緑化による修景など周辺の景観との調和に配慮する。

2 擁壁

擁壁は,長大とならないように努めるものとし,やむを得ず長大となる擁壁については,形態及び意匠について工夫するとともに,緑化による修景など周辺の景観との調和に配慮する。

3 用地造成

できる限り原地形及び植生を残すように配慮した用地造成に努める。

4 防護柵

形態,意匠及び材料については,地域の特性を踏まえ,周辺の景観との調和に配慮する。

5 舗装

材料については,地域の特性や用途に配慮し,意匠及び色彩については,周辺の景観との調和に配慮する。

6 標識・公共広告

整理統合に努め,設置数や設置場所の適正化を図るとともに,形態,意匠,色彩等について,設置沿線における統一性及び地域全体としての統一性にも配慮し,周辺景観と調和するよう努める。

7 照明施設

形態,意匠,色彩及び明るさについては,周辺の景観との調和に配慮するとともに,場合によっては地域の特性を踏まえた形態とするなどシンボル性を持たせることにも配慮する。

8 緑の保全と緑化

ア 歴史的・文化的価値のある貴重な樹木や良好な景観を形成している樹木についてはできる限り保全することとし,やむを得ない場合には,その周辺に移植するよう努める。

イ 植栽に当たっては,気候,地形,土壌等の自然的条件や周辺景観との調和に考慮した樹木の種類や配置の検討を行うとともに,季節感や潤いを表現する花木の活用に努める。

9 占用行為(電柱,広告物等)

公共用地の占用行為については,できる限り位置,規模,形態,意匠及び色彩について周辺の景観との調和が図れるよう指導に努める。

10 維持管理

より良好な景観が創出できるよう,適正な維持,修繕及び補修に努める。

第5 個別指針

公共事業等の実施に当たっての個別指針は,次のとおりとする。

1 道路

道路は,多くの人々の利用する施設であり,また,その沿道には都市や自然など多種多様な景観が広がっている。

このため,道路の整備に当たっては,周辺の景観との調和に配慮し,緑化など潤いのある景観づくりに努める。

(1) 路線の選定

地域の地形や景観資源等を十分に把握し,道路自体が良好な景観資源となるような路線の選定に努める。

(2) トンネル

坑口部付近は,圧迫感を和らげ,周辺の景観と調和した意匠,材料及び表面処理を工夫する。

(3) 高架橋及び歩道橋

ア 形態,意匠及び色彩は,個性を持たせるとともに,周辺の景観との調和に配慮する。

イ 取付部や擁壁等については,植栽等により修景緑化に努める。

(4) 交差点

交通ネットワークの結節点であると同時に,景観上の要所でもあるため,個性的な景観形成に努める。

また,交差点に設置される道路標識,信号機,照明施設等については,できる限り整理統合に努めるとともに,景勝地等においては,周辺景観を考慮した形態,意匠について工夫する。

(5) 街路樹

ア 植栽に当たっては,地域の特性を踏まえ,季節感のある樹種を選定するよう配慮するとともに,樹木の配置や樹高等にも配慮し,周辺の景観との調和に配慮する。

イ 沿道の余裕地には連続した植樹帯を設けるなど潤いのある空間の創出に努める。

(6) 歩道及び自転車道

ア 舗装等の形態,意匠,色彩及び材料については,地域の特性に配慮する。

イ 広場の整備に当たっては,植栽やモニュメント,ベンチの設置等によって,歩行者空間に潤いとやすらぎを与えるよう配慮する。

(7) モニュメント,ストリートファニチャー等

モニュメント,ストリートファニチャー,公共広告物等の設置に当たっては,設置場所に配慮するとともに,地域特性を表すよう形態,意匠,色彩及び材料について工夫する。

(8) 電柱,電線類等

都市内の幹線道路等については,できる限り電線類の地中化に努め,やむを得ず地中化できない場合は,設置位置を工夫するなど目立たないよう配慮する。

2 橋りょう

橋りょうは,橋上が周囲の眺望スペースとなると同時にそれ自体が優れた景観資源となるものであり,その整備に当たっては,地域景観のシンボルとなるような景観形成に努める。

(1) 橋本体

周辺景観の眺望の場としての機能を持たせるとともに,形態,色彩及び材料については,地域の自然環境,歴史的背景に配慮し,個性豊かなものとするよう努める。

(2) 高欄,照明施設等

意匠,形態及び色彩は,個性を持たせながら橋りょう本体との調和に配慮する。

(3) 橋詰

橋りょう本体や高欄などとの調和に努めるとともに,周辺景観の眺望の場としての整備に努める。

3 河川

河川は,治水,利水等の機能において,地域と深い関わりを持っているが,動植物の生息環境としても重要な役割を持ち,さらに流域の風土に応じた良好な景観を提供している。

このため,河川の整備に当たっては,治水計画及び利水計画との整合を図りながら,治水上支障のない範囲において,自然環境の保全や周辺環境との調和に配慮するとともに,親水性の確保に配慮し,潤いと親しみのある河川景観の創出に努める。

(1) 護岸

動植物の生息環境の保全や周辺の景観との調和及び親水性に配慮する。

(2) 高水敷,水際地の利用

緑化を進めるなど潤いと親しみのある河川空間の創出に努める。

(3) 樋門

形態,色彩等について,周辺の景観との調和に配慮する。

4 ダム・えん堤

ダム・えん堤は,治水,利水及び治山を始めとして,住民生活に大きな影響を与える重要な構造物であるが,自然環境の中に人工構造物として設置されるため,周辺の景観に与える影響も大きく,その整備に当たっては,周辺の景観と調和するよう努める。

(1) 位置及び形式

できる限り周辺の景観への影響を緩和するよう配慮する。

(2) 親水空間の創出

ダム湖周辺において,周辺景観との調和に配慮しながら展望施設を設けたり,公園・緑地等の整備に努める。

5 港湾・漁港

港は,海上交通の拠点として及びその地域の玄関口としての役割を持つと同時に,港湾施設自体に個性を持ち,独特の景観を形成している。

このため,港湾・漁港の整備に当たっては,それぞれの港の持つ個性や独特の景観を尊重し,人々ができる限り水に親しむことのできる構造とするとともに,緑化や公園化を図り,人々の憩いの空間の創出に努める。

(1) 施設

防波堤,岸壁,堤防等の構造,意匠及び材料については,各施設の機能を踏まえつつ周辺の景観との調和に配慮する。

(2) 建築物及び工作物

地域の特性を生かした形態,意匠,色彩及び材料を工夫するとともに,周辺の景観との調和に配慮する。

6 海岸

海岸は,自然との触れ合いを楽しむ場として人間生活に深い関わりを持つと同時に,動植物の生息環境としても重要な場所である。

このため,海岸の整備に当たっては,海岸保全計画との整合を図りながら,海岸保全上支障のない範囲において,できる限り自然環境の保護及び保全に努めるとともに,親水性に配慮した整備に努める。

(1) 堤防,消波ブロック

単調さを避けるように配慮するとともに,自然素材の活用等により,周辺の景観との調和に配慮する。

(2) 護岸

自然素材を用いるなど,周辺の景観との調和に配慮するとともに,海との触れ合いに配慮した形態等を工夫する。

(3) 海浜

自然海浜は,できる限り保全するものとし,人工海浜の整備については周辺の景観との調和に配慮する。

7 都市公園等

都市公園等は,緑豊かで潤いのある快適な都市環境や地域環境の形成に資すると同時に,憩いや各種レクリエーション,地域コミュニティ等の醸成の場として機能するものであり,その整備に当たっては,地域特性を把握し,利用者のニーズを踏まえるよう努める。

(1) 施設

休憩施設,遊具,園路等の公園施設については,その目的・機能を踏まえ,地域性のある材料を活用するなどの工夫をするとともに,形態,意匠及び色彩が周辺の景観と調和するよう配慮する。

(2) 建築物

形態,意匠及び色彩については,地域の特性を生かすなどの工夫をするとともに,園内の景観と調和し,全体的にまとまりのあるものになるよう配慮する。

(3) 植栽

できる限り既存の樹木の保全・活用に努めるとともに,樹木の配置や樹種の構成等を工夫し,緑豊かで潤いのある景観を創出するよう配慮する。

8 公共建築物等

公共事業等により整備される行政サービス施設,集会施設,学校施設,供給処理施設などの建築物及び工作物等は,地域社会と深い関わりを持つものであり,また,多数の住民が訪れ,利用する施設であることが多い。

このため,開放的で潤いとやすらぎに満ちた施設とするよう努めるとともに,地域のシンボルとなるような景観形成に努める。

(1) 位置

ア 優れた景観資源に隣接する場合には,その保全に配慮した位置及び高さとする。

イ 建築物は,敷地境界線から後退させるなど,ゆとりのある空間の創出に配慮した位置とする。

ウ 地域のシンボルとなる施設については,その役割に配慮した位置とする。

エ 敷地内の樹木を修景に生かすように配慮した位置とする。

(2) 形態及び意匠

ア 周辺の景観との調和に配慮し,全体的に違和感のないまとまった形態及び意匠とする。

イ 地域の特性を生かした形態及び意匠を工夫する。

ウ 大規模な建築物は,屋根,壁面,開口部等の意匠を工夫し,威圧感及び圧迫感を軽減するよう配慮する。

エ 避難設備,高架水槽など屋上などに設ける設備は露出しないように設置し,建築物本体との一体化又は建築物本体との調和に配慮する。

(3) 色彩

ア 落ち着いた色彩を基調とし,周辺の景観との調和に配慮する。

イ 地域のシンボルとなる施設については,周辺の景観との調和に配慮し,地域を象徴する色彩を作り出すことも検討する。

ウ 屋外設備及び工作物の色彩は,建築物本体及び周辺の景観との調和に配慮する。

(4) 材料

ア 周辺の景観との調和に配慮した材料の使用に努める。

イ 地場産品など地域性のある材料の活用に努める。

ウ 耐久性及び耐候性に優れ,維持管理に優れた材料の活用に努める。

(5) 敷地の緑化

樹木の配置や樹種の構成を工夫するなど,周辺の景観との調和に配慮した植栽を行うように努める。

(6) 付帯施設

建築物本体との調和に配慮するとともに,周辺の緑化に努める。

(7) 垣,柵,塀,門等

形態,意匠及び色彩について敷地内及び周辺の景観との調和に配慮するとともに,生け垣などの自然素材又は地域性のある材料の積極的な活用に努める。

(8) その他

敷地内は,できる限り電線類の地中化に努める。

茨城県公共事業等景観形成指針

平成7年6月15日 告示第752号

(平成24年12月25日施行)

体系情報
第12編 設/第5章 都市計画
沿革情報
平成7年6月15日 告示第752号
平成24年12月25日 告示第1290号