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更新日:2018年3月23日
畜産センター本所
肉用牛研究所
養豚研究所
期間・区分
平成17~21年度,県単
背景・目的
クローン技術をすみやかに畜産分野に応用できるのが育種改良への利用である。そこで,牛では,種雄牛の能力検定に体細胞クローン牛を活用する検定方法の有効性を確認し,その確率を図る。豚では,系統豚等の優良な遺伝資源をクローン技術で保存しておくことが可能か実証する。
方法
牛では,種雄牛候補「明安の2」の体細胞を用いて生産したクローン牛について肥育試験を実施し,発育の正常性と産肉能力について種雄牛候補の後代検定牛の成績と比較した。豚では,耳由来線維芽細胞をドナー細胞としてクローン胚を作出し,クローン豚を作出した。クローン豚は育成後,交配し第2世代および第3世代を作出し,それぞれの産肉能力を比較することでクローンの産子がドナーと同等の能力を持っているか検討した。
成果・評価
牛では,作出された体細胞クローン牛の発育は正常範囲内であった。肥育してと畜した際,主要な臓器について病理組織学的検査を実施したが異常所見は認められなかった。またクローン牛は後代検定牛と同等の産肉能力を有しており,枝肉の一般成分およびアミノ酸比率も通常の牛肉とほぼ変わらなかったことから,クローン検定は有効な検定方法と示唆された。
豚では,ランドレース種のクローン豚を用いて体重の推移を比較したところ,正常範囲を逸脱した産子はなく,正常に発育した。また,産肉能力検定成績を同年度に実施したランドレース種の検定成績と比較したところ,主要9項目においてクローンA由来では3項目,クローンB由来では1項目について差が認められたものの,正常範囲を逸脱する産子はなかった。また,第2世代についても同等の産肉成績を示したことから,クローン豚の後代産子は正常な発育能力および産肉能力を有していることが示唆され,クローン技術が遺伝資源の保存に有効であることが認められた。
期間,区分
平成20~23年度,県単
背景・目的
受胎率向上は生産現場から求められている重要なニーズの一つである。近年,妊娠認識メカニズムを増強する物質としてインターフェロンタウ(以下,IFN-τ)が注目され,IFN-τを分泌する栄養膜小胞と受精卵を一緒に移植すると受胎率が向上する傾向が認められている。IFN-τは単為発生卵からも産生されているため,単為発生卵からのIFN-τ産生量や移植による受胎率向上効果を調査することによって,牛の繁殖成績の改善や受胎における繁殖生理機構などの解明を進め,総合的な受胎率向上技術を確立する。
方法
単為発生卵を効率的に作出する方法を検討し,単為発生卵が産生するIFN-τ量を測定した。今後は,単為発生卵を受精卵移植の際に一緒に移植し,受胎率向上効果を調査する。さらに,通常の人工授精の際に同様の単為発生卵移植を行い,受胎率を調査する。
成果・評価
効率的な牛の単為発生卵の作出方法を検討するためエタノール,Caイオノフォア,電気パルスとCaイオノフォア,6-ジメチルアミノプリン(以下,6-DMAP)の4方法について調査を行った。卵割率,胚盤胞発生率,Aグレード胚発生率等についてはすべて6-DMAPによる処理方法が最も成績が良い傾向が認められたが,卵割率以外の成績では6-DMAPとCaイオノフォアとの間に有意差は認められなかった。したがって,体外受精胚との共移植試験などで利用する単為発生胚は6-DMAPによる方法で作成するのが効率がよいと考えられる。今後は,作出した単為発生卵の共移植の効果を検証する。
期間・区分
平成19~21年度,国補
背景・目的
動植物細胞の保存法は,耐凍剤を利用した凍結法が広く用いられている。しかし,細胞の大きな卵子や,バイオプシーなどの体外操作を受けた胚の凍結保存では生存性が十分高くない。近年,極めて冷却速度が速く,生存性の高い低温保存法であるガラス化法が注目されている。そこで,ガラス化法の改良手法であるアミノプレートを用いた超低温保存法を検討し,より生存性の高い保存法を確立する。
方法
畜産センターおよび県内農家飼養牛から受精卵を採取し,凍結方法およびガラス化超低温保存および加温融解法について,生存性の高い手法を検討した。
成果・評価
畜産センターおよび県内農家飼養牛から受精卵を採取し,輸送培養,凍結試験を実施した。ガラス化保存後の生存率は,体内受精胚で95%と従来法の85%より高く,体外受精胚では89%で従来法の78%より高かった。性判別などのバイオプシーを受けた体外操作胚では89%で従来法の55%より高かった。また,アルミプレートガラス化法で超低温保存した受精卵を保存した後加温融解し移植したところ,正常な子牛生産に成功した。これらのことから,アルミプレートガラス化法が生存性の高い超低温保存法であることが明らかとなり,受精卵や卵子を含む動物細胞の超低温保存研究の発展にも繋がると思われる。
期間・区分
平成2年度~,県単
背景・目的
黒毛和種の受精卵移植の普及定着を図るためには,農家への安定した受精卵の採取と凍結受精卵の高い受胎率が必要である。そのために,受精卵の効率的生産および凍結・融解技術の高度化が求められている。今回,発情周期の調整に用いられる膣内留置型黄体ホルモン製剤(以下,PRID:progesterone releasing intervaginal device)の留置期間を変えることで,採卵成績が改善するか検討する。
方法
PRIDの留置期間を12日としたものを対照区に,PRIDの留置権間を7日としたものを試験区とし,回収卵数,正常卵数を比較することで,最適な留置期間を検証する。
成果・評価
平成21年度は,延べ40頭(1~13歳)から165個の正常卵を回収した。1頭あたりの正常卵数は4.1個であり,農家への譲渡卵数は72個,試験研究に使用したものは22個であった。また,受精卵の効率的な生産を目的として,PRIDの留置期間を12日間(対照区)から7日間(試験区)に短縮し,その有効性について検討した。PRIDの留置期間の短縮による回収卵数および正常卵率に有意な差は認められなかったものの,試験区は対照区より高い傾向を示した。このことから,PRIDの留置期間は7日間で十分に効果があり,加えて,胚回収成績を向上させる可能性が示唆された。
期間・区分
平成18~21年度,県単
背景・目的
家畜排せつ物法の施行に伴い,家畜ふん尿処理・利用方法について改善が強く求められている。一方,茨城県では霞ヶ浦流域など水系への影響を考慮しなければならない地域が広く存在し,特に液状物は規制が厳しく浄化・放流が困難なため,それ以外の方法として蒸発散・圃場(液状コンポスト)利用,管理水利用がある。本研究では,液状物の利用性向上のため液状コンポスト成分の安定化,圃場利用のうち,水田での利用方法について検討した。
方法
<試験1:汚泥の沈殿,濾過処理の濾材が液状コンポスト成分に与える影響>
0.3Lに濾材を充填したガラス管に液状コンポストを通過させた。処理量は7.2L/日とし資材との接触時間が1日となるよう循環させた。
<試験2:長期稼働させた処理施設での連続曝気が液状コンポスト成分に与える影響>
原水槽,第一曝気槽,第二曝気槽,沈殿槽(各槽容量1平方メートル)からなる処理施設を用い,曝気期間が2週間となるよう処理量を140L/日として試験を行い,各成分等の経時的変化を測定した。
<試験3:液状コンポストの施用時期の違いによる田面水中の窒素動向について>
潅水を保った1/2000aポットに飼料イネ(品種:ホシアオバ)を移植し,液状コンポスト(3種)を元肥,移植後30日(追肥30)および60日(追肥60)に施肥した際の田面水中の窒素成分濃度の経時的変化について調査した。施肥量は,液状コンポストを全窒素換算でN10キログラム/10a, N20キログラム/10a量とした。追肥利用には元肥N5キログラム/10aを施肥した。
成果・評価
濾過処理の濾材としては,砂がSSの除去率が高く,肥料成分の残存率が高いため,肥料としての利用性が高い。ゼオライトはカリウム除去率が高く肥料成分調整に利用できる。液状コンポスト成分の季節変動では,無機態窒素割合に変化があり,夏期では亜硝酸・硝酸態窒素が高く,冬季ではアンモニア態窒素の割合が高く,汚泥を沈殿分離させた上澄みの窒素成分は,曝気槽汚泥混合と同様であった。硝酸態窒素は,元肥,移植後30日目,60日目施肥において,総窒素量N10キログラム/10aを施肥したものは,施肥後1週間で田面水中から検出されなかった。総窒素量N20キログラム/10a施肥では元肥,移植後30日施肥で3週間後,移植後60日時期の施肥では,1週間後には,田面水中から検出されなかった。アンモニア態窒素濃度は,施肥後緩やかに減少し,3週間後の田面水中から検出されなかった。
期間・区分
平成19~21年度,国補
背景・目的
家畜ふん堆肥の肥料成分の分析を肥料取締法に準じた化学分析法で行っているが,複雑かつ時間と高額な費用を要するため,迅速で簡便な分析方法の確立が必要とされている。そこで,農家への分析値の早期還元を目的として,自給飼料分析の成分分析で活用されている近赤外分光法を家畜ふん堆肥に応用する。近赤外分光法は推定法のため化学分析値との誤差が生じるが,従来法と比べ分析期間が著しく短縮される利点がある。近赤外分光法による肥料成分の検量線を畜種別に作成し,迅速測定法を確立する。
方法
成果・評価
牛ふん堆肥のEIを用いた検量線の評価は,窒素・灰分・有機物・炭素がランクA(推定精度が非常に高い)であり,二次水分・P2O5・K2O・CaO・MgO・C/NはランクB(推定精度が高い)であった。豚ぷん堆肥のEIを用いた検量線の評価は,窒素・灰分・有機物・炭素・C/NはランクAであり,二次水分・P2O5・K2O・CaO・MgOはランクBであった。鶏ふん堆肥のEIによる検量線では評価では,窒素・CaO・灰分・有機物・炭素がランクAであり,二次水分・P2O5・K2O・MgO・C/NはランクBであった。近赤外分析法による家畜ふん堆肥の成分測定値は推定法であり,堆肥の品質管理や施肥設計時の参考値として活用する。なお,特殊肥料の肥料取締法に基づく表示は,公定法による分析値を用いる。また,畜種を混合した堆肥やオガクズ・モミガラ以外の水分調整材を用いた家畜ふん堆肥の肥料成分は測定できない。
期間・区分
平成21~23年度,国補
背景・目的
近年,米の生産過剰基調や輸入飼料価格の高騰の中で,主食用米に代わる飼料用稲の生産が注目され,家畜ふん堆肥の有効利用などから地域資源循環型農業の形成が求められている。このような中,合理的な堆肥等の養分施用によって資源循環型飼料稲生産の可能性が高いが,環境負荷を考慮した視点での飼料用稲生産については明らかにされていない。そこで飼料用稲生産における堆肥・液状コンポストの利用方法や物質循環フローを明らかにする必要がある。
方法
供試液状コンポストは県内養豚農家で生産された3種類(A,B,C)とした。試品種は飼料用稲(品種:ホシアオバ)とし,試験区分は1元肥のみ施用区,2元肥+移植後30日追肥区,3元肥+移植後60日追肥区とした。ホシアオバ(飼料イネ)は,1/2000aワグネルポットに1ポットあたり幼苗3本を移植(移植日:2009年6月2日)し,追肥移植後,0日,30日,60日に窒素肥料として塩化アンモニウムまたは液状コンポストを施肥し,栽培試験を行った(収穫日:2009年10月6日)。リン,カリウムは定量施肥した。
成果・評価
期間・区分
平成19~21年度,県単
背景・目的
フリーストール牛舎では,牛が通路に横臥することにより牛体が汚れ,乳質が低下することが懸念されている。そこで,茨城県内のフリーストール牛舎で主に用いられている「山砂」および「戻し堆肥」を用いて,乳牛の衛生的管理方法を検討した。
方法
前述の2種類の敷料資材について,それぞれ使用方法を
「平坦」・・・牛床に対し水平に敷料資材を入れる
「傾斜」・・・牛床(牛床長125センチメートル)に対し,高さ20センチメートルの傾斜を付けて敷料資材を入れる
の2パターンに分け,計4処理区とした。各試験期間は21日間とし,通路敷料にはオガクズを使用し,各試験期間中の牛床調整は行わなかった。
成果・評価
牛床利用率は,0日目では戻し堆肥・傾斜区が最も高く,他の区では通路に横臥していた牛も牛床を利用しており,通路横臥率は0%であった。14日目では全処理区で牛床利用率が低下,通路横臥率が上昇した。また,21日目では,処理区による差が大きくなり,牛床に溝ができやすい山砂・傾斜区で牛床利用率が最も大きく低下した。
下腹部,乳房および後肢下肢の衛生スコア(1きれい~5汚い)については,個体差が大きく顕著な差はなかったものの,牛床利用率の高い戻し堆肥・傾斜区でやや低い傾向にあった。また,本試験では牛体の衛生スコアの相違は乳汁中体細胞数に影響を及ぼさなかった。
21日目の牛床敷料中において,目視で汚れていない部分でも大腸菌群数の増加が認められた。
以上の結果から,良好な牛床条件を維持するには10日程度での敷料の補充・攪拌が必要であると判断された。
期間・区分
昭和39年度~,国補
背景
イタリアンライグラスは初期生育が良く,高品質で短期間で多収が得られ,適応地域も広いところから全国で約62,400ha,そのうち温暖地では約16,000ha作付けされている。イタリアンライグラスは春の1番草が多収であるものの,倒伏しやすく,大規模化した飼料生産現場では耐倒伏性に優れ多収な品種が求められている。
短期利用系統(早生)は夏作との2毛作利用,水田裏作利用が可能で利用系統としては最も需要が多い。当センターでは耐倒伏性が強く収量が高い「はたあおば」を育成し,平成18年に品種登録している。今後も耐倒伏性の向上が必要であり,収量性を維持しつつ耐倒伏性を強化した品種を育成する。
長期利用品種(中晩性)は,出穂が早生より遅く,再生等に優れ,2~3回刈り取り利用される。収穫能率,収量の向上が求められており,耐倒伏性及び冠さび病抵抗性が高い品種を育成する。
極長期利用系統は,イタリアンライグラスを播種翌年から2年間利用することで年間ロールベール体系が導入でき,転作田や耕作放棄地での高品質飼料の省力生産が可能であるが,既存の極長期利用品種は越夏性および耐病性が不十分で,温暖地において安定的に生産するのは困難である。そのため,既存品種より越夏性に優れた極長期利用品種を育成する。
方法
成果・評価
期間・区分
昭和58年度~,県単
背景
市販のトウモロコシ品種の特性を調査し,本県の気候・風土に適合した品種を選定する。
方法
成果・評価
期間・区分
平成18~21年度,受託
背景・目的
現在までイタリアンライグラスの育種は主に乾物収量(反収)の向上に主眼が置かれてきているが,今後は消化性を加味した可消化養分総量(TDN)収量も考慮する必要がある。加えて糖含量が高まれば,天候等の理由で予乾が不十分,もしくは若干の刈遅れが生じた場合でも良好な発酵品質を確保できる。本課題では早生イタリアンライグラス系統について選抜を進め,温暖地向けの早生2番体高TDN・高糖含量系統を育成する。
方法
市販の早生6品種を育種母材として近赤外分析法により低消化性繊維(Ob)含量の少ない個体を選し,各種評価試験を行い,特性を評価した。
成果・評価
期間・区分
平成21~22年度,県単
背景・目的
穀物の輸入価格に影響されない安定した畜産経営と飼料自給率の向上を目指すため,採卵鶏および地鶏へ飼料米を給与しその影響を検討する。
方法
飼料用米を給与形態(もみ,玄米)や添加割合(10%~20%)を変えて採卵鶏,地鶏(奥久慈しゃも)に給与し,その生産性と経済性,生産物の品質に及ぼす影響の調査を行う。
成果・評価
地鶏(奥久慈しゃも)に玄米を配合して給与した場合,嗜好性に問題はなく,また増体への影響は見られなかった。食味については,20%添加した場合,通常飼料給与と比較してまろやかな味わいになることが分かった。
期間・区分
平成20~23年度,受託
背景・目的
高病原性鳥インフルエンザを早期に発見し的確な防疫措置を行うことは,ヒトへの感染を防止するとともに食の安全確保の観点から重要であることから,鶏の健康管理をリアルタイムで監視し家畜疾病を早期に発見するシステム開発が望まれている。
方法
独立行政法人産業総合研究所で開発中の体温,運動量センサを鶏体に装着させ,実証試験を行うとともに,夏期の暑熱ストレス感作時の体温と運動量の変化をモニタリングすることで暑熱の被害を未然に防止する対策を確立する。
成果・評価
翼章を加工することで,センサを鶏の上腕部に装着し,脱落することなく安定的に測定することができた。ミスト散布と大型送風機を稼働させた鶏舎では,鶏体温および鶏舎内の気温が低く推移することが確認され,生産性の低下が防止できた。
期間・区分
平成20~22年度,国補
背景
日本鶏等の貴重な遺伝資源を安定して育種し,有効活用していくために地鶏の遺伝資源保存に影響を及ぼす阻害因子に関する試験を行う。
方法
マイコプラズマ病の垂直感染防止のためのふ化率低下を最小限に抑える種卵の加温処理技術や凍結精液による種の保存と野外応用技術およびHACCPを取り入れた衛生管理技術を開発する。
成果・評価
7時間と15時間の加温処理のふ化率を比較・検討した結果,7時間処理が49.3%,15時間加温が36.9%で7時間加温の方が高かった。品種毎に耐凍剤濃度別受精率を比較した結果,名古屋,ロードK系は5%,ロードL系,しゃも,アロウカナは7%,比内は9%濃度で受精率が高かった。
期間・区分
平成20年度~,県単
背景・目的
「奥久慈しゃも」等の銘柄地鶏の原種鶏や種鶏を安定的に維持保存し,地鶏の生産を支援する。
方法
地鶏の原種鶏群を繁殖能力の低下を防止するとともに衛生的に飼養管理し安定的に維持する。
成果・評価
「奥久慈しゃも」等の銘柄地鶏の素ひなを継続安定的に供給し,地鶏生産農家の経営安定に寄与した。
期間・区分
昭和27年度~,県単
背景・目的
優良種雄牛を適正に飼養管理し,優良な凍結精液の生産と譲渡を行う。
方法
種雄牛及び候補種雄牛を繋養し,精液を採取して凍結した。このうち,検査に合格したものを保存し,希望に応じ県内に譲渡した。
成果・評価
平成21年度は候補種雄牛を含め20,752本を生産し,「北国関7」,「千穂」,「北国栄」などの精液4,006本を譲渡した。
期間・区分
平成11年度~,国補
背景・目的
肉用牛の改良を図るため,候補種雄牛の産肉能力を検定し,優れた種雄牛を選抜する。肉用牛広域後代検定推進事業により選抜された基礎雌牛へ基幹種雄牛を指定交配し生産された雄子牛3頭を選定し飼育検定する。
方法
社会福祉法人全国和牛登録協会で定める産肉能力検定直接法に基づいた。
成果・評価
検定を終了した3頭の成績概要は以下のとおりである。
期間・区分
平成4年度~,県単
背景・目的
直接検定により選抜された候補種雄牛の現場後代検定を実施し,優秀な種雄牛を選抜する。
方法
社会福祉法人全国和牛登録協会が定める産肉能力検定(現場後代検定法)により行う。
成果・評価
候補種雄牛「明安の2」,「舞光」の産子の現場後代検定を終了した。格付成績に基づく育種価を検討した結果,「明安の2」,「舞光」ともに枝肉重量と皮下脂肪の厚さが優れていたので選抜した。
期間・区分
平成20年度~,国補
背景・目的
本県和牛における「SCD遺伝子」,「成長ホルモン遺伝子」及び「摂食関連遺伝子」の遺伝子多型を解析し,産肉性に関する成績との比較から遺伝子に基づく能力評価法を確立し,本県和牛集団の産肉性の改良を促進する。
方法
(独)畜産草地研究所との共同研究により,DNA解析を行った。
成果・評価
ステアロイル-CoAディサチュラーゼ(SCD)遺伝子
726頭の黒毛和種肥育牛のSCD遺伝子型を解析したところ,AA型は382頭(52.6%),AV型は305頭(42.0%),VV型は39頭(5.4%)で,遺伝子型頻度は,A型:0.74,V型:0.26であった。
遺伝子型との枝肉形質の関連性を検討した結果,枝肉重量で,遺伝子多型間に有意な差があり,枝肉重量の大きさはAV,AA,VVの順であった。その他の形質に有意な差は認められなかった。
また,脂肪中の不飽和脂肪酸含量との関連性では,遺伝子多型間に差はみられなかった。
成長ホルモン(GH)遺伝子
473頭の黒毛和種肥育牛のGH遺伝子頻度は,AA型は134頭(28.36%),AB型は66頭(14.0%),AC型は171頭(36.2%),BB型は10頭(2.1%),BC型は68頭(14.4%),CC型は24頭(5.1%)で,各遺伝子型頻度は,A型:0.53,B型:0.16,C型:0.30であった。
GH遺伝子は,枝肉重量やロース芯面積との関連性が強いとされているが,遺伝子型と枝肉形質に有意な差は認められなかった。
摂食関連(GHSR)遺伝子
788頭の黒毛和種肥育牛のGHSR遺伝子の遺伝子頻度は,AA型は31頭(3.9%),ABは291頭(36.9%),BB型は466頭(59.1%)で,遺伝子型頻度は,A型:0.22,V型:0.78であった。枝肉形質と摂食関連遺伝子型との関連性を検討した結果,枝肉重量に対してAA型が有意に大きかった。
期間・区分
平成18~20年度,県単
背景・目的
黒毛和種子牛において離乳,去勢,輸送のストレスを簡易に軽減することによって家畜市場へ出荷する時の体重減少を抑え,市場性を向上させる。
方法
3か月離乳時にはビタミンC,Eを給与,去勢時にはNSAIDsを投与,市場輸送前に糖蜜を給与し,ストレス軽減を図った。
成果・評価
離乳時のビタミン給与では顕著な効果が見られなかった。切開またはゴムリングによる去勢を行った時のNSAIDs投与では,リング去勢区と無処置去勢区との差は無かったが,切開去勢による著名な体重減少がNSAIDs投与によってリング去勢区と同等のストレス軽減となった。輸送試験では有意差はなかったものの,糖蜜の給与によって体重減少が軽減された。
期間・区分
平成21~23年度,県単
背景・目的
子牛の早期母子分離は,配合飼料摂取量の増加,下痢の発生率減少,体重増加が大きいなどの効果が報告されているが,体重増加に差がないとの報告もあり,哺乳に手間がかかることや,その効果に信頼が無く,現場での普及が進んでいない。そのため,手間を減らし,なおかつ分離の効果を確認するため,哺乳と別居を合わせた制限哺乳を検討する。
方法
黒毛和種繁殖牛と分娩子牛を2区画に分け別居し,3ヶ月齢での離乳まで朝夕2回のみ15分ずつ哺乳させた(制限哺乳区)。その他の時間は人工乳,乾草,水を自由に接触させた。比較のため,親子を3ヶ月離乳まで同居させたものを対照とした(自然哺乳区)。
成果・評価
各区親子6組ずつの結果は制限哺乳区の下痢の発生が自然哺乳区の約40%と少なかった。下痢が回復するまでの平均日数は制限哺乳区で1.8日,自然哺乳区で4.3日となり,治癒も制限哺乳区が早い傾向であった。人工乳平均摂取量は制限哺乳で30キログラム/頭・3ヶ月間,自然哺乳で34キログラム/頭・3ヶ月間であった。また体重の増加も大きな差はないが制限哺乳区で大きい傾向であった。
期間・区分
平成20~22年度,国補
背景・目的
茨城県のブランド牛である「常陸牛」は,食肉流通業者から肉質が良いと評価されている。一方,肉質の評価が脂肪交雑に加え,おいしさを取り入れていこうという動きがあり,生産者や販売団体から美味しさについての研究要望がある。そのため,常陸牛のうま味・風味成分の状況を把握するとともに,飼養管理と肉質の関係を明らかにする。
方法
牛肉の理化学分析(脂肪酸組成),枝肉情報(牛肉の格付け・出荷月齢・販売価格等),飼養管理情報(農家の飼養管理方法)をデータベース化し統計解析を行うことで常陸牛の美味しさ要因について明らかにする。
成果・評価
牛肉の理化学分析値,枝肉情報,飼養管理情報のデータベース化を行っている。また,脂肪の質(脂肪酸組成)を分析した結果,農家ごとや種雄牛ごとに脂肪酸組成に差があることがわかったが,さらに詳細については解析中である。
期間・区分
平成18~23年度,県単
背景・目的
遊休農地放牧では,野草の生産量が年々減少し,3~4年すると放牧利用が出来なくなる。
そこで,牧養力の低下した遊休農地にシバ型草種であるセンチピードグラスを播種して草地化し,低投入持続型の放牧利用を実証し,普及を図る。
方法
試験地は,3年間耕作放棄地放牧を実施してきた田及び畑で,播種量は10a当たり0.5キログラム及び1.0キログラムとし,造成は蹄耕法による不耕起造成で,播種後にすぐ放牧する区(無禁放牧区)と2週間後に放牧する区(2週間禁牧区)とした。
成果・評価
播種量0.5キログラム/10aで3年目には被度76.5%となり,0.5キログラム/10aで十分に定着することが明らかになった。また,播種直後の牛放牧の継続の有無はその後の被度には大きな影響がなかった。水田と畑ではやや畑のほうが定着がよく,水田で極端に水はけの悪いところでは定着しなかった。
現在は造成された草地で放牧圧の違いが草地にどのような影響があるのか調査中である。
期間・区分
平成14年度~,県単
背景・目的
簡易電気牧柵を利用して,近年増加している水田,畑などの耕作放棄地で野草を主体とした放牧利用技術を実証展示し,普及を図る。
方法
現地指導,実証展示放牧及び講演会などを行い,さらに耕作放棄地放牧マニュアルを作成し,遊休農地への放牧を普及推進した。
成果・評価
耕作放棄地放牧に取り組む農家は,17年度は11市町村47戸で,放牧面積は24.8haだったが,21年度には18市町97戸で,放牧面積は90.4haに増加した。
期間・区分
平成15~23年度,県単
背景・目的
本県の銘柄豚肉である「ローズポーク」をはじめとする高品質豚肉生産などに広く利用されることを目的とし,ランドレース種の系統豚の造成を行う。
方法
平成16年度から交配を開始,6世代かけて閉鎖群で改良を進め,平成22年度に造成完了となる。改良の方法としては,1次選抜は,発育が良く,肢蹄が強健なものを選抜する。2次選抜は,改良形質を1日平均増体重(DG),背脂肪層の厚さ(BF),産子数(LS)とし,BLUP法で算出した育種価で選抜を行う。
成果・評価
第5世代の成績は,一日平均増体重(DG)912.6g,背脂肪層の厚さ(BF)1.65センチメートル,産子数(LS)11.79頭であり,改良目標に到達した。
期間・区分
昭和45~平成21年度,県単
背景・目的
この試験は当研究所の外から優良な種豚や精液を導入してさらに優れた種豚を作出し,それを県内の農家に供給することにより,広域的な改良効果を生み出すことを目的とする。
方法
種雌豚20頭。種雄豚5頭を飼養し以下の成績をもとに改良。
成果・評価
期間・区分
昭和62年度~,県単
背景・目的
2003年に造成完了した大ヨークシャー種系統豚「ローズW-2」を本県の銘柄豚肉「ローズポーク」の基礎豚として利用することを目的に,認定時の能力を保持しながら近交系数の上昇をできるだけ抑えるようにして維持,増殖を行っている。
方法
所内で飼養する「ローズW-2」維持群の母豚30頭,種雄豚8頭を用いて,繁殖成績と産肉成績,体尺測定値(発育具合)を調べた。
成果・評価
繁殖成績については,37腹の分娩があり,分娩腹数は最近6年間のうちでもっとも多かった。哺育開始頭数と3週齢頭数は前年度よりやや減少した。
産肉成績については,雄で1日平均増体重954.1g,雌で805.5gとなり,前年度より上昇した。
体重105キログラム時の体尺測定値では,雄の体長は107.9センチメートルで前年度より短くなり,胸囲も104.8センチメートルと前年より細くなっているが,体高は64.0センチメートルで前年より高くなった。雌では体長が108.2センチメートルで前年より伸びたが,胸囲は104.5センチメートルで前年より細くなり,体高は62.7センチメートルで前年より低くなった。育成豚の県内養豚農家への払い下げは11戸に42頭(雄20頭,雌22頭)を実施した。
期間・区分
平成19~23年度,受託
背景・目的
独立行政法人農業生物資源研究所で作出された3種類の遺伝子組換え豚を5年間維持・保存し,遺伝子のホモ化を行うとともに,遺伝子組換え豚を含むクローン豚保管技術をマニュアル化し,将来に向けた遺伝子組換え豚増殖技術の確立を目指す。
方法
成果・評価
遺伝子組換え豚の維持試験
遺伝子発現量の解析によるホモ・ヘテロ判定の応用確認試験
ホモ判定の産子がすべてヘテロで,ヘテロ判定の産子がヘテロ又は遺伝子陰性であったことから遺伝子発現量の解析がホモ・ヘテロ判定に応用可能であることが確認された。
期間・区分
平成19~21年度,県単
背景・目的
安全・安心な豚肉を消費者に提供するためには抗菌性物質などの薬剤に頼らない生産技術が求められており,プロバイオティクスが注目されている。また,茨城の特産物である納豆に含まれる納豆菌にも,乳酸菌やビフィズス菌を増加・安定化させる等の作用を介してプロバイオティクスとしての効果が明らかにされている。
一方,茨城県内の納豆工場では品質管理基準外や検査用納豆として年間推定1万トン以上廃棄処分されているという現実もある。
そこで納豆残さを利用し,哺乳子豚,離乳子豚及び肥育豚に投与し,豚の健康及び豚肉の生産に及ぼす影響について検討を行った。
方法
哺乳豚には納豆をペースト状にして蒸留水で10倍に希釈した納豆液,離乳豚には乾燥納豆をミルサーで処理した粉末納豆,肉豚には乾燥納豆を給与し,体重(肥育成績),下痢発生状況,糞便pH,糞便中細菌検査,糞便の臭気,枝肉・肉質成績,血清コレステロール値の調査を行った。
成果・評価
初生子豚に1週間納豆を給与すると,その後4週間に渡り軟便や下痢の発生が減少し,増体も良好であった。糞便pHは1週齢時点で対照区よりも低い値を示し,糞便中細菌数では,乳酸菌数が増加し,特に4週齢では乳酸菌比率が高くなった。これは,納豆菌が腸管内の乳酸菌を増加・安定させる作用があるとともに,その効果型,投与終了後少なくとも4週間後まで続くことを示している。これらのことから,納豆を給与した哺乳子豚の方がより健康であったと推定された。
3週齢から6週齢の離乳期の子豚に乾燥粉末化した納豆を給与したところ,納豆投与区の下痢発生率がやや低い傾向を示したのみで,他の調査項目には影響を与えない結果になった。
体重70キログラムからと畜(110キログラム)までの肥育豚(16週~32週齢)に乾燥納豆粒を飼料に混合し給与したところ,糞便中の細菌検査では,乳酸菌数は週齢が経過してもその数は108個台と安定していたが,対照区は107個台に減少した。その反面,大腸菌数は納豆投与に従い減少し,対照区は週齢を経ても減少しなかった。これは有意な差とはならなかったものの納豆の及ぼした影響と判断された。
血清中の総コレステロール値に大きな変動は見られなかったが,豚の総コレステロール値の正常範囲(53.6~105.6ミリグラム/dl)を超えていた1頭は5%納豆投与後に正常範囲(125ミリグラム/dl→85ミリグラム/dl)に低下したことから,高コレステロール群での納豆の効果が示唆された。
期間・区分
平成21~22年度,県単
背景・目的
飼料用米の畜産分野での活用は,飼料自給率の向上,休耕田の有効利用が期待できることから,飼料用米の給与技術の確立が望まれている。
そこで,飼料用米の肥育豚への経済的かつ効率的な給与技術(配合形態・配合割合)と生産性(発育・飼料要求率・肉質等)及び市場性の調査を行うとともに,官能評価試験を実施し実用化を目指す。
方法
肥育後期の3元豚(WLD,LWD)に肉豚出荷前の2ヶ月間(体重70キログラム~110キログラム)飼料用米の配合された資料を給与した。
成果・評価
ローズポーク専用飼料(大麦15%配合)に加熱処理(α化)した飼料用米10%を配合した飼料を給与したところ,対照区と比較し,生産性(発育・飼料要求率・肉質等),市場性に差はみられなかったものの,官能評価試験では飼料用米を配合した試験区の方がよりおいしいという傾向がみられた。
期間・区分
平成20~22年度
背景・目的
デュロック種は,これまでは体型や増体量等の特定の表現型を用いた選抜により改良育種を行ってきたが,改良育種に遺伝子情報を活用するための基礎的な研究を行い,肉質や抗病性等,内面的にも優れた豚の選抜を効率的に行うために改良育種技術を開発する。
方法
毛根のついた体毛を1頭当たり10本程度採取し,DNA抽出後にPCR法によりDNAを増殖し,QP法により以下の遺伝子を解析した。
TUBBY遺伝子:筋肉内脂肪含量に関与
FSHR遺伝子:雌の排卵数に関与
Mx1遺伝子:RNAウィルス抑制能に関与
成果・評価
デュロック種について,TUBBY遺伝子で脂肪蓄積型をホモで持つ豚を作出することが可能であることが分かったので,今後,優良な遺伝子を持った豚を県内の養豚農家に供給できることが期待できる。しかし,排卵数に関与するFSHR遺伝子は,現在当所で飼養するデュロック種では多産系の遺伝子型は見られず,FSHR遺伝子を指標にした多産系デュロック種の改良は難しいと推定された。また,RNAウィルス抑制能に関与するMx1遺伝子については,そのほとんどが正常型のため,今後ヘテロ同士の交配を避けることで全て正常型の遺伝子を持つ群に改良できると推定される。
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