○茨城県家庭教育を支援するための条例

平成28年12月28日

茨城県条例第60号

茨城県家庭教育を支援するための条例を公布する。

茨城県家庭教育を支援するための条例

国づくりは人づくりであり,将来を担う子どもたちの健全育成は,いつの時代でも最重要課題の一つである。

特に,幼少期における家庭教育は,生活のために必要な習慣や自立心,規範意識等を身に付けさせるものであり,その後の学校教育や社会生活において極めて有用であることから,全ての教育の出発点であると言える。

茨城県では,我が国最大規模の藩校である弘道館等において,天下のさきがけとなる多くの人材を輩出し,明治維新の原動力として時代の変革期に多大な影響を与えてきた。弘道館をはじめとする史跡が,近世日本の教育遺産群として日本遺産に認定されたことはその証左であり,本県は,教育を大切にする文化・風土の中で家庭教育が行われ,これを地域社会で支えてきたところである。

しかしながら,昨今の家族形態の多様化や地域社会とのつながりの希薄化,子どもの貧困など,家庭を取り巻く環境が大きく変化し,様々な問題を抱えている家庭が増えてきており,家庭の教育力や地域における家庭を支える力の低下が指摘されている。

そこで,保護者が改めて家庭教育に対する責任を自覚し,自主的に取り組むとともに,県民が一体となって,幼少期を中心とする家庭教育を支援していくことが必要である。

ここに,家庭教育を多くの県民で支援し,子どもたちの個性を尊重しつつ,保護者による安定した愛情の定着が図られ,子どもたちの健やかな成長に喜びを実感できる教育立県いばらきの実現を目指して,この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は,家庭教育の支援について,基本理念及びその実現を図るために必要な事項を定め,家庭教育を支援するための施策(以下「家庭教育支援施策」という。)を総合的に推進し,保護者が親として成長すること及び子どもが親になるために学ぶことを促すとともに,生活のために必要な習慣の確立,自立心の育成及び心身の調和のとれた発達に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「家庭教育」とは,保護者(親権を行う者,未成年後見人その他の者で,子どもを現に監護する者をいう。以下同じ。)の責任において,その子どもに対して行う教育をいう。

2 この条例において「子ども」とは,おおむね18歳以下の者をいう。

3 この条例において「幼少期」とは,おおむね小学校(義務教育学校の前期課程及び特別支援学校の小学部を含む。)第2学年修了までをいう。

4 この条例において「学校等」とは,学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(大学を除く。),児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所及び就学前の子どもに関する教育,保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第6項に規定する認定こども園をいう。

5 この条例において「地域活動団体」とは,社会教育法(昭和24年法律第207号)第10条に規定する社会教育関係団体,地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第1項に規定する地縁による団体その他の団体で地域的な共同活動を行うものをいう。

6 この条例において「事業者」とは,事業を行う法人その他の団体及び個人をいう。

(基本理念)

第3条 家庭教育の支援は,保護者がその子どもの教育について第一義的責任を有するという基本的認識の下に,県,市町村,祖父母,学校等,地域住民,地域活動団体,事業者その他関係者が,家庭の自主性を尊重しつつ,それぞれの役割を果たすとともに,相互に協力しながら,一体的に取り組むことを旨として行わなければならない。

2 家庭教育の支援は,一人一人の子どものかけがえのない個性を尊重するとともに,多様な家庭環境に配慮して行わなければならない。

3 家庭教育の支援は,幼少期における教育が生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることに鑑み,とりわけ家庭における小学校就学前の教育(第14条及び第15条において「就学前教育」という。)に重点を置いて行わなければならない。

(県の責務)

第4条 県は,前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり,家庭教育支援施策を総合的に策定し,及び実施する責務を有する。

2 県は,前項の規定により家庭教育支援施策を策定し,及び実施するに当たっては,市町村,保護者,祖父母,学校等,地域住民,地域活動団体,事業者その他関係者と連携し,及び協働して取り組むものとする。

3 県は,第1項の規定により家庭教育支援施策を策定し,及び実施するに当たっては,保護者及び子どもの障害の状況,保護者の経済状況その他の家庭状況の多様性に十分配慮するものとする。

(市町村との連携)

第5条 県は,市町村が家庭教育支援施策を策定し,又は実施しようとするときは,市町村に対して情報の提供,助言その他の必要な支援を行うものとする。

(国との連携)

第6条 県は,国と連携協力して家庭教育支援施策の推進を図るとともに,家庭教育の支援に関して必要があると認めるときは,国に対し必要な施策を講ずるよう求めるものとする。

(保護者の責任及び役割)

第7条 保護者は,基本理念にのっとり,その子どもの教育について第一義的責任を有することを自覚しなければならない。

2 保護者は,子どもに愛情をもって接するとともに,幼少期において子どもとの安定した愛情の形成及び定着が図られるよう努めるものとする。

3 保護者は,子どもの個性を尊重しつつ,生活のために必要な習慣の確立,自立心の育成及び心身の調和のとれた発達を図るとともに,自らも成長していくよう努めるものとする。

4 保護者は,幼少期における家庭教育を充実させるため,学校等と連携及び協調を図るよう努めるものとする。

(祖父母の役割)

第8条 祖父母は,基本理念にのっとり,子育てに関する知恵及び経験を生かし,保護者と連携しながら,家庭教育に対する支援及び協力を行うよう努めるものとする。

(学校等の役割)

第9条 学校等は,基本理念にのっとり,保護者,地域住民及び地域活動団体と連携して,子どもの健全な成長のために必要な集団生活における規律等を身に付けさせるとともに,子どもの自立心を育成し,心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。

2 学校等は,県及び市町村が実施する家庭教育支援施策に協力するよう努めるものとする。

(地域住民及び地域活動団体の役割)

第10条 地域住民及び地域活動団体は,基本理念にのっとり,保護者及び学校等と連携して地域の歴史,伝統,文化等を伝えることを通じ,子どもの健全な育成に努めるとともに,保護者が家庭教育を行うために良好な地域環境の整備に努めるものとする。

2 地域住民及び地域活動団体は,県及び市町村が実施する家庭教育支援施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第11条 事業者は,基本理念にのっとり,家庭教育における保護者の役割の重要性に鑑み,その雇用する従業員の仕事及び家庭生活との両立が図られるよう,必要な雇用環境の整備に努めるものとする。

2 事業者は,県及び市町村が実施する家庭教育支援施策に協力するよう努めるものとする。

(親としての学びの支援)

第12条 県は,親としての学び(保護者が,子どもの発達段階に応じて大切にしたい家庭教育に関する知識,子育ての知識その他の親として成長するために必要なことを学ぶことをいう。次項において同じ。)を支援する学習方法の開発及び普及並びに学習内容の充実を図るものとする。

2 県は,親としての学びの機会を提供するとともに,市町村,祖父母,学校等,地域住民,地域活動団体,事業者その他関係者の取組に対し,積極的な支援を行うものとする。

(親になるための学びの推進)

第13条 県は,親になるための学び(子どもが家庭の役割,子育ての意義その他の将来親になることについて学ぶことをいう。次項において同じ。)を支援する学習方法の開発及び普及並びに学習内容の充実を図るものとする。

2 県は,市町村,祖父母,学校等,地域住民,地域活動団体,事業者その他関係者が子どもの発達段階に応じた親になるための学びの機会を提供することを支援するものとする。

(家庭における就学前教育の充実)

第14条 県は,家庭における就学前教育の充実を図るため,学習環境の整備,学習機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

(幼稚園等に対する就学前教育の支援)

第15条 県は,家庭における就学前教育の円滑化を図るため,幼稚園,保育所及び認定こども園(次項において「幼稚園等」という。)に対し,必要な支援を行うものとする。

2 幼稚園等は,保護者と連携し,家庭における就学前教育の充実に努めるものとする。

(人材養成等)

第16条 県は,大学その他の専門的知識を有する関係機関と連携を図り,家庭教育の支援を行う人材の養成及び資質の向上に努めるとともに,家庭教育の支援を行う関係者相互の連携を推進するものとする。

(多様な家庭環境に配慮した支援)

第17条 県は,多様な家庭環境に配慮した家庭教育の支援の取組を推進するため,県民皆で支え合う環境づくりを促進するものとする。

(相談体制の整備等)

第18条 県は,家庭教育に関する相談に応ずるため,相談体制の整備及び充実,相談窓口の周知その他の必要な施策を講ずるものとする。

(広報,啓発等)

第19条 県は,家庭教育に関する情報の収集,整理,分析及び提供を行うものとする。

2 県は,家庭教育の重要性等について,県民の理解を深め,意識を高めるため,必要な広報及び啓発を行い,家庭教育の支援に関する社会的気運の醸成に努めるものとする。

3 県は,家庭教育の支援に取り組む団体の活動を促進するための施策の実施,家庭教育の支援に関する事例の紹介その他の必要な施策を講ずるものとする。

(財政上の措置)

第20条 県は,家庭教育支援施策を推進するため,必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(年次報告)

第21条 知事は,毎年度,家庭教育の支援に関して講じた施策の実施状況及び成果を取りまとめ,議会に対し報告をしなければならない。

2 知事は,前項の報告を毎年度,公表しなければならない。

(家庭教育を実践する日等)

第22条 県は,家庭教育を重点的に実践するため,毎月第3日曜日において,家庭教育についての関心と理解を深めるための啓発活動その他の事業を実施するよう努めるものとする。

2 県は,いばらき教育の日を定める条例(平成16年茨城県条例第35号)第3条に規定するいばらき教育月間において,家庭教育についての関心と理解を深めるための啓発活動その他の事業を実施するよう努めるものとする。

この条例は,公布の日から施行する。

茨城県家庭教育を支援するための条例

平成28年12月28日 条例第60号

(平成28年12月28日施行)