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更新日:2018年1月15日

【隊員からの活動報告】28年度1次隊フィリピン

青年海外協力隊として平成28年7月にフィリピンへ派遣された本県出身の安部由香子隊員から、現地での活動の様子についてレポートが届きました。

茨城県では、派遣隊員の皆様を「茨城県国際親善大使」として委嘱し、茨城県と世界との架け橋として活動していただいております。

活動内容報告(提供:独立行政法人国際協力機構(JICA))

私の配属先マタグオブ町は山々に囲まれた小さな田舎町である。人口も約1万8,000人と少なく、つねにゆっくりとした時間が流れている。

隊員〈安部由香子隊員〉

そんな私の任地の面白いところは、市長を含め住民たちが自然を大好きという点である。これはいろんなことに慣れているフィリピン人も驚くことだが、なんと・・・市長のオフィスには滝が流れている。そしてどんな重要な話をするときも、その足元にはウサギやハムスターが呑気に歩き回っている。正直このオフィスを見た人たちはこう言う「動物園みたい」。何よりも自然が大好きな市長は山の奥に住んでおり、たまに馬に乗って颯爽と通勤してくる。ジーパンにハットを被り、まさにカウボーイそのものである。

市長室〈市長の執務室〉

そんなリーダーがいるこの町は住民たちの暮らしも自然の中との共存。ゴミ回収は毎日カラバウ(フィリピンでいう水牛)が行う。お尻を叩かれながらも、せかせかとゴミを運ぶカラバウたちの光景は、なんとも愛らしい。この土地でする深呼吸は、なんとも言えず格別な味がする。

カラバウ〈ゴミを回収するカラバウ〉

私はこの地に農家の生計向上を目的としたコミュニティ開発隊員(3代目)として派遣されている。「カカオガール」。そう私は町の人々からニックネームで呼ばれている。私の主な任務はカカオ栽培の支援を通じて、住民の生計向上を目指すこと。初代の協力隊員が世界的需要の高いカカオ栽培に目をつけ、私の配属先である町役場農業事務所と共にその活動を続けてきた。今は町にカカオ協同組合(Cacao Farmers Association in Matag-ob)が発足し、そこのメンバーを中心に支援を行っている。

7年前から活動してきたこのカカオプロジェクトであるが、4年前に町を襲ったスーパー台風ヨランダはその爪痕を未だに残している。カカオは実がなるまでに3年の歳月がかかり、栽培に根気が必要となる果物だ。そのカカオ苗がまだ幼苗のとき、超大型台風が町を襲い、カカオ栽培にも甚大な被害を残した。未だに農家のモニタリングに行くと、「これはヨランダで生き残ったカカオだ」と、限りある生き残りの実がなっているカカオ樹を嬉しそうに見せてくれる。その農家たちの笑顔は非常に眩しい。

農家〈実ったカカオを嬉しそうに見つめる農家〉

私の主な活動内容としては、各農家が保有しているカカオ畑のモニタリングからスタートした。カカオは直射日光を嫌うため、バナナやココナッツと混植することができる。新たな土地を切り開く必要がないというのがメリットだ。そのため、カカオ畑にたどり着くためには、時には川を何本も渡ったり、炎天下のジャングルを一時間以上歩くような場所さえある。基本的にモニタリングの後は泥だらけになって帰ってくる。

視察〈視察の様子〉

超大型台風の被害から再スタートとなった町のカカオ栽培であるが、数年前との大きな違いは、町の約10軒の農家がカカオ豆を使ったフィリピン独自のカカオの消費方法をしていることだ。TABLEA(燻った後のカカオ豆をペースト状にして固めたもの。これをお湯で溶かしてココアのように飲む習慣がフィリピンにはある)を各家庭でローカル消費用に加工している点である。少しずつであるが、カカオ栽培は町に根付き、そのマーケットは拡大しつつある第一歩であると感じた。

TABLEA〈町で作られているTABLEA〉

その後はTABLEAの品質改良やマーケット開拓に力を入れた。ご存知だろうか、カカオを原料とした加工品であるチョコレートは発酵食品なのである。カカオ豆の品質を決める一番の決め手は、その発酵の過程にあると言われている。発酵方法は至って簡単で、バナナの皮でカカオ豆を約一週間包む。住民たちはその発酵自体知らない農家がほとんどであったが、簡単な一手間を加えることでカカオ豆独特の香りとアロマは少しずつ改善してきている。

今はまだカカオ組合としての商品がなく、組合にお金が入る仕組みがないことが課題である。そのため、カウンターパート(CP:配属先の担当者)と組合員たちと相談し、町の大きなイベントに合わせて少量ではあるが組合でカカオ豆を集め、チョコレートドリンク(SIKWATEやTSOKOLATEと呼ばれている)の販売を検討している。組合にお金が入る仕組みを導入し、組合活動の活性化へとつなげていきたい。

収穫までに歳月がかかるカカオ栽培に手が出せるのは余裕のある農家が多く、活動の途中、本当に支援を必要としている貧困農家に私の支援は手が届いているのかという葛藤もあった。そんな時、心の支えになったのは、カカオ協同組合の組合長の姿だった。彼は非常に人見知りで、最初は現地語が話せない私との会話を躊躇していた。しかし、何回も彼の家に足を運び、私が拙い現地語で会話をしようとすると、彼もいつのまにか英語の辞書を持ち歩き、私と会話しようとしてくれていた。その姿に私は背中を押された。「彼らのために、今できることを精一杯やろう」。畑に毎日向かう彼らの前向きな姿は、私の気持ちを前向きにしてくれた。

組合長〈発酵中のカカオ豆と組合長〉

今はその組合長を中心に、早期収穫が可能で隣町にマーケットがあるキノコ栽培を試験的に進めている。私がカカオ栽培へ携わるのはフィリピンに来てからが初めてである。4年間農業高校で教壇に立っていた私であるが、正直カカオ栽培に関してはど素人。住民たちから学ぶことが多い毎日。学ぶ姿勢の大切さと喜びを彼らは私に教えてくれた。この経験は、これから先の教員生活の大きな糧となり財産となると思う。

JICAボランティア平成28年度1次隊

青年海外協力隊コミュニティ開発

安部由香子

 

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