○いばらきの豊かな緑を守り育て適正に管理するための条例

令和4年11月21日

茨城県条例第44号

いばらきの豊かな緑を守り育て適正に管理するための条例を公布する。

いばらきの豊かな緑を守り育て適正に管理するための条例

茨城県は深い緑と豊かな水に恵まれた土地であり、私たち県民は多様な自然の恩恵を享受して暮らしてきた。

緑豊かな海岸の松林は、災害から人を守り、白砂青松の美しい海岸線を作り出し、貴重なブナ林群をはじめとする森は、太古の昔から水を蓄え、海へと命をつなぐ役割を担っている。また、私たちの身近にある緑は、様々な形で私たちの生活に、潤いを与えている。

先人たちは、樹木を植え、守り育て、人と緑の歴史を紡いできた。私たちは、その受け継いだかけがえのない緑を県民共有の財産として、次代につないでいかなければならない。

しかしながら、現在、経済活動に伴う自然環境の破壊や人と緑の関わりの希薄化が進む中で、生態系が変化したり、地球規模の気候変動による自然災害が多発するなど、緑と人との関係が崩壊する危機的な状況にある。

今こそ私たちは、森林や樹木の多面にわたる恩恵を再認識し、これらの緑を大切に守り育て、これからも永続的に緑との良好な関係を築いていくことを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、森林や樹木が、県土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、地球温暖化の防止、災害の防止、良好な景観の形成、公衆の保健その他の県民が健康で文化的な生活を確保する上で欠くことのできない多面にわたる公益的機能(以下「公益的機能」という。)を有していることに鑑み、その持続的な発揮及び活用を図るための施策の基本的な事項を定め、もって、県土を強靭化し、県民の暮らしを守り、潤いのある県民生活を実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 緑 森林又は樹木のうち、公益的機能を有するものをいう。

(2) 所有者等 権原に基づき所有し、又は管理することができる者をいう。

(3) 海岸防災林 海岸及びその近傍の土地に存する松その他の樹種からなる森林であって、飛砂、風害、潮害その他の災害を防止する機能を有するものをいう。

(基本理念)

第3条 緑の公益的機能の持続的な発揮及び活用を図るための取組は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。

(1) 緑の健全性を確保するための適正な整備又は管理(以下「緑の整備等」という。)に関する方針及び基準を定め、緑の整備等を持続的かつ計画的に推進すること。

(2) 河川、海岸その他の公共空地における緑の整備等を推進するとともに、その持続的な管理体制を構築すること。

(3) 森林の開発その他緑の存する土地の利用に当たっては、緑の公益的機能が持続的に発揮されるよう、適正な利用が図られること。

(県の責務)

第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、緑の整備等に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、緑の整備等に関する施策の策定及び実施に当たっては、国、市町村、県民、緑の所有者等、事業者及び民間団体との適切な役割分担の下、相互に連携し、及び協力するよう努めるものとする。

(市町村の役割)

第5条 市町村は、基本理念にのっとり、国、県、他の市町村、住民、緑の所有者等及び事業者と連携し、及び協力して、緑の整備等に関する施策の策定及び実施に努めるものとする。

(緑の所有者等の役割)

第6条 緑の所有者等は、基本理念にのっとり、緑の公益的機能の重要性を認識し、その緑の整備等を図るとともに、県及び市町村が実施する緑の整備等に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(県民の役割)

第7条 県民は、基本理念にのっとり、緑の公益的機能による恩恵を享受していることを深く認識し、緑の整備等に関する活動に積極的に参加するとともに、県及び市町村が実施する緑の整備等に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第8条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、緑の公益的機能の確保に十分配慮するとともに、県及び市町村が実施する緑の整備等に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(緑の整備等の推進)

第9条 県は、緑の公益的機能を持続的に発揮させ、及び活用していくため、計画的な植栽、せん定、伐採に対する支援、技術的助言その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、森林における開発行為に係る許可等をするに当たっては、森林の公益的機能が維持されるよう配慮するものとする。

3 県民、事業者及び緑の所有者等は、森林における開発行為を行うに当たっては、その開発に関する行政指導指針に従って適正に行うとともに、当該森林の存する地域住民その他の関係者の理解が得られるよう努めるものとする。

(目指すべき緑への誘導等)

第10条 県は、森林環境の維持向上のため、森林の植生状態、立地条件等を踏まえ、森林を適正な人工林又は天然林に誘導するための技術の指導その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、樹齢が高い樹木が群生する天然林が、多様な動植物の生息地又は生育地としての機能を有しているとともに、地域住民の生活に密接な関わりのあるものであることに鑑み、関係法令に定めるもののほか、当該天然林を保全するために必要な施策を講ずるものとする。

(災害に強い緑づくり)

第11条 県は、緑の公益的機能のうち、土砂災害、洪水その他災害の防止機能が高度に発揮され、又は樹木により生ずべき損害を予防するため、治山対策の推進、造林、保育、伐採その他の施業等に関する助言、支援その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、前項の施策を講ずるに当たっては、その土地に適した樹木を育成し、森林が多様な樹種又は林齢から構成されるよう緑の所有者等に対して必要な助言又は支援を行うとともに、間伐その他の対策を計画的に推進するものとする。

3 県は、土砂の流出又は崩壊その他災害の発生を防止し、又はこれらの災害を軽減するため、関係機関が保有する災害に関する情報の共有、森林における開発行為後の不適正な土地利用の抑止その他の必要な施策を講ずるものとする。

(海岸の緑の整備等)

第12条 県は、松林等の海岸防災林の積極的な整備に必要な施策を講ずるものとする。

2 海岸防災林に係る樹木の所有者等は、県が行う施策に協力するものとする。

3 前項の所有者等は、特に松くい虫(松の枯死の原因となる線虫類を運ぶ虫をいう。)が付着し、又は付着しているおそれのある樹木(枯死している松に限る。)が発生したときは、速やかに伐倒駆除を行うよう努めるものとする。

4 県は、第2項の所有者等に対し、病害虫の防除や被害を受けた海岸防災林への植栽に関し、必要な支援を行うものとする。

5 県は、海岸防災林に係る病害虫の防除を効果的に促進するため、その方法に関する調査及び研究を推進し、その成果の普及に努めるものとする。

(河川の樹木の適正な管理)

第13条 県は、その管理に属する河川について、災害の防止並びに河川環境の整備及び保全のため、その河川区域(河川法(昭和39年法律第167号)第6条第1項に規定する河川区域をいう。次項において同じ。)の樹木を適正に管理するものとする。

2 河川区域の樹木の所有者等は、その樹木を適正に管理するよう努めるものとする。

(道路等の樹木の適正な管理)

第14条 県は、その管理に属する道路(道路交通法(昭和35年法律第105号)第2条第1項第2号の道路をいう。次項において同じ。)について、道路交通の安全確保及び円滑化、環境保全、景観創出のため、その道路の区域の樹木を計画的かつ適正に管理するものとする。

2 道路に接続する土地の樹木の所有者等は、道路交通の安全確保及び円滑化、環境の保全、景観の創出のため、その樹木の適正な管理に努めるものとする。

(創出した緑の適正な管理)

第15条 茨城県地球環境保全行動条例(平成7年茨城県条例第7号)の規定により緑化を実施する者は、その創出した緑の適正な管理に努めるものとする。

(公園の樹木の適正な管理)

第16条 県は、その設置する公園の樹木について、計画的かつ適正な管理に努めるものとする。

(公共工事等における緑の保全)

第17条 県は、土地の形状の変更、工作物の新設等の事業を行うに当たっては、環境への負荷の少ない工法を採用すること等により、緑の公益的機能が健全な状態に保全されるよう配慮するものとする。

(緑の所有者等の意欲の高揚等)

第18条 県は、緑の所有者等の緑の整備等に対する意欲の高揚を図るため、緑の整備等に関する情報の提供、技術の指導その他の必要な施策を講ずるものとする。

(県民の理解の促進)

第19条 県は、緑の整備等についての県民の理解及び関心を深めるため、情報の提供、緑を活用した行事の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。

(民間団体等の自発的な活動の促進)

第20条 県は、県民、事業者又は民間団体が自発的に行う緑の整備等の活動を促進するため、情報の提供、技術の指導、指導者の養成その他の必要な施策を講ずるものとする。

(人材の育成及び確保)

第21条 県は、この条例に定める施策を推進するため、林業技術者、造園技術者、樹木医その他の緑に関する専門的な人材の確保及び育成を図るために必要な施策を講ずるものとする。

(緑の整備等に関する計画)

第22条 県は、緑の整備等に関する施策を計画的かつ効果的に推進するため、必要な計画を策定するものとする。

2 県は、前項の計画を定めようとするときは、あらかじめ、県民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

3 県は、第1項の計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

4 前2項の規定は、第1項の計画の変更(軽微な変更を除く。)について準用する。

(市町村への支援)

第23条 県は、市町村が行う緑の整備等に関する施策に関し、情報の提供その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

(年次報告)

第24条 知事は、毎年度、緑の整備等に関して講じた施策の実施状況及び成果を取りまとめ、議会に対し報告するとともに、これを公表するものとする。

(令5条例34・追加)

(推進体制の整備)

第25条 県は、この条例に基づく緑の整備等に関する施策を継続的かつ効果的に推進するため、当該施策に係る体制を整備するよう努めるものとする。

(令5条例34・旧第24条繰下)

(財政上の措置)

第26条 県は、この条例に基づく緑の整備等に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(令5条例34・旧第25条繰下)

この条例は、公布の日から施行する。

(令和5年条例第34号)

この条例は、公布の日から施行する。

いばらきの豊かな緑を守り育て適正に管理するための条例

令和4年11月21日 条例第44号

(令和5年9月29日施行)