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更新日:2023年9月26日
水産資源は、鉱物資源などと違って、繁殖によって増えていく特性を持っている(「再生産」と言う。)ので、その資源が無くならないように上手に管理していれば、一定量を永久にとり続けることができる。
しかし、獲りすぎてしまった場合は、再生産に十分な親や稚魚が確保できず、資源が減っていってしまうおそれがある(この状態を「乱獲」という。)。
将来にわたって水産物を安定的に供給し、漁業経営を安定させるには、漁獲をある程度調節するなどして、獲りすぎを防ぐことが重要である。
資源を保護するだけであれば、漁獲しなければよいが、それでは水産物を供給できず、漁業という産業も成り立たない。乱獲を防止するため、漁業に対しては、国や県の許可がなければ操業が行えないようにしたり、禁漁期間や禁止区域を設けるなど、法令によって様々な規則や制限が課せられている。
しかし、水産資源は年によって変動が大きい。その一方で、魚を獲る技術や装備は年々進歩しており、乱獲を防止するには法令による規制だけでなく、資源の水準に見合った操業方法を工夫したり、弾力的に資源を保護する必要がある。
日本周辺の水産資源は悪化しているものが多く、漁業者が自主的に獲り方や売り方を工夫し、極力無駄を省くなどして、水産資源を安定的かつ効率的に利用する必要があり、国や県では資源管理型漁業を推進している。
次のような方法を資源の特性に応じて組み合わせるほか、漁獲物の付加価値向上や、稚魚の放流、密漁・違反操業の防止などをあわせて実施すると一層の効果が期待できる。
課題 |
魚がまだ小さいうちに獲ってしまう |
対策 |
獲れた小型魚をすぐ再放流する。 |
管理の効果 |
成長してから獲れば、1尾あたりの価格が上昇し、漁獲量も増える。 |
課題 |
産卵期の魚を獲ってしまう |
対策 |
産卵期、産卵場所などでの操業を避ける。等 |
管理の効果 |
産卵数が増えて、再生産される資源の増加が期待できる。 |
課題 |
必要以上に獲りすぎてしまう |
対策 |
漁獲量、操業時間などを調整する。 |
管理の効果 |
大漁貧乏が防げ、経営が安定する。設備投資のムダも減る。 |
課題 |
魚を傷をつけたり鮮度管理が悪い |
対策 |
操業方法を工夫する。(例:刺網の日起こし、貝桁網の曳網速度の改善による割れ貝、舌喰い防止、底びき網の漁具改良による魚の傷み防止)等 |
管理の効果 |
キズがない魚や鮮度がよい魚は、より高く売ることができる。 |
課題 |
魚が安い時期に多く獲ってしまう |
対策 |
市場での価格の動向に注意し、安い時期の漁獲量を調整する。 |
管理の効果 |
需要と供給のアンバランスを解消すれば、消費者にも漁業者にも利点となる。 |
課題 |
過当競争が行われる |
対策 |
無駄な競争をなくす。 |
管理の効果 |
人より先に、多く獲ろうとすると、乱獲や品質低下とともに、設備の過剰投資がされやすくなる。ムダな競争を排除できれば、資源減少やコスト増による経営圧迫を避けることができる。 |
資源管理は、漁業者の自主的な取り組みとして進めるほかに、法令等に基づく制度が定められています。
漁獲可能量制度の略。まいわし、まさばなど7魚種について、資源の状況に応じて1年間に漁獲して良い量を定め、漁業ごとにその量が配分される。漁業者は漁獲量の報告を行う。
水産庁ホームページにおけるTAC制度概要(外部サイトへリンク)
漁獲努力可能量制度の略。後述の資源回復計画を定めた魚種を対象に、定められた期間・区域内で操業できる日数(=漁獲努力量)が定められ、漁業ごとにその数が配分される。漁業者は操業状況の報告を行う。
海区漁業調整委員会は、漁業法の規定により、水産資源の繁殖保護に必要な場合、関係者に対して制限を課すことができる。
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