○茨城県健康長寿日本一を目指す条例
令和6年6月25日
茨城県条例第63号
茨城県健康長寿日本一を目指す条例をここに公布する。
茨城県健康長寿日本一を目指す条例
我が国において人生100年時代と言われる長寿社会が進展する中、県民一人一人が人生の最期まで健やかで心豊かに暮らすことができるよう、ウェルビーイングな社会づくりが課題となっている。
しかしながら、現在、県民の平均寿命と健康寿命との間には差があり、このことは、本人の健康上の問題はもとより、家族の負担にもつながっている。
このため、我々には、生活習慣病や日本人の死因の上位を占めるがん、心疾患、脳血管疾患等の疾病に対して、予防医学等の知見を駆使して適切に対処し、健康寿命をできる限り延伸するための取組が求められている。
健康寿命の延伸は、県民一人一人の幸福ばかりでなく、社会全体の幸福につながるものであることから、県民の理解を得て全世代における健康づくりを積極的に進めていく必要があると考える。
そこで、健康づくりのための指針を策定し、健康長寿日本一を目指すため、ここにこの条例を制定する。
なお、本条例の施行に当たっては、「茨城県歯と口腔の健康づくり8020・6424推進条例」及び「茨城県がん検診を推進し、がんと向き合うための県民参療条例」における施策その他の健康づくりに関する施策と連携して取り組んでいくこととする。
(目的)
第1条 この条例は、健康づくりについて、基本理念その他の基本となる事項を定め、並びに県の責務及び県民等の役割を明らかにすることにより、健康づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって県民一人一人が家庭、学校、職場、地域その他の様々な場において、生涯にわたって、ウェルビーイングで生き生きと暮らし活躍できる地域社会の実現及び健康寿命の延伸に寄与することを目的とする。
(1) ウェルビーイング 個人の権利及び自己実現が保障されており、かつ、肉体的、精神的及び社会的に良好である状態をいう。
(2) 健康寿命 健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をいう。
(3) 健康づくり 全ての県民が健やかで心豊かに暮らすことができるよう、栄養及び食生活並びに運動、休養、喫煙、飲酒並びに歯及び口腔の健康に関する生活習慣の改善等に主体的に取り組むことをいう。
(4) フレイル 加齢に伴う心身の機能の低下等による健康な状態と要介護状態の中間の虚弱な状態をいう。
(5) オーラルフレイル 心身の機能の低下をもたらすおそれがある口腔機能の虚弱な状態をいう。
(6) 認知症 アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態をいう。
(7) 健康づくり関係者 健康づくりのために必要な保健医療サービスを提供する者をいう。
(基本理念)
第3条 健康づくりは、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
(1) 県民が生き生きと暮らすことができるよう、県民一人一人の心身の健康の保持及び増進を図るための取組であって、その年齢、心身の状態等に応じ、生涯にわたって行うこと。
(2) 県民一人一人の健康が県民生活の向上の基礎となることに鑑み、県民の相互の協力の下、社会全体として推進すること。
(3) 保健、医療その他関連分野における予防医学等の専門的な知見に基づき、県民総参加により推進すること。
(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、健康づくりに関する総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、健康づくりに関する施策の策定及び実施に当たっては、国、市町村、県民、健康づくり関係者及び事業者との適切な役割分担の下、これらの者との連携協力及び調整に資するよう、県の施策等に関する情報の提供を行うよう努めるものとする。
(市町村との連携協力等)
第5条 県は、前条第2項の規定による連携協力及び調整を行うに当たっては、特に、住民に身近な保健医療サービスを実施している市町村と連携協力及び調整を図るよう努めるものとする。
2 県は、市町村が行う健康づくりに関する施策に関し、第10条第1項の規定により実施した調査研究等の結果及び各種情報の提供その他の必要な支援を行うものとする。
(県民の役割)
第6条 県民は、基本理念にのっとり、栄養学及び食育に関する適切な知識の習得並びに栄養及び食生活の改善、運動を行う習慣の定着、適切な休養等の健康な生活習慣の確立等自らの心身の状態に応じた健康づくりに努めるものとする。
2 県民は、定期的な健康診査の受診その他の方法により、自らの心身の状態を把握するよう努めるものとする。
3 県民は、身近な医師、歯科医師等の健康づくり関係者に適宜相談をし、又は保健指導若しくは治療を受ける等主体的に行動するよう努めるものとする。
(健康づくり関係者の役割)
第7条 健康づくり関係者は、健康づくりに関する情報を共有する等相互の連携協力体制の整備及び強化を図るとともに、健康づくりの推進に当たっては、基本理念にのっとり、保健指導、健康診査、治療その他の保健医療サービスを県民が適宜受けることができる環境を整備するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第8条 事業者は、健康づくりの推進に当たっては、基本理念にのっとり、その使用する者が健康づくりを実践しやすい環境を整備するよう努めるものとする。
(健康づくりに関する計画)
第9条 県は、乳幼児期(出生から小学校就学の始期に達するまでの期間をいう。以下同じ。)から高齢期(65歳以上の期間をいう。以下同じ。)までの各年齢層に応じた健康づくりを効果的に推進するため、具体的な目標を定めた健康づくりに関する計画を策定するものとする。
2 前項の健康づくりに関する計画は、健康増進法(平成14年法律第103号)第8条第1項に規定する都道府県健康増進計画、医療法(昭和23年法律第205号)第30条の4第1項に規定する医療計画、介護保険法(平成9年法律第123号)第118条第1項に規定する都道府県介護保険事業支援計画等とする。
(調査研究等)
第10条 県は、健康づくりに関する施策を策定し、及び専門的な知見に基づき効果的に実施するため、必要な情報の収集及び分析並びに調査研究を行うものとする。
2 市町村は、前項の規定により県が行う情報の収集及び分析並びに調査研究に協力するよう努めるものとする。
(生活習慣病の予防等)
第11条 県は、健康づくり関係者と連携し、生活習慣病の予防、早期発見及び早期治療が図られるよう、県民が健康診査、治療等を受診しやすい環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
(認知症の予防等)
第12条 県は、健康づくり関係者と連携し、認知症の予防、早期発見及び早期治療が図られるよう、県民が認知症に係る診断、治療等を受診しやすい環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、健康づくり関係者と連携し、認知症の人及びその家族が尊厳を保持しつつ、希望を持って地域社会の一員として安心して暮らすことができるよう、認知症に関する正しい知識の普及啓発及び認知症の人に関する正しい理解の増進に努めるものとする。
(フレイルの予防及び改善)
第13条 県は、健康づくり関係者と連携し、フレイルの予防及び改善が図られるよう、相談体制の整備、普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。
(オーラルフレイルの予防及び改善)
第14条 県は、健康づくり関係者と連携し、オーラルフレイルの予防及び改善が図られるよう、県民が定期的に歯科検診等を受診しやすい環境の整備、普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。
(感染症の予防)
第15条 県は、健康づくり関係者と連携し、感染症の予防に関する正しい知識の普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。
(栄養学等に関する知識の習得等)
第16条 県は、健康づくり関係者と連携し、県民が栄養学及び食育に関する知識を習得するために適切な指導を行うとともに、食塩摂取量の減少及び野菜摂取量の増加をはじめとする栄養及び食生活の改善に取り組むことができるよう、乳幼児期から高齢期までの各年齢層に応じた食事の適切な量及び質並びに適量の飲酒に関する普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。
(運動の習慣化の推進等)
第17条 県は、健康づくり関係者と連携し、県民が心身の健康の保持及び増進に取り組むことができるよう、乳幼児期から高齢期までの各年齢層に応じた運動、筋力トレーニングをはじめとする運動その他の身体活動(安静にしている状態より多くの体内エネルギーを消費する全ての身体の動作をいう。以下この条において「運動」という。)を実践しやすい環境の整備を図るとともに、運動を行う習慣の定着の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。
(適切な休養等)
第18条 県は、健康づくり関係者と連携し、県民が心身の健康の保持及び増進に取り組むことができるよう、日常生活における適切な休養及び睡眠の重要性に関する普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。
(心の健康の保持等)
第19条 県は、健康づくり関係者と連携し、県民が心の健康の保持及び増進に取り組むことができるよう、相談体制の整備、普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。
(高齢者の健康づくり)
第20条 県は、健康づくり関係者と連携し、高齢者が自らの心身の状態に応じた健康づくりを実践できるよう、普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、健康づくり関係者と連携し、高齢者が生きがいを持って健康な生活を営むことができるよう、高齢者が過ごしやすい居場所づくりのほか、多様な社会的活動に参加しやすい環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
(女性の健康づくり)
第21条 県は、健康づくり関係者と連携し、女性が生涯を通じて、女性に特有の問題を解決し、自ら健康の保持及び増進に取り組むことができるよう、環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
(県民の理解の促進)
第22条 県は、健康づくりの重要性等についての県民の理解及び関心を深めることができるよう、家庭、学校、職場、地域その他の様々な場を通じて、情報の提供、研修の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。
(人生会議に関する普及啓発等)
第23条 県は、県民一人一人の人生の質をより一層高め、全ての県民が、一人の人間としての尊厳を保ちながら健やかで心豊かな人生を最期まで送ることができるよう、健康づくり関係者と連携し、人生会議(人生の最終段階における医療やケアについて、県民自身が前もって考え、家族や友人等と繰り返し話し合う取組のことをいう。)についての県民の理解及び関心を深めるための普及啓発を行うとともに、これを担う人材の育成その他の必要な施策を講ずるものとする。
(健康づくりに関する教育の推進)
第24条 県は、健康づくり関係者と連携し、県民が乳幼児期から健康な生活習慣を身に付けることができるよう、学校、幼稚園、保育所等における健康づくりに関する教育の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。
(人材の確保及び育成)
第25条 県は、この条例に定める施策を推進するため、健康づくりに関する専門的な人材の確保、育成その他の必要な施策を講ずるものとする。
(年次報告)
第26条 知事は、毎年度、健康づくりに関して講じた施策の実施状況及び成果を取りまとめ、議会に対し報告するとともに、これを公表するものとする。
(推進体制の整備)
第27条 県は、この条例に基づく健康づくりに関する施策を継続的かつ効果的に推進するため、当該施策に係る体制を整備するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第28条 県は、この条例に基づく健康づくりに関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
付則
この条例は、公布の日から施行する。