わたしたちの県議会 茨城県議会
平成11年第4回定例会



 議会は、12月9日及び21日の本会議において、次の3つの意見書を可決し、内閣総理大臣など各省庁にその実現方を要望しました。

東海村核燃料加工施設臨界事故に係る被害者救済及び原子力安全対策の充実・強化を求める意見書
 去る9月30日、株式会社ジェー・シー・オーの東海事業所において発生した事故は、我が国初の臨界事故となり、周辺住民を危険にさらす事態を引き起こしたもので、これまでに例を見ない最悪の事故である。
 本県は原子力発祥の地であり、現在も東海村並びに周辺市町村には多様な原子力関連施設が多数立地し、日本の原子力平和利用の推進に大きな役割を果たしてきたところである。
 しかしながら、今回の事故は原子力に対する県民の信頼を根幹から損なうとともに、住民への被ばくや健康被害、農畜水産業、商工業など各方面にわたる風評被害を引き起こすなど、広範囲にわたって甚大な被害を招いたことは極めて遺憾である。
 今回の事故は、核燃料加工施設の安全管理に対する指導監督に欠陥があったこと、さらには極めて危険な事故だったにもかかわらず、迅速かつ的確に地域住民等に情報伝達がなされなかったことなど、事故に対する国の対応に対しても多くの問題点を提起している。
 ついては、国の責任において住民の健康不安の解消と風評被害等の早急な救済を図るとともに、二度とこのような事故を起こさないよう徹底した対策を実施し、県民が安心して生活できる体制を確立するため、次の事項について迅速に具体的な措置を講じるよう強く要望する。

1 住民の健康管理対策にあらゆる方策を講じ、不安解消に最善を尽くすこと。
2 被害補償が年内に行われるよう事業者等を強力に指導するとともに、政府においても財政援助等被害補償のためのあらゆる措置を講じ、県民が納得できる救済がなされるよう万全の対応を期すること。
3 本県のイメージダウンや、農畜水産業、商工業、観光、企業誘致、住宅開発、海運等様々な分野での影響を払拭するため、国においてもマスメディアを活用した広報キャンペーンを行うなど、積極的な風評被害対策を講じるとともに、これらの産業の実情に応じた具体的支援策を講じること。
4 事故原因を徹底究明するとともに、多重防護システムの徹底など安全審査指針の抜本的な見直しや事業者の安全管理体制を継続的に点検するなど安全管理体制の徹底を図ること。
5 県が実施する環境放射線測定局の新増設や監視体制を強化するための施策に対し十分な財政措置を講じること。
6 原子力事故発生時における通報連絡体制の充実強化を図ること。
7 大容量の情報通信基盤の整備等情報伝達手段の拡充、避難・迂回路の整備、道路情報板の整備、コミュニティセンター等避難施設の整備など広報・避難体制の整備に必要な措置を講じること。
8 警察、消防等を含めた防災関係機関の活動拠点となりうる施設を整備するとともに、放射能防護服、放射能防護車両、放射能測定機器等の装備資機材の充実を図るため財政措置を講じること。
9 被害者の治療や一般住民の健康調査、さらには放射線計測・除染等のできる専門的病院や放射線利用高度治療センターの整備を図ること。
10 国において原子力に関する知識の一層の普及に努めるとともに、県が地域の実情に応じて実施する原子力広報に対して十分な財政措置を講じること。また、各原子力施設の事業内容について、地域住民へ積極的な情報提供がなされるよう必要な措置を講じること。11 原子力関係者の教育・訓練・研修等を支援するため、原子力総合研修センター(仮称)を整備すること。

労働行政機関の体制の充実・強化を求める意見書
 現下の厳しい雇用・失業情勢を反映して、突然の倒産や解雇、賃金不払いなど公共職業安定所、労働基準監督署、女性少年室等の地域に密着した労働行政機関の窓口には、相談者・申告者が急増している。
 こうした中で政府は、6月に「緊急雇用対策」を策定し、第145回国会で5千億円規模の補正予算を組んだところである。その内容は、民間企業による緊急の雇用創出の推進や、国・地方公共団体における臨時応急の雇用・就業機会の創出、さまざまな就職支援の推進を図るとする一方、労働基準監督署を活用した求人開拓や緊急雇用創出特別基金の発動要件の緩和、各種助成金制度の拡充など、労働行政機関の業務に関わるものが多いことなどを考えると、それらの施策が雇用創出・確保において実行をあげるためには、労働行政の充実・強化が切実な課題となっている。
 よって、政府においては、労働者が雇用や労働条件等で大きな不安を抱えている現在、上述した行政機能を担う労働行政機関について、今後とも住民サービスの低下を招くことのないよう、行政体制の充実・強化に特段の配慮をされるよう強く要望する。

「WTO次期水産物交渉」に関する意見書
 11年12月のWTOシアトル閣僚会合では次期交渉の枠組みを示す閣僚宣言のとりまとめには至らなかったものの、今後の調整等を通じて、水産物交渉を含む多角的貿易交渉が行われることが想定されている。
 我が国は、世界最大の水産物輸入国であり、また、本県にあっては、全国有数の漁業生産量を誇る水産県であることなど、今後も漁業・漁村の維持発展は県政の重要な課題となっている。
 よって、政府におかれては、次の事項の実現について確固たる交渉姿勢を貫くよう要望する。

 政府は、次期WTO水産物交渉において、我が国漁業・漁村の維持・発展のため、また、世界の水産資源の持続的利用体制の構築のため、水産物の更なる貿易自由化・市場開放を行わないよう対処すること。