○茨城県薬物の濫用の防止に関する条例

平成27年6月23日

茨城県条例第53号

茨城県薬物の濫用の防止に関する条例を公布する。

茨城県薬物の濫用の防止に関する条例

(目的)

第1条 この条例は,いわゆる危険ドラッグなどの薬物の濫用による被害が深刻な状況にあることを踏まえ,薬物の濫用の防止について,県及び県民の責務を明らかにするとともに,県の施策の基本となる事項及び必要な規制を定めることにより,薬物の濫用から県民の命と暮らしを守り,県民が平穏にかつ安心して暮らすことができる社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「薬物」とは,次に掲げる物をいう。

(1) 大麻取締法(昭和23年法律第124号)第1条に規定する大麻

(2) 覚醒剤取締法(昭和26年法律第252号)第2条第1項に規定する覚醒剤及び同条第5項に規定する覚醒剤原料

(3) 麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)第2条第1号に規定する麻薬,同条第4号に規定する麻薬原料植物及び同条第6号に規定する向精神薬

(4) あへん法(昭和29年法律第71号)第3条第1号に規定するけし,同条第2号に規定するあへん及び同条第3号に規定するけしがら

(5) 毒物及び劇物取締法施行令(昭和30年政令第261号)第32条の2に規定する物

(6) 医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第15項に規定する指定薬物

(7) 前各号に掲げるもののほか,中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。)を有し,かつ,人の身体に使用された場合に人の健康に被害が生ずると認められる物

(令2条例40・一部改正)

(県の責務)

第3条 県は,薬物の濫用の防止に関する総合的な施策を策定し,及び実施しなければならない。

2 県は,前項の施策の推進に当たっては,国,他の都道府県,県内市町村,薬物の濫用の防止を目的とする団体,事業者,教育関係者等との緊密な連携及び協力を図るものとする。

(県民の責務)

第4条 県民は,薬物の濫用の危険性に関する知識と理解を深め,薬物の濫用を防止するよう努めなければならない。

2 県民は,薬物の濫用の防止に関する県の施策に協力するよう努めなければならない。

(推進体制の整備)

第5条 県は,薬物の濫用の防止に関する施策を計画的に推進するための体制を整備するものとする。

2 知事及び公安委員会は,相互に連携し,及び協力して薬物の濫用の防止に関する調査,指導その他の措置を行うものとする。

(調査研究の推進)

第6条 県は,薬物の濫用の防止に関する施策を最新の科学的知見に基づいて実施するため,薬物の危険性等に関する調査研究を行うとともに,薬物の試験及び検査に関する研究開発を推進するものとする。

(情報の収集及び提供)

第7条 県は,薬物の濫用による危害から県民の健康及び安全を守るため,薬物に関する情報を収集するとともに,県民に必要な情報を提供するものとする。

(教育及び啓発)

第8条 県は,県民が薬物の濫用の危険性及び違法性に関する正しい知識に基づき行動することができるよう,学校等における教育及び県民に対する啓発を行うものとする。

(薬物の依存症からの回復支援)

第9条 県は,薬物の依存症からの患者の回復を支援するため,相談体制及び専門的な治療体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

(知事指定薬物の指定)

第10条 知事は,第2条第7号に掲げる薬物のうち,県の区域内において現に濫用され,又は濫用されるおそれがあると認めるものを知事指定薬物として指定することができる。

2 知事は,前項の規定による指定をしようとするときは,あらかじめ茨城県薬物指定審査会の意見を聴かなければならない。ただし,県民の健康及び安全を守るため緊急を要する場合で,あらかじめその意見を聴くいとまがないときは,この限りでない。

3 知事は,前項ただし書の場合においては,速やかに,その指定に係る事項を茨城県薬物指定審査会に報告しなければならない。

4 知事は,第1項の規定による指定をするときは,知事指定薬物の名称,指定の理由その他必要な事項を告示しなければならない。

(知事指定薬物の指定の失効)

第11条 前条第1項の規定による指定は,知事指定薬物が第2条第1号から第6号までに掲げる薬物に指定され,又は該当するに至ったときは,その効力を失うものとする。

2 知事は,前項の規定により知事指定薬物の指定がその効力を失ったときは,当該知事指定薬物の名称,失効の理由その他必要な事項を告示しなければならない。

3 第22条から第26条までの規定は,第1項の規定による知事指定薬物の指定の失効前にした行為についても,これを適用する。

(令5条例33・一部改正)

(製造等の禁止)

第12条 何人も,次に掲げる行為をしてはならない。ただし,第1号から第4号までに掲げる行為については,正当な理由により行う場合として規則で定める場合は,この限りでない。

(1) 知事指定薬物(知事指定薬物を含有する物又は植物を含む。以下同じ。)を製造し,又は栽培すること。

(2) 知事指定薬物を販売し,授与し,又は販売若しくは授与の目的で所持すること(県の区域外における販売又は授与の目的で所持する場合を含む。)

(3) 知事指定薬物を販売又は授与の目的で広告すること。

(4) 知事指定薬物を所持し,購入し,若しくは譲り受け,又は使用すること(販売又は授与の目的で所持する場合を除く。)

(5) 多数の者が集まって知事指定薬物をみだりに使用することを知りながら,その場所を提供し,又はあっせんすること。

(立入調査等)

第13条 知事は,この条例の施行に必要な限度において,その職員をして,知事指定薬物又はこれに該当する疑いがある物(以下「知事指定薬物等」という。)を業務上取り扱う場所その他必要な場所に立ち入り,調査させ,関係者に質問させ,又は試験のため必要な最少分量に限り知事指定薬物等を収去させることができる。

2 公安委員会は,この条例の施行に必要な限度において,公安委員会規則で定める警察職員に,知事指定薬物等を業務上取り扱う場所その他必要な場所に立ち入り,調査させ,又は関係者に質問させることができる。

3 前2項の規定により立入調査,質問又は収去をする場合は,第1項の職員は規則で,前項の職員は公安委員会規則で定めるその身分を示す証明書を携帯し,関係者の請求があったときは,これを提示しなければならない。

4 第1項及び第2項の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(警告)

第14条 知事は,次の各号のいずれかに該当する者に対し,必要な警告を発することができる。

(1) 第12条第1号の規定に違反して知事指定薬物を製造し,又は栽培した者

(2) 第12条第2号の規定に違反して知事指定薬物を販売し,授与し,又は販売若しくは授与の目的で所持した者(県の区域外における販売又は授与の目的で所持した者を含む。)

(3) 第12条第3号の規定に違反して知事指定薬物を販売又は授与の目的で広告した者

(4) 第12条第4号の規定に違反して知事指定薬物を所持し,購入し,若しくは譲り受け,又は使用した者(販売又は授与の目的で所持した者を除く。)

(5) 第12条第5号の規定に違反して場所を提供し,又はあっせんした者

2 前項各号(第4号を除く。)のいずれかに該当する者が,法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者であるときは,その法人又は人に対しても,同項の規定による警告を発することができる。

3 前2項の警告は,規則で定める様式による警告書を交付して行うものとする。

4 公安委員会は,警察職員が第12条第5号の規定に違反して場所を提供し,又はあっせんした者を発見したときは,公安委員会規則で定めるところにより,知事に通知することができる。

(製造等の中止等の命令)

第15条 知事は,前条第1項の規定による警告(同項第5号に係るものを除く。以下同じ。)に従わない者に対し,知事指定薬物の製造,栽培,販売,授与,所持,広告,購入,譲受け若しくは使用の中止(次項において「知事指定薬物の製造等の中止」という。)を命じ,又は相当の期限を定めて知事指定薬物の回収若しくは廃棄その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

2 知事は,次の各号のいずれかに該当するときは,前条第1項第1号から第4号までのいずれかに該当する者に対し,同項の規定による警告を発することなく,知事指定薬物の製造等の中止を命じ,又は知事指定薬物の回収若しくは廃棄その他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(1) 薬物の濫用から県民の健康と安全を守るため緊急を要する場合で,前条第1項の規定による警告を発するいとまがないとき。

(2) 前条第1項第1号から第4号までのいずれかに該当する者が,過去に同項第1号から第4号までのいずれかの規定による警告を受けたことがあるとき。

(緊急時の勧告)

第16条 知事は,第2条第7号に掲げる薬物の濫用により,県民の生命又は身体に重大な被害が生じ,又は生じるおそれがあると認めるときは,第10条第1項の規定により当該薬物を知事指定薬物として指定する前に,当該薬物を製造し,栽培し,販売し,授与し,販売若しくは授与の目的で所持し,販売若しくは授与の目的で広告し,みだりに使用し,若しくはみだりに使用する目的で所持した者又は多数の者が集まって当該薬物をみだりに使用することを知って,そのための場所を提供し,若しくはあっせんした者に対し,これらの行為を中止し,又は当該薬物の回収若しくは廃棄その他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

2 知事は,前項の規定による勧告を行ったときは,県民に当該勧告に係る薬物に関する情報を提供するものとする。

3 知事は,第1項の規定による勧告を行ったときは,速やかに,その旨を茨城県薬物指定審査会に報告するものとする。

(特定電気通信役務提供者への要請)

第17条 知事は,第12条第3号の規定に違反する広告である特定電気通信(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律第137号)第2条第1号に規定する特定電気通信をいう。)による情報の送信があるときは,特定電気通信役務提供者(同法第2条第3号に規定する特定電気通信役務提供者をいう。)に対して,当該送信を防止する措置を講ずることを要請することができる。

(公安委員会の要請)

第18条 公安委員会は,第2条第7号に掲げる薬物に関し,公共の安全の維持のため必要であると認めるときは,公安委員会規則で定めるところにより,知事に対し,必要な措置をとるべきことを要請することができる。

(茨城県薬物指定審査会)

第19条 第10条第1項の規定による知事指定薬物の指定に関する事項,第16条第1項の規定による勧告に関する事項その他の第2条第7号に掲げる薬物の危険性に関する事項について調査審議させるため,茨城県薬物指定審査会(以下「審査会」という。)を置く。

2 審査会は,委員5人以内で組織する。

3 委員は,学識経験のある者のうちから,知事が任命する。

4 委員の任期は,2年とする。ただし,補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。

5 委員は,再任されることができる。

6 委員は,職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

7 審査会の行う調査審議の手続は,公開しない。

8 第2項から前項までに定めるもののほか,審査会の組織及び運営に関し必要な事項は,規則で定める。

(年次報告)

第20条 知事は,毎年度,薬物の濫用の防止に関して講じた施策の実施状況及び成果を取りまとめ,議会に対し報告するとともに,これを公表するものとする。

(令5条例33・追加)

(委任)

第21条 この条例に定めるもののほか,この条例の施行に関し必要な事項は,規則で定める。

(令5条例33・旧第20条繰下)

(罰則)

第22条 第15条の規定による命令(第14条第1項第1号又は第2号に係るものに限る。)に違反した者は,2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

(令5条例33・旧第21条繰下)

第23条 次の各号のいずれかに該当する者は,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

(1) 第12条第1号又は第2号の規定に違反した者

(2) 第15条の規定による命令(第14条第1項第1号又は第2号に係るものを除く。)に違反した者

(令5条例33・旧第22条繰下)

第24条 第12条第3号又は第4号の規定に違反した者は,6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

(令5条例33・旧第23条繰下)

第25条 第13条第1項若しくは第2項の規定による立入調査若しくは同条第1項の規定による収去を拒み,妨げ,若しくは忌避し,又はこれらの規定による質問に対して陳述をせず,若しくは虚偽の陳述をした者は,20万円以下の罰金に処する。

(令5条例33・旧第24条繰下)

(両罰規定)

第26条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関して,第22条から前条までの違反行為をしたときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても,各本条の罰金刑を科する。

(令5条例33・旧第25条繰下・一部改正)

この条例は,公布の日から施行する。ただし,第11条第3項第12条から第18条まで及び第21条から第25条までの規定は,平成27年9月1日から施行する。

(令和2年条例第40号)

(施行期日)

1 この条例は,公布の日から施行する。

(令和5年条例第33号)

この条例は、公布の日から施行する。

茨城県薬物の濫用の防止に関する条例

平成27年6月23日 条例第53号

(令和5年9月29日施行)