○茨城県手話言語の普及の促進に関する条例
平成30年10月2日
茨城県条例第51号
茨城県手話言語の普及の促進に関する条例を公布する。
茨城県手話言語の普及の促進に関する条例
手話は,物の名前,意思,概念等を手や指,体の動きや顔の表情を使って表現する独自の語彙や文法体系を持つ言語である。
我が国の手話は,明治時代に始まり,情報の獲得とコミュニケーションの手段として,ろう者の間で大切に受け継がれてきた。
しかしながら,これまで言語としての手話を学び,使用する環境が整えられてこなかったことから,ろう者は日常生活や社会生活を送る上で,多くの不便や偏見を受けてきた。
こうした中,ろう者とろう者以外の者が互いに理解し合い,差別のない,誰もが暮らしやすい地域社会を実現するためには,手話を広く県民に普及するとともに,手話を使用しやすい環境を整備していくことが必要である。
ここに,手話が言語であるとの認識に基づき,ろう者とろう者以外の者が相互に人格と個性を尊重し合い,共生することができる社会を実現することを決意し,この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は,手話が言語であるとの認識に基づき,手話の普及等に関し,基本理念を定め,県の責務及び県民等の役割を明らかにするとともに,県の施策の基本となる事項を定めることにより,手話の普及等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し,もってろう者とろう者以外の者が相互に尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) ろう者 手話を使い日常生活又は社会生活を営む聴覚に障害のある者等をいう。
(2) 手話の普及等 手話の普及その他の手話を使用しやすい環境の整備をいう。
(3) 手話通訳者等 手話通訳者その他手話に関わる者をいう。
(基本理念)
第3条 手話の普及等は,手話が独自の言語体系を有する文化的所産であって,ろう者の知的かつ心豊かな生活の実現に重要な役割を担うものであるとの基本的認識の下に行われなければならない。
2 手話の普及等は,ろう者の意思疎通を行う権利を尊重し,ろう者とろう者以外の者が,相互に尊重し合いながら共生することを基本に行われなければならない。
(県の責務)
第4条 県は,前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり,手話の普及等に関する総合的な施策を策定し,及び実施するものとする。
2 県は,手話の普及等に当たっては,市町村その他の関係機関及び関係団体(以下「関係機関等」という。)との連携を図るとともに,ろう者及び手話通訳者等の協力を得るよう努めるものとする。
(市町村の役割)
第5条 市町村は,県と連携し,手話の普及等に関する施策を実施するよう努めるものとする。
(県民の役割)
第6条 県民は,基本理念に対する理解を深めるよう努めるものとする。
(ろう者の役割)
第7条 ろう者は,県又は市町村が実施する手話の普及等に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(手話通訳者等の役割)
第8条 手話通訳者等は,県又は市町村が実施する手話の普及等に関する施策に協力するよう努めるとともに,手話に関する技術の向上に努めるものとする。
(事業者の役割)
第9条 事業者は,ろう者に対しサービスを提供するとき,又はろう者を雇用するときは,手話の使用に関して合理的な配慮をするよう努めるものとする。
2 事業者は,県又は市町村が実施する手話の普及等に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(施策の策定及び推進)
第10条 県は,障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第2項に規定する障害者のための施策に関する基本的な計画において,手話の普及等を図るために必要な施策を定め,及びこれを総合的かつ計画的に推進するものとする。
2 県は,前項に規定する施策について定め,又は変更しようとするときは,あらかじめ,茨城県障害者施策推進協議会条例(平成6年茨城県条例第6号)第1条に規定する茨城県障害者施策推進協議会の意見を聴くものとする。
(手話を学ぶ機会の確保)
第11条 県は,関係機関等,ろう者及び手話通訳者等と協力して,県民が手話を学び,ろう者に対する理解を深めるための機会の確保に努めるものとする。
(手話を用いた情報提供等)
第12条 県は,ろう者が県政に関する情報を速やかに取得することができるよう,手話を用いた情報の提供に努めるものとする。
2 県は,ろう者が手話により情報を取得することができる環境を整備するため,手話通訳者の派遣その他必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
3 県は,災害その他非常の事態において,ろう者が手話により,安全を確保するため必要な情報を迅速かつ的確に取得し,及び円滑に意思疎通を図ることができるよう,関係機関等との連携その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(手話通訳者等の確保,養成等)
第13条 県は,ろう者の意思疎通に係る機会を確保し,及び手話通訳者の負担を軽減し健康の維持を図るため,関係機関等と協力して,手話通訳者等及びその指導者の確保及び養成並びに手話に関する技術の向上に努めるものとする。
2 県は,ろう者が手話通訳者の派遣等による意思疎通の支援を受けることができる体制の整備に努めるものとする。
3 県は,手話通訳者等としての活動に対する理解の増進に資するよう,事業者に対する普及啓発その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(学校における手話の普及等)
第14条 ろう者である幼児,児童又は生徒(以下「ろう児」という。)が通学する学校の設置者は,教職員の手話の習得及び手話に関する技術の向上のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 ろう児が通学する学校の設置者は,当該ろう児及びその保護者に対し,手話に関する学習の機会の提供,手話を使用した教育に関する相談その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
(事業者に対する支援)
第15条 県は,第9条第1項の規定により手話の使用に関して合理的な配慮を行う事業者に対して,情報の提供,助言その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
(手話に関する調査研究)
第16条 県は,ろう者又は手話通訳者等が手話の発展に資するために行う手話に関する調査研究の推進及びその成果の普及に協力するよう努めるものとする。
(年次報告)
第17条 知事は,毎年度,手話の普及等に関して講じた施策の実施状況及び成果を取りまとめ,議会に対し報告するとともに,これを公表するものとする。
(令5条例33・追加)
(財政上の措置)
第18条 県は,手話の普及等に関する施策を推進するため,必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(令5条例33・旧第17条繰下)
付則
この条例は,公布の日から施行する。
付則(令和5年条例第33号)
この条例は、公布の日から施行する。