○障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例
平成26年3月26日
茨城県条例第31号
障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例を公布する。
障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例
私たちが住む茨城県は常陸国風土記でも常世の国とたたえられているように豊かな自然に恵まれており,そこに住む人の多くは夢や幸せを追い求めてきた。
しかし,障害のある人は,地域社会で生活を送るために誰もが必要としている社会資源の利用について,多くの制約を受けている。障害のない人と対等な一人の人間として十分に尊重されずに,夢や幸せの追求を諦めることもある。
人類は,いまだ障害に対する差別と偏見を根絶するには至っていないが,これらを軽減し,解消することは,一人一人の絶え間ない努力の積み重ねによって可能である。
ここに,国際連合総会において採択された障害者の権利に関する条約の趣旨を踏まえ,障害のある人と障害のない人が対等な権利を有していることを再確認するとともに,障害があることで受ける制約をなくすための合理的な配慮の提供を全ての県民に求めていくことを通じて,誰もが安心して楽しく暮らすことができ,共に夢や幸せを追求できる真に平等な社会を実現することを決意し,この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は,差別を解消するための基本理念を定め,県の責務並びに県民及び事業者の役割を明らかにし,障害及び障害のある人に対する県民の理解を深め,障害のある人の権利を擁護して福祉の増進を図ることにより,障害の有無によって分け隔てられることなく誰もが個人の尊厳及び権利が尊重され,住みなれた地域で社会を構成する一員として共に歩み幸せに暮らすことができる社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「障害のある人」とは,身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。),難病(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病をいう。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
2 この条例において「社会的障壁」とは,障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。
3 この条例において「差別」とは,障害を理由として障害のない人と不当な差別的取扱いをすることにより,障害のある人の権利利益を侵害すること又は社会的障壁の除去の実施について合理的配慮をしないことをいう。
4 この条例において「合理的配慮」とは,障害のある人が障害のない人と実質的に同等の日常生活又は社会生活を営むために,障害のある人の求め又はその家族等の求め(障害のある人がその意思の表明を行うことが困難である場合に限る。)に応じて,必要かつ適切な現状の変更又は調整を行うことをいう。ただし,社会通念上その実施に伴う負担が過重になるものを除く。
(基本理念)
第3条 差別を解消するための取組は,全ての障害のある人が,障害のない人と等しく基本的人権を享受する個人としてその尊厳が重んぜられ,障害のない人と同等の権利を有し,社会の様々な分野に参加できることを旨として行われなければならない。
2 差別を解消するための取組は,誰もが障害を有することとなる可能性があること及び障害は障害のない人も含めた全ての人に関係する問題であることが認識され,差別を生む背景にある誤解,偏見その他の理解の不足が解消されるよう,障害のある人と障害のない人が共に学び合い協力していくことを旨として行われなければならない。
3 差別を解消するための取組は,差別する側と差別される側とに分けて相手側を一方的に非難し制裁を加えようとするものであってはならない。
(県の責務)
第4条 県は,前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり,障害及び障害のある人に対する理解を深め,差別を解消するための施策を総合的に策定し,及び実施するものとする。
(県民等の役割)
第5条 県民及び事業者(以下「県民等」という。)は,障害のある人が,地域の一員として社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加できるよう,支援に努めるものとする。
2 県民等は,基本理念にのっとり,障害についての理解を深め,差別の解消並びに県又は市町村が実施する障害についての理解の促進及び差別を解消するための施策への協力に努めるものとする。
3 県民等は,障害のある人及びその家族等が障害による生活上の困難を軽減するための支援を周囲に気兼ねなく求めることができる社会環境の実現に寄与するよう努めるものとする。
4 障害のある人は,自らの障害の特性及び障害のあることによる生活上の困難について県民等に伝え,理解が得られるよう努めるものとする。
(県と市町村との連携)
第6条 県は,市町村が障害及び障害のある人に対する理解を深め差別を解消するための施策を実施する場合にあっては,当該市町村と連携するとともに,当該市町村に対し,情報の提供及び技術的な支援に努めるものとする。
(財政上の措置)
第7条 県は,障害及び障害のある人に対する理解を深め差別を解消するための施策を推進するため,必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(啓発活動)
第8条 県は,障害及び障害のある人に対する理解を深め差別を解消することの重要性に関する県民の理解及び関心の増進が図られるよう,障害及び障害のある人に関する知識の普及啓発のための広報活動,障害のある人と障害のない人との交流の機会の提供その他必要な施策を講ずるものとする。
(差別の禁止)
第9条 何人も,障害のある人に対し,差別をしてはならない。
2 知事は,前項の規定の徹底を図るため,日常生活,雇用及び労働をはじめとする事業活動その他各分野において特に配慮すべき事項を定めるものとし,県民等はこれを遵守しなければならない。
(特定相談)
第10条 何人も,その身近な場所において,障害のある人に対する差別に関する相談(以下「特定相談」という。)をすることができる。
2 県は,特定相談があったときは,次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 特定相談に応じ,必要な助言及び情報提供を行うこと。
(2) 特定相談に係る関係者間の調整を行うこと。
(3) 関係行政機関への通告,通報その他の通知を行うこと。
(特定相談の委託)
第11条 知事は,障害のある人の福祉の増進に熱意及び見識を有する者であって,適当と認めるものに,前条第2項各号に掲げる業務の全部又は一部を委託することができる。
2 前項の規定により委託を受けた者は,職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その業務に従事する者でなくなった後も同様とする。
(助言又はあっせんの求め)
第12条 差別を受けた障害のある人又はその家族,後見人その他の関係者は,知事に対し,当該差別に該当する事案(以下「対象事案」という。)の解決のための助言又はあっせんを行うよう求めることができる。
2 前項の規定による求めは,行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令に基づく不服申立て又は苦情申立てをすることができる行政庁の処分又は職務執行については,することができない。
(平28条例5・一部改正)
(事実の調査)
第13条 知事は,前条第1項の規定による求めがあったときは,当該求めに係る事実の調査を行うものとする。
(助言又はあっせん)
第14条 知事は,前条第1項の規定による調査の結果に基づき,助言又はあっせんを行うものとする。ただし,次に掲げる場合を除く。
(1) 助言又はあっせんの必要がないと認めるとき。
(2) 対象事案がその性質上助言又はあっせんをするのに適当でないと認めるとき。
(勧告)
第15条 知事は,対象事案関係者が前条の規定による助言又はあっせんに従わない場合において,必要があると認めるときは,当該対象事案関係者に対し,当該助言又はあっせんに従うよう勧告することができる。
(公表)
第16条 知事は,前条の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなく当該勧告に従わないときは,その旨を公表することができる。
(意見陳述の機会の付与)
第17条 知事は,前条の規定による公表をしようとするときは,当該公表に係る者に対し,あらかじめ,その旨を通知し,その者又はその代理人の出席を求め,意見を述べる機会を与えなければならない。
(協議会の設置)
第18条 知事は,医療,介護,教育その他の障害のある人の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事する関係機関が行う差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため,協議会を置く。
(協議会の事務等)
第19条 協議会は,必要な情報を交換するとともに,障害のある人からの相談及び当該相談に係る事例を踏まえた差別を解消するための取組に関する協議を行うものとする。
2 関係機関等は,前項の協議の結果に基づき,当該相談に係る事例を踏まえた差別を解消するための取組を行うものとする。
3 協議会は,必要があると認めるときは,関係機関等に対し,相談を行った障害のある人及び差別に係る事案に関する情報の提供,意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。
(協議会の組織)
第20条 協議会は,委員30人以内で組織する。
2 協議会の委員(以下「委員」という。)は,関係行政機関の職員,学識経験のある者,障害のある人及び障害のある人の福祉に関する事業に従事する者のうちから知事が任命し,又は委嘱する。
3 委員の任期は,2年とする。ただし,補欠により就任した委員の任期は,前任者の残任期間とする。
4 委員は,再任されることができる。
(会長)
第21条 協議会に会長を置き,委員の互選によって定める。
2 会長は,会務を総理し,協議会を代表する。
3 会長に事故があるときは,会長があらかじめ指名する委員がその職務を代理する。
(会議)
第22条 協議会の会議は,会長が招集する。ただし,委員の任命又は委嘱後最初に開かれる会議並びに会長及び前条第3項の委員がともに欠けたときの会議は,知事が招集する。
2 会長は,会議の議長となる。
(関係者からの意見の聴取)
第23条 協議会は,特に必要があると認めるときは,委員以外の関係者に対し,会議に出席することを求め,その意見を聴くことができる。
(協議会への委任)
第24条 この条例に定めるもののほか,協議会の運営に関し必要な事項は,協議会が定める。
(年次報告)
第25条 知事は,毎年度,障害及び障害のある人に対する理解を深め,差別を解消するために講じた施策の実施状況及び成果を取りまとめ,議会に対し報告するとともに,これを公表するものとする。
(令5条例33・追加)
(委任)
第26条 この条例に定めるもののほか,この条例の施行に関し必要な事項は,知事が定める。
(令5条例33・旧第25条繰下)
付則
(施行期日)
1 この条例は,平成27年4月1日から施行する。
(検討)
2 県は,この条例の施行後3年を経過した場合において,この条例及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)の施行の状況,社会情勢の変化等を勘案し,必要があると認めるときは,この条例の規定について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
付則(平成28年条例第5号)
1 この条例は,平成28年4月1日から施行する。
2 行政庁の処分その他の行為又は不作為についての不服申立てであってこの条例の施行前にされた行政庁の処分その他の行為又はこの条例の施行前にされた申請に係る行政庁の不作為に係るものについては,なお従前の例による。
付則(令和5年条例第33号)
この条例は、公布の日から施行する。