わたしたちの県議会 茨城県議会
平成14年第2回定例会


県出資団体等調査特別委員会調査結果報告の概要

 平成14年第2回定例会最終日に、粕田良一委員長から調査結果の報告が行われました。
 これを受けて、香取衛県議会議長は、即日、知事、企業局長、教育長、警察本部長に報告書を送付し、提言の趣旨を踏まえた積極的な取り組みを行うよう要請しました。
 その概要を紹介します。

1 委員会設置の背景

 県の出資団体や財政支出法人は、複雑多岐にわたる行政需要に弾力的、効率的に応えるべく、民間の人材や資金、経営ノウハウなどを活用しながら、的確なサービスを提供する団体として設立されてきました。
 しかしながら、バブル経済崩壊による景気の低迷など社会経済情勢の急激な変化に伴い、多くの課題が顕在化し始めています。
 このため県出資団体等が設立の趣旨に沿い、これら社会経済情勢の変化や県民ニーズに的確に対応して、適正、効率的な運営がなされているか、「業務運営のあり方や経営の健全化など諸問題の調査」を行うため、平成13年第2回定例会において本委員会が設置されました。

2 調査方針

 県内に住所を有するすべての県出資団体60団体及び財的・人的支援を継続的に行っている財政支出法人9団体を調査対象とし、県出資団体等の現状と課題、団体等のあり方の見直し、経営の健全化、指導監督のあり方、情報公開の推進などを柱に調査が進められました。

3 県出資団体等の現状

(1)法人形態別内訳
 調査の対象とした69団体の法人形態内訳は、財団・社団である民法法人が43団体、株式会社である商法法人が19団体、社会福祉法に基づく社会福祉法人が1団体、個別法に基づく特殊法人が6団体となっています。
 昭和36年度以降の団体の設立増加傾向に大きな変化は見られませんが、平成11年度以降団体は設立されていない状況です。

(2)業務部門別内訳
 業務部門別では、農林水産関係が14団体と最も多く、次いで商工関係及び教育・文化関係がそれぞれ10団体ずつとなっています。

(3)常勤役員
団体の常勤役員は136人、この中には75人の元県職員、5人の県分限休職者が含まれています。
 なお、代表者が知事である団体は12団体、副知事である団体も12団体、企業局長である団体が1団体、部長である団体が4団体となっています。

(4)団体の経営状況
 また、団体の経営状況は、平成12年度決算による当期損益では、34団体が黒字、35団体が赤字、当期未処分損益で、いわゆる累積赤字がある団体は16あり、4年前に比べ赤字団体が増えている傾向にあります。

4 県の出資総額等

 県出資団体等に対する県の出資総額は271億9,979万7,000円にのぼり、1団体平均では4億3,174万3,000円になっています。
 なお、平成12年度末の損失補償限度額は9団体で4,742億5,207万円、1団体平均では526億9,467万4,000円です。

5 委員会の提言内容

(1)団体のあり方の見直し

 ア 団体のあり方
 統廃合を推進すべき団体として、経営基盤を強化し良質で多様なサービスを提供していくため、日立埠頭(株)、大洗埠頭開発(株)、常陸那珂埠頭(株)3社の早急な再編統合化を求めるものを初めとして、そのほか16団体について再編統合、法人形態の見直し、組織体制等の一元化、民間等への移管、県の関与を終了すべきことなどを提言しています。
 また、長期にわたる保有地や代替地の早期処分など大きな課題を抱えている、茨城県住宅供給公社、茨城県土地開発公社、(財)茨城県開発公社については、近い将来、組織の大幅縮減や民営化等を含めた抜本的なあり方の見直しの検討を求めています。

 イ 団体事業のあり方
さらに、団体の事業のあり方として、(社福)茨城県社会福祉事業団の老人・母子休養ホーム「福寿荘」を民間等へ移管あるいは廃止すべきであるなど、5団体について事業の一部移管や官民分野の見直しを提言しています。

(2)団体の経営の健全化
 団体共通の推進すべき指針として、次のような提言がなされています。

 ア 団体の体質改善
まず、団体の体質を改善するため、役員等の経営責任を明確化し、意思決定の公正性や迅速性を確保すること、経営健全化に向けての軌道修正を的確に行うため、マネジメントサイクルを確立すべきこと、事業規模や事業内容に見合った組織の簡素化、役職員定数の見直し、給与の適正化など内部管理費を見直すこと、民間の経営手法等を積極的に導入し、職員のコスト意識や経営感覚を高めることなどを提言しています。

 イ 事務事業の見直し
 さらに、事務事業の見直しについては、必要性が希薄となった事業の見直しはもとより、事業の必要性があるものであっても、事業の継続により累積赤字が増大し、将来、団体に重い負担を残すと推測される事業についても見直しを断行すべきことなどを提言しています。
また、鹿島都市開発(株)のホテル部門経営や(財)茨城県開発公社の工業団地保有地処分、(株)メディアパークつくば「ワープステーション江戸」の運営など、14の個別団体について、現時点で抱えている経営上の大きな課題に論点を絞った提言もなされています。

(3)団体の指導監督のあり方

 ア 県の関与の見直し
 県の関与の見直しでは、自律的で責任ある経営体制の確立を図る観点から、知事、副知事の団体代表兼職を可能な限り廃止し、民間人を含めた経営能力を有する人材を積極的に登用すべきこと、現役県職員の派遣は、団体の自主性・主体性や団体職員の育成などに配慮しつつ漸次縮減を図るべきこと、県職員OBの配置は単なる再就職先のポストとしてではなく、その知識や経験が業務遂行上必要とされる場合にのみ行うべきことなどを執行部に対して求めています。

 イ 財政的支援の見直し
また、財政的支援の見直しでは、事業の公益性及び事業の意義・効果等を十分勘案し、中長期的な視点に立って、財政的支援の削減をするなど抜本的な見直しを進めるべきであること、団体への損失補償額は、将来の県負担につながる可能性があるため、真に必要な場合に限定すべきであることなどを求めています。

 ウ 指導監督の強化
 さらに、指導監督の強化では、出資団体等を総合的、計画的に指導監督できる専管組織を新たに設置するなど指導監督の強化を図るべきこと、赤字を抱える団体が増加していることから、外部の専門家を加えた経営評価システムを整備し、定期的な経営管理面の指導強化を図っていく必要があること、団体の経営が深刻化し、事業の存廃を含む抜本的な対策を講ずる必要があると認められた場合の対応システムを整備しておくべきこと、首都圏新都市鉄道(株)がマイカル社債購入に伴う多額の損失を計上したことや平成14年4月からのペイオフ解禁などを踏まえ、団体の資産運用・管理上のリスクを回避するための方策を早急に検討しチェック機能を強化すべきであること、団体が設立する子会社は、団体自身の経営にも大きな影響を及ぼすおそれがあることから、子会社を設立する場合の団体への指導や、団体を通じて子会社の業務運営の適正化等を指導すべきであることを執行部に強く求めております。

(4)情報公開の推進

県の出資団体等は、公益的な性格を有し県民生活に関わりの深い業務を行っていることから、県民へ経営内容等の情報を広く提供し、団体運営の透明性を確保する必要があるため、情報公開すべき内容については、団体の資産運用・管理内容及び役員会議事録など可能な限り多くの情報を提供すべきであることを提言しています。

(5)今後の議会の対応

 ア 条例の制定
 出資法人に対する県の指導監督等については地方自治法、民法など法令による包括的な規定はありますが、本県の出資法人への関わり方の基本的事項に対する明確な取り決めはなされていないのが現状です。
 このため、県と出資法人との役割分担と協働や、出資法人に対する県の助言・指導等、さらには出資法人の自己評価と県への報告及び自己評価に係る県の審査と評価並びに当該結果の議会への報告などといった出資法人への関わり方の基本的な事項について、県と議会が協力して条例化すべきことを提言しています。

 イ 議会の関与
また、議会の関与として、条例化により、県から出資団体等の審査・評価に係る報告がなされたときは、各所管の常任委員会において慎重審議し、出資団体の目的とする効果的・効率的な県民サービスの実現を支援していく必要があるとしています。
 さらに、議会において定期的な見直しを行うため、議員任期中に1回は、出資団体に関する調査特別委員会を設置して、県の指導監督権限の強く及ぶ出資率4分の1以上の団体及び経営上大きな課題を抱えている団体等の中から対象を絞って集中審議していく必要があるとしています。

6 おわりに

 委員長は、議場において、次のように締めくくり口頭報告を終えました。
 県出資団体等を改善させるための基本は、なによりも団体自らが改革に向けて行動することであります。そのために県執行部は、県と団体の権限や責任の所在を明確にし、団体の自立性を高めることはもとより、県職員OBを配置するに当たっても、経営責任を果たし得る的確な人選を行い、また、選ばれた役員は厳しさを増す経営環境を自覚し、簡素・効率化に向けての職員の削減や、改善に向けての職員の意識高揚など健全化に全力を挙げるべきであります。
 その上に立って団体、県、県議会の3者はそれぞれの立場から対等な関係で協働し、課題や難局を乗り越えていかねばならないものと考えます。
 執行部においては、この機会に3者が効果的に協働できる新たな仕組みを構築し、団体のあり方の見直しや経営の健全化に向けた積極的な取り組みが行われるよう期待します。
 なお、県出資団体等の統廃合や民営化など団体の痛みを伴うあり方の見直しを進めるに当たっては、団体で現在働いている職員の雇用先の確保についても配慮しつつ、必要な対策を検討されるよう要望するものであります。


 

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