○茨城県食の安全・安心推進条例
平成21年6月25日
茨城県条例第32号
茨城県食の安全・安心推進条例を公布する。
茨城県食の安全・安心推進条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 食の安全・安心の確保に関する基本的施策(第7条―第16条)
第3章 食の安全・安心の確保に関する具体的措置(第17条―第20条)
第4章 県民参画の推進(第21条・第22条)
第5章 雑則(第23条)
第6章 罰則(第24条―第26条)
付則
食は人の生命を支える礎であり,健康で豊かな生活を営むためには,食の安全・安心の確保が不可欠である。
近年,科学技術の進歩及び国際化の進展により食生活を取り巻く環境は大きく変化しており,このような中で,輸入食品による食中毒,食品の表示偽装等,食の安全・安心を大きく損なう事態が発生し,県民の不安が高まっている。
一方,本県は,我が国の一大食料供給拠点として確固たる地位を築いている。
本県は,安全にかつ安心して消費できる農林水産物の供給に努め,将来にわたって良好な生産環境を維持し,食料供給拠点としての責任を果たし続けていかなければならない。
このような状況を踏まえ,県,食品関連事業者及び県民が,食の重要性を強く認識し,食の安全・安心に関するそれぞれの責務及び役割を協働して果たすことは,重要な意義を有するものである。
ここに,県民の総意として,食の安全・安心を確保することを決意し,県民の生命及び健康を保護するとともに,消費者から信頼される安全にかつ安心して消費できる食品の生産及び供給に寄与するため,この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は,食の安全・安心の確保に関し,基本理念を定め,県及び食品関連事業者の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに,基本的施策その他必要な事項を定めることにより,食の安全・安心の確保に関する施策を総合的に推進し,もって県民の生命及び健康の保護並びに安全にかつ安心して消費できる食品の生産及び供給に寄与することを目的とする。
(1) 食の安全・安心 食品の安全性及び食品に対する消費者の信頼をいう。
(2) 食品 全ての飲食物(その原料又は材料として使用される農林水産物を含み,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)に規定する医薬品,医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)をいう。
(3) 食品等 食品並びに添加物(食品衛生法(昭和22年法律第233号)第4条第2項に規定する添加物をいう。以下同じ。),器具(同条第4項に規定する器具をいう。)及び容器包装(同条第5項に規定する容器包装をいう。)をいう。
(4) 食品関連事業者 食品安全基本法(平成15年法律第48号)第8条第1項に規定する食品関連事業者であって,県内に事務所その他の事業の用に供する施設又は場所を有するものをいう。
(5) 生産資材 農林漁業において使用される肥料,農薬,飼料,飼料添加物,動物用の医薬品その他食品の安全性に影響を及ぼすおそれがある資材をいう。
(平26条例46・平27条例48・一部改正)
(基本理念)
第3条 食の安全・安心の確保は,県民の生命及び健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下で,必要な措置が講じられることにより,行われなければならない。
2 食の安全・安心の確保は,県民の健康への悪影響を未然に防止する観点から,科学的知見に基づき必要な措置が講じられることにより,行われなければならない。
3 食の安全・安心の確保は,県,食品関連事業者及び県民がそれぞれの責務及び役割を認識し,協働して推進することを旨として,行われなければならない。
(県の責務)
第4条 県は,前条に定める食の安全・安心の確保に関する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり,食の安全・安心の確保に関する施策を総合的に策定し,及び実施する責務を有する。
(食品関連事業者の責務)
第5条 食品関連事業者は,基本理念にのっとり,その事業活動を行うに当たっては,自らが食の安全・安心の確保について第一義的責任を有していることを認識して,食の安全・安心を確保するために必要な措置を食品の生産から販売に至る一連の行程の各段階において適切に講ずる責務を有する。
2 食品関連事業者は,基本理念にのっとり,自らが取り扱う食品等又は生産資材について,食の安全・安心の確保に関する正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない。
3 食品関連事業者は,前項に規定する情報の提供に資するため,食品等の生産,製造,仕入れ,販売等に関する必要な情報又は生産資材の製造,輸入,販売等に関する必要な情報の記録及びその保管に努めなければならない。
4 前3項に定めるもののほか,食品関連事業者は,基本理念にのっとり,その事業活動に関し,県が実施する食の安全・安心の確保に関する施策に協力する責務を有する。
(県民の役割)
第6条 県民は,食の安全・安心の確保に関する知識及び理解を深めるとともに,食の安全・安心の確保に関する施策について意見を表明するよう努めることによって,食の安全・安心の確保に積極的な役割を果たすものとする。
第2章 食の安全・安心の確保に関する基本的施策
(基本方針)
第7条 知事は,食の安全・安心の確保に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。
2 知事は,基本方針を定めるに当たっては,あらかじめ,県民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
3 知事は,基本方針を定めたときは,これを公表するものとする。
4 前2項の規定は,基本方針の変更について準用する。
(監視等)
第8条 県は,食の安全・安心を確保するため,食品の生産から販売に至る一連の行程の各段階において,監視,指導,検査その他の必要な措置を講ずるものとする。
(安全にかつ安心して消費できる農林水産物の安定的な供給)
第9条 県は,安全にかつ安心して消費できる農林水産物の安定的な供給を確保するため,農林水産物の生産に係る履歴の記録及び管理が適切に実施されるよう,助言,指導その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 県は,環境への負荷(人の活動により環境に加えられる影響であって,環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。)の低減に資する生産方式が導入されるよう,技術の開発,その成果の普及その他の必要な措置を講ずるものとする。
(情報の収集及び提供)
第10条 県は,県民の健康への悪影響を未然に防止する上で有益であると思われる情報その他の食の安全・安心の確保に関する情報の収集,整理,分析等を行い,県民及び食品関連事業者に対し,必要な情報の提供を行うものとする。
(表示の適正化の推進)
第11条 県は,食品等の表示が適正に行われるよう,食品等の表示に関する制度の普及その他の必要な措置を講ずるものとする。
(危機管理体制の整備)
第12条 県は,食品を摂取することにより県民の健康に係る重大な被害が生じ,又は生ずるおそれがある緊急の事態に対処し,及び当該事態の発生を防止するため,必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
(市町村等との連携)
第13条 県は,食の安全・安心の確保に関する施策の推進に当たっては,市町村,他の都道府県及び国との連携を図るものとする。
(調査研究の推進等)
第14条 県は,食の安全・安心の確保を図るため,調査研究の推進及びその成果の普及のために必要な措置を講ずるものとする。
(認証制度)
第15条 県は,県内において生産された農林水産物又は県内において製造され,加工され,若しくは調理された食品に関して,食の安全・安心の確保に資するものとして認証する制度の普及に必要な措置を講ずるものとする。
(食育及び地産地消の推進)
第16条 県は,県民が食の安全・安心の確保に関する理解を深めることができるよう,食品の安全性に関する基礎的な知識を普及する機会として,食育(食育基本法(平成17年法律第63号)に規定する食育をいう。)の取組を推進するものとする。
2 県は,県民が食の安全・安心を確保することができるよう,地産地消(当該地域で生産された農林水産物を当該地域で消費することをいう。)の取組を推進するものとする。
3 県は,前2項の取組を推進するに当たっては,家庭,学校,地域等において相互に緊密な連携が図られるよう必要な措置を講ずるものとする。
第3章 食の安全・安心の確保に関する具体的措置
(出荷等の禁止)
第17条 食品関連事業者(農林水産物を生産し,又は採取する者及び当該者で構成される団体に限る。)は,生産し,又は採取した農林水産物が次の各号のいずれかに該当する場合は,当該農林水産物を出荷し,又は販売してはならない。
(1) 農薬取締法(昭和23年法律第82号)第24条の規定により使用を禁止された農薬を使用して生産された場合
(2) 医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律第83条の3の規定により使用を禁止された医薬品又は再生医療等製品を使用して生産された場合
(3) 食品衛生法第13条第1項に規定する基準若しくは規格に合わない場合又は農薬,飼料添加物及び動物用の医薬品の成分である物質が同条第3項に規定する量を超えて残留する場合(同項ただし書に該当する場合を除く。)
(平26条例46・令3条例13・一部改正)
(勧告等)
第18条 知事は,食品による健康への悪影響を未然に防止するために必要があると認めるときは,法令又は他の条例に定める措置を講ずる場合を除き,食品関連事業者に対し,健康への悪影響を未然に防止するために必要な措置をとることを勧告するとともに,当該勧告の内容を公表することができる。
2 知事は,前項の規定による勧告をしようとするときは,あらかじめ,当該食品関連事業者に対し,意見を述べる機会を与えなければならない。ただし,公益上,緊急に勧告をする必要があるため,当該意見を述べる機会を与えることができない場合は,この限りでない。
3 知事は,第1項の規定により勧告を受けた者が,正当な理由がなくて当該勧告に係る措置を講じなかった場合において,食品による健康への重大な被害が発生する明白な危険が切迫していると認めるときは,当該勧告を受けた者に対し,当該勧告に係る措置を講ずることを命ずることができる。
(食品等輸入の届出)
第19条 食品等輸入者(食品衛生法第27条の規定による届出をした者をいう。次項において同じ。)は,この項の規定による届出をしたことがある場合を除き,食品等を輸入した日から30日以内に,規則で定めるところにより,次に掲げる事項その他規則で定める事項を知事に届け出なければならない。
(1) 氏名及び住所(法人にあっては,その名称及び主たる事務所の所在地)
(2) 輸入に係る食品等の種類
(3) 輸入に係る食品等の製造所又は加工所が所在する国名(輸入に係る食品等が加工食品以外の食品である場合にあっては,当該食品の生産地の属する国名)
(令3条例13・旧第21条繰上)
(立入検査等)
第20条 知事は,この章の規定の施行に必要な限度において,食品関連事業者に対し,その事業に関して報告を求め,若しくはその職員に,事業所その他の事業を行う場所に立ち入り,食品等,生産資材,施設,設備,帳簿書類その他の物件を検査させ,関係者に質問させ,又は試験の用に供するために必要な限度において,食品等,生産資材その他の物件の提出を求めることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は,その身分を示す証明書を携帯し,関係者に提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(令3条例13・旧第22条繰上)
第4章 県民参画の推進
(施策の提案)
第21条 県民及び食品関連事業者は,食の安全・安心の確保に関する施策の策定,改善又は廃止について,規則で定めるところにより,知事に提案をすることができる。
2 知事は,前項の規定による提案が行われたときは,必要な検討を行い,当該提案をした者にその結果を通知するものとする。
(令3条例13・旧第23条繰上)
(情報及び意見の交換の促進)
第22条 県は,食の安全・安心の確保に関する関係者間の相互理解を促進することを目的として,県民,食品関連事業者等における情報及び意見の交換の促進を図るために必要な施策を実施するものとする。
(令3条例13・旧第24条繰上)
第5章 雑則
(委任)
第23条 この条例に定めるもののほか,この条例の施行に関し必要な事項は,規則で定める。
(令3条例13・旧第25条繰上)
第6章 罰則
第24条 第18条第3項の規定による命令に違反した者は,50万円以下の罰金に処する。
(令3条例13・旧第26条繰上・一部改正)
(令3条例13・旧第27条繰上)
第26条 第19条第1項の規定に違反した者は,5万円以下の過料に処する。
(令3条例13・旧第28条繰上・一部改正)
付則
付則(平成26年条例第46号)抄
(施行期日)
1 この条例は,平成26年11月25日から施行する。
付則(平成27年条例第48号)
この条例は,公布の日から施行する。
付則(令和3年条例第13号)抄
(施行期日)
1 この条例は、令和3年6月1日から施行する。
(経過措置)
4 この条例の施行の日前に着手された第4条の規定による改正前の茨城県食の安全・安心推進条例第19条に規定する食品等の回収については、同条及び第4条の規定による改正前の同条例第20条の規定は、なおその効力を有する。