○茨城県小規模企業振興条例

令和4年3月29日

茨城県条例第21号

茨城県小規模企業振興条例を公布する。

茨城県小規模企業振興条例

本県は、いにしえより常世の国に例えられ、肥沃な土地や山海の幸に恵まれ、県民のたゆみない努力のもとに、様々な産物を生み出し、豊かな暮らしを築いてきた。

その歩みを受け継いで、現代においても、最先端の科学技術や産業拠点が集積し、質の高い豊富な農林水産物が生産されるなど、幅広い産業が営まれており、そこでは数多くの多様な小規模企業が、本県経済をけん引しながら、県民生活に必要なサービスを提供し、地域社会の形成においても欠くことのできない役割を担っている。

今、人口減少や自然災害の激甚化、新型コロナウイルス感染症の影響等により、社会が未有の変化とこれまでにない課題に直面している。

これを契機として、本県経済を再構築し、新しい豊かさを創出していくことが求められる中、我々は、県内事業者の多くを占める小規模企業が、自ら変化し、光り輝き、その事業が持続的に発展していくことが重要であるとの確信に立ち、小規模企業の振興に資する環境整備を一層推進するとともに、その経営の規模や形態に応じた支援を行うよう配慮する必要がある。

多様で活力ある小規模企業の振興を通じて、本県経済及び地域社会の持続的な発展を図り、もって、豊かな県民生活の実現に寄与するため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、小規模企業の振興について、基本理念を定め、及び県の責務を明らかにするとともに、小規模企業の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、小規模企業の振興に関する施策を総合的に推進し、もって本県経済及び地域社会の持続的な発展並びに県民生活の向上に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 小規模企業 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第5項に規定する小規模企業者であって、県内に事務所又は事業所を有するものをいう。

(2) 小規模企業関係団体 商工会、商工会議所その他の小規模企業に関係する団体をいう。

(基本理念)

第3条 小規模企業の振興は、小規模企業が本県経済や地域社会において重要な役割を果たしているという認識の下、その事業の持続的な発展を図ることを基本として、行われなければならない。

2 小規模企業の振興は、小規模企業が多様な事業を創出し、多様な就業の機会を提供していることを鑑み、その自主性が十分発揮できるよう配慮するとともに、多様な主体との連携及び協力を推進することを旨として、行われなければならない。

3 小規模企業の振興に当たっては、小規模企業の経営の規模及び形態を踏まえて、その経営資源を有効に活用し、その活力の向上が図られ、その円滑かつ着実な事業の運営が確保されるよう考慮されなければならない。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、小規模企業の振興に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、小規模企業の振興に関する施策を推進するに当たっては、国、市町村、小規模企業関係団体その他の関係者と密接に連携して取り組むよう努めるものとする。

3 県は、小規模企業がその事業活動を通じて本県経済及び地域社会の発展並びに県民生活の向上に重要な役割を果たしていることについて県民の理解を深めるため、必要な施策を講ずるものとする。

(小規模企業の努力等)

第5条 小規模企業は、経済社会情勢の変化に即応してその事業の持続的な発展を図るため、自主的に円滑かつ着実な事業の運営に努めるとともに、その事業活動を通じて地域社会の発展及び県民生活の向上に資するよう努めるものとする。

2 小規模企業は、その事業活動に関し、自主的かつ積極的に、その地域における他の小規模企業、小規模企業関係団体その他の関係者と連携を図るよう努めるものとする。

3 小規模企業関係団体は、基本理念にのっとり、小規模企業とともに、小規模企業の振興に主体的に取り組むよう努めるものとする。

(関係者の連携等)

第6条 県、市町村、小規模企業関係団体その他の関係者は、基本理念にのっとり、小規模企業の振興に関する施策が効果的かつ効率的に実施されるよう、適切な役割分担を行うとともに、相互に連携及び協力を図るよう努めるものとする。

(県民の理解)

第7条 県民は、本県経済及び地域社会における小規模企業の重要性について理解を深め、県、市町村、小規模企業関係団体その他の関係者が行う小規模企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(振興計画)

第8条 知事は、小規模企業の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画(以下この条において「振興計画」という。)を策定するものとする。

2 振興計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 小規模企業の振興に関する施策についての基本方針

(2) 小規模企業の振興に関し、総合的かつ計画的に講ずべき施策

(3) 前2号に掲げるもののほか、小規模企業の振興に関する施策を推進するために必要な事項

3 知事は、振興計画を策定しようとするときは、あらかじめ、小規模企業の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

4 知事は、振興計画を定めたときは、これを議会に報告するとともに、公表するものとする。

5 知事は、小規模企業に関する情勢の変化を勘案し、及び小規模企業の振興に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね5年ごとに、振興計画の見直しを行い、必要な変更を加えるものとする。

6 第3項及び第4項の規定は、振興計画の変更(軽微なものを除く。)について準用する。

(需要に応じた商品等の提供の促進)

第9条 県は、小規模企業による多様な需要に応じた商品又は役務の提供の促進に資するため、商談会、展示会その他これらに類するものの開催の促進、情報通信技術の活用に関する情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

(新事業の創出及び事業転換)

第10条 県は、小規模企業が、経済的社会的環境の変化に応じて、新たな事業を創出し、又は事業の転換を図り、及びその事業の展開を図ることに資するため、経営に関する助言、商品又は役務の需要に関する情報の提供、円滑な資金調達に資する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

(創業の促進及び事業の承継又は廃止の円滑化)

第11条 県は、小規模企業の創業を促進するため、創業に関する情報の提供、創業を支援する体制の整備、円滑な資金調達に資する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、小規模企業の事業の承継又は廃止の円滑化を図るため、経営者の意識の醸成、事業の承継又は廃止の円滑化に関する情報の提供、事業の承継又は廃止に関する相談体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

3 県は、前2項の施策を講ずるに当たっては、創業及び事業の承継又は廃止が相互に密接な関連を有する場合があることに鑑み、これらの施策相互の連携を図りつつ、小規模企業の創業及び小規模企業の事業の承継又は廃止に関する施策の効果的な促進に努めるものとする。

4 県は、前項の促進に当たっては、事業の継続が困難となった小規模企業の事業の整理及び再生についても配慮するとともに、各種の相談に総合的に応ずることができるよう相談体制の整備に努めるものとする。

(災害等における事業継続の支援)

第12条 県は、災害その他非常の事態が発生した場合において、小規模企業が事業を継続するための取組を支援するため、支援に関する情報の提供、事業の継続に関する相談体制の整備、円滑な資金調達に資する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

(人材の育成及び確保)

第13条 県は、小規模企業の事業活動を担う多様な人材の育成及び確保を図るため、小規模企業の事業活動に有用な技能及び知識並びに経営管理能力の向上、創業を行おうとする者及び小規模企業の事業の譲渡を受けようとする者に対する技能及び知識の継承の支援並びに経営方法の習得の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、小規模企業に必要な労働力の確保を図るため、教育機関と連携した職業能力の開発及び職業紹介の事業の充実、小規模企業の事業活動に関する広報活動の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。

(地域経済の活性化等に資する事業活動の推進)

第14条 県は、小規模企業が行う事業活動であって、県内の各地域における経済活動の活性化、県民生活に関する需要に応じて行う商品又は役務の提供及び県民の交流の機会の充実に資するものを推進するため、これらに関する情報の提供、円滑な資金調達に資する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

(手続に係る負担の軽減)

第15条 県は、小規模企業の振興に関する施策を実施するに当たっては、その実施に際して必要となる手続について、簡素化その他の措置を講ずることにより小規模企業の負担の軽減を図るよう努めるものとする。

(市町村に対する支援等)

第16条 県は、市町村が行う小規模企業の振興に関する施策に関し、情報の提供その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

2 県は、小規模企業関係団体が行う小規模企業の振興に関する取組に対し、情報の提供その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

(調査)

第17条 知事は、小規模企業の振興に関する施策の効果的な実施を図るために必要な調査を行い、その結果を公表するものとする。

(年次報告)

第18条 知事は、毎年度、小規模企業の動向及び知事が小規模企業の振興に関して講じた施策の実施状況及び成果を取りまとめ、議会に対し報告するものとする。

2 知事は、毎年度、小規模企業の動向を考慮して講じようとする施策について、議会に対し報告するものとする。

(支援体制の整備)

第19条 県は、小規模企業がその事業の持続的な発展を図るための支援を適切に受けられるよう、国及び市町村並びに小規模企業関係団体その他の関係者と連携して必要な体制を整備するよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第20条 県は、小規模企業の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

茨城県小規模企業振興条例

令和4年3月29日 条例第21号

(令和4年3月29日施行)