○茨城県文化振興条例
平成27年12月18日
茨城県条例第63号
茨城県文化振興条例を公布する。
茨城県文化振興条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 文化振興計画(第8条)
第3章 文化の振興に関する基本的施策
第1節 人材の育成等(第9条―第11条)
第2節 文化の振興(第12条―第16条)
第3節 文化的資産の活用等(第17条―第19条)
第4節 文化活動の充実(第20条―第22条)
第5節 文化活動の支援体制の充実等(第23条―第28条)
付則
茨城県は,優れた自然景観を持つ変化に富んだ海岸線,美しい渓谷や滝,万葉集に歌われ紫峰の雅称を持つ筑波山や明媚な風光を今に伝える霞ケ浦,広大な平野など豊かな自然環境を有する素晴らしい郷土である。
この豊かな自然環境や穏やかな気候風土を背景に,古来文化活動が活発で,貴重な文化財や地域に根ざした伝統文化が脈々と受け継がれている。また,今日の本県の発展に大きく貢献した多様な分野の先人たちの精神は,県内の様々な活動に引き継がれ,これまで多くの県民の力によって多彩な文化を創造し,育んできた。
その多彩な文化は,県民の日々の生活に深く根ざし,長い歴史をかけて積み重ねられ,伝えられてきた英知の結晶であり,郷士への誇りと愛着を深める県民共通の財産である。
また,私たちの創造力を高め,個性を形づくるものであるとともに,人々の心のつながりを育み,生活を豊かにする社会的な活力の源泉や経済発展の基盤となるなど,大きな力を有している。
人々の価値観の多様化が進む中,東日本大震災を経験し,人と人との絆の大切さが再び強く意識され,物の豊かさに加えて心の豊かさを享受し,潤いに満ちた生活を実現するためには,こうした文化の力を活用することが不可欠である。
今,私たちは,文化の力を再認識し,本県の文化の魅力を国内外に積極的に発信するとともに,地域の発展に活用していかなければならないと考える。
ここに,私たちは,県民一人ひとりが主役となって,先人が創り上げた本県の文化を次世代に継承するとともに,多様な文化との交流などにより,心豊かな本県の文化を創造し,発展させることを決意し,この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は,文化の振興に関し,基本理念を定め,県の責務並びに県民,市町村,文化に関する活動(以下「文化活動」という。)を行う団体(以下「文化団体」という。)及び事業者の役割を明らかにするとともに,文化の振興に関する施策(以下「文化振興施策」という。)の基本となる事項を定めることにより,文化振興施策の総合的な推進を図り,もって心豊かな県民生活及びいつまでも活力に満ちあふれた地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第2条 文化の振興に当たっては,県民の自主性及び創造性が十分に尊重されるとともに,その能力が十分に発揮されるよう配慮されなければならない。
2 文化の振興に当たっては,文化を創造し,享受することが人々の生まれながらの権利であることに鑑み,県民が等しく文化を鑑賞し,これに参加し,又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない。
3 文化の振興に当たっては,文化の多様性が尊重され,その保護及び発展が図られなければならない。
4 文化の振興に当たっては,豊かな風土及び歴史に培われてきた地域の特色ある文化を県民が理解し大切に育み,次世代に継承されるよう配慮されなければならない。
5 文化の振興に当たっては,文化の継承及び発展に資する人材の育成が図られなければならない。
6 文化の振興に当たっては,県,県民,市町村,文化団体,事業者その他関係機関の相互の連携及び協力の下に,これが推進されるよう配慮されなければならない。
(県の責務)
第3条 県は,前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり,文化振興施策を総合的に策定し,実施する責務を有する。
2 県は,前項の規定による文化振興施策の策定及び実施に当たっては,次に掲げる事項について配慮するものとする。
(1) 広く県民の意見が反映されるようにすること。
(2) 広域的な視点に立ち,県民,市町村,文化団体及び事業者では実施が困難なものに取り組むこと。
3 県は,行政の各分野における施策の推進に当たっては,文化の振興に資するよう努めるものとする。
4 県は,地域における文化の振興に市町村が果たす役割の重要性に鑑み,市町村との連携並びに市町村が行う文化振興施策についての必要な協力及び助言を行うよう努めるとともに,市町村相互の連携が図られるよう努めるものとする。
(県民の役割)
第4条 県民は,基本理念にのっとり,文化についての理解と関心を深め,自主的かつ主体的な文化活動を通じて,文化を振興する役割を果たすよう努めるものとする。
(市町村の役割)
第5条 市町村は,基本理念にのっとり,自主的かつ主体的に,その地域の特性に応じた文化振興施策を策定し,実施するよう努めるものとする。
(文化団体の役割)
第6条 文化団体は,基本理念にのっとり,それぞれの文化活動を通じて,自主的かつ主体的に文化を振興する役割を果たすよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第7条 事業者は,基本理念にのっとり,文化についての理解と関心を深め,その事業活動や自主的かつ主体的な文化活動への支援を通じて,文化を振興する役割を果たすよう努めるものとする。
第2章 文化振興計画
第8条 知事は,文化振興施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,文化の振興に関する計画(以下「文化振興計画」という。)を定めるものとする。
2 文化振興計画には,次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 総合的かつ長期的に講ずべき文化振興施策の大綱
(2) 前号に掲げるもののほか,文化振興施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 知事は,文化振興計画を定めるに当たっては,あらかじめ,茨城県文化審議会の意見を聴かなければならない。
4 知事は,文化振興計画を定めたときは,遅滞なくこれを公表しなければならない。
5 前2項の規定は,文化振興計画の変更について準用する。
第3章 文化の振興に関する基本的施策
第1節 人材の育成等
(文化の担い手の育成及び確保)
第9条 県は,文化に関する創造的活動を行う者,伝統文化を継承する者,文化財の保存及び活用に関する専門的知識及び技能を有する者,文化活動の企画を行う者,文化施設(劇場,美術館,博物館,図書館その他の文化施設をいう。以下同じ。)の管理及び運営を行う者その他の文化を担う者(以下「文化の担い手」という。)の育成及び確保に必要な施策を講ずるものとする。
(次世代を担う子どもたちの育成)
第10条 県は,次世代を担う子どもたちが,豊かな創造性及び感性を育むことができるようにするため,優れた文化を鑑賞する機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は,文化施設における教育普及活動を通じ,次世代を担う子どもたちの芸術に対する感性並びに郷土の歴史及び文化に対する理解を育むために必要な施策を講ずるものとする。
(文化に関する教育の充実)
第11条 県は,学校における文化に関する教育の充実を図るため,文化の担い手及び文化団体の協力による体験学習その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は,学校における文化に関する教育の充実を図るため,文化活動の指導を行う教員の資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。
第2節 文化の振興
(芸術の振興)
第12条 県は,文学,音楽,演劇,舞踊,美術,書道,写真,メディア芸術(映画,漫画,アニメーション及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術をいう。)その他の芸術の振興を図るため,これらに関する活動の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
(伝統文化の継承及び発展)
第13条 県は,歴史及び風土に根ざした伝統的な行事,民俗芸能(地域の人々によって行われる民俗的な芸能をいう。),伝統工芸(地域の伝統的な技術又は技法等を用いる工芸をいう。)その他の地域固有の伝統文化(以下「地域固有の伝統文化」という。)及び茶道,華道,伝統芸能(雅楽,能楽,文楽,歌舞伎その他の我が国古来の伝統的な芸能をいう。)その他の我が国古来の伝統文化(地域固有の伝統文化を除く。)の継承及び発展に必要な施策を講ずるものとする。
(生活文化等の振興)
第14条 県は,生活文化(衣服及び住居に係る生活様式その他の生活に係る文化をいう。),食文化,国民娯楽(囲碁,将棋その他の国民的娯楽をいう。)及び講談,落語,浪曲,漫談,漫才,歌唱その他の芸能(民俗芸能及び伝統芸能を除く。)の振興を図るため,これらに関する活動の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
(文化を活用した地域づくり)
第15条 県は,文化の振興が地域の発展に大きな役割を果たすことに鑑み,文化を活用した地域づくりに必要な施策を講ずるものとする。
(文化交流の推進)
第16条 県は,文化に関する地域間の交流及び国際交流を推進するとともに,本県の文化に関する情報を国内外に発信するよう努めるものとする。
第3節 文化的資産の活用等
(文化的資産の活用)
第17条 県は,文化的資産が,心の豊かさを育むことに加え,産業振興及び地域振興にも活用されるよう,必要な施策を講ずるものとする。
(文化財の保存等)
第18条 県は,有形及び無形の文化財並びにその保存技術(以下「文化財等」という。)の保存及び活用を図るため,文化財等に関し必要な調査を実施し,及び修復,公開等の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は,郷土についての歴史的価値がある文書及び記録の保存及び活用を図るため,必要な施策を講ずるものとする。
(公共の建物等の建築に当たっての配慮)
第19条 県は,公共の建物等の建築に当たっては,自然景観並びに地域の歴史的及び文化的特性に配慮するものとする。
第4節 文化活動の充実
(県民の文化活動の充実)
第20条 県は,県民が行う文化活動の充実を図るため,広く県民が文化を鑑賞し,これに参加し,又はこれを創造する機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(高齢者,障害者等の文化活動の充実)
第21条 県は,高齢者,障害者等が行う文化活動の充実を図るため,これらの者が文化に親しみ,文化活動を楽しむための環境の整備その他の必要な施策(前条に規定するものを除く。)を講ずるものとする。
(青少年の文化活動の充実)
第22条 県は,青少年が行う文化活動の充実を図るため,その文化活動の支援その他の必要な施策(第20条に規定するものを除く。)を講ずるものとする。
第5節 文化活動の支援体制の充実等
(文化情報の収集及び提供)
第23条 県は,地域の文化に関する情報の収集及び提供に努めるものとする。
(推進体制の整備)
第24条 県は,県民,市町村,文化団体,事業者,大学その他の教育研究機関その他関係機関と連携するとともに,文化振興施策の総合的な推進を図るために必要な体制の整備に努めるものとする。
(文化施設の機能の充実)
第25条 県は,自らが設置する文化施設の文化活動の場としての機能の充実が図られるよう努めるものとする。
(地域における文化活動の支援)
第26条 県は,地域における文化活動が自主的に行われ,継続し,発展するために必要な施策を講ずるものとする。
2 県は,個人又は民間の団体が行う文化活動に対するボランティア活動,メセナ活動(文化活動を支援する活動であって社会貢献活動として行われるものをいう。)その他の文化活動を支援する活動の促進が図られるよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第27条 県は,文化振興施策を推進するため,必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(顕彰)
第28条 県は,文化活動で顕著な成果を収めた者及び文化の振興に寄与した者を顕彰するよう努めるものとする。
付則
(施行期日)
1 この条例は,公布の日から施行する。
(茨城県行政組織条例の一部改正)
2 茨城県行政組織条例(昭和38年茨城県条例第45号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略