○いばらき観光おもてなし推進条例
平成26年11月19日
茨城県条例第61号
いばらき観光おもてなし推進条例を公布する。
いばらき観光おもてなし推進条例
茨城県は,阿武隈・八溝山系の山々や変化に富んだ海岸線のほか,筑波山,霞ケ浦,日本三名瀑の一つである袋田の滝などの魅力ある自然景観に加え,日本三名園の一つである偕楽園や弘道館をはじめとした多くの文化遺産,四季折々の食材とこれを使った郷土料理,伝統工芸品,伝統行事など,豊かな観光資源に恵まれている。
また,つくば・東海地区における最先端技術や日立・鹿島地区における高度な産業技術の集積が進み,高速道路,港湾,空港などの広域的な交通網の整備が進展することで,国内外の物流,観光,文化などにおける交流の促進が期待され,日本一の観光立県に成長する可能性を有している。
観光の振興は,幅広い産業に経済効果をもたらし,多くの雇用を創出するとともに,交流人口の拡大による地域の活性化に大きな効果が期待されている。
そのためには,いばらきの魅力を国内外に積極的に発信すること,いばらきへの郷土愛を育むこと,観光づくりのための人材を育成すること,広域的な交通網を整備すること,本県を訪れた人が安心して,安全かつ快適に過ごすことができる環境を整備することなど,様々な取組が必要である。
特に,観光に関係する事業者をはじめ,県民全てが,本県を訪れた人を,真心のこもった笑顔と挨拶で温かく迎え,誇りを持っていばらきの魅力を伝えていくことを「いばらきのおもてなしの心得」として実践し,本県を訪れた人が「訪れてよかった,また行きたい」と思えるいばらきにしていく必要がある。
ここに,私たちは,県,市町村,観光事業者,観光関係団体及び県民が一体となって,「おもてなし日本一」を目指して観光の振興を推進していくことを決意し,この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は,本県の心のこもったおもてなしによる観光の振興について,基本理念を定め,県,観光事業者及び観光関係団体の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに,観光の振興に関する基本となる事項を定めることにより,観光事業者,観光関係団体及び県民のおもてなし力の向上を図り,豊かな地域社会の実現及び県民生活の向上に寄与することを目的とする。
(1) おもてなし 郷土への誇りと愛着を持って観光客に接し,心からの笑顔,挨拶,声掛け等により観光客を温かく迎え,及び地域の魅力を伝え,観光客が「訪れてよかった,また行きたい」と思えるようにすることをいう。
(2) 観光事業者 旅行業者,旅館業者,飲食業者,旅客運送業者その他の観光に関する事業を営む者をいう。
(3) 観光関係団体 観光事業者及び行政機関で構成する団体その他の観光に関する活動を行う団体をいう。
(4) 県民等 県民,観光事業者及び観光関係団体をいう。
(基本理念)
第3条 観光を振興するための取組は,次に掲げる事項を基本として,実施されなければならない。
(1) 県民等が自然,歴史,文化,食その他の地域の特性について理解を深め,郷土への誇りと愛着を持ち,観光客への心のこもったおもてなしをすることが重要であることを認識すること。
(2) 交流人口の拡大や地域経済の活性化を通じて,魅力ある県づくり及び活力ある地域社会の実現に寄与するものであることを認識すること。
(3) 県,市町村及び県民等が相互に連携を図り,一体となって取り組むものであることを認識すること。
(県の責務)
第4条 県は,前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり,観光の振興に関する施策を策定し,及び実施するものとする。
2 県は,国内外からの観光客の来訪を促進するため,国及び他の地方公共団体との連携を図るものとする。
3 県は,観光事業者及び観光関係団体が行う観光の振興に関する活動を支援するとともに,市町村が実施する観光の振興に関する施策について連携協力し,及び情報の共有化を図り,観光の振興に関して必要があると認めるときは,市町村に対して協力を求めるものとする。
4 県は,県民誰もが「いばらきのおもてなしの心得」を理解し,観光案内人となれるよう必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(観光事業者の責務)
第5条 観光事業者は,基本理念にのっとり,観光客に良質なサービスを提供するとともに,観光客への心のこもったおもてなしを通じて,地域の魅力の向上に主体的に取り組むものとする。
2 観光事業者は,県が実施する観光の振興に関する施策に協力するものとする。
(観光関係団体の責務)
第6条 観光関係団体は,基本理念にのっとり,県,市町村,観光事業者及び他の観光関係団体と連携を図るとともに,観光に関する情報の発信,観光客の受入態勢の整備その他の観光の振興に資する活動を行うものとする。
2 観光関係団体は,県が実施する観光の振興に関する施策に協力するものとする。
(県民の役割)
第7条 県民は,基本理念にのっとり,自ら率先して,観光客を心のこもったおもてなしで迎えるとともに,地域における観光の振興に関する取組に積極的に協力するよう努めるものとする。
(人材の育成等)
第8条 県は,おもてなしによる観光を先導し観光の振興の核となる人材の育成を図るとともに,観光事業者及び観光の振興に意欲を有する者の知識,能力,語学力及び接遇の向上に必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(郷土愛の醸成)
第9条 県は,県民が自然,歴史,文化,食その他の地域の特性について理解を深め,郷土への誇りと愛着を持つための情報及び教育の機会の提供に努めるものとする。
(観光情報の発信)
第10条 県は,多様な機会及び媒体を通じて,国内外に向けた積極的な観光に関する情報の発信を行うよう努めるものとする。
(国内外からの来訪促進)
第11条 県は,国内外からの観光客の来訪の促進を図るため,誘客活動の実施,受入体制の整備その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(競争力の高い観光地の形成)
第12条 県は,自然,歴史,文化,食その他の地域資源の活用に必要な施策を講ずることにより,国内外での競争力の高い観光地の形成を図るよう努めるものとする。
(観光客の安心,安全かつ快適な環境の整備等)
第13条 県は,年齢,国籍等を問わず,全ての観光客が安心して,安全かつ快適に観光することができる環境の整備に必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
2 県は,観光地における防災対策,災害等の発生の状況に関する情報の提供その他の対策を行うことにより,災害時における観光客の安全の確保に努めるものとする。
(観光産業の育成)
第14条 県は,観光の振興を図るための事業を実施する観光事業者を育成し,及び支援するとともに,観光の振興に関する新事業の創出の支援に努めるものとする。
2 県は,地域の特性及び魅力を生かした特産品の開発及び販売を促進するため,観光事業者等による特産品の開発及び販路開拓に当たっての助言その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
3 県は,おもてなしに関する新たなサービスの創出に当たっての助言その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(おもてなし観光週間)
第15条 県は,県民等が,観光についての関心と理解を深め,共通の認識の下,心のこもったおもてなしを実践することができるようおもてなし観光週間を設けるものとする。
(基本計画)
第16条 知事は,観光の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため,観光の振興に関する基本的な計画(以下この条において「基本計画」という。)を定めるものとする。
2 知事は,基本計画を定めたときは,遅滞なく,これを議会に報告するとともに,公表しなければならない。
3 前項の規定は,基本計画の変更について準用する。
4 知事は,毎年度,基本計画に定められた観光の振興に関する施策の実施状況を議会に報告するとともに,公表しなければならない。
(統計上の調査等)
第17条 県は,観光の振興に関する施策の策定及び実施に資するため統計調査その他の必要な調査を行うとともに,その調査結果を公表するものとする。
(財政上の措置)
第18条 県は,観光の振興に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
付則
この条例は,公布の日から施行する。