わたしたちの県議会 茨城県議会
平成10年第1回定例会


 議会は、3月17日および24日の本会議において、次の4つの意見書を可決し、内閣総理大臣など各省庁にその実現方を要望しました。

平成10年度畜産・酪農政策価格及び政策に関する意見書

 畜産・酪農経営は、ウルグアイ・ラウンド農業合意により、関税化又は関税水準の引き下げが実施され、激しい競争が強いられ、畜産農家数及び飼養頭数が減少し、国内生産は横ばいないしは、減少傾向にある。
 また、畜産物政策価格についても、引き下げ傾向であり、西暦2003年までの財政構造改革の実施により、財政支出が抑制され必要な予算の確保が一層困難になりつつある。
 平成7年12月に策定された「農産物の需要と生産の長期見通し」及び「酪肉近代化基本方針」では、生産コストの削減と国内産の優位性発揮を前提に、国内生産の拡大方向が示されているが、我が国の畜産・酪農におけるコストのかなりの部分が、輸入穀物などの購入飼料で占められているように、農家のコスト削減努力にも一定の限界がある。
 よって、国においては、これら畜産・酪農を取り巻く状況を十分斟酌され、平成10年度の加工原料乳保証価格などの畜産・酪農政策価格及び畜産環境保全対策など関連政策の決定に当たっては、特段の配慮をされるとともに、「新たな農業基本法」のなかで、我が国における畜産・酪農の位置付けを明確にし、生産振興及び経営の安定を図る政策の確立を強く要望する。

洋上勤務者の選挙権の行使に関する意見書

 海運・水産に従事する船舶の乗組員である洋上勤務者は、その職業的特殊性から、通常の不在者投票のほか、指定船舶内や各地の指定港等における不在者投票が認められている。
 しかし、商船においては、船舶の専用船化・高速船化により停泊時間が極端に短縮され、船員の上陸さえままならない状況にあり、また、漁船は、船舶の大型化と漁場の遠洋化に伴い、長期無寄港操業船が増加しており、現行の選挙制度では、洋上勤務者はますます選挙権の行使ができにくい状態に追い込まれている。
 このような洋上勤務者に対して、選挙権の行使の機会を確保することは、国民固有の権利を保障するうえからも当然求められる。
 よって、政府においては、選挙権の行使ができない海運・水産に従事する洋上勤務者に対して有効な方策を講ずるよう強く要望する。

林業・木材産業の振興に関する意見書

 森林は、林産物の供給、国土の保全、水資源のかん養、保健休養などの多面的な機能を通じ、古くから国民生活と深く関わっている。
 さらに、今日では地球温暖化防止など地球環境の保全に深く関わっているといった森林の重要な役割が明確に位置付けられ、「持続的な森林経営」を推進することが世界的な課題である。
 しかしながら、戦後の木材需給は、輸入木材が主導する状況になっている。
 このため、林業・木材産業の収益性は著しく損なわれる一方、山村地域の過疎化の進行による担い手の減少・高齢化などから森林所有者は経営意欲を喪失し、これまで森林が、放置状態に置かれているといった現象が顕在化するなど、林業・木材産業の衰退には目を覆うものがある。
 ついては、国においては、林業・木材産業の振興を図り、重要な国土基盤である森林・山村を強化するため、次の事項の実現を講じられるよう強く要望する。

  1.  森林・林業・木材産業の活性化に向けた施策を強力に推進すること。
  2.  土地流動化、住宅の建築・取得等の促進に係る税制上の優遇措置を講じること。
  3.  地域材による木造建築の促進等木材需要の拡大策を講じること。
    • 木造公共施設の建築に対する補助基準を見直すとともに、木造率の拡大を行うこと。
    • 地域材による木造建築に対する助成を強化すること。
  4.  林業・木材産業関係企業に対する金融の円滑化を図るとともに、土地規制の緩和を講じること。
  5.  木材の秩序ある輸入に必要な措置を講じること。

国と地方の税財源配分等に関する意見書

 政府の地方分権推進委員会の勧告は、国に対し機関委任事務制度の廃止、補助金の整理合理化や地方の課税自主権の拡大、地方の組織や人員配置の制約となってきた国の必置規制の緩和などとともに、地方自治体に対しては行財政改革の実施、市町村の合併、広域行政の推進などを求める画期的な勧告であった。自治体側からも大きな評価が得られているが、地方分権に伴って不可欠な税財源の委譲などはより具体的な勧告が望まれたところである。
 真の地方分権の確立のため、安定した地方財政の基盤の確立が不可欠であり、この際、国と地方の税財源配分を見直すべきである。
 よって、政府においては、勧告内容を早期に制度化するとともに、地方税源の委譲など地方税財源の充実についても速やかに実現していくことを強く要望する。
 また、今般景気対策として行われた特別減税については、時宜を得た適切な措置と考えるが、地方分権・地方の財政健全化の観点からみると、将来に問題を残した点もなしとはしない。今後、仮に景気対策上、減税を実施する場合があっても、国税の減税を中心に検討すべきであり、地方税の減税については、地方自治体の意向を十分踏まえ慎重に対応すべきものと考える。
 なお、事業税の外形標準課税については、都道府県の長年の悲願であり、地方税収の安定的確保を図り、地方分権の推進に資する税制を目指す観点から、この際、中小企業の税負担の水準などにも配慮しつつ、適切な時期における制度化を図ることとされたい。


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