平成26年第2回定例会で可決された意見書・決議・請願

《意見書・決議》


《請願》


「農林水産業・地域の活力創造プラン」改訂にあたり慎重に対応することを求める意見書

 5月14日に,規制改革会議農業ワーキンググループの「農業改革に関する意見」が公表された。これは農業の生産現場を全く踏まえておらず極めて問題の多い内容となっている。
 JAグループ茨城は,定款等による自治法規を定め,総会等を通じて組合員・会員の意思を反映し,自主・自立で運営されている。こうした組合員・会員の意思による組織運営は,協同組合の根幹である。
 そのようなことを無視し,全農の株式会社化や信用・共済事業の代理業化など,法人格・事業の変更・廃止を一方的に強制することは,民間組織の自治に過大に関与することであり,認められるべきものではない。
 組合の健全性確保や系統組織の相互調整の役割を発揮している中央会制度の廃止,正組合員の事業利用にも貢献している准組合員の事業利用の制限等は,利用者の相互扶助組織である協同組合の実態を無視したものである。
 協同組合の理念や実態を無視した改革や,事業利用者である組合員の意思を無視した改革は,現場に混乱を生むだけで,組合員に対する事業サービスに悪影響を与え,農業者の所得向上,食料安定供給,地域社会・生活の維持に大きな支障をきたす。
 また,農業生産法人の要件緩和により,株式会社の農地所有を認めることや農業参入を緩和することは,農外への農地の転用,投機目的の農地取得を促進し地域農業の健全な発展を阻害する恐れがある。
 よって,下記のとおり対応されるよう強く望むものである。

 規制改革会議農業ワーキンググループ「農業改革に関する意見」を「農林水産業・地域の活力創造プラン」に反映させるにあたり,生産現場の実態を考慮し慎重に対応すること。

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公務員獣医師の処遇改善を求める意見書

 昨今,自然環境破壊,温暖化の進行,グローバル化などに伴う新型インフルエンザ,高病原性鳥インフルエンザなどの「新興・再興感染症」の発生リスクの高まりが指摘されている。
 こうした中,過年の,口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザの発生は,感染制御を極めて困難とし,国家防疫により終息はしたものの,地域全体に甚大な社会的・経済的被害をもたらした。悪性伝染病の侵入防止と発生時の迅速かつ必要十分な防疫措置の重要性が,社会一般に広く認知されたところである。
 一方,食品の大量消費の中で繰り返される腸管出血性大腸菌やノロウイルスなどの感染による食中毒事件などを受け,「食の安全と安心」を求める消費者の要求は,一層高まってきている。
 このため,地方公共団体職員である獣医師は,家畜伝染病の予防・まん延防止などの畜産・家畜衛生行政,と畜・食鳥検査などの公衆衛生行政など,幅広い分野において,高い専門性を駆使して職務を遂行している。
 しかし,現在,これらの業務に従事する地方公務員獣医師の給与については,医師の下でその処方や指示により医療に従事する職種と同様に医療職給料表(二)が適用され,高度な自己判断に基づき業務を遂行しなければならない専門職に相応しい処遇とは,到底,言えない状況にある。全国的に公務員獣医師が採用困難職種となっているが,最大の要因はここにあると言わざるを得ない。
 本県は,全国有数の畜産県であることから,家畜伝染病の予防や防疫活動において中心的役割を担う獣医師の職責は非常に大きく,また,と畜検査や食鳥検査を通じた食肉の安全・安心の確保は,獣医師のみが遂行できる業務である。
 公務員獣医師が,一層の責任と誇りを持って職務に専念できるようにするためには,その職責に相応しい処遇を施すことが必要である。
 しかるに,地方公務員の給与については,国家公務員の給与に大きく影響を受けているのが実情であり,国家公務員獣医師については,医療職俸給表(一)は適用されていない。
 国は,公務員獣医師の職責の重要性を重く受け止め,率先して公務員獣医師の処遇改善を図るべきである。
 よって,国においては,医療職俸給表(一)を国家公務員獣医師に適用し,又はこれに準ずる国家公務員獣医師専門俸給表を策定するよう強く求める。

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「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の制定を求める意見書

 心身の健康は,国民一人ひとりの生活の基本をなすとともに,社会の活力と発展の基盤をなすものである。
 しかし,現在,我が国においては,年間自殺者数が3万人近くにも上り,また,引きこもりや虐待などが大きな社会問題となっているところ,その背景の多くには,こころの健康の問題があるとされている。
 内閣府の「平成25年版・障害者白書」によると,精神科の受診者数は国民の約40人に1人に相当する320万人を数え,年々増加する傾向にある。
 平成23年7月,厚生労働省は,重点的にその医療体制を整える必要があるとして医療法に基づき指定する疾病について,従来の,糖尿病,癌,脳卒中,心臓病の「4疾病」に加え,新たに「精神疾患」を指定し「5疾病」とした。
 また,世界保健機関(WHO)は,病気が命を奪い生活を害する程度を表す総合指標「障害調整生命年(DALY)」を政策における優先度を表す指標として提唱しており,これによると,先進諸国においては,命と生活に最も影響を及ぼすのは「精神疾患」であるとされている。
 欧米諸国においては,この指標に基づいて国民の健康についての政策が進められているが,翻って,我が国における精神保健・医療・福祉のサービスは,その重要度に相応しい政策がとられてきていない。
 即ち,我が国の精神保健医療政策は,重症化した精神疾患患者の入院医療が中心で,啓発や予防などの早期発見・早期治療の措置は十分にはとられてこなかったと言わざるを得ず,また,医療法においては,精神科の医師・看護師の配置基準が精神科特例により一般科に比べて低くなっていることから,重労働のため就労環境が悪く,慢性的な人手不足の状態にある。
 こころの健康の問題を克服するためには,これを国の重要課題と位置づけ,総合的・長期的な政策を推進する必要がある。
 よって,国においては,アウトリーチ医療及び救急医療の整備や精神科医療の特例廃止による一般医療化などを内容とする「精神医療改革」,学校における精神保健教育の充実や地域における「こころの健康推進チーム」の設置などを内容とする「精神保健改革」並びに家族や介護者を地域で支援する専門員制度の創設などを内容とする「家族支援」を柱とし,国民全てを対象とした総合的・長期的な政策を推進することを旨とした「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」を制定するよう強く求める。

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ウイルス性肝炎患者に対する医療費助成の拡充を求める意見書

 我が国においては,ウイルス性肝炎,特にB型・C型肝炎が,その患者数が合計350万人以上とされるほど蔓延しているが,これが国の責めに帰すべき事由によるものであることは,「肝炎対策基本法」,「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」及び「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」からも認められるところである。
 現在,ウイルス性肝炎患者に対する医療費助成は,肝炎治療特別促進事業として実施されているが,その対象となる医療については,B型・C型肝炎ウイルスの減少を目的とした抗ウイルス療法であるインターフェロン治療とB型肝炎の核酸アナログ製剤治療とに限定されている。このため,医療費助成の対象から外れている患者数は相当数にのぼり,特に,肝硬変・肝がん患者は,高額の医療費を負担せざるを得ないだけでなく,就労不能の方も多いなど,生活に困難をきたしているという状況にある。
 また,肝硬変を中心とする肝疾患については,身体障害者福祉法上の障害認定(障害者手帳)の対象とされてはいるものの,医学上の認定基準が極めて厳しいため,亡くなる直前でなければ認定されないという実態が報告されるなど,現在の制度は,肝炎患者に対する生活支援という実効性を発揮できていないとの指摘がなされているところである。
 更に,平成23年12月の「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」の制定時には,「とりわけ肝硬変及び肝がんの患者に対する医療費助成を含む支援の在り方について検討を進めること」との附帯決議がなされたものの,国においては,肝硬変・肝がん患者に対する医療費助成を含む生活支援について,新たな具体的措置を何ら講じていない。
 肝硬変・肝がんの患者については,毎日120人以上の方が亡くなっており,医療費助成を含む生活支援の実現は,一刻の猶予もない喫緊の課題である。
 よって,国においては,下記事項を実現するよう強く求める。

  1. ウイルス性肝硬変・肝がんに係る医療費助成制度を創設すること
  2. 身体障害者福祉法上の肝疾患に係る障害認定の基準を緩和し,患者の実態に応じた障害者認定制度にすること

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公務員獣医師の処遇改善等についての請願

 世界人口の急激な増加,大規模な都市開発や経済発展がもたらした森林伐採をはじめとする自然環境破壊や気象温暖化の進行,人と物の移動を容易にしたグローバル化に伴い,新型インフルエンザ,高病原性鳥インフルエンザ,狂犬病などの「新興・再興感染症」発生リスクの高まりが指摘されているところである。
 このような中,先年宮崎県で発生した口蹄疫,各地で頻発した高病原性鳥インフルエンザの流行は,感染制御を極めて困難とし,国家防疫によって終息はしたものの,地域全体に甚大な社会的・経済的被害をもたらした。このような悪性伝染病の侵入防止と発生時の迅速かつ必要十分な防疫措置の重要性が一般社会にも広く認知されたところである。
 一方,食品の大量消費の中で繰り返される腸管出血性大腸菌やノロウイルスなどの感染による食中毒事件,福島第一原発事故による農水産物の放射能汚染問題を受け,「食の安全と安心」を求める消費者の要求は一層高まってきている。
 このため,都道府県等の地方公共団体職員である獣医師は,家畜伝染病の予防・まん延防止,適切な獣医療の提供,動物医薬品の適正使用による畜産物の安全性確保や,バイオテクノロジーを活用した家畜の改良増殖等の畜産・家畜衛生行政,そして一般市民生活に直接的に関わると畜・食鳥検査,食品衛生,狂犬病予防,動物愛護等の公衆衛生行政,さらには自然環境,廃棄物対策等の環境行政の幅広い分野において,高い専門性を駆使して職務を遂行し,地方行政の推進に奮闘している。
 一方,現在,これらの業務に従事する地方公務員獣医師のほとんどは医師・歯科医師と同様6年間の教育課程を修めた免許取得者であるが,その給与は医師の下でその処方や指示により医療に従事する職種と同じ医療職給料表(二)が適用されており,高度な自己判断に基づき業務を遂行しなければならない専門職としてふさわしい処遇とは到底言えない状況にある。そして,このことが,全国的に公務員獣医師が採用困難職種となっている最大の要因と言わざるを得ない。
 本県は全国有数の畜産県であることから,家畜伝染病の予防や防疫活動において中心的役割を担う獣医師の職責は非常に大きく,また,と畜検査及び食鳥検査を通じた食肉の安全・安心の確保は獣医師のみが遂行できる業務である。
 茨城県獣医師会は,公務員獣医師がより一層責任と誇りを持って職務に専念できるよう,下記の措置の実施を強く求めるものである。

  1. 本県公務員獣医師の処遇を改善し,人材確保を推進するため,初任給調整手当の創設を行うとともに,給料の調整額を確保すること。
  2. 国に対して,医療職給料表(一)の公務員獣医師への適用又はこれに準じる獣医師専門給料表の作成を要請すること。

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規制改革会議 農業ワーキンググループ「農業改革に関する意見」に関する請願

 5月14日に,規制改革会議農業ワーキンググループの「農業改革に関する意見」が公表された。これは農業の生産現場を全く踏まえておらず極めて問題の多い内容となっている。
 JA・連合会は,定款等による自治法規を定め,総会等を通じて組合員・会員の意思を反映し,自主・自立で運営されている。こうした組合員・会員の意思による組織運営は,協同組合の根幹である。
 そのようなことを無視し,全農の株式会社化や信用・共済事業の代理業化など,法人格・事業の変更・廃止を一方的に強制することは,民間組織の自治に過大に関与することであり,認められるべきものではない。
 組合の健全性確保や系統組織の相互調整の役割を発揮している中央会制度の廃止,正組合員の事業利用にも貢献している准組合員の事業利用の制限等は,利用者の相互扶助組織である協同組合の実態を無視したものである。
 協同組合の理念や実態を無視した改革や,事業利用者である組合員の意思を無視した改革は,現場に混乱を生むだけで,組合員に対する事業サービスに悪影響を与え,農業者の所得向上,食料安定供給,地域社会・生活の維持に大きな支障をきたす。
 また,農業生産法人の要件緩和により,株式会社の農地所有を認めることや農業参入を緩和することは,農外への農地の転用,投機目的の農地取得を促進し地域農業の健全な発展を阻害する恐れがある。
 農業者・地域のための農業・農協改革は,農業の構造問題等に対応しつつ,組合員の意思による組合の自治(自己改革)を基本に,今後も継続して進めて参る所存である。
ついては,私どもの意をお汲み取りいただき,貴職におかれては,下記事項について国会及び関係省庁に意見書を提出するよう請願する。

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「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の制定を求める意見書の提出に関する請願

 心身の健康は,国民一人ひとりの基本的な権利であり,社会の活力と発展の基盤をなすものである。しかし,現在の我が国は,年間自殺者が3万人近くにも上り,引きこもり・虐待など社会問題の多くの背景には心の健康の問題がある。「平成25年版・障害者白書」によると,精神科受診者は323万人で,これは国民の40人に1人に相当し,毎年増加傾向が続いている。茨城県においても,自立支援医療における精神通院医療の受給者は31,578人(平成25年3月現在)で,平成18年比155%に達している。
 平成23年7月に厚生労働省は,これまで4大疾病と位置づけて重点的に対策に取り組んできた糖尿病(237万人),癌(157万人),脳卒中,心臓病に精神疾患を加え,5大疾病とする方針を決めた。
 世界保健機構(WHO)は,病気が命を奪い生活を障害する程度を表す総合指標「障害調整生命年(DALY)」を開発し,政策における優先度を表す指標として提唱しており,先進国においては命と生活に最も影響するのは精神疾患であることが明らかになった。欧米ではこの指標に基づいて国民の健康についての施策が進められている。
 しかし,日本における精神保健・医療・福祉のサービスは,重要度にふさわしい施策がとられてきておらず,こころの健康についての国民ニーズに応えられるものではない。
 我が国の精神保健医療政策は,重症化した精神疾患患者の入院医療が中心であり,啓発や予防などの早期発見・早期治療は十分にはなされてこなかったといえる。
 又,医療法において,精神科の医師・看護師の配置基準は精神科特例があるため一般科に比べて低く,重労働から就労環境が悪く,慢性的な人手不足の状態が続いている。
 こころの健康危機を克服し,安心して生活ができる社会,活力ある社会を実現するために,こころの健康を国の重要施策と位置づけ,総合的で長期的な施策を実行する必要がある。
 アウトリーチ医療及び救急医療の整備や精神科医療の特例廃止による一般医療化等の精神医療改革,学校における精神保健教育の充実や地域での「こころの健康推進チーム」の設置等の精神保健改革,家族や介護者を地域で支援する専門員制度の創設等の家族支援を軸とし,国民全てを対象とした総合的,長期的な政策を保障する「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の制定を強く要望する。

【請願事項】

 地方自治法第99条の規定に基づき「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の制定を求める意見書を国会及び政府関係機関に提出すること。

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県内の動物愛護の進展に関する請願

 NPO法人「地球生物会議ALIVE」による行政アンケートのまとめによると,2012年度の茨城県の犬の殺処分頭数が都道府県別で全国最多であり,また8年連続で全国最多となったことが2014年3月24日付の茨城新聞にて報道された。
 以前より,このような不名誉な状況を改善すべく,県民ボランティアの方々が自費を投じて,保護活動や啓発活動を行うなど,貴いご尽力をされているが,一方では負担の重さに苦しんでいる事例も多いのが実情である。
 不幸にして殺処分される犬・猫の多くは,放し飼いなどの飼い主の不適正な飼い方に起因するものと思われる。飼い主のモラル,マナーの改善を訴えるためには,基礎自治体である市町村の役割が非常に大きく,我々市議会議員も,市町村の啓発活動のさらなる強化や市町村独自の取組みの促進を強く働きかけていかなければならないと考えているところである。
 県では,昨年度,猫の屋内飼養,災害時の備えや多頭飼養届出制度への猫の追加など,県動物の愛護及び管理に関する条例を改正し,さらには,今年度より茨城県動物指導センターで,地域猫活動等に限るなど一定の条件のもとで,飼い主のいない猫に対する不妊・去勢手術を実施するなど,その新たな取り組みについては高く評価をする。
 しかしながら,更に県内の動物愛護の進展,殺処分頭数の減少を効果的なものにするためには,動物指導センターでの不妊・去勢手術の実施体制の強化をはじめ,動物ふれあい教室など次世代への教育,条例改正をより実効性のあるものにしていくための啓発活動,動物愛護推進員や県民ボランティア等との連携強化など,様々な施策を拡充していく必要があり,動物指導センターのより一層の充実を図ることが必要と考えている。
 以上の趣旨から,地方自治法第124条の規定により以下請願する。

【請願事項】

  1. 県内の動物愛護の進展,殺処分頭数の減少のため,茨城県動物指導センターによる不妊・去勢手術の効果的な実施や実施頭数の拡大などを図ること。
  2. 犬・猫などの適正飼養などに関する啓発活動を市町村と連携の上,より進展させること

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ウイルス性肝炎患者に対する医療費助成の拡充に関する請願

【請願趣旨】

(1)現在,わが国におけるウイルス性肝炎患者は,350万人以上いると推定されているところ,国はウイルス性肝炎患者(肝硬変・肝がん患者を含む)に対するインターフェロン,核酸アナログ製剤を中心とする一定の抗ウイルス療法について,国と自治体の予算に基づく医療費助成を実施している。ウイルス性肝炎患者に対してかかる特別な措置がとられるにあたっては,平成21年制定の肝炎対策基本法の前文にあるとおり,国内最大の感染症であるB型肝炎及びC型肝炎にかかるウイルスへの感染については,国の責めに帰すべき事由によりもたらされ,またその原因が解明されていなかったことによりもたらされたものがあり,C型肝炎の薬害肝炎事件につき国が責任を認め,B型肝炎の予防接種禍事件について最終の司法判断により国の責任が確定したことが周知の歴史的前提である。
(2)しかしながら,国が実施している現行の医療費助成の対象は,上記のとおりインターフェロン治療,核酸アナログ製剤治療など一定の抗ウイルス療法に限定されており,これら治療法に該当しない肝硬変・肝がん患者の入院・手術費用等はきわめて高額にのぼるにもかかわらず,助成の対象外となっている。
 そのため,より重篤な病態に陥り,就業や生活に支障をきたし,精神的・肉体的に苦しみつつ経済的・社会的にもひっ迫している肝硬変・肝がん患者に対しては,いっそうの行政的・社会的支援が求められるところであり,国の「平成26年度予算要求にかかる肝炎対策推進協議会意見書」でも,厚生労働大臣に対し予算として必要な措置として,「肝硬変・肝がん患者を含むすべての肝炎医療にかかる医療費助成制度を創設する」ことがあげられている。
(3)ところで,B型肝炎訴訟については,平成23年の国と原告団との基本合意締結,B型肝炎特別措置法の制定にあたって,国は「予防接種時の注射器打ち回しによるB型肝炎ウイルス感染被害者は,40数万人に及ぶ」と繰り返し言明してきた。しかしながら,基本合意から2年以上を経た今日においても,B型肝炎訴訟の原告として給付金の支給対象たりうる地位にあるものは1万人程度にすぎず,大多数の被害者は救済の入り口にさえ立っていないのが現状である。被害者数と原告数とのこうした齟齬が生まれる最大の要因は,長年にわたって国が注射器打ち回しの予防接種禍の実態を放置し,平成元年のB型肝炎訴訟の最初の提起後も,予防接種禍の実態調査等を怠ったことで,時間経過により母親が死亡するなど予防接種禍を立証する医学的手段を失った被害者が膨大に存在することである。
(4)他方で,C型肝炎についても時間の経過に伴うカルテ廃棄等の理由により,薬害であることの被害立証が困難となった多数の被害者が存在することは容易に推定できる。また,一定時期までは感染を回避することが簡単でなかったとはいえ,輸血によってB型・C型肝炎ウイルスに感染した者,あるいは因果関係の立証がB型肝炎に比べて医学的に困難ではあるが,客観的には予防接種その他の注射時に注射器の打ち回しによりC型肝炎ウイルスに感染した者など,わが国には医療行為に関連してウイルス性肝炎に感染した多数の肝炎患者が存在し,「国民病」としてのウイルス性肝炎は,また全体として「医原病」としての性格を濃厚に帯びている。そのため,近年では全てのウイルス性肝炎患者に対し,より厚い行政的対応を求める国民の声が広がっている。
(5)このように,肝炎対策基本法制定後の事態の推移は,わが国のウイルス性肝炎が「国民病」かつ「医原病」としての本質をもつことをますます明らかにし,とりわけ国の責任が明確化され,国が多数存在することを認めているB型肝炎の予防接種禍被害者ですら,その多くが立証手段を失って司法救済の対象とならないという厚労行政の矛盾がいっそう鮮明となっている。
 ここにいたっては,肝炎対策基本法前文の基本精神に立ち返りつつ,法制定時よりいっそう明らかとなった「国民病」「医原病」としてのウイルス性肝炎の特異性に思いをいたし,厚労行政を担う国の責任において,一般疾病対策の水準にとどまらない患者支援策をすすめるべきである。とりわけ,高額の医療費負担と就労不能等の生活困難に直面しているウイルス性肝硬変・肝がん患者については,毎日120人以上の方が亡くなっている深刻な実態に鑑み,現在は助成対象とはなっていない医療費にも広く助成をおよぼすよう,早急に制度の拡充・充実を図るべきである。
 また,肝硬変患者に対する生活支援制度である障害年金については,基準の明確化を図りつつ適正な認定範囲の実現に配慮した基準見直し作業が進んでいる。しかし,同じく肝硬変患者に対する生活支援の制度である身体障害者福祉法上の肝疾患の障害認定制度(障害者手帳)は,医学上の認定基準がきわめて厳しいため,亡くなる直前でなければ認定されないといった実態が報告されるなど,現在の制度は,肝炎患者に対する生活支援の実効性を発揮していないとの指摘が現場の医師らからも多くなされているところである。そこで,障害者手帳の認定基準についても,早急に患者の実態に配慮した基準の緩和・見直しを行うべきである。
 以上より,貴議会において,ウイルス性肝炎患者に対する医療費の助成について,衆参両議院並びに政府(内閣総理大臣・厚生労働大臣)に対し,以下の事項を内容とする意見書を提出していただくよう請願する。

  1. ウイルス性肝硬変・肝がんに係る医療費助成制度を創設すること
  2. 身体障害者福祉法上の肝疾患に係る障害認定の基準を緩和し,患者の実態に応じた障害者認定制度にすること

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