ハトムギで耕作放棄地解消を目指して(2021年3月)

城里町
JA水戸城里地区ハト麦研究会・農事組合法人アグリプロいばらき


 

近年本県では耕作放棄地の増加によるイノシシなどの獣害、病害虫・雑草の発生が大きな問題となっています。

城里町を中心とした地域では、畑地の耕作放棄地対策の一つとして、ここ数年ハトムギ栽培が急速に拡大しています。

この取り組みは、本年度に入り新型コロナウイルスの影響でやや減少したものの、引続き耕作放棄地対策や輪作作物の一つとしてハトムギの生産拡大が期待されています。

(写真1:収穫前のハトムギ)

 

 

栄養価が高く、保湿・美白効果も

写真2:収穫したハトムギ。

 

ハトムギは野生植物「ジュズダマ」の変種で日本では古くから漢方薬に用いられてきました。

今日では栄養価が高いことからお茶、菓子等多くの食品が開発され、健康食品として愛用されるとともに、
エキスは保湿・美白作用があり化粧品としても利用されています。

現在、多くは輸入に頼っていますが、健康志向の高まりから良質で安全・安心な国産品の需要が増加しています。

 

(写真2:収穫したハトムギ。生産量は、富山県、岩手県、栃木県に次いで全国第4位です。
     ※県内組織聞き取りおよび全国ハトムギ生産技術協議会資料。)

 

栽培は麦やそばと同様に大型機械を使用して圃場準備、播種・耕うん、中耕・培土、薬剤散布、収穫、乾燥・調製等を省力的に行えます。

写真3:収穫のようす

(写真3:収穫から運搬、収穫物の粗選・調製のようす)

写真3:収穫から運搬、収穫物の粗選・調製のようす

 

写真3:収穫物の粗選・調製のようす

全国第4位の産地とその担い手


本県のハトムギ栽培は、平成28年から急激に増加し、令和元年には栽培面積89㏊、生産量185tとなり全国第4位の産地となりました。

また、他県産地が水田転作であるのに対し、本県は畑地栽培であることが大きな特徴です。

生産組織は、平成28年設立のJA水戸城里地区ハト麦研究会(令和2年栽培者8名、栽培面積20㏊)、平成31年設立の農事組合法人アグリプロいばらき(同年栽培者5名、栽培面積16㏊)の二つで、城里町以外では水戸市内原地区でも生産されています。

(写真4:全国ハトムギ生産技術協議会の手塚隆久会長らによる支援)


関係機関が連携して課題の解決と支援を

本県でのハトムギ栽培は歴史が浅く、畑作であることから解決すべき課題が多くあります。

具体的には暴風雨による倒伏対策、連作や肥料不足により発生する最重要病害の葉枯病対策、アワノメイガ防除、輪作体系の確立、6・7月頃の中期雑草対策、収量および品質(比重)の向上等高品質安定生産のための技術開発が求められています。

その中で葉枯病対策では葉色(SPAD値)の測定とドローンによる追肥や薬剤散布等を検討しています。

(写真5:圃場巡回のようす)

 

 

生産組織の技術、経営等の指導・支援は、JA、役場、普及センターが連携して対応しています。
一方、葉枯病防除法や中期除草剤の開発など全国的な重要課題や緊急に発生した障害は全国ハトムギ生産技術協議会の手塚隆久会長(元農研機構研究員)や本県農業総合センターから直接・間接に指導・支援を受け解決を図っています。
今後も生産組織と関係機関が一丸となって課題解決に取り組み技術向上、経営安定を進め、耕作放棄地解消と儲かる農業の実現につなげます。

県央農林 笠間普及センター


2021年02月08日